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今月の主題 低異型度分化型胃癌の診断 序説
低異型度分化型胃癌の診断
著者: 岩下明徳1 田邉寛1
所属機関: 1福岡大学筑紫病院病理部
ページ範囲:P.1057 - P.1060
文献購入ページに移動 低異型度分化型胃癌という用語は,比較的近年用いられるようになった術語であり,2010年発刊の「胃癌取扱い規約第14版」1)にも,その用語自体は言うまでもなく明確な定義さえ記載されていない.この名称は,基本的に病理組織学的になされる診断名であり,その概念は,正常上皮に近い分化,もしくは腺腫に近い分化を示す癌,つまり超高度に分化した癌と定義される.すなわち,病理組織学的には細胞異型,構造異型に乏しく,幼若な再生上皮,腸上皮化生,過形成腺窩上皮,胃固有腺,および腺腫との鑑別に注意を要する癌である.肉眼的には,その組織像を反映し,病変自体やその境界が著しく不明瞭であったり,腺腫様であったりする.
参考文献
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