icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸44巻4号

2009年04月発行

文献概要

特集 早期胃癌2009 主題 5.早期胃癌の画像診断 3)範囲診断のための精密検査

(1)ESDの術前検診:内視鏡診断に対する精密X線検査の位置づけ

著者: 長浜孝1 高木靖寛1 槙信一朗1 武市昌郎1 八尾建史1 松井敏幸1 田邉寛2 西俣伸亮2 岩下明徳2

所属機関: 1福岡大学筑紫病院消化器科 2福岡大学筑紫病院病理部

ページ範囲:P.637 - P.649

文献購入ページに移動
要旨 ESDの術前検査におけるX線精密検査の意義は,浸潤範囲診断,深達度診断,Ul深度の推定,さらに同時性多発病変の拾い上げである.特に浸潤範囲診断においては内視鏡的に観察困難な領域や,表層拡大型を代表とする大きな病変に対し,全体像の把握と腫瘍径の測定に有用である.残胃癌においては病変と縫合線との位置関係も客観的に把握できる.また,結果的適応外病変における追加手術の術式決定のために必須と考える.一方,内視鏡的に浸潤境界が不明瞭となる病理組織学的要因を備えた0 IIb,類似0 IIb,あるいはこれらを随伴する病変などに対してもX線検査がその範囲決定に役立ち,マーキングに際し一指標となることがある.実際には淡い陰影斑,非癌粘膜と癌粘膜の微細な形状の差や,わずかなバリウム付着異常から診断しなければならず,より良質の画像を撮影する技術と読影力の修練が必要である.X線検査による浸潤範囲診断をマーキングに反映させるには,内視鏡,X線検査後にたえず両者を対比させ,内視鏡的浸潤範囲診断の妥当性を組織構築を考慮しながら確認する作業が必要となる.盲目的な拡大内視鏡検査や4点生検よりも,問題点を絞り込むことでより正確で効率的な浸潤範囲診断が可能となる.

参考文献

1)日本胃癌学会(編).胃癌治療ガイドライン医師用,2版.金原出版,2004
2)熊倉賢二,杉野吉則,馬場保昌,他.胃X線診断学─検査編.金原出版,1992
3)馬場保昌,吉田論史,長浜隆司,他.胃X線検査のポイント─精密検査法.胃と腸 38 : 872-884, 2003
4)中原慶太,立石秀夫,鶴田修,他.陥凹型胃癌に対するX線的深達度診断プロセス.胃と腸 41 : 1327- 1343, 2006
5)杉野吉則,熊倉賢二,今井裕,他.早期胃癌X線診断における装置・造影剤および検査法の進歩.胃と腸 38 : 11-20, 2003
6)長浜孝,宗祐人,菊池陽介,他.切開・剥離法(ESD)時代の胃癌の術前診断─直接型平面検出器(flat panel detector)搭載Cアーム型X線透過装置 : その有用性と問題点.胃と腸 40 : 823-835, 2005
7)八尾恒良.早期胃癌の基本所見とピットフォール.胃と腸 35 : 11-12, 2000
8)藤原侃,広門一孝,八尾恒良,他.陥凹型早期胃癌の診断学的問題点─X線微細診断と肉眼標本所見の関連,肉眼標本所見と内視鏡上の色調および癌の組織型との関連性について.胃と腸 6 : 157-174, 1971
9)中村恭一.胃癌の病理.金芳堂,1972
10)馬場保昌,杉山憲義,丸山雅一,他.陥凹性早期胃癌のX線所見と病理組織所見の比較.胃と腸 10 : 37-49, 1975
11)長浜孝,宗祐人,頼岡誠,他,当院における早期胃癌に対するESDの現状─適応拡大病変の切除成績と非一括完全切除となる要因の解析.胃と腸 43 : 61-73, 2008
12)草野央,後藤田卓志,岩崎基.早期胃癌に対する内視鏡切除後の長期予後─ガイドライン病変と適応拡大病変との比較.胃と腸 43 : 74-80, 2007
13)長浜孝.ESD時代の早期胃癌の内視鏡診断─側視鏡を用いた分化型早期胃癌の術前精密検査と拡大内視鏡について.第22回日本消化器内視鏡学会九州セミナー,7-17, 2009
14)細川治,梅崎泰治,渡辺国重,他.非癌部との境界のわかりにくい胃癌は増加しているのか.胃と腸 36 : 1229-1237, 2001
15)武市昌郎,長浜孝,八尾建史.内視鏡治療のための胃癌範囲診断─内視鏡治療のための胃癌範囲診断.Gastroenterol Endosc 50(Suppl 2),2220,2008
16)馬場保昌,二宮健,大崎康世,他.臨床的IIb病変の検討─X線・内視鏡診断の立場から見たIIb病変の幅.胃と腸 16 : 1297-1314, 1981
17)浜田勉,近藤健司,板垣雪絵,他.表層拡大型早期胃癌の臨床診断─隆起型の境界診断の問題点.胃と腸 31 : 595-604, 1996
18)辻直子,石黒信吾,春日井務,他.表層拡大型早期胃癌の病理─肉眼像と組織像の対比を中心に.胃と腸 31 : 573-580, 1996
19)森田秀祐,馬場保昌,酒井照博,他.表層拡大型早期胃癌のX線及び内視鏡的術前診断の検討.胃と腸 31 : 581-593, 1996
20)八尾恒良,藤原侃,渡辺英伸,他.胃癌の浸潤範囲の内視鏡診断.胃と腸 7, 725-738, 1972
21)中村賢二郎,森正樹,黒岩重和,他.純粋2b型早期胃癌の臨床病理学的観察.胃と腸 21 : 363-370, 1986
22)荒木京二郎,山崎奨,公文正光,他.純粋2b型早期胃癌の病理.胃と腸 21 : 389-394, 1986
23)熊倉賢二,丸山雅一,杉山憲義,他.IIb型早期胃癌X線診断.胃と腸 7 : 21-36, 1972
24)飯田三雄,南部匠,八尾恒良,他.単独IIb 6例の検討よりみたIIb型早期胃癌の診断限界.胃と腸 16 : 1283-1295, 1981
25)馬場保昌,成井貴,二宮建,他.IIb様早期胃癌のX線所見と病理組織所見との比較検討─とくに噴門側浸潤範囲について.胃と腸 12 : 1087-1103, 1977
26)政信太郎,江平征郎,中原信昭,他.IIb型早期胃癌X線診断─レントゲングラムによるIIb X線像の検討.胃と腸 7 : 9-20, 1972
27)石黒信吾,辻直子,寺尾寿幸,他.胃底腺領域の分化型癌の特徴─病理学的特徴と組織発生.胃と腸 29 : 1025-1029, 1994
28)長浜隆司,八巻悟郎,大倉康男,他.組織異型が弱く2年7ヵ月経過観察を行った胃型分化型sm胃癌の1例.胃と腸 38 : 723-732, 2003
29)松田彰郎,西俣嘉人,大井秀久,他.胃型分化型早期胃癌の画像診断─X線を中心に.胃と腸 38 : 673-683, 2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら