文献詳細
今月の主題 消化管EUS診断の現状と新たな展開
主題
文献概要
要旨 高周波数細径超音波プローブ(細径プローブ)の診断成績を,食道表在癌129例(CRT後の再発例5例を含む)を対象として,拡大内視鏡と比較しながら検討した.細径プローブによる正診率はEP/LPM癌97.6%,MM/SM1癌75.0%,SM2/SM3癌95.8%,全体で89.9%であった.NBI/FICE併用拡大内視鏡ではEP/LPM癌97.6%,MM/SM1癌87.5%,SM2/SM3癌81.3%,全体で88.4%であった.MM/SM1癌において,拡大内視鏡の正診率は細径プローブより良好であった.細径プローブの誤診の主な原因は,粘膜筋板への微小浸潤を読影できなかったことによる浅読み,リンパ濾胞過形成や食道腺を癌と誤認したことによる深読みであった.拡大観察では深部浸潤を示唆する血管像がとらえられないこともあるため,SM2/SM3癌の正診率が意外と低いことが弱点となっている.細径プローブはSM2/SM3癌の正診率が高く,誤診が少ないことが確認された.病変の形態と拡大観察所見に乖離がある病変,粘膜下腫瘍様の病変,拡大観察でtypeRを示す病変では特に,細径プローブが有用である.CRT後の再発例でも腫瘍の厚みや固有筋層との距離など,食道壁の状態も把握もできるため,ESDを安全に行ううえで有用な情報を得ることができる.
参考文献
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