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雑誌文献

胃と腸46巻11号

2011年10月発行

文献概要

胃と腸 図譜

非特異性多発性小腸潰瘍症

著者: 松本主之1

所属機関: 1九州大学大学院医学研究院病態機能内科学

ページ範囲:P.1714 - P.1717

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1概念,病態

 非特異性多発性小腸潰瘍症の特徴は,(1) 原因や誘因が明らかでなく,(2) 持続的な潜出血による貧血と低蛋白血症を来し,(3) 粘膜下層までにとどまる治癒傾向のない多発性小腸潰瘍で,(4) 特異的な組織所見に欠如すること,に要約される1)2).九州大学病態機能内科学および関連施設における過去40年間の確診例は17例にすぎず,まれな疾患である.ただし,国外でも類似した病態の報告が散見される3)4).原因は全く不明であるが,常染色体劣性遺伝形式の家系があり,遺伝的素因の関与が考えられる.

 女性に好発し,若年時から原因不明の鉄欠乏性貧血として経過観察され,青・壮年期に本症と診断される.診断契機は易疲労感や全身倦怠感などの貧血症状と低蛋白血症に伴う浮腫である.検査成績では,高度の鉄欠乏性貧血と低蛋白血症を認め,便潜血は持続的に陽性を示す.炎症所見は陰性,あるいは軽度上昇にとどまる.

参考文献

1)崎村正弘.“非特異性多発性小腸潰瘍症”の臨床的研究 : 限局性腸炎との異同を中心として.福岡医誌 61 : 318-340, 1970
2)八尾恒良,飯田三雄,松本主之,他.慢性出血性小腸潰瘍 ; いわゆる非特異性多発性小腸潰瘍症.八尾恒良,飯田三雄(編).小腸疾患の臨床.医学書院,pp 176-186,2004
3)Santolaria S, Cabezari R, Ortego J, et al. Diaphragm disease of the small bowel : a case without apparent nonsteroidal antiinflammatory drug use. J Clin Gastroenterol 32 : 344-346, 2001
4)Chen Y, Ma WQ, Chen JM, et al. Multiple chronic nonspecific ulcer of the small intestine characterized by anemia and hypoalbuminemia. World J Gastroenterol 16 : 782-784, 2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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