icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸45巻7号

2010年06月発行

文献概要

今月の主題 低異型度分化型胃癌の診断 主題

低異型度分化型胃癌の自然史

著者: 海崎泰治1 細川治2 宮永太門3 浅海吉傑3 遠藤直樹3 道傳研司3 服部昌和3

所属機関: 1福井県立病院臨床病理科 2横浜栄共済病院外科 3福井県立病院外科

ページ範囲:P.1182 - P.1191

文献購入ページに移動
要旨 低異型度分化型胃癌の自然史を明らかにするため,当院で治療された連続する300例の胃癌切除症例における臨床病理学的検討,および低異型度癌成分を含む症例の内視鏡的な遡及的追跡を行った.臨床病理学的には低異型度癌のみからなる腫瘍は,粘膜にとどまるものが大部分であった.低異型度癌成分を含む症例は,粘膜内腫瘍の周辺部に低異型度癌成分が位置するものが多く,粘膜内腫瘍中心部から粘膜下層以深の腫瘍の大部分は高異型度癌成分よりなっていた.27例の遡及的追跡では,すべての症例は粘膜内癌にとどまっており,隆起型,陥凹型にかかわらず腫瘍の発育速度は遅く,年間0.1~0.2mm程度の発育速度であった.低異型度分化型癌は非常に発育速度が遅く,粘膜内である程度の大きさになると高異型度癌成分が発生し,その成分の粘膜下層浸潤が起こると通常の進行癌同様,急速に発育していくと考えられた.

参考文献

1)渡辺英伸.胃癌・大腸癌の悪性度診断とは.病理と臨 23 : 932-943, 2005
2)中村恭一.胃癌の自然史─“胃癌の一生".胃と腸 27 : 11-15, 1992
3)久保起与子,柳澤昭夫,二宮康郎,他.H・E染色による胃型分化型癌の病理学的特徴.胃と腸 34 : 487-494, 1999
4)西倉健,渡辺英伸,味岡洋一,他.胃型分化型腺癌の判定基準と病理学的特徴.胃と腸 34 : 495-506, 1999
5)九嶋亮治,岡部英俊,服部隆則.低異型度・高分化型癌─特に胃型腺癌と腺腫の診断基準とその意義.病理と臨 23 : 827-835, 2005
6)伊藤栄作,滝澤登一郎.分化型胃癌の悪性度─形質発現の点から.胃と腸 38 : 701-706, 2003
7)堀口慎一郎,滝澤登一郎,船田信顕,他.粘膜内癌と診断されて内視鏡的に切除されたsm癌で,追加治療によりリンパ節転移が確認された胃型の分化型腺癌の2症例.胃と腸 38 : 739-743, 2003
8)日本胃癌学会(編).胃癌取扱い規約,13版.金原出版,1999
9)渡辺英伸,加藤法導,渕上忠彦,他.微小胃癌からみた胃癌の発育経過.胃と腸 27 : 59-67, 1992
10)萩原武,今村哲理,中野渡正行,他.内視鏡経過例における胃癌発育の遡及的検討─肉眼型からみて.胃と腸 43 : 1723-1733, 2008
11)長浜孝,松井敏幸,槙信一朗,他.内視鏡的経過例からみた早期胃癌の深達度と時間的推移─特にM癌からSM癌への発育進展速度に関与する遅速因子について.胃と腸 43 : 1735-1751, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?