超音波内視鏡を用いた大腸SM癌に対する深達度診断および内視鏡治療適応拡大の可能性
著者:
斉藤裕輔
,
藤谷幹浩
,
渡二郎
,
富永素矢
,
垂石正樹
,
小澤賢一郎
,
中嶋駿介
,
杉山隆治
,
中村和正
,
鈴木聡
,
助川隆士
,
千葉篤
,
高田明生
ページ範囲:P.491 - P.502
要旨 2004年10月から2010年12月までに当科で超音波細径プローブ(high-frequency ultrasound probe ; HFUP)を用いて早期大腸癌274病変に対して深達度診断を行った.全体では,深達度正診率はM~SM-s癌では72.5%,SM-m癌では87.8%であり,隆起型,表面型いずれの肉眼型においてもSM-m癌の正診率がM~SM-s癌に比較して有意に高率であった.同時期に内視鏡治療を施行し,組織学的にSM浸潤距離測定が可能であった大腸SM癌64病変において内視鏡治療によるSM切除距離は平均3,900±2,200μmであった.また内視鏡治療の結果,深部断端陽性となった11病変におけるSM浸潤距離は平均4,200±2,100μmであり,内視鏡的に深部断端陰性として完全切除可能なSM浸潤距離はおよそ4,000μmと考えられた.また,HFUPを用いることで,術前にSM距離の計測が可能であり,HFUP上で計測したSM浸潤距離は組織学的SM浸潤距離と有意な相関を認めた(相関係数R=0.889,p<0.0001).SM垂直浸潤距離1,000μmにおける診断能はHFUPで正診率95%と内視鏡検査の正診率85%,注腸X線検査の83%に比較して有意に高率であった(p<0.05).同様に,SM垂直浸潤距離4,000μmにおける診断能はHFUPで正診率85%と内視鏡検査の正診率45%,注腸X線検査の48%に比較して有意に高率であった(p<0.0001).以上から,今後の大腸SM癌の内視鏡治療の適応拡大に向けてHFUPは必須の検査法であることが示唆された.