1996年に「形態用語の使い方・使われ方」という用語集が増刊号として出版され1),その後の補訂を経て2002年に「胃と腸用語事典」(医学書院)が出版された2).その序文に同書の趣旨をみることができる.すなわち,早期胃癌研究会での討論で問題になる用語を挙げ,用語の使われ方に統一をもたせることを目的としたとされている.基本的姿勢として,言語や用語の当初の用いられ方を重要視し,用語の基本的な意味を振り返ることも同書の意義とされている.具体的な用語集の作成過程は,以下のとおり説明されている.「胃と腸」誌27巻(1992年)から29巻(1994年)の2年3か月間にかけて「用語の使い方」欄を設けて用語解説を連載した.同書はそれを充実させ,基本用語を図説し,系統的に解説することをねらった.
現在では当初の用語解説の連載開始からみて約20年が,用語事典出版からみて約10年が経過したことになる.その後の消化器診断学の推移をみると,大きな変化があることは間違いない.本特集号では,前回と同様の姿勢で企画に臨むが,近年多用される用語を取り上げることになる.もちろん,最近の「胃と腸」誌に使われた基本的な用語はもれなく取り上げるつもりである.あえて,多くの用語から厳選した213項目を取り上げて,用語の基本と意見とを組み合わせた内容としたい.この項目数は,1996年の増刊号の項目数147と比較して,かなり増加している.しかも,項目内容を比べると,前回採用され,今回採用とならなかった項目数は94であり,今回採用された新規項目数は165に及ぶ(48項目が共通した項目数).この理由は,基本的に前回の内容で記述に変化がないものや,歴史的な経緯が判明し前回に詳述されているものは,今回は割愛した.その中にはX線検査に関する用語が多かった.振り返ると,その用語は現在あまり使用頻度が高くないものがあるが,ある程度診断学の現状を反映している.
雑誌目次
胃と腸47巻5号
2012年05月発行
雑誌目次
特集 図説 胃と腸用語集2012
序文 フリーアクセス
著者: 松井敏幸
ページ範囲:P.609 - P.609
解剖
咽頭・喉頭の解剖用語
著者: 田中雅樹
ページ範囲:P.615 - P.618
咽頭(pharynx)・喉頭(larynx)は鼻腔・口腔と食道の間に存在し,消化器(消化管)と呼吸器(気道)が分かれる部位であり,咀嚼・嚥下・構音・発声など重要な機能を司っている.消化器内視鏡分野の書籍では咽喉頭領域として一緒に扱われることが多いが,用語の解説を行うため本稿では分けて記載する.また,臓器の形態が消化管と比べて複雑であるため,消化器内視鏡(経口内視鏡)で観察される部位を中心に解説する.
食道の解剖用語
著者: 高木靖寛
ページ範囲:P.619 - P.621
食道の解剖学的区分(Fig. 1) 食道とは食道入口部から食道胃接合部までをいい,食道入口部は輪状軟骨の下縁レベルに一致する.食道の区分はまず3つに大別される.すなわち入口部より胸骨上縁までを頸部食道(cervical esophagus;Ce),胸骨上縁から食道裂孔上縁までを胸部食道(thoracic esophagus;Te),食道裂孔上縁から食道胃接合部までを腹部食道(abdominal esophagus;Ae)と呼ぶ.胸部食道はさらに3つに亜分類され,気管分岐部下縁までを胸部上部食道(upper thoracic esophagus;Ut),気管分岐部下縁から食道胃接合部までを2等分した上半分を胸部中部食道(middle thoracic esophagus;Mt),2等分した下半分を胸部下部食道(lower thoracic esophagus;Lt)と区分されている.
食道の走行と周囲の構造(Fig. 2) 食道は咽頭に続く約25cmの管状,筋性の臓器で,食物の通路であり咽頭から胃に連絡する.輪状軟骨の下縁,第6胸椎レベル(切歯より約15cm)の高さからはじまり,横隔膜の食道裂孔を通って,第11もしくは第12胸椎のレベルで胃噴門(切歯より約40cm)に連なる.食道の両端は括約筋また括約機構によって周囲組織に固定され,食塊が通過するときのみ開口するが,通常は閉鎖している.食道の大部分は周囲臓器との間を粗な結合織で取り囲まれているのみであり,呼吸や嚥下,腹圧,体動で長軸方向に約1椎体程度の移動が生じる.食道はほぼ正中を走行するが,正確には蛇行している.頸部では正中かやや左側にあるが,大動脈弓(第4胸椎)までは次第に左側に偏位し,それから右側に向かい第7胸椎の高さでは,脊柱のやや右側に存在する.その後再び左側に向かい,食道裂孔を通過して第10胸椎のレベルで正中より左側に偏位し,食道胃接合部で最も偏位が著しくなる.
胃の解剖用語
著者: 細川治 , 柳本邦雄
ページ範囲:P.622 - P.624
胃は食道に続き,十二指腸に連なる管腔面積が最も大きな消化管臓器である.食道との粘膜境界は内視鏡画像上,食道下部柵状血管の下端,または胃大彎の縦走ひだの口側終末部とされ,X線検査上は後者の区分を用いる以外にHIS角を水平に延長した線ともされる.さらに筋層段階での境界としては,胃の入口部,食道の左側にまたがるように位置する最も内側の筋束,sling fiberがあてられる.粘膜段階と筋層段階の境界がずれることはもちろん,内視鏡とX線で境界が一致しないこともしばしば経験される.十二指腸球部との境界は幽門輪である.
胃の上部は肋骨弓下にあり,食道胃接合は第11胸椎左辺,幽門輪は第1腰椎右辺,両部位前後で後腹膜に固定されるが,中間部は固着しておらず,横行結腸と肝左葉に覆われない範囲では前腹壁に接している.長軸方向の長さは小彎で15cm,大彎で45cm程度であり,最も管腔の広い個所の径は12cmとされる.屍体胃を用いた計測では1l以上の容量が報告されるが,有管法検査で胃透視を行っている立場からすると,バリウム100mlと空気300mlの注入で大半の胃が緊満することから生体内にある状態では500ml程度の容量と推定される.
十二指腸・小腸の解剖用語
著者: 岩下明德 , 田邉寛
ページ範囲:P.625 - P.626
小腸は,胃の幽門に始まり,回盲口によって盲腸に開くまでの全長約6mの中空性器官である.胃で糜汁化した食物を下部消化管へと輸送しつつ,小腸自身や付随する腺(肝や膵臓)から分泌された消化酵素によってそれを完全に消化し,栄養分を吸収するという第一義的機能のほかに,人体最大の免疫器官としての機能も有する.
小腸は,十二指腸,空腸および回腸の3つの部位に区分される.十二指腸は小腸の初部を成し,胃の幽門から十二指腸提筋(Treitz靱帯)で固定された十二指腸空腸曲までの20~30cmの部位をいう.十二指腸は腸間膜を欠き,前面をおおう腹膜の続きによって後腹壁に固定されており,膵頭部の縁を取り囲むように左上方に開いたC字状の走行を示す.下行部ほぼ中央の後内側壁に十二指腸乳頭が隆起し,ここに総胆管と膵管が合一して,あるいは別々に開口する.
大腸の解剖用語
著者: 野村昌史 , 篠原敏也
ページ範囲:P.627 - P.629
大腸の解剖
大腸は長さが約120~170cmの管腔臓器で,腹腔内を一周するように走行する.Fig. 1のように,口側から盲腸,結腸,直腸S状部,直腸に区分され,結腸はさらに上行結腸,横行結腸,下行結腸,S状結腸に,直腸は上部直腸と下部直腸に分けられる.上行結腸と横行結腸の移行部は右結腸曲(肝彎曲),横行結腸と下行結腸の移行部は左結腸曲(脾彎曲)と呼ばれる.回腸末端部,回盲弁(Bauhin弁),盲腸および上行結腸の一部から形成される小腸と大腸の境界部は,一般的に回盲部と呼称される.横行結腸とS状結腸は腸間膜を有し可動性に富むが,盲腸,上行結腸,下行結腸,直腸は後腹膜に固定されている.
大腸壁の構造は,他の消化管と同様に粘膜,粘膜下層,固有筋層,漿膜あるいは外膜の4層から成っている(Fig. 2).粘膜は0.2~0.4mmの厚さであり,大腸壁全層では3~5mmで,胃壁の約1/2の厚さである.粘膜は一層の円柱上皮に覆われ,吸収上皮細胞とその中に粘液を産生する多数の杯細胞が存在し,Lieberkühn陰窩を形成する.陰窩の粘膜開口部は,内視鏡では色素(インジゴカルミン,クリスタルバイオレット)撒布により類円形の小さな穴(pit)として観察される.このpitの形態は大腸病変を診断する際に有用で,鑑別診断のみならず大腸癌の深達度診断に役立てられている.
肛門・肛門管の解剖用語
著者: 松田圭二 , 渡邉聡明
ページ範囲:P.630 - P.632
肛門・肛門管の構造
肛門を視診すると肛門の外口(anal orifice)が確認でき,その縁が肛門縁(anal verge)である(Fig. 1).肛門縁より1.5~2.0cmほど奥に歯状線(dentate line)が存在する.これは発生学的に外胚葉と内胚葉の接合部である.歯状線は隆起を形成する肛門乳頭(anal papilla)と,陥凹を形成する肛門陰窩(anal crypt)から形成される.
肛門陰窩には肛門導管(anal duct)が開口しており,肛門腺(anal gland)へ続く.肛門周囲膿瘍,痔瘻の発生に関与している1).
検査法・手技
胃X線造影(gastric roentgenography)
著者: 中島寛隆 , 長浜隆司
ページ範囲:P.635 - P.636
胃X線造影は,硫酸バリウムを用いて胃の病変をX線画像で描出する検査法である.消化器臨床の場では上部消化管の検査は内視鏡診断が主流となってきたが,胃のがん検診や術前精密検査の分野では,現在でもX線造影検査の有用性が認められている.
前処置と検査後の処置 検査当日は,検査開始まで飲食を控える(ただし被験者に不可欠な内服薬は,起床時に水50ml程度で服用しても可).検査終了後は下剤を服用し,バリウムの排出を促す.
低緊張性十二指腸造影(hypotonic duodenography)
著者: 芳野純治 , 乾和郎
ページ範囲:P.637 - P.637
低緊張性十二指腸造影法は十二指腸の二重造影像を主体として,十分に伸展した蠕動がみられない状態で撮影し,十二指腸の辺縁の変形,粘膜面のみだれを描出する.腹臥位と仰臥位の両者で,十二指腸の粘膜面を鮮明に描出するため,胃の造影剤と重ならないように撮影する.Vater乳頭部の描出は病変の位置を表す指標となり,腹臥位第二斜位で正面像として表れることが多い(Fig. 1).
撮影方法には有管法と無管法がある.有管法は十二指腸のVater乳頭部付近までゾンデを挿入し,造影剤,空気を注入し鎮痙剤により蠕動を停止させて撮影する.有管法は造影剤の量,空気量を加減することができるが,ゾンデの挿入が必要なことやゾンデが病変と重なり読影しにくいことがある.鎮痙剤の注入は蠕動を明確に停止するために静脈投与が主として行われるが,その効果は長くないため迅速に撮影を行う必要がある.
小腸X線造影(small bowel radiography)
著者: 蔵原晃一 , 渕上忠彦
ページ範囲:P.638 - P.639
小腸の順行性X線造影検査は,本邦では1960年代より開始され,主に経口法と十二指腸ゾンデを用いた経管法が行われてきた.
経口法は,胃X線検査に引き続いてあるいは小腸造影のみを目的として経口的に硫酸バリウムを投与し,小腸の充盈像と圧迫像を得る(Fig. 1).検査開始後,造影剤が盲腸に到達するまで15~30分間隔で観察と撮影を行うが,丹念な圧迫と体位変換を繰り返しながら小腸索を分離し病変を検出する.
内視鏡的逆行性回腸造影(endoscopic retrograde ileography;ERIG)
著者: 佐藤祐邦 , 平井郁仁
ページ範囲:P.640 - P.641
1985年に川村ら1)が内視鏡下に挿入したガイドワイヤーに沿いイレウスチューブを回腸末端まで挿入し,バリウムと空気で二重造影を行う選択的逆行性回腸造影法を考案した.さらに1992年,竹中ら2)は,同法がゾンデ式小腸二重造影に比べ,下部小腸や回腸末端におけるバリウムの付着や伸展性がよいこと,腸管の重なりが少ないなどのことから描出能が優れていることを証明した.しかし,先端バルーン逸脱のため良好な二重造影が得られないなどの問題点を有したため,1995年に竹中ら3)はチューブ先端の逸脱を防ぐために改良を加え,逆行性回腸造影用チューブを考案し,その手技を確立させた.
大腸内視鏡検査と同様の前処置で,用いる造影剤は,以前は50~70w/v%の低濃度のバリウムを使用していたが,回腸に残った前処置液でバリウムが付着不良となるために,現在では100w/v%のバリウムに5~10mlの消泡剤を混ぜ,100~250ml使用している.
注腸X線造影(barium enema)
著者: 斉藤裕輔 , 垂石正樹
ページ範囲:P.642 - P.644
注腸X線造影検査の歴史 1904年,Schuleにより,それまでの経口投与による大腸造影法から注腸法が開始されたが,当時は充満像やレリーフ像が主体であった.1923年にFischerが二重造影法を報告しているが,当時は二重造影像の得られる範囲は限られていた.1955年にスウェーデンのWelinは高濃度バリウムを脾彎曲部まで注入し,一度バリウムを排泄させ,次にS状結腸中部までバリウムを再注入後空気を注入,体位変換で盲腸までバリウムを移動させ広範囲の二重造影に成功した.1961年,Brownはそれまでの洗腸による前処置から,塩類下剤を使用した洗腸を行わない前処置法を開発し,二重造影に必要な最小限の造影剤を注入後に空気を注入する現在の方法が確立された.
本邦では白壁らにより開発された上部消化管の二重造影法が,1969年頃から注腸X線検査へと導入され,刈谷,西澤,吉川らの業績により二重造影法が広く普及した.また,その後の造影剤の改良,適正濃度の研究の結果,それまで20%程度であったfine network patternの描出率は約70%へと向上した.これら先人達の努力により,微細・微小病変の描出・鑑別診断が可能となり,潰瘍性大腸炎,腸結核,Crohn病,虚血性腸炎など炎症性腸疾患における病変の推移や治療効果の判定が可能となった.
平面検出器(flat panel detector;FPD)
著者: 杉野吉則
ページ範囲:P.645 - P.646
近年,X線装置のデジタル化に伴って,各種の検出器が製品化されてきた.1980年前後のCR(computed radiography)に始まり,80年代後半にはimage intensifier/TV系を用いたII-DR(digital radiography),90年代後半には新しい装置として平面検出器(flat panel detector;FPD)が出現した(Fig. 1)1).
FPDの構造は,電気信号を処理する薄膜トランジスタ(thin film transistor;TFT)の前面にX線を電気信号に変換するX線変換部を貼り付けたものである(Fig. 2).FPDではX線を電気信号へ変換する方法が2通りあり(Fig. 3),1つはセレン(Se)を用いてX線エネルギーを直接電気信号に変える直接変換方式,もう1つはX線エネルギーをヨウ化セシウム(CsI)によって光エネルギーに変換し,その光エネルギーをTFTとCsI層の間にあるフォトダイオードで電気信号に変換する間接変換方式である.
腸管洗浄法(gut lavage methods)
著者: 上野文昭
ページ範囲:P.647 - P.647
内視鏡をはじめとした大腸の検査や治療を安全に正確に快適に行うためには,大腸内容物を除去する腸管前処置が必須である.かつては食事制限,緩下剤,水負荷,浣腸を組み合わせた方法(Brown変法)に依存していた時代もあったが,現在は経口的に水溶液で腸管全体を洗う腸管洗浄法が主流である(Table 1).
当初用いられた大量の生理食塩液による腸管洗浄法では,過剰な塩分・水分吸収が問題となった.マニトールを加え浸透圧を調整することによりこの問題は解決されたが,腸内細菌の作用によりマニトールから発生した爆発性ガスにより高周波治療中の爆発事故が報告され,二度と用いられることはなくなった.
炭酸ガス(CO2)注入(carbon dioxide insufflation)
著者: 山野泰穂
ページ範囲:P.648 - P.648
内視鏡検査では,管腔を拡張させなければ病変を発見,観察,あるいは治療を行うことができない.拡張には通常は空気(room air)を用いているが,近年,room airに変わって炭酸ガス(CO2)を用いることの有用性が報告されてきた.炭酸ガスとは常温で気体であり,無色,無臭,水溶性に優れた特性をもっているが,この特性により消化管内で炭酸ガスは吸収され,呼気中に排出されると考えられ,結果的に15分程度で消化管内から消失するとされている.そのため消化管の膨満が解消され,被験者の苦痛軽減をもたらしている1)~4).
筆者ら5)が行った大腸内視鏡検査における空気と炭酸ガスによる前向き二重盲検試験の検討では,検査終了時に既に8割の被験者が疼痛,腹部膨満感を自覚しておらず,検査直後から3時間まで統計学的に有意差をもって炭酸ガス群のほうが疼痛,腹部膨満感の軽減を認めた(Fig. 1).さらに盲腸到達時間に関しても炭酸ガス群のほうが有意差をもって早かった.これらはいずれも炭酸ガスが消化管内から消失したことにより導かれていると考える.
経鼻内視鏡(transnasal endoscopy)
著者: 細川治 , 佐藤広隆
ページ範囲:P.649 - P.649
経鼻内視鏡検査とは,経鼻ルートで挿入して,上部消化管を観察する内視鏡検査法である.2002年以降CCD(charge coupled device)センサーの小型化が進み,スコープ径を6mm未満の太さにまで細径化でき,さらに経鼻ルート通過のために先端硬性部を短くし,軟らかくしなやかなシャフトが作成可能になったことから普及が進んでいる.特に無症状者を対象とする住民検診や人間ドックで使用される機会が増した.
咽頭,食道入口部への刺激が少ないことから,分泌物を少なくさせる目的に経口内視鏡で投与する抗コリン剤が不要で,鎮静剤を使用するような苦痛がなく,心血管系や呼吸器系への負担が少ない.頸部食道通過の際の不快感を除いて,苦痛が少なく安全性が高い上部消化管内視鏡検査が実施できる.
小腸内視鏡,バルーン内視鏡(balloon assisted endoscopy)
著者: 西村直之 , 山本博徳
ページ範囲:P.650 - P.650
ダブルバルーン内視鏡(double-balloon endoscopy;DBE)とシングルバルーン内視鏡(single-balloon endoscopy;SBE)は,約2mの内視鏡と先端にバルーンの付いたオーバーチューブを用いる小腸内視鏡である.バルーンを拡張して腸管を把持し小腸の短縮を行い,内視鏡を進めるという操作を繰り返すことで,小腸深部への挿入と可能としている.この2つの内視鏡をバルーン内視鏡と呼んでいる.英語の訳語は,“balloon assisted endoscopy”となっている.
DBEは,1998年に自治医科大学の山本博徳により開発され,2003年に富士写真光機(フジノン)から市販された.DBEシステムは,先端にバルーンの装着が可能なエアールート付きの細径内視鏡,先端にバルーンの付いたオーバーチューブ,両方のバルーンの拡張・脱気をコントロールするバルーンコントローラーから成る(Fig. 1).一方SBEは,2007年にオリンパスより販売が開始された.SBEシステムは,細径内視鏡,先端にバルーンの付いたスライディングチューブ,バルーンコントローラーから成る(Fig. 2).
カプセル内視鏡(capsule endoscope)
著者: 中村哲也 , 生沼健司
ページ範囲:P.651 - P.651
カプセル内視鏡は,被検者がみずから飲み込むだけで消化管の検査ができ,ビデオ画像で診断する.2011年12月時点で食道用,小腸用,大腸用の画像撮影専用モデルが実用化され,可動式モデルも開発されている.日本では小腸用のPillCam® SB2(ギブン・イメージング社)とEndoCapsule®(オリンパスメディカルシステムズ社)が,上部および下部消化管の検査(内視鏡検査を含む)を行っても原因不明の消化管出血に対して保険適用になっている1).大腸用のPillCam® COLON2(ギブン・イメージング社)2)は治験進行中である.
滞留(retention,消化管内の狭窄部の口側に,2週間以上カプセルがとどまること)は,カプセル内視鏡のほぼ唯一の偶発症である(Fig. 1)3).小腸二重造影を含む他の検査では滞留が起こるか否かを予知することができないため,腸管の狭窄の有無を調べる目的でAgile Patency Capsule(Agile-J)4)が開発され,近々認可される見込みである.
色素内視鏡(chromoendoscopy)
著者: 鼻岡昇 , 飯石浩康
ページ範囲:P.652 - P.652
色素内視鏡検査 内視鏡観察法のうち,色素内視鏡検査は画像強調観察に分類され,内視鏡検査において何らかの色素を用いて消化管粘膜,または消化管表面を観察する方法を色素内視鏡検査と総称される.
現在行われている色素内視鏡検査をTable 1に示す.色素法には,色素を撒布して周囲との境界を明瞭にしてコントラストを強調するコントラスト法と,色素を撒布して直接組織を染色する染色法,生体との反応を利用した反応法,蛍光法がある.
酢酸インジゴカルミン混合液撒布(acetic acid-indigo carmine mixture;AIM)
著者: 河原祥朗
ページ範囲:P.653 - P.653
消化器内視鏡における酢酸撒布法は主にBarrett食道の診断に有用性が報告されてきた.胃癌に関しても拡大内視鏡を併用することで,境界診断に応用できることや,色調変化の反応時間などによって腫瘍の質的診断に応用できることなどが報告されてきた.筆者は,従来の色素内視鏡による形態のコントラストの強調効果に加えて,酢酸を加えることで色調変化の上乗せ効果が得られるのではないかと考え,酢酸インジゴカルミン混合液(acetic acid-indigo carmine mixture;AIM)を考案した1)~3).
酢酸を胃に撒布すると,酸に対する胃粘膜の防御反応によると思われる粘液が増加する.酸による粘液の産生性が腫瘍部,非腫瘍部で異なるため,腫瘍部ではインジゴカルミンの色素がwash outされることが多い反面,非腫瘍部では色素がしっかりと残存する.このメカニズムにより,従来の色素でははっきりしなかった病変の境界部が明瞭に描出され,境界診断に非常に有用である.特に従来のインジゴカルミンによる範囲診断では描出の難しかった隆起病変の周辺に拡がるIIb(Fig. 1),陥凹病変の周囲に拡がるIIbなどが明瞭に観察可能であり,ESD(endoscopic submucosal dissection)時に使用することで断端陽性例を減少させることが可能である.
酢酸撒布(acetic acid instillation)
著者: 前田有紀 , 平澤大
ページ範囲:P.654 - P.654
消化管領域における酢酸撒布の報告は1998年Guelrudら1)によるBarrett食道焼灼後の遺残円柱上皮島の識別に関するものが最初である.その後,拡大観察併用2),胃癌での側方範囲診断3),NBI(narrow band imaging)併用拡大観察4),酢酸インジゴカルミン併用5),十二指腸や大腸への応用など様々な進展をみせている.
