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文献詳細

雑誌文献

胃と腸44巻3号

2009年03月発行

文献概要

今月の主題 食道扁平上皮癌に対するESDの適応と実際 主題

食道ESD切除症例の病理学的検索成績

著者: 藤田昌宏12 佐藤利宏1 藤田裕美3 吉井新二14 高橋宏明4 細川正夫5

所属機関: 1「恵佑会」臨床病理学研究所 2名寄市立大学保健福祉学部 3北海道大学大学院医学研究科分子診断病理学 4恵佑会札幌病院消化器内科 5恵佑会札幌病院外科

ページ範囲:P.345 - P.358

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要旨 食道扁平上皮癌のESD切除171病変を臨床病理学的に検討し,切除断端陽性例と局所再発ないしリンパ節転移再発例についての特徴を調べた.171病変はすべて一括切除が行われたが,腫瘍病変の大きさは長径3mm大から90mm大であった.切除断端陽性ないし疑陽性例は11病変で認められた.深部断端陽性例は2例でSM癌が認められ,うち局所再発は1例にみられた.側方断端陽性と考えられた9例中,局所再発は2例であり,T1a-LPM,T1a-EPの深達度であったが,側方断端に上皮異型像が認められ判定保留されていた.病理組職学的に切除断端判定に苦慮した症例では,切除時の熱変化による変性や挫滅(平均1,000μm),伸展固定時の組織崩壊と低異型度の腫瘍病変の良悪判断,非腫瘍性上皮異型などが存在する.リンパ節転移再発例は2例みられたが,ESD試料においてはly因子陽性例は少なかった.詳細な再検索でリンパ管侵襲が見い出された例もあった.再発例やリンパ節転移例のEMR組織において,腫瘍先進部のINFcを示す傾向がみられた.また,EMR 症例309病変を比較検討した結果,局所再発率は3.5%であったが分割切除が33例あり,この分割切除例では局所再発が11例(33%)にみられた.一括切除が可能なESDはEMRに比べ再発率は低く(1.7%),ESDによる切除は良好な成績であった.ESD実施時の正確な診断と範囲や,切除時ないし固定時の変性,挫滅などを考慮して切除断端を考え,病理診断において組織像,リンパ管侵襲,断端における低異型度の病変を見落とさないことが大切である.

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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