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文献詳細

雑誌文献

胃と腸44巻7号

2009年06月発行

文献概要

今月の主題 食道胃接合部腺癌の診断 主題

食道胃接合部腺癌の特徴─Barrett食道癌,胃上部癌との比較―外科の立場から

著者: 石神純也1 愛甲孝1 奥村浩1 上之園芳一1 瀬戸山徹郎1 内門泰斗1 夏越祥次1

所属機関: 1鹿児島大学大学院腫瘍制御学・消化器外科学

ページ範囲:P.1104 - P.1109

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要旨 食道胃接合部に発生するBarrett食道腺癌と同部位に発生する胃癌の外科治療上の異同を,早期Barrett食道腺癌症例報告および自験例から明らかにし考察を行った.その結果,① Barrett食道腺癌は組織型では高分化型腺癌が高率,リンパ節転移は粘膜癌では認められず,粘膜下層浸潤癌では27%が転移陽性であり,通常の接合部胃癌と同様の結果であった.② 粘膜癌では0-IIb型が多く,Barrett上皮の観察の際には見逃しの危険性があり,注意を要する.粘膜下浸潤癌では隆起型を取ることが多く,リンパ節転移の危険性があり,通常の胃癌と同様にリンパ節郭清を必要とした.Barrett食道腺癌の取り扱いと記載方法は「食道癌取扱い規約」に順ずることとなっているものの,T1a-MM(従来のM3)症例にリンパ節転移はみられず,早期Barrett食道腺癌の性格は同部位に発生した早期胃癌に類似していた.外科手術による噴門機能の廃絶はQOLを著明に低下させる.粘膜癌では内視鏡治療で根治切除可能であり,早期Barrett食道腺癌の発見のために色素法や胃拡大内視鏡検査を駆使して,早期癌の発見,内視鏡による低侵襲性治療が望まれる.一方,粘膜下浸潤癌では跳躍リンパ節転移を来す症例も懸念され,センチネルリンパ節を併施した治療法は有用と考えられる.

参考文献

1)奥村浩,夏越祥次,帆北修一,他.食道胃接合部癌.臨消内科 19 : 273-278, 2004
2)日本胃癌学会(編).胃癌取扱い規約,13版.金原出版,1999
3)西満正,太田恵一朗,松原敏樹,他.食道・胃境界部癌治療の進歩─特にリンパ系の郭清について.癌と化療 15 : 580-588, 1988
4)日本食道学会(編).食道癌取扱い規約,10版.金原出版,2008
5)高木靖寛,宗祐人,野村秀幸,他.Barrett食道に発生した食道腺癌の1例.胃と腸 36 : 709-715, 2001
6)後藤田卓志,横井千寿,濱中久尚,他.早期Barrett食道癌の内視鏡的特徴像についての検討.胃と腸 39 : 1251-1258, 2004
7)有馬美和子,吉村清司,小出義雄,他.0-IIc+IIb型Barrett食道癌の1切除例.胃と腸 34 : 177-184, 1999
8)夏越祥次.下部食道・噴門部リンパ流に関する実験的臨床的研究.日外会誌 90 : 364-376, 1989
9)Burian M, Stein HJ, Sendler A, et al. Sentinel node detection in Barrett's and cardia cancer. Ann Surg Oncol 11 : 255S-258S, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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