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文献詳細

雑誌文献

胃と腸47巻12号

2012年11月発行

文献概要

今月の主題 高齢者消化管疾患の特徴 主題

高齢者非腫瘍性疾患の特徴―虚血性大腸炎と虚血性直腸炎

著者: 大川清孝1 青木哲哉1 上田渉1 大庭宏子1 宮野正人1 倉井修1 佐野弘治2 末包剛久2 田中敏弘3

所属機関: 1大阪市立十三市民病院消化器内科 2大阪市立総合医療センター消化器内科 3関西医科大学消化器内科

ページ範囲:P.1840 - P.1849

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要旨 虚血性大腸炎280例について高齢者(109例)と若年者(47例)の比較と狭窄型(20例)と一過性型(260例)の比較を行った.虚血性大腸炎は高齢者に多かったが,若年者にも比較的多くみられ,高齢者特有の疾患ではなかった.血管側因子は狭窄型で有意に多かったが,腸管側因子は狭窄型,一過性型で差がなかった.これらのことより,虚血性大腸炎の病因として腸管側因子が本質的なものと考えられた.また,虚血性直腸炎4例について臨床的検討を行った.4例とも65歳以上の高齢者であり,3例は男性であった.虚血性直腸炎は高齢者男性に多く,動脈硬化や腹部血管の手術と密接に関係する疾患であり,血管側因子が重要と考えられている.今回経験した4例中2例は重度の動脈硬化性疾患をもっていたが,2例は高血圧のみであった.4例中3例では腸管側因子が誘因と考えられた.虚血性直腸炎は血管側因子が強く関与しているが,その一部には腸管側因子が関与する症例がみられることが明らかとなった.

参考文献

1)大川清孝,北野厚生,中村志郎,他.虚血性大腸炎の臨床的検討─背景因子と内視鏡像を中心として.Gastroenterol Endosc 32 : 365-376, 1990
2)飯田三雄,村上学,岩下明徳.虚血性大腸炎20例の臨床像の経時的分析─X線および内視鏡像の推移を中心として.胃と腸 18 : 311-323, 1983
3)大川清孝,青木哲哉,追矢秀人,他.虚血性腸炎の誘因.臨消内科 17 : 1661-1667, 2002
4)Kilpatrick ZM, Farman J, Yesner R, et al. Ischemic proctitis JAMA 205 : 74-80, 1968
5)Nelson RL, Briley S, Schuler JJ, et al. Acute ischemic proctitis. Report of six cases. Dis Colon Rectum 35 : 375-380, 1992
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8)大川清孝,上田渉,佐野弘治,他.一過性型虚血性直腸炎の2例.Gastroenterol Endosc 53 : 1103-1108, 2011
9)栗山敦治,有馬信之.直腸・S状結腸及び下行結腸にskip lesionとして発生した虚血性大腸炎の1例.ENDOSCOPIC FORUM DIGEST DIS 12 : 259-264, 1996
10)小沢俊文,渡辺秀紀,堀江裕子,他.虚血性直腸炎の1例.Gastroenterol Endosc 46 : 2291-2297, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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