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文献詳細

雑誌文献

胃と腸46巻12号

2011年11月発行

文献概要

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書評 「早期胃癌アトラス」

著者: 斉藤裕輔1

所属機関: 1市立旭川病院消化器病センター/内科(消化器)診療部

ページ範囲:P.1799 - P.1799

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消化管画像診断学の歴史そのものとも言える一冊

 現在,消化器内科医にとって,早期胃癌における治療の興味はESD,診断の興味は内視鏡,とりわけ拡大内視鏡,NBIであり,X線造影検査に興味を示す若い医師はごく少数の時代である.確かに近年の内視鏡診断・治療機器の進歩は著しいものがあり,X線造影検査機器の進歩に比較して飛躍的といっても過言ではない.しかしながら,早期胃癌診断におけるX線造影検査は既に不要となってしまったのであろうか? この「早期胃癌アトラス」を熟読した後には上述した不要論を唱える者は皆無となるであろう.

 消化管造影検査の中で胃は最も一般的に行われているが,実際,本当の意味での精密検査となると,大腸や小腸と比較して胃は圧倒的に難しい.被患者の体格や胃の形,病変の存在部位などに撮影技術が勝てず,満足な病変の描出に失敗した経験が小生にも山ほどある.本アトラスにはこれまでの日本の早期胃癌の最も美しいX線像が選りすぐって掲載されており,ぜひご覧いただきたい.本アトラスの造影所見は鳥肌が立つほどの画質である.国宝級の芸術といっても過言ではない.これほどの美しいX線造影像を一同に見られることに喜びすら感じる.また,本アトラスの造影所見から概観撮影としてのX線のすごさを改めて感じる.X線,内視鏡検査のゴールは病理の肉眼像であるが,本アトラスのX線像とマクロ像を対比していただきたい.本アトラスに掲載されているX線像が病理の肉眼像を凌駕していることがわかる.すなわち,われわれのゴールの域を超えて病変の微細所見が描出されているのである.今後も造影検査を行うときには目標とされるべき画像である.さらに,画像のみならず,総論および各論のそれぞれの初めの部分にコンパクトにエッセンスがまとめられているが,その一言一言には3先生,その他大勢の先人の消化器医の膨大な汗と努力の結晶がつづられている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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