酢酸撒布法の原理は,pHの低下により粘膜細胞内のサイトケラチン重合化が促進され,粘膜表面が白色化することによる.円柱上皮では1.5%酢酸を撒布後,数秒で粘膜表面は白色化し表面構造が鮮明になる.その効果は可逆的であり,持続は数分程度と言われている.また,癌部は非癌部より白色変化が早期に消失するため,酢酸撒布後の経時的変化も胃癌の範囲診断に有用である3).
画像強調内視鏡(image enhancement endoscopy;IEE)
著者: 小山恒男
ページ範囲:P.655 - P.655
電子内視鏡で得られた画像を様々な手法で強調することを画像強調内視鏡という.画像強調内視鏡には白色光にて得られた画像をコンピュータ処理することによって強調するデジタル法と,色素や白色光以外の光を用いる光学デジタル法に分類される1).
デジタル法 白色光で得られた情報をコンピュータ処理することで,病変をより強調する方法である.富士フイルム社のFICE(flexible spectral imaging color enhancement)やHOYAペンタックス社のi-scan,オリンパス社の画像強調や色彩強調がこれに相当し,表面構造や血管構造をより詳細に観察することができる.Fig. 1は高分化型胃癌の通常観察およびFICE観察像である.FICEを用いると表面構造をより明瞭に観察することができる.
NBI(narrow band imaging)
著者: 佐野亙 , 佐野寧
ページ範囲:P.656 - P.657
狭帯域内視鏡(narrow band imaging;NBI)システムとは,国立がんセンター東病院の佐野・武藤ら1)とオリンパス社の後野氏2)とで2006年に産学共同開発された内視鏡システムである.
その特徴は,内視鏡の観察光の分光特性を狭帯域特性へ変更し(短波長側にシフト),病変の視認性や表面微細構造,微小血管観察の向上を可能にしたことにある.
FICE(flexible spectral imaging color enhancement)
著者: 有馬美和子
ページ範囲:P.658 - P.658
FICE(flexible spectral imaging color enhancement)は,コンピュータの演算処理で通常画像から任意の波長のシミュレーション画像に切り換えることができる“分光推定技術(spectral estimation processing)”を応用したデジタル法画像強調イメージングである.被写体の各画素の反射スペクトルを推定し,任意の3波長の分光画像を抽出,擬似カラー化して内視鏡像を再構築するもので,2005年にMiyakeらとフジノン社によって開発された(Fig. 1)1)2).画像の再構成に用いる波長は5nmごとに設定可能で,3波長をRGBチャンネルに割り当てて,自由に設定することができる.
FICEはオリンパス社製のNBI(narrow band imaging)と同様,粘膜表層の微細血管構造や腺管構造の視認性を強調させる効能をもつ(Fig. 2)3).コンピュータ処理画像であることから,NBIに比べるとやや画像が粗い印象があるが,画像強調モードへの切り替えに全くタイムラグがないのが特徴である.また,複数の波長の組み合わせを設定し,内視鏡プロセッサのキーボード操作で切替えることができる.
AFI(autofluorescence imaging)
著者: 上堂文也
ページ範囲:P.659 - P.659
X線や紫外線,可視光線を蛍光物質に照射することで電子が励起され,それが基底状態に戻る際に放出される光を蛍光と呼ぶ.生体組織に励起光を照射すると各種分子(コラーゲン,エラスチン,NADH,フラビン,ポルフィリンなど)から蛍光が生じ,このような生体組織中の蛍光物質からの蛍光を自家蛍光(autofluorescence)と呼ぶ.蛍光の内視鏡観察への応用には外因性に投与した蛍光物質の病変部への集積を観察する方法と,内因性の生体組織中の蛍光物質からの自家蛍光を観察する方法があり,後者を自家蛍光内視鏡という.
AFI(autofluorescence imaging)はオリンパスメディカルシステムズ社が2006年から製品化した電子式の自家蛍光内視鏡システムで,電子内視鏡の先端に高感度撮像素子を内蔵し,外観・操作性は通常の電子内視鏡と全く同様で,高解像度の白色光観察に切換えて,ボタンひとつで蛍光観察を行なうことができるシステムである.
endocytoscopy
著者: 井上晴洋 , 工藤進英
ページ範囲:P.660 - P.660
生体内で直接,細胞観察を行いたいとの観点から,超・拡大内視鏡の開発が進んでいる.超・拡大内視鏡には主に2系統あり1),1つは「共焦点レーザー顕微鏡」2)3),もう1つが「接触型内視鏡系」である.endocytoscopyは,接触型内視鏡系に属する.
接触型内視鏡系での細胞観察は1980年のHamou4)の婦人科領域での試みに始まる.1982年にTadaら5)は光学レンズ系の倍率をおよそ170倍まで上げ,大腸粘膜の観察を試みた.近年,大植が,Karl-Storz社製の硬性鏡を用いて,大腸癌の観察を行い,再び「接触型内視鏡」を再評価させた(大植,第37回日本癌治療学会総会,1999).さらに熊谷も,外科切除標本における食道扁平上皮細胞の観察を報告している(熊谷,第57回日本食道学会学術集会,2003).しかし消化管上皮の生体内での観察を行うためには,軟性鏡としての超・拡大内視鏡が必要であった.そこで大植,熊谷,筆者らの共同提案とオリンパスとの産学共同研究で開発されたのがプローブ型endocytoscopyである6)~8).その後,スコープとの一体型endocytoscopyが開発された9).現在は,一眼レフの一体型が作製されている.
IRI(infrared imaging)
著者: 永尾重昭
ページ範囲:P.661 - P.661
消化器内視鏡分野での非可視光の照明光として用いる検討の歴史は古く,胃カメラ開発当初より行われていたが,多くの技術的困難により実用化し得なかった.電子内視鏡の時代に入り,CCD(charge coupled device)が赤外線に感受性があることから赤外線内視鏡が開発され,種々の検討から現在の2波長赤外線内視鏡が登場した.IRI(infrared imaging)とは,通常の内視鏡検査に用いられている可視光より長波長側の近赤外光を内視鏡の照明光とした検査法である.2波長とは805nm付近(805±15nm)および940nm付近(905~970nm)の光であり,これらが観察時に,赤外線透過フィルターとR,G,Bフィルターとの組み合わせにより順次照射され,805nm付近は黄色に表示され,また940nm付近は青色に表示される.単なる赤外線観察では,比較的モノトーンな黄色から青色へのコントラストのない画像になる.肝機能検査で用いられるICG(indocyanin green)を用いることにより視認能,識別能が向上する.ICGは血中で805nm付近に最大吸収ピークをもち,940nm付近では低い.805nm付近の光はICGに吸収されるのに対し,940nm付近の光は吸収されることはなくCCDで検出されモニター上で青色に描出される.また青色の視認能を向上させるために,IHb強調システムを応用して2段階の強調が可能である.
可視光では得られ難い粘膜深部の情報,特に血管情報を得られることから,その発色パターンから胃腺腫,胃癌の鑑別診断,また分化型の早期胃癌の深達度診断(M,SMの鑑別)の一助として期待されている(Fig. 1).また,通常内視鏡では不可視である粘膜下層の比較的太い静脈がIRI観察で明らかとなりESD(endoscopic submucosal dissection)などの術前の出血余地,術後出血の予知に役立つ.さらには,通常無色透明な硬化剤がICG付加でIRI観察での食道静脈瘤硬化療法時には静的,動的にリアルタイムに硬化剤注入の状況が食道内,胃内分布(特に左胃静脈の胃壁枝)が明らかとなる(Fig. 2).硬化療法中には刺入している静脈瘤本体以外の隣接し,交通している分枝した可視光では視認できない細小静脈瘤への硬化剤の流入状況が観察できるので追加治療の適否などの効果判定の早期予測の一助としている.
