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文献詳細

雑誌文献

胃と腸46巻13号

2011年12月発行

文献概要

今月の主題 難治性潰瘍性大腸炎─診療・治療の新たな展開 主題

難治性潰瘍性大腸炎の特徴像―外科の立場から

著者: 杉田昭1 小金井一隆1 辰巳健志1 荒井勝彦1 山田恭子1 二木了1 黒木博介1 木村英明2 鬼頭文彦1 福島恒男3

所属機関: 1横浜市立市民病院外科 2横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター 3松島クリニック

ページ範囲:P.1938 - P.1946

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要旨 潰瘍性大腸炎に対する手術適応は重症(31%),難冶(59%),大腸癌またはdysplasia(10%)で,難治が最も多かった.難治例の手術術式は病変をすべて切除する大腸全摘,回腸囊肛門吻合術,また肛門管を温存して排便機能を良好にする回腸囊肛門管吻合術が標準であり,肛門機能低下例には大腸全摘,回腸人工肛門造設術を行う.手術適応からみた難治例とは,“内科治療に抵抗し,潰瘍性大腸炎自体やその治療のために長期にわたり著しくQOLの低下した状態”であり,臨床的には寛解導入または維持困難例(頻回の再燃,慢性持続型),ステロイドの重症副作用発生例またはその可能性がある例,難治性腸管外合併症併発例(難治性壊疽性膿皮症,小児成長障害)に加え,排便障害で社会生活が困難な例(特に便意切迫),適切な内科治療を受けた後に就職などのために再発のない治療を希望する例と考えられる.切除標本からみた難治性の特徴は腸管壁の肥厚,狭小化,短縮があり,粘膜には深い潰瘍はなく,萎縮性であることが多かった.本症に対する治療の目的は社会復帰を含めたQOLの改善である.難治例では患者の生活状況に十分留意して注腸造影検査,大腸内視鏡検査などを併用し,上記の手術適応がある例には時期が遅れることなく手術を行うことが重要である.

参考文献

1)潰瘍性大腸炎,クローン病診断基準,治療指針.厚生科学研究費補助金特定疾患対策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」.平成22年度総括・分担研究報告書別冊.2011.
2)杉田昭,木村英明,荒井勝彦,他.潰瘍性大腸炎の治療─外科治療.日臨 63 : 859-866, 2005
3)木村英明,杉田昭,小金井一隆,他.潰瘍性大腸炎に伴う壊疽性膿皮症に対する大腸切除術の治療効果.消化器科 40 : 164-168, 2005
4)Uchida K, Araki T, Inoue M, et al. Poor catch-up growth after proctocolectomy in pediatric patients with ulcerative colitis receiving prolonged steroid therapy. Pediatr Surg Int 26 : 373-377, 2010
5)小金井一隆,杉田昭,木村英明,他.難治性潰瘍性大腸炎に対する手術適応拡大の検討.日外会誌 109 : 206, 2008
6)杉田昭.潰瘍性大腸炎手術例の術後長期予後の検討─術後5年以上経過例.厚生科学研究費補助金難治性疾患克服対策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班.平成15年度業績集.pp 46-48,1996
7)杉田昭,小金井一隆,木村英明,他.消化管再建術の現状と将来─最良の再建術は何か : 大腸全摘術.日外会誌 109 : 269-273, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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