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文献詳細

雑誌文献

胃と腸45巻4号

2010年04月発行

文献概要

今月の主題 スキルス胃癌と鑑別を要する疾患 主題

スキルス胃癌の特徴と診断の基本―X線の立場から

著者: 山本栄篤1 長浜隆司1 中島寛隆1 須山正幸1 吉田操1 大倉康男2 渡部尚子3 平嶋勇人3 宮本彰俊4

所属機関: 1早期胃癌検診協会中央診療所 2杏林大学医学部病理学 3会津中央病院消化器科 4四街道徳州会病院消化器科

ページ範囲:P.428 - P.444

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要旨 “スキルス胃癌”のX線診断について,胃壁の伸展状況の違いから症例を提示して概説した.スキルス胃癌はびまん性に広範囲で粘膜下組織を浸潤し,線維性組織増生を伴い胃壁の硬化と収縮,管腔の狭小化を示す.その特徴的なX線所見は,概観像では管腔の狭小化をはじめ辺縁の硬化や伸展不良,不整な彎入で,ひだの所見は肥大や横径の不同,屈曲・蛇行,間隙の辺縁不整などを示す.一方で,スキルス胃癌のうちLP型胃癌の中には“伸展が保たれている”症例が存在し,そのX線所見は典型的な変形や伸展不良,ひだ走行の変化があらわれにくく,浸潤領域内においても限局した部位でのみ所見が得られることがある.その際には浸潤を来した領域の粘膜に着目し,不規則な胃小区様模様や顆粒陰影,ひび割れ様所見などのわずかな粘膜像の所見を有するので撮影と読影には注意を要する.胃底腺領域のIIc様病変を認めた際には,LP型胃癌を念頭に置いて,撮影では空気による胃壁の伸展を調節し,バリウムの移動を利用してはじきやたまりからわずかな伸展不良や硬化像の有無を明らかにし,診断においては軽微な粘膜所見をとらえてゆくことが重要である.

参考文献

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9)浜田勉,岩崎良三,高木由紀,他.病院受診群からみたlinitis plastica型胃癌診断の現状─特に潜在的なlinitis plastica型胃癌について.胃と腸 27 : 525-537, 1992
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11)杉山憲義,馬場保昌,丸山雅一,他.胃癌の発生部位別にみた癌の胃壁浸潤に関する臨床病理学的研究.胃と腸 12 : 1073-1085, 1977

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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