icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸44巻6号

2009年05月発行

文献概要

今月の主題 小腸疾患─小病変の診断と治療の進歩 主題

小腸小病変に対する内視鏡所見および診断能の検討―びらん,潰瘍性病変の鑑別を中心に

著者: 平井郁仁1 別府孝浩1 西村拓1 高津典孝1 二宮風夫1 関剛彦1 八尾建史1 津田純郎1 松井敏幸1 二見喜太郎2 岩下明徳3 宗祐人4

所属機関: 1福岡大学筑紫病院消化器科 2福岡大学筑紫病院外科 3福岡大学筑紫病院病理部 4戸畑共立病院

ページ範囲:P.983 - P.993

文献購入ページに移動
要旨 小腸小病変の診断に内視鏡検査は不可欠である.しかし,その診断能や診断体系は確立されておらず,今回,当科で小腸の観察を目的としてDBEを施行した283症例を対象として検討した.283例のうち,2cm以下の小病変を有していた小病変合併例は189例(67%)であった.189例中小病変の他に主病変を合併していた症例が120例(63%),小病変のみの症例が69例(37%)だった.主病変を有する症例は,そのほとんどが確定診断に至っていた.小病変のみの症例のうち,炎症性疾患では約半数が診断未確定であった.小潰瘍性病変の検討では,2mm以下のアフタ,小びらんの診断確定率は低かった.一方,大型アフタ,びらん,小潰瘍を呈する場合は,小病変のみであってもCD,NSAIDs起因性腸炎,腸結核などの疾患に診断確定していた. CDによる小病変は縦走傾向や比較的大型のものが多く,腸結核や非特異性多発性小腸潰瘍症では典型病変に類似する傾向があった.すなわち,小病変であっても,これらの特徴を捉えることができれば診断確定に有用であると推察された.上記以外の診断が確定していない症例では,特異的な疾患による病変ではなく,広義の軽度炎症の病態としての小病変も含まれている可能性がある.こうした病変と特異的疾患を確実に鑑別診断する必要があり,今後さらなる内視鏡,X線所見を含めた小腸検査の整理,体系化が不可欠である.

参考文献

1)樋渡信夫.クローン病の診断基準改定案(2002).厚生科学研究費補助金特定疾患対策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班」平成13年度研究報告書,pp 35-36,2002
2)飯田三雄,川崎厚,興梠憲男,他.Crohn病の長期経過─初診時X線所見からみた合併症出現の予測.胃と腸 26 : 613-626, 1991
3)平井郁仁,高津典孝,二宮風夫,他.Crohn病における長期経過─経過良好例(non-disabling disease)の予測.胃と腸 42 : 1843-1858, 2007
4)松井敏幸,関剛彦,八尾建史,他.炎症性小腸疾患における小腸ダブルバルーン内視鏡検査─X線検査との比較.胃と腸 40 : 1491-1502,2005
5)飯田三雄,檜沢一興,青柳邦彦,他.大腸アフタ様病変のX線学的鑑別診断─アフタ様病変のみから成るCrohn病と他疾患との鑑別を中心に.胃と腸 28 : 397-410,1993
6)平井郁仁,矢野豊,大原次郎,他.アフタ様病変のみから成るCrohn病の長期経過.胃と腸 40 : 895- 910,2005
7)八尾恒良.慢性炎症性疾患─腸結核.八尾恒良,飯田三雄(編).小腸疾患の臨床.医学書院,2004
8)平井郁仁,松井敏幸,宮岡正喜,他.indeterminate colitisの臨床的検討─その定義と頻度,臨床経過について.胃と腸 41 : 885-900,2006
9)Solem CA, Loftus EV Jr, Fletcher JG, et al. Small-bowel imaging in Crohn's disease : a prospective, blinded, 4-way comparison trial. Gastrointest Endosc 68 : 255-266,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?