今月の主題 colitic cancer/dysplasiaの早期診断─病理組織診断の問題点も含めて
主題症例
colitic cancerに随伴するdysplasiaを拡大観察しえた1例
著者:
相澤宏樹1
高木承12
樋渡信夫3
高橋秀一郎1
梅村賢1
遠藤克哉1
角田洋一1
根来健一1
高橋成一1
木内喜孝1
下瀬川徹1
所属機関:
1東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野
2高木外科内科胃腸科医院
3いわき市立総合磐城共立病院消化器科
ページ範囲:P.1374 - P.1374
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症例は59歳,女性.発症より20年経過した再燃緩解型の全大腸炎型の患者である.S状結腸にpSM癌を認め,大腸全摘術を施行された症例である.術前の大腸内視鏡検査で,腫瘍の口側10cmのS状結腸に長径10mmのIIa病変を認めた(Fig. 1).立ち上がりは急峻で周囲との境界は明瞭であり,水洗で容易に出血を認めた.クリスタルバイオレット撒布後の拡大観察では,立ち上がり辺縁部近くで一部類円形のpitを認めるが,頂部に向かってpitが疎となり,なだらかにVN領域に移行しているのが観察された(Fig. 2).手術摘出標本での病理組織学的検討では,low grade dysplasia相当の所見であった.拡大観察でVN領域として観察された部位は,間質の増生により,腺管が粘膜表層に開口していないことが確認された(Fig. 3, 4).p53免疫染色陽性でKi-67も腺底部を中心に陽性であったことは,dysplasiaの診断を支持する所見と考えられる.