icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸43巻8号

2008年07月発行

文献概要

今月の主題 胃癌に対する内視鏡スクリーニングの現状と将来 主題

胃がんの内視鏡スクリーニングの死亡率減少効果―検診の立場から

著者: 加藤俊幸1 小越和栄1 成澤林太郎2 藤田一隆3 木滑孝一4 佐野正俊5

所属機関: 1新潟県立がんセンター新潟病院 2新潟大学医歯学総合病院光学医療診療部 3藤田医院 4木滑医院 5佐野医院

ページ範囲:P.1197 - P.1202

文献購入ページに移動
要旨 内視鏡による胃がん検診の有効性を評価するには,職域や人間ドックでなく対策型検診として住民に広く実施する必要がある.その精度によって死亡率減少効果を客観的に評価することが可能となる.2003年に政令指定都市の住民に対する胃がん検診に内視鏡検診を導入して5年が経過した.安全と感染防止を第一とし,読影委員会によるダブルチェックにより診断精度の向上に努めている.2006年度の内視鏡検診者数は158施設23,882人で直接撮影者数を超え,4年間における胃がん発見率は0.91%で,直接撮影による0.33%,間接撮影の0.22%を大きく上回る.また内視鏡検診で発見された胃がんのうち早期がんの比率は82.4%であった.ダブルチェックで新たに病変が指摘されたのは6.4%で,第三者に評価されることが実施施設の診断精度の向上に有用であった.内視鏡検診は実施施設や専門医数が限られるが,むしろ都市住民における検診で可能である.2003年度の内視鏡検診群とのコホートによる胃がん,食道がんの死亡率の検討を行ったが,既に死亡率減少効果があるとされているX線検診群と同等であった.さらに追跡調査することによって胃がん死亡率への抑制効果は明らかになることが期待される.

参考文献

1)深尾彰,濱島ちさと,渋谷大助,他.有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン(普及版).Jpn J Cancer Chemother 33:1183-1197, 2006
2)三木一正.胃がんハイリスクストラテジーにもとづく胃内視鏡検診.Gastroenterol Endosc 49:2451-2461, 2007
3)久道茂,菅原信行,渕上在弥,他.胃集検における偽陰性率の推計.がんの臨床 24:189-194, 1978
4) Matsumoto S, Yamasaki K, Tsuji K, et al. Results of mass endoscopic examination for gastric cancer in Kamigoto Hospital, Nagasaki Prefecture. World J Gastroenterol 13:4316-4320, 2007
5)藤田安幸,原 浩.内視鏡による胃癌個別検診の有用性と今後の課題.第42回日本消化器集団検診学会総会,2003
6)吉川守也.ペプシノゲン法による地域住民胃がん検診―「高崎方式」10年間の検討.消化器検診Newsletter 78:1-5, 2007
7) Mizoue T, Yoshimura T, Tokui N, et al. Prospective study of screening for stomach cancer in Japan. Int J Cancer 106:103-107, 2003
8) Riecken B, Pfeiffer R, Ma JL, et al. No impact of repeated endoscopic screens on gastric cancer mortality in a prospectively followed Chinese population at high risk. Prev Med 34:22-28, 2002
9)細川治,服部昌和,武田孝之,他.胃がん拾い上げにおける内視鏡検査の精度.日消集検誌 42:33-39, 2004
10)松島松翠,夏川周介,島崎邦夫,他.胃検診による胃がん死亡率減少効果.日農村医会誌 49:651, 2000
11)相田重光,今野豊,加藤勝章,他.検診施設における上部消化管内視鏡検査偶発症の検討.Gastroenterol Endosc 47:169, 2005
12)尾辻真人,河野裕一,尾辻章宣,他.細径パンエンドスコープによる胃がんの診断限界―特に経過観察による分析.胃と腸 24:1291-1297, 1989

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?