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文献詳細

雑誌文献

胃と腸46巻5号

2011年05月発行

文献概要

特集 食道表在癌2011 主題 5.食道表在癌の深達度診断

2)通常観察と色素内視鏡

著者: 門馬久美子1 吉田操2 藤原純子1 江頭秀人3 江川直人3 了徳寺大郎4 三浦昭順4 加藤剛4 出江洋介4 立石陽子5

所属機関: 1がん・感染症センター都立駒込病院内視鏡科 2早期胃癌検診協会中央診療所 3がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科 4がん・感染症センター都立駒込病院消化器外科 5がん・感染症センター都立駒込病院病理科

ページ範囲:P.650 - P.663

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要旨 深達度診断の目標は,(1)リンパ節転移がなく,局所治療で根治可能なT1a-EP・LPM癌,(2)リンパ節の転移頻度が低率で,局所治療の相対的適応であるT1a-MM・SM1癌,(3)リンパ節転移を高頻度に認め,リンパ節郭清を含めた外科治療が必要なSM 2・3癌の3群に分けることである.深達度診断を行う場合の観察ポイントは,(1)隆起性病変では隆起の大きさ,高さ,隆起の基部の形態,隆起の色調や表面性状,(2)陥凹性病変では陥凹の深さ,陥凹底の凹凸や色調,陥凹辺縁の盛り上がり,また,TB染色所見や畳目模様の有無,さらにMM以深への浸潤が疑われる場合は,NBI併用拡大観察にて血管変化を観察する.2007年1月~2009年12月に,EMR/ESD治療を行った食道表在癌247例296病変(0-IIb 76,0-IIc 191,0-IIa 18,0-I 10,2型類似1)を対象とした.病型分布としては,0-IIcが食道表在癌の65%を占めていた.深達度診断の診断精度は,全体で89%,T1a-EP・LPM癌は94%と良好であったが,T1a-MM・SM1癌は66%,SM2以深癌は61%と低率であった.T1a-MM以深癌で,深達度を誤った病変の84%は0-IIcであった.0-IIcにおいて,深達度を浅読みしたT1a-MM・SM1癌の71%,SM2以深癌の50%は微小浸潤であった.浸潤幅1.8mm程度の微小浸潤は,現況での通常観察の診断限界と考える.

参考文献

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9)日本食道学会(編).臨床・病理食道癌取扱い規約,10 版.金原出版,2007
10)吉田操,門馬久美子,葉梨智子.早期食道癌の内視鏡治療.消病セミナー 78 : 59-67, 2000
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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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