三次元超音波内視鏡(three-dimensional endoscopic ultrasonography)
著者: 芳野純治 , 三好広尚
ページ範囲:P.662 - P.662
三次元超音波内視鏡検査では外筒内を細径超音波プローブが移動しながら多数の超音波像(ラジアル像)を撮影し,その画像のコンピュータ処理により三次元的な画像を作成する.超音波内視鏡専用機を手動で移動して三次元表示を作成する方法が1991年に初めて試みられている.その後,細径超音波プローブが開発され,プローブを外筒内で移動させる方法が考案されると,外筒の位置を変えることによりあらゆる部位での描出が可能になった.はじめは手動でプローブを移動させたが,一定の速度で動かすシステムが製作されたことにより正確な三次元表示が可能になった.ラジアル像とそれにより作成されたリニア像,両者から成るDPR(dual plane reconstruction)表示像(Fig. 1),斜視表示像(Fig. 2),内視鏡像に類似した表面構築表示像(Fig. 3)が得られる.深達度診断,周囲臓器・脈管との関係の立体的な把握や体積測定に用いられる.深達度診断ではラジアル像とリニア像の両者により判定するため診断能が向上したとの報告が多い.心拍や呼吸による移動がリニア画像に影響することがある.
EUS-FNA(endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration)
著者: 山雄健次
ページ範囲:P.663 - P.664
超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography;EUS)は解像度が高く,他の画像診断では得られない消化管癌の深達度診断,粘膜下腫瘍の診断,消化管周囲のリンパ節腫大や吻合部周囲の病変の描出に優れた検査法である.しかし,上記疾患の良悪性の鑑別診断や質的診断にはEUS単独では困難なことが多い.超音波内視鏡下穿刺吸引法(endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration;EUS-FNA)は消化管壁内・壁外の腫瘤性病変(膵腫瘍・リンパ節・粘膜下腫瘍など)を対象にしてEUSガイド下に専用の穿刺針で病変から組織を採取する方法である1)2).1992年にVilmannら3)により膵癌に対して初めて臨床応用されて以降,本邦においても2010年に保険収載されたこともあり,急速に普及してきている.
EUS-FNAの主な適応は,EUSで描出される腫瘤性病変の良悪性の鑑別診断(Fig. 1a),化学・放射線療法前のhistological evidenceの取得,癌の進展度診断のための腫大した縦隔・腹腔リンパ節や少量の胸・腹水の採取などによる転移の有無の診断,などである.EUS-FNAの禁忌は,EUSで病変が明瞭に抽出できない場合,出血傾向がある場合,穿刺経路に腫瘍や血管が介在している場合,播種が危惧される場合,などである.消化管病変への適応としては,消化管粘膜下腫瘍の質的診断,特にGIST(gastrointestinal stromal tumor)か否かの診断に有用であるが,そのほかにリンパ節転移の有無,通常の内視鏡下生検では採取困難な粘膜下の要素の強い上皮性腫瘍,術後の吻合部やその周囲の再発の診断などに有用である.
ボーリング生検(boring biopsy)
著者: 赤松泰次
ページ範囲:P.665 - P.665
ボーリング生検とは 通常の鉗子生検では粘膜および粘膜下層の一部しか採取できないため,病変の主座が粘膜下層以下の深部に存在する場合には目的とする組織標本を採取することが困難である.ボーリング生検とは,粘膜表面から深部に向かって同一の部位より鉗子生検を繰り返し,深部に存在する病変の組織を採取する方法である.
ボーリング生検の適応 ボーリング生検の適応は,GIST(gastrointestinal stromal tumor)をはじめとする粘膜下腫瘍,通常の鉗子生検では癌陰性のスキルス胃癌1),粘膜下腫瘍様形態を呈する胃癌などが疑われる症例である.一方,悪性リンパ腫やカルチノイド腫瘍は粘膜下腫瘍様にみえても,腫瘍組織が比較的表層にも存在するため通常の鉗子生検でも腫瘍細胞の採取が可能な場合が多い.
CT colonography/enterography
著者: 平田一郎
ページ範囲:P.666 - P.667
Helical CTの発達により腸管の三次元表示が可能となり,Vining1)はこの方法を応用したCTC(CT colonography)の報告を行った.その後,多列検出器型CT(multi detector-row CT;MDCT)が開発され空間画像分解能は飛躍的に向上した.近年,MDCTを用いた消化管の新しい検査法はCTCやCTE(CT enterography)と呼ばれ,大腸や小腸に対する低侵襲検査として注目されている.しかし,現時点ではX線被曝や病変描出精度など改良すべき点がまだ多く残されている.
CT colonography/enterographyの手順 CTCの前処置として,注腸の前処置であるBrown変法が用いられる.また,大腸内視鏡検査後にCTCを施行する場合はPEG(polyethylene glycol)などの腸管洗浄液が使用される.前処置法によっては残渣や残液が問題となるが,その場合は硫酸バリウムやガストログラフィンなどの陽性造影剤を検査前日などに経口投与し,残渣・残液を標識するfecal tagging法が用いられる.標識された残渣・残液はelectronic cleansingによる画像処理にて消去される.本検査の精度を高めるには腸管を十分拡張させた状態でMDCTを行うことが必要である.CTCでは,空気あるいは炭酸ガスを経肛門的あるいは内視鏡検査時に注入し,大腸を拡張させる.CTEでは,経口造影剤(PEGや0.1% w/v硫酸バリウム含有ソルビトール溶液)を検査前に多量に服用させ小腸を拡張させる.
MREC(MR entero-colonography)
著者: 藤井俊光 , 渡辺守
ページ範囲:P.668 - P.668
小腸大腸病変の診断法の1つとして近年MRI(magnetic resonance imaging)が注目されている.MRIは肛門病変や瘻孔など腸管外病変の評価に特に有用であるが,デバイスの進歩による撮影時間の短縮で蠕動の影響が最小限となり,撮影法・前処置の改良から腸管内・壁内病変の存在診断・活動性の評価が可能となった.なにより,他の消化管の検査では多くなりがちな放射線被曝を回避できるのが最大のメリットであり,欧州をはじめとして腸管病変の診断においてMRIを第1選択のひとつとする動きがある.若年者の多い炎症性腸疾患ではよい適応となる.
MREC(MR entero-colonography)はこれまでのMR enterographyの前処置の改良により小腸と大腸を同時に評価することができるようになった(Fig. 1, 2)1).ゾンデ挿入や注腸の必要がなく非侵襲的で簡便である.また,MRECに引き続き内視鏡検査を行うことで,小腸病変のスクリーニングと大腸の微細病変および組織学的な評価が同日で可能となり,実臨床上簡便かつ有用である.ただしニフレック®の小腸通過時間に個人差があり,上部小腸の評価が困難なことがある.
サーベイランス大腸内視鏡(surveillance colonoscopy;SC)
著者: 岩男泰 , 松岡克善
ページ範囲:P.669 - P.669
大腸癌発生のハイリスク群に対し,定期的に大腸内視鏡検査を施行して癌発生を監視することをいう.広義には大腸癌手術後症例,大腸癌・腺腫の内視鏡摘除後症例,家族性腺腫症などが対象になるが,一般にSC(surveillance colonoscopy)という用語を使用する場合には狭義の対象として炎症性腸疾患,特に潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)に定期的に施行する大腸内視鏡をいうことが多い.
UCの大腸癌合併の危険因子として罹患年数の長さ,罹患範囲の広さ,大腸癌の家族歴,原発性硬化性胆管炎の合併,若年発症などが報告されている1).
step(random)biopsy,target biopsy
著者: 松田圭二 , 渡邉聡明
ページ範囲:P.670 - P.670
潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)の大腸癌累積発生率はUC罹病期間10年で2%,20年で8%,30年で18%と報告されている.サーベイランスは,年1回大腸内視鏡検査を行って,UC合併腫瘍を早期発見し,早期治療を行うという戦略である.
サーベイランス法として,step biopsyとtarget biopsy(狙撃生検)がある.
