口腔内アフタの有無別からみた腸管Behçet病および単純性潰瘍の病変分布と臨床経過
著者:
高木靖寛
,
古賀章浩
,
平井郁仁
,
別府孝浩
,
矢野豊
,
松村圭一郎
,
別府剛志
,
長浜孝
,
久部高司
,
松井敏幸
,
岩下明徳
,
原岡誠司
,
池田圭祐
,
田邊寛
,
二見喜太郎
,
前川隆文
ページ範囲:P.996 - P.1006
要旨 腸管Behçet病(BD)および単純性潰瘍(SU)の区別は重要な問題であり,現在の診断基準も十分とは言えない.そこで,SUもしくは腸管BDと診断された27例を見直し,口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍をはじめとするBD症状の有無別から非BD群5例とBD群22例に分けて,消化管病変の性状,分布と臨床経過について検討した.その結果,(1)非BD群では5例全例に,BD群では22例中17例(77%)に回盲部の定型的病変を認めたが,病変の分布において,非BD群の5例中4例(80%)が回盲部に限局するのに対し,BD群は回盲部限局が22例中8例(36%)と少なく(p=0.07),回盲部以外の小腸,結腸・直腸にも多発する症例が認められた.(2)経過中に非BD群よりBDへ病型変化したものはなかったが,BD群では22例中2例(9%)で病型変化が認められた.(3)経過中,非BD群では5例中3例(60%)に外科手術が行われ,全例が再手術を受けていた.BD群における手術率は41%(22例中9例)で,さらにこのうち55%が再手術となった.(4)非定型的な病変として,BD群2例の大腸に潰瘍性大腸炎に類似した病変が認められた.以上から,非BD群は回盲部に限局する傾向があり,BD群に回盲部以外にも多発する可能性や病型の変化するものも含まれ,病態は異なることが示唆された.再発性口腔内アフタを主症状として重要視すれば,いわゆるSUの頻度は低く見積もられた.