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文献詳細

雑誌文献

胃と腸45巻11号

2010年10月発行

文献概要

今月の主題 大腸低分化腺癌の初期像とその進展 主題症例

過形成,鋸歯状腺腫から発育進展した大腸低分化腺癌の1例

著者: 冨野泰弘1 入口陽介1 小田丈二1 水谷勝1 高柳聡1 岸大輔1 小山真一郎1 板橋浩一1 藤田直哉1 細井亜希子1 大村秀俊1 北條裕美子1 山田耕三1 今村和広2 足立健介2 松本潤2 山村彰彦3 細井董三1

所属機関: 1東京都がん検診センター消化器科 2都立多摩総合医療センター外科 3東京都がん検診センター検査科

ページ範囲:P.1808 - P.1814

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要旨 患者は30歳代,男性.健診で腫瘍マーカー(CA19-9)の高値を指摘され,精査目的で当センターを受診した.大腸内視鏡検査で,横行結腸肝彎曲部に,大きさ約20mmのI+IIa+IIc病変を認め,その周囲に粘膜下腫瘍様の盛り上がりとリンパ濾胞の過形成を伴っていた.拡大内視鏡検査では,IIa部分は過形成,I部分は鋸歯状腺腫で,IIc部分はVI~VN型pit patternを呈していたため,SM浸潤癌と診断した.注腸X線検査では,病変周囲の粘膜下腫瘍様隆起が明瞭に病出されており,側面像でも硬化所見を認めたことから,鋸歯状腺腫を伴ったSM深部浸潤癌と診断し,右半結腸切除術を施行した.病理組織学的所見では,隆起部は過形成粘膜,鋸歯状腺腫,管状腺癌から成り,陥凹部は低分化腺癌がSM深部浸潤を来し,高度なリンパ管侵襲とリンパ行性の進展が粘膜下腫瘍様隆起を形成していた,さらに漿膜および上腸間膜にリンパ節転移を認めた.以上から,本症例は,過形成粘膜から鋸歯状腺腫が発生し,異型度を増しながら管状腺癌,低分化腺癌へと発育し,リンパ行性の進展と高度なリンパ節転移を来したと推測され,その特異的な発育進展を推測できる特徴的な画像所見が得られたので報告した.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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