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文献詳細

雑誌文献

胃と腸43巻5号

2008年04月発行

今月の主題 linitis plastica型胃癌―病態と診断・治療の最前線

主題症例

進展範囲・深達度診断に苦慮した胃体部 "潜在linitis plastica型癌"の1例

著者: 青野茂昭1 岡田千鶴子1 徳永徹二1 小針伸一1 猛尾弘照2 佐藤仁哉2 桑原紀之2 吉積司3 長谷和生3 箱崎幸也1

所属機関: 1自衛隊中央病院内科 2自衛隊中央病院病理 3自衛隊中央病院外科

ページ範囲:P.852 - P.858

文献概要

 症例は50歳,男性.人間ドックの胃内視鏡検査で,胃体上部大彎の褪色域に浅いびらん性病変を有し,同部位の生検にて低分化腺癌と診断された.食道胃接合部から幽門前庭部では,送気による膨らみは良好である顕著な萎縮性胃炎であった.胃内視鏡色素撒布検査では,褪色域は比較的境界が明瞭な表層拡大型Ⅱc病変を呈しており,深達度は主に粘膜内癌で粗大顆粒状部位では粘膜下層までの浸潤と診断した.噴門側胃切除を施行するも術中,迅速標本にて肛門側断端陽性であり,幽門側胃切除を追加し胃全摘術を施行した.病理組織学的所見では,癌の粘膜面露出はⅡc面に一致していたが,Ⅱc病変を中心により広範囲な粘膜下層から漿膜下層までの浸潤をみる4型胃癌であった.胃体部の低分化型の表層拡大型Ⅱc病変の診断時には,常に“潜在linitis plastica型癌”を念頭に置き,胃壁の変化などを注意深く検討することが極めて重要であることを再認識させられた症例であった.

参考文献

1)浜田勉,岩崎良三,高木由紀.病院受診群からみたlinitis plastica型胃癌診断の現状―特に潜在的なlinitis plastica型胃癌について.胃と腸27:525-537, 1992
2)中村恭一.胃癌の構造.医学書院,pp 170-212, 1982
3)日本胃癌学会(編).胃癌取扱い規約,13版.金原出版,p5, 1996
4)市川一仁,平林かおる,上田喜彦.増殖因子と接着因子からみた,いわゆるPEN型早期胃癌とスキルス胃癌の同質性.消化器内視鏡10:323-329, 1998
5)佐野量造.胃疾患の臨床病理.医学書院,1974
6)箱崎幸也,清家英二,岩本淳一,他.急性胃粘膜病変との画像的鑑別に苦慮した4型胃癌の1症例.胃と腸36:103-109, 2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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