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文献詳細

雑誌文献

胃と腸44巻7号

2009年06月発行

文献概要

今月の主題 食道胃接合部腺癌の診断 主題

食道胃接合部腺癌の病理学的特徴―早期癌を胃上部と比較して

著者: 大倉康男1 守永広征1 五十嵐誠治2 平林かおる2

所属機関: 1杏林大学医学部病理学 2栃木県立がんセンター病理診断科

ページ範囲:P.1095 - P.1103

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要旨 「食道癌取扱い規約」が改訂され,食道胃接合部癌の定義が“病理組織型にかかわらず,食道胃接合部の上下2cm以内に癌腫の中心があるもの”とされた.その定義に従い,食道胃接合部腺癌の臨床病理学的特徴を早期癌を用いて検討するとともに,胃上部早期癌と比較検討をした.胃上部癌との比較では,食道胃接合部腺癌は平均年齢がやや高く,男性にやや多い.部位は,いずれも小彎側が多いが,胃上部癌は後壁にも多く認められた.肉眼型は,いずれも0IIc型が多いが,食道胃接合部腺癌は隆起型の頻度も高い.平均腫瘍径に違いは少ないが,食道胃接合部腺癌では長軸方向の長さが短いものが多く認められた.深達度は,食道胃接合部腺癌ではM癌が少なく,SM癌が多い.組織型は,食道胃接合部腺癌では高分化型管状腺癌が多く,また,低分化腺癌や印環細胞癌が認められない.また,食道胃接合部腺癌の粘液形質は胃型優位の胃腸混合型が多く認められた.食道胃接合部腺癌を領域別に比較検討すると,Gは肉眼型,深達度,組織型,粘液形質でほかの領域と違いがみられた.その結果,食道胃接合部癌の定義は,食道胃接合部からの長さを1cmに短く定義するとともに病変が食道胃接合部に及んでいることを要件に入れることが必要と考えられた.その定義に含まれるEG,E=G,GEの癌はいずれも円柱上皮化生粘膜から発生するが,癌周囲の胃粘膜に違いが認められ,発生する場の違いによるものと捉えられた.

参考文献

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11)中村恭一.胃癌の構造,3版.医学書院,2005
12)榊信廣.Barrett上皮とHelicobacter pylori感染との関係はどこまで解明されたか.消内視鏡 19 : 1457-1462, 2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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