icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸47巻4号

2012年04月発行

文献概要

今月の主題 消化管EUS診断の現状と新たな展開 主題

食道表在癌の高周波数細径超音波プローブによる深達度診断

著者: 有馬美和子1 多田正弘1

所属機関: 1埼玉県立がんセンター消化器内科

ページ範囲:P.467 - P.480

文献購入ページに移動
要旨 高周波数細径超音波プローブ(細径プローブ)の診断成績を,食道表在癌129例(CRT後の再発例5例を含む)を対象として,拡大内視鏡と比較しながら検討した.細径プローブによる正診率はEP/LPM癌97.6%,MM/SM1癌75.0%,SM2/SM3癌95.8%,全体で89.9%であった.NBI/FICE併用拡大内視鏡ではEP/LPM癌97.6%,MM/SM1癌87.5%,SM2/SM3癌81.3%,全体で88.4%であった.MM/SM1癌において,拡大内視鏡の正診率は細径プローブより良好であった.細径プローブの誤診の主な原因は,粘膜筋板への微小浸潤を読影できなかったことによる浅読み,リンパ濾胞過形成や食道腺を癌と誤認したことによる深読みであった.拡大観察では深部浸潤を示唆する血管像がとらえられないこともあるため,SM2/SM3癌の正診率が意外と低いことが弱点となっている.細径プローブはSM2/SM3癌の正診率が高く,誤診が少ないことが確認された.病変の形態と拡大観察所見に乖離がある病変,粘膜下腫瘍様の病変,拡大観察でtypeRを示す病変では特に,細径プローブが有用である.CRT後の再発例でも腫瘍の厚みや固有筋層との距離など,食道壁の状態も把握もできるため,ESDを安全に行ううえで有用な情報を得ることができる.

参考文献

1)有馬美和子,多田正弘,田中洋一.食道癌に対する化学放射線療法の原発巣の効果判定─EUSを中心に.胃と腸 44 : 1840-1854, 2009
2)佐野寧,小林正彦,神津隆弘,他.狭帯域RGB filter内蔵narrow band imaging(NBI)systemの開発・臨床応用.胃と腸 36 : 1283-1287, 2001
3)三宅洋一(編).分光画像処理入門.東京大学出版会,pp21-35,2006
4)有馬美和子,有馬秀明,多田正弘,他.食道表在癌の深達度診断─FICE併用拡大内視鏡.胃と腸 46 : 677-686, 2011
5)山中桓夫,木村義人,橋本博子,他.EUS壁構造の解釈.Gastroenterol Endosc 43 : 1091-1092, 2001
6)相部剛.超音波内視鏡による消化管壁の層構造に関する基礎的,臨床的研究─胃壁の層構造について.Gastroenterol Endosc 26 : 1447-1464, 1984
7)森川丘道,神津照雄,有馬美和子,他.高周波数細径超音波プローブによる食道内ラジアル走査─表在食道癌深達度診断の検討.腹部画像診断 14 : 604-614, 1994
8)河野辰幸.透明オーバーチューブを使用したSONOPROBE SYSTEMによる内視鏡的食道超音波検査と20MHz超音波像.Gastroenterol Endosc 34 : 1237-1251, 1992
9)有馬美和子,多田正弘.高周波数細径超音波プローブによる食道表在癌の深達度を誤認させる要因と画像の特徴.胃と腸 39 : 901-913, 2004
10)有馬美和子.術前内視鏡診断─超音波内視鏡 : 食道.田尻久雄,小山恒男(編).食道・胃・十二指腸診断.羊土社,pp 138-148,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?