icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸45巻2号

2010年02月発行

文献概要

今月の主題 中・下咽頭表在癌の診断と治療 主題

中・下咽頭表在癌の内視鏡治療―ESDの立場から

著者: 小山恒男1 高橋亜紀子1 北村陽子1 友利彰寿1 堀田欣一1 宮田佳典1

所属機関: 1佐久総合病院胃腸科

ページ範囲:P.253 - P.263

文献購入ページに移動
要旨 39例43病変の中・下咽頭表在癌に対して内視鏡切除術を施行した.全例男性で,年齢中央値(範囲)は65(50~82)歳,治療手技はESD 35例,EMRC 4例,腫瘍長径中央値(範囲)は2(0.7~48)mm,切除径中央値(範囲)は15(9~59)mmであった.同時多発咽頭癌を4例に認めたが,いずれも近傍に存在していたため,全病変をESDにて一括切除した.肉眼型は0-I型1病変,0-IIa型17病変,0-IIb型25病変で0-IIc型や0-III型は認められなかった.EMR/ESDは挿管全身麻酔下に施行し,一括完全切除率はEMRC 75%,ESD 100%であった.1例に後出血を認め再挿管を要したが,他に重篤な偶発症はなかった.上皮内癌は86%(37/43),上皮下浸潤癌は14%(6/43)で,腫瘍径10mm未満の35病変は全例が上皮内癌であったが,腫瘍径10mm以上の8病変中6病変(75%)は上皮下浸潤癌であった.肉眼型では主肉眼型0-I型は全病変が,0-IIa型では24%(4/17)が上皮下浸潤していたが,0-IIb型の上皮下浸潤癌は1病変(4%)のみであった.また0-IIa型17病変のうち,IIa成分径が5mm未満の病変は全病変(12/12)が上皮内癌であったが,IIa成分径5mm以上では5病変中4病変(80%)が上皮下浸潤癌であった.したがって,上皮下浸潤の危険因子は腫瘍径10mm以上,肉眼型0-I,およびIIa成分径5mm以上の0-IIa型癌であった.咽頭は狭く,複雑な形態であるが,佐藤・大森式喉頭鏡と把持鉗子によるカウンタートラクションを利用することで,安全で効率のよいESDが可能であった.現時点で咽頭癌に対する内視鏡治療ガイドラインはないが,上皮下浸潤癌ではリンパ節転移の報告もあり,慎重な経過観察が必要である.

参考文献

1)井上晴洋,佐藤嘉高,乾正幸,他.表在性の中・下咽頭癌の治療.胃と腸 40 : 1270-1276, 2005
2)Simizu Y, Yamamoto J, Kato M, et al. Endoscopic submucosal dissection for treatment of early stage hypopharyngeal carcinoma. Gastrointest Endosc 64 : 255-259, 2006
3)Iizuka T, Kikuchi D, Hoteya S, et al. Endscopic submucosal dissection for treatment of mesopharyngeal and hypopharyngeal carcinomas. Endoscopy 41 : 113-117, 2009
4)Oyama T, Tomori A, Hotta K, et al. Hemostasis with hook knife during Endoscopic submucosal dissection. Dig Endosc 18 : S128-130, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?