icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸47巻3号

2012年03月発行

文献概要

今月の主題 咽頭・頸部食道癌の鑑別診断 主題

頸部食道表在癌の特徴と鑑別診断―FICE内視鏡を中心に─NBIとの対比を含めて

著者: 有馬美和子1 多田正弘1 田中洋一2

所属機関: 1埼玉県立がんセンター消化器内科 2埼玉県立がんセンター消化器外科

ページ範囲:P.373 - P.386

文献購入ページに移動
要旨 頸部食道を第1生理学的狭窄部(食道入口部)から約4cmの範囲と定義し,内視鏡的に切除した頸部食道癌21例を対象として,臨床・病理学的特徴を検討した.自施設発見15例中,挿入時に発見したものが11例(73%),抜去時に発見したものが4例(27%)であった.内視鏡型は0-IIb型が少なく,少し厚みをもつ0-IIc型と0-I型がやや多かった.鑑別するべき病変は,乳頭腫,異所性胃粘膜と粘膜筋板由来の平滑筋腫であった.深達度はEP/LPM癌が12例(57%),MM/SM1癌が7例(33%),SM2癌が2例(10%)で,胸部表在型食道癌に比べてやや進行した状態で発見されていた.深達度診断にはNBI/FICE併用拡大内視鏡による微細血管診断が有用で,深達度正診率は85%であった.導管伸展由来の浸潤など,表面構造を保ちながら深部浸潤する症例で誤診がみられた.リンパ節再発はMM/SM1癌の7例中1例(14%),SM2癌の2例中1例(50%)にみられたが,頸部上縦隔リンパ節郭清で根治でき,原病死はなかった.頸部食道癌では内視鏡治療を適応拡大して選択することが多いため,多角的な診断方法で厳重に経過観察する必要がある.

参考文献

1)島田英雄,幕内博康,小澤壯治,他.見落とさない食道観察法─コツと対策.消内視鏡 22 : 951-959, 2010
2)有馬美和子,多田正弘.スコープ抜去時にびらんで発見した頸部食道p-T1a-MM癌の1例.消内視鏡 22 : 990-993, 2010
3)日本食道学会(編).臨床・病理─食道癌取扱い規約,10版補訂版.金原出版,2008
4)川久保博文,大森泰,佐藤靖夫,他.見落とさない中下咽頭観察法─コツと対策.消内視鏡 22 : 915-923, 2010
5)荒川廣志,郷田憲一,吉村昇,他.下咽頭下端の解剖学的検討─内視鏡像との対比.耳鼻展望 52 : 112-113, 2009
6)三宅洋一(編).分光画像処理入門.東京大学出版会,pp 21-35,2006
7)佐野寧,小林正彦,神津隆弘,他.狭帯化RGB filter内蔵narrow band imaging(NBI)systemの開発・臨床応用.胃と腸 36 : 1283-1287, 2001
8)有馬美和子,有馬秀明,多田正弘,他.食道表在癌の深達度診断─FICE併用拡大内視鏡.胃と腸 46 : 677-686, 2011
9)Hirayama N, Arima M, Miyazaki S, et al. Endoscopic mucosal resection of adenocarcinoma arising in ectopic gastric mucosa in the cervical esophagus : case report. Gastrointestinal Endosc 57 : 263-266, 2003
10)有馬美和子,有馬秀明,多田正弘.食道表在癌の深達度診断─FICE拡大内視鏡の立場から.胃と腸 45 : 1515-1525, 2010
11)有馬美和子,有馬秀明,多田正弘.早期食道癌深達度診断の進歩─FICE併用拡大内視鏡を中心に.胃と腸 43 : 1489-1498, 2008
12)有馬美和子,多田正弘,相田順子.食道乳頭腫の2切除例.胃と腸 43 : 305-309, 2008
13)有馬美和子,多田正弘,田中洋一,他.消化管の平滑筋性腫瘍,神経性腫瘍,GISTの診断と治療─食道.胃と腸 39 : 539-551, 2004
14)有馬美和子,多田正弘.縦隔疾患に対するEUS-FNAB診断.消内視鏡 19 : 975-983, 2007
15)有馬美和子,多田正弘,有馬秀明,他.超音波内視鏡による食道m3・sm癌の深達度・リンパ節転移・再発診断の精度.胃と腸 41 : 1386-1396, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら