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文献詳細

雑誌文献

胃と腸44巻5号

2009年04月発行

文献概要

今月の主題 癌や炎症と鑑別が困難な消化管悪性リンパ腫 主題

進行癌やそのほかの胃病変との鑑別が必要な胃悪性リンパ腫―X線診断を中心に

著者: 新原亨1 田中貞夫2 政幸一郎1 今村誠子1 川畑拓也1 鳥丸博光1 田代光太郎1 島岡俊治1 松田彰郎1 仁王辰幸1 堀雅英1 西俣嘉人1 西俣寛人1

所属機関: 1鹿児島共済会南風病院消化器科 2鹿児島共済会南風病院病理科

ページ範囲:P.813 - P.829

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要旨 胃の悪性リンパ腫(以下,ML)の正診率は多彩多発型では75%であったが,その他の肉眼型では正診と疑診を合わせても50%以下であった.したがって,MLの大多数の症例が,癌や粘膜下腫瘍,炎症などとの鑑別が必要であると考えられ,今回,進行MLの鑑別診断について,肉眼所見およびX線所見を検討した.その結果,潰瘍型と2型癌との鑑別では,① MLは潰瘍が不整形であってもなめらかな線で描出されること,② MLはX線で伸展不良が軽いことが,重要な鑑別点と考えられた.隆起型とGISTとの鑑別では,MLの軟らかさと隆起表面の散在性の微細な星芒状陥凹が鑑別に有用であった.巨大皺襞型とLP型胃癌との鑑別では,腫大皺襞の規則的蛇行の有無,潰瘍の形態,X線における伸展不良の程度により鑑別可能と思われた.また,MLはサルコイドーシスや梅毒などの胃炎との鑑別も問題になる.胃サルコイドーシスは前庭部に多い傾向があるが,病変の形態では鑑別困難であった.胃梅毒も病変が多彩であるが,各所見を詳細に検討すればMLとの鑑別は可能であると思われた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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