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文献詳細

雑誌文献

胃と腸47巻2号

2012年02月発行

文献概要

症例

家族性大腸腺腫症に発生しNBI併用拡大観察により診断可能であった微小早期胃癌の1例

著者: 竹内学1 小林正明2 渡辺玄3 橋本哲1 佐藤祐一1 成澤林太郎2 味岡洋一3 青柳豊1

所属機関: 1新潟大学医歯学総合研究科消化器内科学分野 2新潟大学医歯学総合病院光学医療診療部 3新潟大学医歯学総合研究科分子・診断病理学分野

ページ範囲:P.263 - P.269

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要旨 患者は20歳代,男性.FAPに対する大腸全摘術後の経過観察中,上部消化管内視鏡検査で,幽門前庭部に径5mmと径3mmの頂部に発赤調軽度陥凹を伴う隆起性病変を認め,5mm大の病変からの生検でGroup5(tub1)と診断した.ESD時の通常内視鏡観察では,3mm大の病変の質的診断は困難であったが,NBI併用拡大内視鏡観察を施行したところ,発赤調軽度陥凹部に一致してdemarcation lineを認め,大小不同の管状から溝状の腺管開口部を呈する表面微細構造と拡張・口径不同・走行異常を伴う微小血管像を認めた.以上の所見をもとに同病変も粘膜内高分化型腺癌と診断し,2病変をESDにて一括切除した.病理診断では両病変とも粘膜内低異型度高分化型管状腺癌であり,完全切除であった.本症例のような微小癌に対しては,生検による影響で内視鏡治療時に指摘困難となる可能性があるため,十分なインフォームドコンセントを得たうえで,生検をできるだけ省略し,NBI併用拡大内視鏡観察による詳細な診断が必要と考える.さらにFAPにおいては,若年者でも胃癌を合併することがあり注意が必要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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