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文献詳細

雑誌文献

胃と腸44巻10号

2009年09月発行

文献概要

今月の主題 潰瘍性大腸炎の初期病変とその進展・経過 序説

潰瘍性大腸炎の初期病変とその進展・経過

著者: 平田一郎1

所属機関: 1藤田保健衛生大学消化管内科

ページ範囲:P.1489 - P.1491

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はじめに

 Crohn病(Crohn disease;CD)では,“初期病変はアフタ様病変であり,経過とともに典型病変(縦走潰瘍,敷石状外観)に進展し,ついには瘻孔や狭窄などの腸管合併症をきたす”という自然史(疾病史)が明らかとなっている.一方,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)においては,その初期病変は明らかになっておらず,病変の進展様式も不明な点が多い.UCの初期は,おそらく診断困難な非特異性腸炎として扱われることは推測できるが,非特異性の中にも他の腸炎とは異なる特徴を見い出したいものである.早期診断が可能になれば早期治療につながり,UCの疾病史を変えうるかもしれない.

 また,UCの進展様式においても解明すべき点は多い.従来より,病変が直腸から口側結腸へびまん性・連続性に進展するのがUCの特徴であると言われてきた.しかし,虫垂開口部病変や大腸区域性病変などの非連続性病変,胃・十二指腸,小腸,回腸囊など大腸以外の部位に出現する病変などの実態についても十分解明されてはいない.

 UCの初期病変や病変進展様式などの病態を明らかにすることは,UCの診断・治療・予後における診療の発展や改善につながるばかりでなく,病因解明の糸口を与えてくれる可能性を秘めていると考えられる.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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