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文献詳細

雑誌文献

胃と腸44巻10号

2009年09月発行

文献概要

今月の主題 潰瘍性大腸炎の初期病変とその進展・経過 主題症例

リンパ濾胞増殖症から典型例に進展した潰瘍性大腸炎の1例

著者: 土佐正規1 織内竜生1 大楽紀子1 浅野重之2 斎藤勝3 今野保敏3 樋渡信夫1

所属機関: 1いわき市立総合磐城共立病院消化器科 2いわき市立総合磐城共立病院病理科 3呉羽総合病院消化器科

ページ範囲:P.1598 - P.1601

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要旨 初期病変としてのリンパ濾胞増殖症から,典型的な潰瘍性大腸炎に進展した症例を経験した.患者は47歳,女性.時折下血を自覚し,初診.理学的所見,臨床検査では著変はみられなかった.大腸内視鏡検査では,直腸下部にリンパ濾胞の増殖によると思われる大小の顆粒状隆起を,粘膜には一部発赤,黄色点を認めた.生検ではリンパ濾胞の過形成,一部炎症性細胞浸潤を認めたが,積極的に潰瘍性大腸炎を示唆する所見には乏しかった.クラミジア腸炎も疑ったが血清学的,組織学的には否定的であり,リンパ濾胞性直腸炎との鑑別が問題となった.約3か月のメサラジン,ステロイド坐剤による治療では内視鏡的には軽度改善したが,組織学的にはほぼ不変であった.さらに5か月の経過で血便が持続的となり,内視鏡的,組織学的にはリンパ濾胞の増殖は消褪し,典型的な潰瘍性大腸炎に進展した.

参考文献

1)多田正大,藤田欣也,伊藤義幸,他.腸管アフタ様病変の鑑別─内視鏡を中心に.胃と腸 28 : 411-418, 1993
2)林繁和.腸管アフタ様病変の鑑別─大腸の急性炎症を中心に.胃と腸 28 : 419-428, 1993
3)Fle´jou JF, Potet F, Bogomoletz WV, et al. Lymphoid follicular proctitis. A condition different from ulcerative proctitis? Dig Dis Sci 33 : 314-320, 1988
4)池谷賢太郎,丸山保彦,景岡正信,他.クラミジア直腸炎.胃と腸 43 : 1663-1669, 2008
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6)吉岡京子,上野義隆,田中信治,他.Lymphoid follicular proctitis(LFP)自然史の検討─当科で経験した8例の検討.Gastroenterol Endosc 51 : 827, 2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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