画像所見〔食道〕
食道狭窄(esophageal stenosis)
著者: 高木靖寛
ページ範囲:P.671 - P.671
食道狭窄の原因には,先天性奇形のほかに器質的な悪性疾患によるものと良性疾患によるものがある.頻度の高いものは,癌をはじめとする悪性腫瘍によるもので,造影検査では全周もしくは一部が境界明瞭な狭窄で,不整な潰瘍や狭窄部の辺縁不整を認める.狭窄の両端には周堤を伴うこともあり,潰瘍限局型(2型)や潰瘍浸潤型(3型)の進行癌の所見である(Fig. 1).良性疾患に伴う狭窄の多くは,造影検査で狭窄中心へ緩やかに移行する境界不明瞭な先細り様変化で,滑らかな粘膜面を呈し,辺縁の不整に乏しい.逆流性食道炎に伴うものでは,肛側に裂孔ヘルニアを伴い,狭窄部にはまれに瘢痕による小囊形成がみられる.Barrett食道では中・下部食道に狭窄を形成し,肛側には裂孔ヘルニアとともに特徴的とされる溝状,地割れ状の軽微な陰影斑(reticular pattern)が認められる1).まれに高位狭窄もみられる.非対称性に偏位した狭窄では悪性腫瘍の存在に注意を要する.そのほか,酸やアルカリなどの腐食性化学物質の嚥下による腐食性食道炎では高率に狭窄形成がみられ,重度のカンジダ食道炎などの感染症(Fig. 2),放射線治療後の晩期障害,長期の胃管挿入,まれなものでは食道粘膜剝離,皮膚疾患の水疱性食道病変(pemphigus,pemphigoid)などの報告がある2).幅の狭い輪状の狭窄には食道webとSchatzki輪がある.前者は上部~下部食道の扁平上皮領域にみられる膜様狭窄3)で,後者はヘルニアを伴う下部食道の扁平上皮と円柱上皮の接合部に認められ,ほぼ対称的な切れ込み状の狭小化を呈する(Fig. 3)4)
食道柵状血管(esophageal pallisade vessels)
著者: 小山恒男
ページ範囲:P.672 - P.672
De Carvalho1)は胃噴門部粘膜下層の血管が食道胃接合部で粘膜固有層に入り込み,下部食道の粘膜固有層を2~3cm(平均2.5cm)口側へ走行し,再び粘膜下層に移行することを報告した.内視鏡では下部食道に見られる柵状血管がこれに相当する.
食道胃接合部(esophagogastric junction;EGJ)は常に収縮しているため,内視鏡観察が難しく,柵状血管の観察にはコツを要する.被験者に大きく息を吸ってもらうと縦隔が陰圧になり,食道が拡張すると同時にEGJが口側へ移動するため,EGJの観察が容易となる.また,食道拡張に伴って上皮が薄くなるため,柵状血管も観察しやすくなる.
食道胃接合部(esophagogastric junction;EGJ)
著者: 春間賢
ページ範囲:P.673 - P.673
食道胃接合部(esophagogastric junction;EGJ)は,食道と胃の接合部を意味し,粘膜接合部と筋層構造上の接合部(移行部)から成り立っている.横隔膜の高さとほぼ一致するが,内視鏡による粘膜面からの観察,X線像や解剖学的な周囲臓器の位置関係からの観察により,それぞれ異なった部位を意味している可能性がある.臨床的には,内視鏡検査で観察される食道粘膜と胃粘膜の接合部,X線検査で観察される管状の食道が胃に入る解剖学的な接合部,外科手術時に観察される食道の内輪筋と胃の深部の厚い筋層との接合点の三者がEGJとしてが経験される.通常は内視鏡検査で粘膜面から食道胃接合部を観察することが多く,逆流性食道炎やBarrett食道の診断に重要な指標となる.EGJは組織学的にはSCJ(squamocolumnar junction)と呼ばれ,重層扁平上皮である食道粘膜と胃噴門部の腺上皮が一線を画して接しているが,逆流性食道炎や胃炎の食道への波及により,波形,時に火焔状を呈することがある.Barrett食道が生じると,本来のEGJと,食道側へ進展したBarrett粘膜と食道扁平上皮との接合部(SCJ)の2か所に接合部が生じる.
「食道癌取扱い規約」(2008年10版補訂版)1)では,EGJの同定は,内視鏡検査では食道下部柵状血管の下端,あるいは胃大彎の縦ひだの口側終末部,上部消化管造影検査ではHis角を水平に延長した線,あるいは胃のひだの口側終末部で行うと記述されている.欧米では,胃縦ひだの口側終末部がEGJとされているが,日本では2つの基準があり,症例によっては両者がずれることもある.萎縮性胃炎が進行すると胃体部の縦ひだは消失するので,この場合は,柵状血管の下端をEGJとすることが多い.柵状血管を正確に観察するには,胃内の空気を少なくし,被検者に十分に深吸気を行わせることが必要で,深鎮静により意思疎通が図れないときは困難である.大彎のひだ口側終末を基準とするときは,胃内を過伸展させるとひだは縮小あるいは消失するので,できるだけ胃内にスコープを挿入する前に観察する.
食道皮脂腺(esophageal sebaceous gland)
著者: 島田英雄 , 幕内博康
ページ範囲:P.674 - P.675
食道皮脂腺は,異所性の皮脂腺である.通常,異所性皮脂腺は外胚葉系由来のため,口腔,口唇に黄色の顆粒として認められるが,内胚葉由来の食道粘膜に認められることはまれとされてきた.しかし,内視鏡機器や診断技術の向上により,必ずしも,まれな疾患ではなくなりつつある1).
De La Pavaら2)が,1962年に初めて食道皮脂腺に関して,剖検例で200例中4例に病理組織による皮脂腺を確認している.
glycogenic acanthosis
著者: 入口陽介 , 小田丈二
ページ範囲:P.676 - P.676
glycogenic acanthosisは,グリコーゲンを含む扁平上皮の過形成である.通常内視鏡像では,白色調,半透明の類円形,平板状隆起として観察され,大きさは2~10mmで多発することが多い(Fig. 1).近接すると内部に白色調の微細顆粒を認める(Fig. 2).NBI(narrow band imaging)拡大内視鏡像では,正常粘膜よりも密度が低く細い線状の乳頭血管が規則正しく分布している様子が観察できる(Fig. 3).ヨード染色像では,境界明瞭な褐色調に濃染され,内部に点状の不染が規則正しく配列してみえる(Fig. 4).
病理組織像では,明るく豊富な細胞質をもつ有棘細胞の増生する粘膜上皮の肥厚性変化を認める(Fig. 5).ヨードで染色されるのは,粘膜上皮の表層および有棘細胞層内に蓄えられているグリコーゲンがヨウ素に対して化学反応を起こすためであり,有棘細胞が増生するglycogenic acanthosisでは濃染される.
畳目模様(tatamime sign)
著者: 平澤大
ページ範囲:P.677 - P.677
畳目模様(tatamime sign)1)は食道の内視鏡観察時にみられる細かい輪状のひだを指し,畳の模様に類似した所見である.別名,“輪状ひだ(食道)”や“畳の目サイン”と呼称されるニックネームであり,消化器内視鏡用語集2)にも記載されていない.
