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文献詳細

雑誌文献

胃と腸43巻5号

2008年04月発行

文献概要

今月の主題 linitis plastica型胃癌―病態と診断・治療の最前線 主題症例

遡及的に典型的linitis plastica型胃癌までの経過を観察しえた前,潜在的linitis plastica型胃癌の2例

著者: 武市昌郎1 長浜孝1 竹下宗範1 松井敏幸1 西俣伸亮2 岩下明徳2 二見喜太郎3

所属機関: 1福岡大学筑紫病院消化器科 2福岡大学筑紫病院病理部 3福岡大学筑紫病院外科

ページ範囲:P.859 - P.866

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要旨 X線・内視鏡検査にて遡及的に経過観察しえたlinitis plastica型胃癌(以下,LP型癌)の2例を報告する.〔症例1〕初回X線,内視鏡検査では胃体上部前壁に粘膜ひだの集中を伴う長径20mmの不整な陥凹性病変を認めた.陥凹の周囲はやや隆起しており,粘膜ひだの腫大を認め,0Ⅱc型のSM癌と推定した.その後のX線経過で,胃体上部から胃体下部にかけて胃壁の硬化所見と粘膜ひだの肥厚,蛇行が出現し,3年9か月後にはleather bottle状の典型的なLP型癌に進展していた.〔症例2〕初回X線検査で胃体中部から胃体下部大彎に約50mmにわたる胃壁の硬化像と粘膜ひだの肥厚を認め,SM以深癌の存在が推定された.1年6か月後のX線検査では胃体下部から胃穹窿部にかけて広範な胃壁の伸展不良を認め,LP型癌へ進展していた.各X線像より,〔症例1〕初回検査時は前LP型癌,2年2か月後は潜在的LP型癌,3年9か月後は典型的LP型癌,〔症例2〕初回検査時は潜在的LP型癌,1年6か月後は典型的LP型癌と病期分類した.2症例の経過観察期間より,潜在的LP型癌より典型的LP型癌への進展速度は1.5年程度であり,少なくとも前LP型癌の時期より4年以内に典型的LP型癌に進展したことが推定される.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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