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文献詳細

雑誌文献

胃と腸46巻11号

2011年10月発行

文献概要

早期胃癌研究会症例

下腸間膜静脈の閉塞を伴った腸間膜脂肪織炎の1切除例

著者: 迎美幸1 小林清典1 勝又伴栄1 小川大志1 横山薫1 佐田美和1 小泉和三郎1 藤井馨2 松永敬二2 三上哲夫3 九嶋亮治4

所属機関: 1北里大学東病院消化器内科 2北里大学東病院放射線診断科 3北里大学東病院病理部 4国立がん研究センター中央病院病理科

ページ範囲:P.1701 - P.1707

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要旨 患者は66歳,男性で,腹痛と血便を主訴に入院.注腸X線造影で上部直腸からS状結腸にかけて,辺縁が不整鋸歯状の高度の伸展不良を認め,大腸内視鏡では,粘膜は浮腫が高度で発赤やびらんを伴っていた.腹部CTで,S状結腸周囲の脂肪織濃度の上昇を認め腸間膜脂肪織炎が疑われた.また周囲の下腸間膜動脈に連続する末梢血管の著明な拡張を認めた.腹部血管造影では,下腸間膜静脈が完全閉塞していた.保存的に加療したが腸閉塞症状を認め,S状結腸切除術を行った.病理組織学的には,腸間膜の高度肥厚と炎症所見,動・静脈の閉塞や狭窄を認め,下腸間膜静脈閉塞を伴った腸間膜脂肪織炎と診断した.腸管狭窄が進行した原因として,腸間膜脂肪織炎の変化に加えて,下腸間膜静脈閉塞等による腸循環障害性変化が影響したものと考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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