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文献詳細

雑誌文献

胃と腸43巻8号

2008年07月発行

文献概要

今月の主題 胃癌に対する内視鏡スクリーニングの現状と将来 主題

人間ドックにおける胃内視鏡検診の現状と問題点―偽陰性例の検討を中心に

著者: 満崎克彦1 多田修治2 福永久美2 采田憲昭2 菅守隆2 丸岡公生1 工藤康一1 上原正義1 江口洋之1 藤本貴久2 浦田譲治3 神尾多喜浩4

所属機関: 1済生会熊本病院健診センター 2済生会熊本病院消化器病センター 3済生会熊本病院画像診断センター 4済生会熊本病院病理部

ページ範囲:P.1165 - P.1176

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要旨 人間ドックにおける胃内視鏡検診において,逐年検診発見胃癌と非逐年検診発見胃癌の臨床病理学的所見を比較し,逐年検診の有用性を検討した.逐年検診発見胃癌を偽陰性例と定義し,偽陰性例の組織型と部位,前回と発見時検査の"検査の質",担当医の内視鏡経験年数を比較検討した.逐年検診では早期癌率100%,内視鏡的治療可能例が64.6%であったのに対し,非逐年検診では早期癌率83.6%,内視鏡的治療可能例は36.1%であった.分化型癌はM,L(幽門腺)領域の小彎側,未分化型癌はM,U(胃底腺)領域の大彎側に見逃しが多かった.偽陰性例の41.7%が注意深く観察すれば指摘できた."検査の質"は発見時が高く,内視鏡経験数の豊富な担当医がより多く癌を発見していたが,経験の浅い担当医と同率に見逃しがあった.逐年検診発見胃癌"すべて"を偽陰性例と定義した場合の偽陰性率は31.4%であり,画像の見直しにより病変を認識できる例のみを偽陰性例と定義した場合の偽陰性率は13.1%であった.胃内視鏡検診における見逃しを防ぐには,見逃しやすい癌の特徴を理解したうえで,胃底腺領域の詳細な観察が極めて重要であると考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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