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文献詳細

雑誌文献

胃と腸44巻7号

2009年06月発行

文献概要

今月の主題 食道胃接合部腺癌の診断 主題

食道胃接合部腺癌のX線診断―存在診断,深達度診断,食道浸潤診断

著者: 島岡俊治1 松田彰郎1 仁王辰幸1 政幸一郎1 鳥丸博光1 田代光太郎1 新原亨1 西俣嘉人1 堀雅英1 西俣寛人1 川井田浩一2 末永豊邦2 田中貞夫3

所属機関: 1南風病院消化器科 2南風病院外科 3南風病院病理科

ページ範囲:P.1111 - P.1126

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要旨 1998年8月から2008年7月までに南風病院で外科手術および内視鏡治療が行われた食道胃接合部腺癌107例112病変を対象とした.Barrett腺癌は6病変で,Barrett腺癌を除く106病変中表在癌は72病変,進行癌は34病変で,小彎および後壁を中心とする病変が多かった.表在癌は陥凹主体の病変が多く,ほとんどが分化型癌であった.食道浸潤が72病変中11病変(15.3%)にみられた.M癌の浸潤距離は平均2mm(1~3mm)でSM癌の浸潤距離は平均3.8mm(1~8mm)であった.進行癌では食道浸潤が34病変中22病変(64.7%)にみられ,浸潤距離は平均11.6mm(1~39mm)であった.管腔の狭い食道胃接合部においてX線検査は腫瘍の全体像を客観的に捉えることが可能であった.進行癌はほとんどが2型と3型でありX線検査での存在診断は容易であった.表在癌でも隆起を主体とする病変は境界明瞭な透亮像として存在診断は比較的容易であったが,IIc病変は肉眼所見に乏しい病変が多くみられた.周囲との境界が明瞭であれば粘膜下浸潤が疑われ,陥凹底に隆起を示す透亮像がみられれば粘膜下層深部浸潤の可能性が考えられた.表在癌にはひだ集中所見を伴った病変はなく,ひだ集中像を伴う症例はすべて進行癌であった.SM癌は線状分離像の不整や食道胃接合部より口側の粘膜不整像を読み取ることで食道浸潤の診断は可能であった.進行癌もほとんどの病変で食道胃接合部と食道浸潤による肉眼的境界を同定することにより,食道浸潤範囲の推測が可能であった.SSBEに伴うBarrett腺癌は右壁および後壁に多く,X線検査では半立位仰臥位第二斜位像や腹臥位第一斜位像が存在診断に有用であった.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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