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文献詳細

雑誌文献

胃と腸46巻1号

2011年01月発行

文献概要

今月の主題 多発胃癌─最新の知見を含めて 主題

多発胃癌の通常内視鏡診断―ESD施行例の検討

著者: 三島利之1 濱本英剛1 三宅直人1 奥薗徹1 水野浩志1 宮下祐介1 高橋佳之1 羽根田晃1 守慶1 佐藤俊1 松田知己1 石橋潤一1 中堀昌人1 望月福治2 遠藤希之3 岩間憲行3 長南明道1

所属機関: 1仙台厚生病院消化器内視鏡センター 2仙台厚生病院健康管理センター 3仙台厚生病院病理診断・臨床検査科

ページ範囲:P.46 - P.59

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要旨 2003年11月から2009年12月までの間にESDにて切除された初発早期胃癌症例725例を対象とし,以下の結果を得た.多発例の頻度は161例(22.2%)で,そのうち同時多発例は88例(12.1%),異時多発例は73例(10.1%)であった.性・年齢は,男:女=3.1:1,平均年齢71.9歳であった.病変数は,同時多発例は,2重複が73.9%,3重複以上が26.1%,異時多発例は,2重複が64.4%,3重複以上が35.6%であった.部位は,同一領域ではM,L領域に,隣接領域ではML領域に多い結果であった.平均腫瘍径については,特に異時多発例の初回病変は17.6mm,異時性病変は13.7mmであり,これらの間に有意差を認めた.組織型では,多発例において低異型度分化型癌の割合が有意に高かった.深達度に関しては,異時多発73例のうち3例(4.1%)は異時性病変がSM2以深であった.異時性病変発見までの期間は,3年以内に85.7%が発見され,最長では5年2か月目に発見されていた.胃癌の内視鏡診断に当たっては,多発胃癌の特徴を踏まえた注意深い観察を行い,治療後少なくとも1年ごとの内視鏡検査が必要であり,治療後5年以内はもちろん,可能なかぎり長期間の追跡を行うことが重要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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