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文献詳細

雑誌文献

胃と腸45巻5号

2010年04月発行

文献概要

特集 早期大腸癌2010 主題 4.早期大腸癌の病理

1)病理診断─診断基準

著者: 八尾隆史1

所属機関: 1順天堂大学医学部人体病理病態学

ページ範囲:P.671 - P.678

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要旨 大腸上皮性腫瘍は,一般的にはその異型度により低異型度(軽度異型,中等度異型)と高異型度(高度異型)に分類されるが,欧米の基準における高異型度(高度異型)は本邦においては高分化腺癌と診断される.細胞異型は癌相当であっても,粘膜内病変は転移を来さないため過剰治療(外科的腸管切除)を避けるために,欧米では“癌”と診断されない.ただしWHO分類ではこの矛盾の解消のため“carcinoma in situ”という用語を用いるように推奨している.診断基準は,欧米と本邦の間だけでなく,国内の病理医間でも完全には一致しない.診療において最も重要なことは,病理診断名を付けることより治療方針決定に有用な情報を与えることである.すなわち,粘膜内病変に関しては浸潤癌への進展の危険性のある病変かどうかの判定,粘膜下層へ進展した病変では癌性浸潤か偽浸潤かの判定とリンパ節転移の危険性の評価である.そして病理医側の対応としては,診断の違いの幅が臨床的治療方針に対応した幅に収まる程度には一致するよう精度を上げる必要がある.また,生検診断における誤診を避けるためには,病理組織学的に良悪性の誤診の危険性がある病変の存在を,病理医のみならず臨床医も知っておくことも必要である.

参考文献

1)大腸癌研究会(編).大腸癌取扱い規約,7版補訂版.金原出版,2009
2)Hamilton SR, Vogelstein B, Kudo S, et al. World Health Organization Classification of Tumours : Pathology and Genetics of Tumours of the Digestive System, 2nd ed. IARC Press, Lyon, 2000
3)Day DW, Jass JR, Price AB, et al. Normal anal region. Morson and Dawson's Gastrointestinal Pathology. Wiley-Blackwell, Oxford, 2003
4)石黒信吾,岩下明徳,加藤洋,他.早期大腸癌の病理組織診断基準─その差はどこにあるのか.胃と腸 27 : 633-671, 1992
5)渡辺英伸,味岡洋一,風間伸介.早期大腸癌の組織診断基準─諸問題は解決されたか ; 特集のまとめ.胃と腸 33 : 1477-1488, 1998
6)廣瀬元彦,藤井茂彦,市川一仁,他.DRの有無を生検診断報告書に記載する意義.大腸癌研究会Desmoplastic reactionに関するプロジェクト研究中間報告書.大腸疾患NOW2010 特別号.pp189-201,日本メディカルセンター,2010
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8)八尾隆史,恒吉正澄.sm癌診断におけるdesmoplastic reactionの意義─偽浸潤(pseudocarcinomatous invasion)と癌性浸潤(carcinomatous invasion)の違い.早期大腸癌 4 : 187-191, 2000
9)Talbot I, Price A, Salto-Tellez M. Biopsy Pathology in Colorectal Disease, 2nd ed. Eduard Arnold, London, pp292-300, 2006
10)八尾隆史,恒吉正澄.組織診編大腸.病理と臨 24(臨増): 87-93, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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