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文献詳細

雑誌文献

胃と腸45巻1号

2010年01月発行

文献概要

今月の主題 早期胃癌のIIb進展範囲診断 主題

内視鏡による早期胃癌のIIb進展範囲診断―通常内視鏡の立場から

著者: 三島利之1 濱本英剛1 三宅直人1 奥薗徹1 水野浩志1 宮下祐介1 李仁1 高橋佳之1 羽根田晃1 高林広明1 松田知己1 石橋潤一1 中堀昌人1 望月福治2 遠藤希之3 岩間憲行3 長南明道1

所属機関: 1仙台厚生病院消化器内視鏡センター 2仙台厚生病院健康管理センター 3仙台厚生病院病理診断・臨床検査科

ページ範囲:P.39 - P.48

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要旨 2006年4月から2008年12月までの間にESDにて切除された早期胃癌582病変のうち,病変全体もしくは一部で,病変辺縁に明らかな隆起や陥凹を呈さない41病変(全体の7.0%)を抽出し,さらに境界明瞭群13病変と不明瞭群28病変に分け,腫瘍径,部位,周在性,側方進展部の組織型,色調,インジゴカルミンによる明瞭化の有無,血管透見の不整・消失の有無,病理学的側方進展様式,組織学的背景粘膜について検討した.腫瘍径31mm以上の病変は31.7%であった.部位,周在性ではU,M領域の病変が,全体の73.2%,不明瞭群の71.4%,後壁と小彎の病変を併せると,全体の68.3%,不明瞭群の71.4%であった.色調は不明瞭群の42.9%で背景粘膜と同色調であった.境界明瞭群の中でも,インジゴカルミン撒布により範囲が不明瞭となったものが23.1%存在し,不明瞭群でも範囲が明瞭化したものは35.7%にとどまった.血管透見の不整・消失は,全体の63.4%にみられた.側方進展様式では,全体の中で全層型の占める割合はわずか5.0%であった.組織型と側方進展様式の関係では,tub2,sigは全層型がなく,中間・深層型の割合がそれぞれ28.6%,42.9%と高く,また不明瞭群でsigの割合が高かった.組織学的背景粘膜について,萎縮は全体の95.0%,不明瞭群の96.3%にみられ,腸上皮化生は全体の77.5%,不明瞭群の77.8%にみられた.このようなIIb進展を有する病変に関する臨床病理学的特徴やこれまでの知見を熟知したうえで,新しいmodalityも駆使し,正診率を向上させていくことが重要であると考える.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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