特集 早期大腸癌2010
序説
早期大腸癌診療の現状と諸問題
著者:
平田一郎
ページ範囲:P.598 - P.601
はじめに
早期大腸癌が「胃と腸」の増刊号で取り上げられたのは,今から約16年前で「早期大腸癌1994」として発刊されている.当時は著者を含め全国のcolonoscopist達が,特に大腸内視鏡挿入法と平坦陥凹型病変の発見に精力を注いでいた.その後,「胃と腸」では早期大腸癌に関する多くの特集が企画されてきた.それらを内容別に以下にまとめてみる.
まず,早期大腸癌の発生,発育進展,病態に関するものとして,「表面型大腸癌の発育と経過〔1995, vol.30(2)〕」,「いわゆる表層拡大型大腸腫瘍とは〔1996, vol.31(2)〕」,「Is型大腸sm癌を考える〔1997, vol.32(11)〕」,「Ip・Isp型大腸sm癌〔2002, vol.37(12)〕」,「経過観察からみた大腸癌の発育・進展─sm癌を中心に〔2003, vol.38(8)〕」,「大腸癌の発生・発育進展〔2008, vol.43(13)〕」,などがある.
同じく,発生,発育進展に関係するが,鋸歯状病変に特化した特集は,「鋸歯状腺腫(serrated adenoma)とその周辺〔1998, vol.33(6)〕」,「大腸鋸歯状病変の発育進展と診断・取り扱い〔2007, vol.42(3)〕」,の2つしかなく,今後さらなる検討が必要な領域であると考えられる.
肉眼形態分類と診断に関するものは,「Ⅱ型早期大腸癌肉眼分類の問題点〔1999, vol.34(1)〕」,「早期大腸癌肉眼分類─統一をめざして〔2000, vol.35(12)〕」,「微細表面構造からみた大腸腫瘍の診断〔1996, vol.31(11)〕」,「早期大腸癌の組織診断─諸問題は解決されたか〔1998, vol.33(11)〕」,「大腸腫瘍の内視鏡診断は病理診断にどこまで近づくか〔1999, vol.34(13)〕」,「早期大腸癌の深達度診断にEUSと拡大内視鏡は必要か〔2001, vol.36(6)〕」,「大腸腫瘍に対する拡大内視鏡観察─V型pit pattern診断の問題点(2004, vol.39(5)〕」,などがあるが,病変の質的診断と量的(深達度)診断に大別される.
さらに,早期大腸癌の治療方針決定に特に重要とされるSM癌の深達度診断に関するものは,「大腸sm癌の細分類とその意義・臨床〔1994, vol.29(11)・(12)〕」,「大腸sm癌の深達度診断─垂直浸潤1,000μm〔2004, vol.39(10)〕」,「通常内視鏡による大腸sm癌の深達度診断─垂直浸潤距離1,000μm術前診断の現状〔2006, vol.41(9)〕」,「大腸腫瘍に対する拡大内視鏡診断の最先端〔2006, vol.41(13)〕」,などがある.
早期大腸癌の内視鏡的治療とその予後に関するものは,「大腸腫瘍内視鏡的切除後の局所再発─腺腫・m癌を中心に〔1999, vol.34(5)〕」,「大腸sm癌の内視鏡的切除をめぐって〔1999, vol.34(6)〕」,「大腸sm癌の内視鏡治療後の長期経過〔2004, vol.39(13)〕」,「いわゆる側方発育型大腸腫瘍の治療法を問う〔2005, vol.40(13)〕」,「大腸ESDの現況と将来展望〔2007, vol.42(7)〕」,「大腸腫瘍内視鏡切除後のサーベイランスに向けて〔2007, vol.42(10)〕」,「大腸SM癌内視鏡治療の根治基準をめぐって─病理診断の問題点と予後〔2009, vol.44(8)〕」,などがある.
このように類別してみると,早期大腸癌に関する重要な問題点がほぼ余すことなく取り上げられているように思える.しかしながら,これで早期大腸癌の全容が明らかになったわけではなく,解明すべき点がまだ多く残されていることは周知のごとくである.早期大腸癌を理解し診断,治療するうえで,何がどこまでわかって,何が足りないのかを系統だって整理しなければならない時期が来ている.