畳目模様は食道表在癌の深達度診断に有用な所見として,神津3)により「胃と腸」で報告された.通常観察時にも出現するが,ヨード染色後に出現することが多い(Fig. 1).また,意識的に出現させることは難しく,空気量を調節し,弱伸展で待っていると,出現しやすい.正常粘膜では,均一な細い輪状かつ波様のひだとしてとらえられる.pT1a-EP癌では畳目模様は崩れることはなく(Fig. 2),pT1a-LPMの癌病巣では1/2の症例で模様が崩れ,pT1a-MM以深の癌病巣では途絶すると言われている(Fig. 3, 4)4)~6).つまり,癌病巣内の畳目模様が崩れた,もしくは消失した場合はpT1a-LPMより深い浸潤を示唆する所見である.
brownish area,metallic silver sign
著者: 井上晴洋 , 南ひとみ
ページ範囲:P.678 - P.678
brownish areaとmetallic silver signはともに咽頭・食道領域におけるNBI(narrow band imaging)観察における病巣を表現する用語である.上部消化管内視鏡においてNBI観察では,“brownish area(褐色の領域)”としての病巣を拾い上げることができる(Fig. 1)1).brownish areaとして関心領域を拾い上げると,同部をNBIのまま拡大観察を行う.このときbrownish areaの中に異常血管(IPCL-IV,V)を確認できれば,癌を強く疑う.褐色調の色調は,「異常血管(IPCL-IV,V)」と「血管間に介在するbackground coloration sign(BC sign)陽性」の2つのファクターより構成される.NBI拡大内視鏡診断に当たっては,brownish area内の「異常血管(IPCL-IV,V)の増生」が最も重要であり,その所見に加えて,さらにBC sign陽性を認めると癌の可能性が高まる.
metallic silver signは,ヨード染色におけるピンクカラーサイン(Shimizuら)2)のNBI観察における所見である.ピンクカラーサインは扁平上皮癌に特異的な所見であるが,NBIで観察するとよりコントラスト高く観察することができる.metallic silver signが最も役立つのは,まだら食道における癌病巣の拾い上げにおいてである3).アルコール多飲の患者では,粘膜癌の拾い上げに際してNBI観察を行っても,明瞭なbrownish areaが観察されないこと,あるいは不規則,あいまいに広範囲に出現することも多い.そのような病変では,まずは従来から行われているヨード染色を行うと多数の不染帯(このような不明瞭な不染帯を淡染と呼ぶことも多い)が描出される4)5).それらは,ほとんどが低度,高度の上皮内腫瘍に一致する.このヨード不染帯のなかにピンクカラーサインを認めると,粘膜癌を疑う.このピンクカラーサインを高コントラストで強調させる方法が,metallic silver signである(Fig. 2).臨床上の意義はピンクカラーサインと全く同様であるが,その視認性が著しく向上する.metallic silver signは,扁平上皮癌が上皮表面に露出した場合に観察される.血管外(組織内)のヘモグロビンの色調であろうとの研究が進んでいる.
上皮乳頭内血管ループ(intraepithelial papillary capillary loop;IPCL)
著者: 井上晴洋 , 加賀まこと
ページ範囲:P.679 - P.680
胃・大腸の腺上皮では,内視鏡の拡大観察において,表面模様(いわゆるpit pattern)が組織の構造異型を観察する指標となる1).しかし咽頭食道の扁平上皮では,表在血管網が観察できるところに特徴がある.この表在血管網の最表層に位置するものがループ状の毛細血管である.このループ状血管を上皮乳頭内血管(intraepithelial papillary capillary loop;IPCL)と呼ぶ.咽頭および食道の表在血管網は,拡大内視鏡観察所見からFig. 1のように推定される2).NBI(narrow band imaging)では樹枝状血管網は緑色に観察され,IPCLは褐色のループ状の線(brown dots)として,最も浅層に観察される(Fig. 2).IPCLは粘膜固有層の結合織を伴いながら,上皮層に乳頭状にほぼ垂直にせり上がってゆく.IPCLは上皮基底層に近接するがゆえに,基底層の構造異型を間接的ではあるが,如実に反映する.このIPCLの変化は,扁平上皮の性状診断,深達度診断に役立つ.
扁平上皮の内視鏡的異型度診断 上皮内癌では,brownish area(あるいはヨード不染部)の中にIPCLの変化として,“拡張”,“蛇行”,“口径不同”,“形状不均一”の4つの要素が認められることが多い(Fig. 3)3).このIPCLの変化は,健常粘膜から癌まで連続的に観察される4),これがIPCLパターン分類である(Fig. 4).この分類では,IPCL type I(健常粘膜)から,IPCL type V(上皮内癌)までに分類される(Fig. 4の赤枠).
食道裂孔ヘルニア(hiatal hernia)
著者: 眞部紀明 , 春間賢
ページ範囲:P.681 - P.682
食道裂孔ヘルニアは,生理的に存在する食道裂孔をヘルニア門とし,腹膜,食道横隔膜靭帯,胸膜をヘルニア囊とし,胃の一部をヘルニア内容物とする内ヘルニアの一種である.食道裂孔ヘルニアは横隔膜ヘルニアの中で最も頻度が高く,本邦では平嶋1)がX線造影にて滑脱型(sliding type),傍食道型(paraesophageal type),混合型(mixed type)に分類し,現在この分類が広く用いられている(Fig. 1).
診断はX線造影のほか,内視鏡,食道内圧測定により決定されるが,可逆性の症例もあり,またどの程度から食道裂孔ヘルニアとするかの基準がないことが問題である.最近は内視鏡検査で食道裂孔ヘルニアを診断する場合が多いが,その分類には幕内2)の分類が有用である(Fig. 2).同分類法は,上記の問題点を踏まえたうえで,確診(definite)と疑診(minor)と大まかな分類を行っている.また,Hillら3)が提唱している内視鏡反転観察時のflap valveの評価も下部食道括約部機能の判定に有用であり,逆流性食道炎の内視鏡的重症度との間に相関が認められると報告されているが,食道裂孔ヘルニアの直接的な分類法ではない点に注意が必要である.
画像所見〔胃〕
鳥肌胃炎(gooseflesh-like gastritis)
著者: 春間賢
ページ範囲:P.683 - P.684
内視鏡検査時,胃粘膜に,あたかも鶏の毛をむしり取った後の皮膚のように,胃粘膜に均一な小顆粒状隆起が密集して認められるものを鳥肌状胃粘膜と呼び,その所見は胃角部から前庭部に認められることが多い.1962年に竹本ら1)は,20歳女性の胃カメラ所見で初めて“とりはだ”なる表現を用い,その後,“内視鏡的鳥肌現象”として報告した2).硬性鏡検査時によく観察され,若い女性に多く,検査に対して精神的緊張が強いために起こるのではないかと当初は考えられた.そのため,鳥肌状の胃粘膜を認めても,若い女性に多い生理的現象であると理解され,病的意義は少ないと理解されていた.
竹本の報告後,小西ら3)は“鳥肌状胃炎”と呼び,若年者に認められる化生性胃炎の初期像として,さらに,1985年に宮川ら4)は21例の鳥肌状胃粘膜症例を検討した.組織学的に腺窩上皮の過形成がほとんどの症例にあり,リンパ濾胞形成が多く認められたことを報告している.この論文ではHelicobacter pylori(H. pylori)感染との関連は論議されていないが,リンパ濾胞形成が目立つことから,胃粘膜局所の過剰反応の可能性があること,また,組織学的にfollicular gastritisであることなどが指摘されている.しかしながら,一般的には病的意義が明らかでなく,生理的変化と理解されていたためか,胃粘膜に関する内視鏡診断のテキストは数多く出版されているが,ほとんど取り上げられることはなかった.
萎縮性胃炎(atrophic gastritis)
著者: 佐藤俊 , 長南明道
ページ範囲:P.685 - P.685
古くは1920年代のSchindlerらによる内視鏡的胃炎の研究から,本邦では1969年に木村・竹本らにより内視鏡的萎縮移行帯の概念が提唱され,近年ではSydney systemによる胃炎の分類が国際的に広く普及し,萎縮性胃炎は組織学的,内視鏡的所見から他の胃炎と区別されている.
その病態は,H. pylori菌の感染をはじめとする様々な化学的・物理的刺激によって,粘膜固有層への炎症細胞浸潤が慢性的に起こり,固有腺が減少・消失することである.通常は幽門腺領域より始まり,年齢とともに小彎を中心として胃底腺領域まで拡大し,多くの萎縮性胃炎では腸上皮化生を伴う.
