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文献詳細

雑誌文献

胃と腸45巻1号

2010年01月発行

文献概要

今月の主題 早期胃癌のIIb進展範囲診断 主題

内視鏡による早期胃癌のIIb進展範囲診断―クリスタルバイオレット染色による微細表面構造の拡大内視鏡観察の有用性

著者: 為我井芳郎1 工藤恵子1 小池貴志1 吉澤大1 樋上勝也1 伊藤清顕1 矢野公士1 今村雅俊1 正木尚彦1 溝上雅史1 松枝啓1 石田剛2

所属機関: 1国立国際医療センター国府台病院消化器科 2国立国際医療センター国府台病院病理科

ページ範囲:P.71 - P.84

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要旨 0IIb型早期胃癌の範囲診断において,クリスタルバイオレット染色による微細表面構造の拡大内視鏡観察の有用性を検討した.対象は微細表面構造観察後にESDを行った上皮性腫瘍226例(男175例,女51例,平均72.4歳)237病変,ならびにそのうちの0IIb病変4例,随伴IIbを有する2例で,(1)微細表面構造と病理組織所見との比較,(2)微細表面構造と肉眼型,粘液形質,(3)範囲診断,深達度診断における通常観察例との比較を行い,特に0IIbおよび随伴IIbを有した6例の微細表面構造の特徴を検討した.微細表面構造はTP,PP,DPの3型に,またTPはTP-L(Large and sometime branched)とTP-S(Small tubular or round)に分類された.以上の結果,PPおよびDPを除くM癌142病変中0IIa・0I・0IIb型56/67(83.6%)はTP-L,0IIc・0IIa+IIc型72/75(96.0%)はTP-Sで,主にTP-Sは胃型,TP-Lは腸型の粘液形質を示した.また,DPは特にSM2癌では15/19(78.9%)であった.また,LM(-)は拡大観察で99.0%で,通常観察の85.2%に比し範囲診断能は向上した.一方,0IIbおよび随伴IIbを有する早期胃癌の微細表面構造は,6例全例でTP-S,TP-L(H)およびPPの混在が確認され,その複合所見を領域としてとらえることで正確な範囲診断が可能であった.以上から,微細表面構造の拡大観察は早期胃癌の診断,特に通常観察では困難な0IIb病変の範囲診断において有用であることが示された.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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