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文献詳細

雑誌文献

胃と腸47巻12号

2012年11月発行

文献概要

今月の主題 高齢者消化管疾患の特徴 主題

高齢者非腫瘍性疾患の特徴―急性出血性直腸潰瘍

著者: 中村志郎1 飯室正樹1 樋田信幸1 應田義雄1 福永健1 横山陽子1 上小鶴孝二1 戸澤勝之1 河野友彰1 三輪洋人2 松本譽之1

所属機関: 1兵庫医科大学内科学下部消化管科 2兵庫医科大学上部消化管科

ページ範囲:P.1850 - P.1858

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要旨 急性出血性直腸潰瘍は,寝たきり状態の高齢者が突然に無痛性の大量出血を呈し,下部直腸に全周性の潰瘍が確認される特徴的な臨床像を示す救急疾患である.直腸の病変は,内視鏡を直腸内で反転しないと全体像が観察困難な歯状線直上に局在し,動脈硬化を背景に,仰臥位寝たきり状態となることで下部直腸粘膜血流量が減少し惹起される.治療では主に内視鏡的止血術が行われるが,側臥位への体位変換も再出血予防や治癒期間の短縮に有用である.代表的な鑑別疾患として宿便性潰瘍とNSAID坐剤起因性直腸病変が挙げられるが,サイトメガロウイルス直腸炎にも注意が必要である.

参考文献

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2)広岡大司,湯浅肇,板倉恵子,他.急性出血性直腸潰瘍─臨床像を中心に.Gastroenterol Endosc 26 : 1344-1350, 1984
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14)中村志郎,渡辺芳久,原順一,他.急性出血性直腸潰瘍患者に対する側臥位体位変換の有用性.消化器科 38 : 257-261, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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