胃と腸45巻11号

2010年10月発行

今月の主題 大腸低分化腺癌の初期像とその進展 主題症例

早期盲腸低分化腺癌の1例

著者： 黒河聖¹ 今村哲理¹ 本谷聡¹ 小澤広¹ 前田聡¹ 萩原武¹ 西岡均¹ 田中浩紀¹ 鈴木肇¹ 寺門洋平¹ 山下真幸¹ 乙黒雄平¹ 道上篤¹ 村岡俊二² 後藤田裕子² 市原真²

所属機関： ¹札幌厚生病院胃腸科 ²札幌厚生病院臨床病理科

ページ範囲：P.1777 - P.1784

要旨　患者は50歳代，女性．検診にて便潜血反応陽性となり，大腸内視鏡検査を施行された．盲腸に側方発育型大腸腫瘍（LST）を認め，精査のため入院となる．形態はLSTの非顆粒型で平坦隆起部に低分化腺癌を認め，回盲部切除術を施行する．病理は盲腸（C），adenocarcinoma，por2，sig＞tub1，大きさ13×12mm，深達度pSM（粘膜筋板下端から2,000μm），ly2，v1，pN1であった．本例は，腫瘍の花弁状部が高分化管状腺癌，平坦隆起部が低分化腺癌と，異なる組織像を呈していた．拡大内視鏡所見にて，平坦隆起部に小さな点状所見を認め，低分化傾向を有する腫瘍と診断した．大腸の早期低分化腺癌において拡大内視鏡所見が診断，治療に有用であった症例を報告した．

参考文献

1）安富正幸，松田泰次，肥田仁一，他．大腸癌分類規約と疫学．日臨 46 : 356-365, 1988

2）奧野匡宥，池原照幸，長山正義,他．大腸低分化腺癌の臨床病理学的検討．日臨外医会誌 50 : 1307-1312, 1989

3）大塚正彦，加藤洋．大腸の低・未分化癌の臨床病理学的検討─分類および内分泌細胞癌との関連について．日消外会誌 25 : 1248-1256, 1992

4）桐山正人，黒阪慶幸，松下昌弘，他．大腸低分化腺癌の臨床病理学的検討．消化器癌 6 : 37-41, 1996

5）黒河聖，今村哲理，安保智典,他．IIc＋IIa型直腸内分泌細胞癌（m癌）の1例．胃と腸 39 : 1547-1554, 2004