蚕食像・ひだ集中・中断・先細り・肥大・融合・接合・周堤
著者: 佐藤俊 , 長南明道
ページ範囲:P.686 - P.687
蚕食像 陥凹型胃癌の表面に露出した陥凹部と非露出部の境界に認められる微細な不整所見で,悪性診断の最も重要な指標である.ひだ集中の有無にかかわらず,癌の辺縁に認められる.癌が粘膜表面に露出すると,同部はびらん性変化を受けて組織の欠損が認められる.この組織欠損部と非癌粘膜上皮の境界が蚕食像であり,未分化型癌(por,sig)でより明瞭に認められる(Fig. 1, 2)1).
ひだの集中 UL-II以上の潰瘍および潰瘍瘢痕に向かって周囲から粘膜ひだが集中する所見である.良性潰瘍では集中する粘膜ひだはなだらかに収束する.陥凹型胃癌でも早期癌を中心にしばしば消化性潰瘍および潰瘍瘢痕を伴い,同部に向かって粘膜ひだが集中する.集中点を認めれば,粘膜ひだ集中といってよく,その先端形状は癌浸潤の深さと量により,以下に述べるように様々に変化する.既存の粘膜ひだの豊富な胃体部大彎側で認めることが多い1)2).
びらん(erosion)
著者: 佐藤俊 , 長南明道
ページ範囲:P.688 - P.689
組織学的には,粘膜筋板を越えない浅い粘膜の組織欠損をびらんと称するが,臨床的には様々な疾患でびらんを生じるため,その鑑別が重要である.
良性びらんには,ストレスや薬剤,H. pylori感染を原因としたものや(Fig. 1, 2),Crohn病などの全身疾患,ウィルスや細菌,梅毒などの感染に伴うものまで多様であるが,びらんが多発することがほとんどである1).
巨大皺襞(giant fold,giant rugae)
著者: 浜田勉
ページ範囲:P.690 - P.690
巨大皺襞には明確な定義はないが,腫大と屈曲蛇行を呈するひだのことをいい,ひだ間の溝は狭く,屈曲蛇行が強まれば大脳回転様所見を呈する.X線的には適度に胃壁が伸展した二重造影像において幅が10mm以上のひだを,内視鏡的には十分な送気によっても腫大して観察されるひだを巨大皺襞と診断しているが,その概観をとらえるにはX線像が適している.
巨大皺襞は種々の疾患で認められる1)が,それ自体は良性あるいは悪性を意味するものではない.巨大皺襞を裏打ちする病理組織学的変化2)は疾患によって異なり,(1) 胃腺の肥大または過形成によるびまん性の肥厚(肥厚性胃炎,Ménétrier病,Cronkhite-Canada症候群),(2) 粘膜間質の浮腫(急性胃炎)や種々の細胞浸潤による粘膜・粘膜下層の肥厚(悪性リンパ腫),(3) 粘膜下層や筋層の線維性組織増生に伴う収縮(スキルス型胃癌),(4) 漿膜側からの炎症の波及(急性膵炎)などが認められるが,いくつかの機序が重なり単純でないこともある.臨床的に巨大皺襞を認めた場合,胃壁の硬化を伴っているか,否かを鑑別3)することが重要である.
稜線状発赤(Kammrötung)
著者: 岡﨑幸紀 , 竹尾幸子
ページ範囲:P.691 - P.691
ドイツ語のKammrötungである.表層性胃炎の胃鏡所見として,1956年刊行のHenning Nの書に記されている1).胃の皺襞の頂上を,幅をもった発赤が帯状に続いている所見である.
わが国では胃鏡が普及しなかったこと,胃カメラでは診断困難であったことから,ファイバースコープの時代になった1970年代の後半からこの所見が記載されるようになった.欧米では体部を中心に皺襞頂上部にみられているが,日本では前庭部大彎を中心に,数条の縦走する帯状発赤として認められた.
RAC(regular arrangement of collecting venules)
著者: 八木一芳
ページ範囲:P.692 - P.692
RAC(regular arrangement of collecting venules)とは内視鏡的に“胃体部に集合細静脈が規則的に配列する像”を指す1)2).遠景では“無数の点”として視認され(Fig. 1),近接では“ヒトデ状の血管模様が整然と配列する像”として視認される(Fig. 2)1).このようなRAC像が胃体部全体に観察される場合をRAC陽性としてH. pylori非感染の正常胃と判定する1)2).
RAC陽性の場合は95%の正診率でH. pylori非感染の正常胃である1)2).十二指腸潰瘍など萎縮領域が遠位側のみのH. pylori感染胃では体上部にはRAC類似内視鏡像(ニセRAC)が観察されることがある.これは前庭部優位胃炎で体上部まで炎症がほとんど及んでいないためである.このような症例でも体下部ではRAC像が消失していることが多い.RAC陽性か否かの判定は体下部で行うことを筆者は推奨している(Fig. 3).典型的なH. pylori非感染の正常胃では胃角から前庭部小彎の近位側にもRAC像が観察される(Fig. 4)1).
light blue crest
著者: 上堂文也
ページ範囲:P.693 - P.693
H. pylori(Helicobacter pylori)の持続感染は,胃粘膜の萎縮を惹起し腸上皮化生を生じさせる.胃の腸上皮化生は,分化型胃癌発生のリスクと密接に関連することが示されている.通常内視鏡で胃の腸上皮化生は軽度の隆起,もしくは平坦な褪色調の領域,または陥凹した同色または軽度発赤調の領域として認められるが,正確な診断は困難とされていた.胃の腸上皮化生をNBI(narrow band imaging)で拡大観察すると,上皮の辺縁部(表面)に青白色調の光の線を認める(Fig. 1).これが,LBC(light blue crest)であり,“上皮の表層を縁取る青白い細い線”と定義されている1).同部を生検すると高率に腸上皮化生を認め,H. pylori陽性胃炎例において腸上皮化生を診断するうえで有用な内視鏡所見である.
NBIでは400~430nmと515~555nmの狭帯域光を照射し,前者の反射画像を緑と青色に,後者を赤の疑似カラーに割り当てている.LBCは主に400~430nmの光が強く反射することによって生じているため,緑と青の疑似カラーの合わさった明るいシアン色(light blue)に見える.腸上皮化生表面の刷子縁の繊毛様構造による光の反射特性の違いがこのような現象を生じさせているのではないかと推測されている.LBCを認める腸上皮化生粘膜は多くが畝状~乳頭状の表面構造で,これがcrest(隆起状のものの頂部)の名前の由来にもなっている.しかし,陥凹型の腸上皮化生などで星芒状~線状の腺窩開口部にLBCを認めることもあり(Fig. 2),0-IIc型早期胃癌との鑑別のうえで重要である.
surface pattern
著者: 八尾建史
ページ範囲:P.694 - P.695
本用語は内視鏡で観察される表面構造を指す.標準的な白色光内視鏡観察にインジゴカルミン色素撒布法を併用すると,表面構造が高いコントラストで描出される(Fig. 1).色素撒布法により視覚化される正常粘膜における表面構造は胃小区構造,胃小溝である.
局在病変の診断に用いる表面構造は,大まかな凹凸・類小区構造や境界線の性状,周囲の粘膜や集中するひだの所見などから成り,局在病変の質的診断や早期胃癌の境界診断・深達度診断などに有用である1).
vascular pattern
著者: 八尾建史
ページ範囲:P.696 - P.697
vascular patternとは,内視鏡で観察される血管の形態学的所見を指す1).標準的な白色光を用いた内視鏡観察で視覚化される血管は,正常胃粘膜では,集合細静脈CV(collecting venule)である.萎縮性胃炎では,集合細静脈に加えて粘膜下層の静脈(vein)が視覚化される(Fig. 1).
標準的な白色光で視覚化されるvascular patternは,Helicobacter陽性胃炎(RACの項を参照)・萎縮性胃炎(Fig. 1)・癌の存在診断・境界診断(Fig. 1)2)に有用である.
demarcation line
著者: 八尾建史
ページ範囲:P.698 - P.698
demarcation lineとは,一般的には,境界線,分画線,分界線を指し示す用語である.局在した粘膜病変の拡大内視鏡診断を行う際の指標に用いる場合,局在病変の背景粘膜と病変に存在する明瞭な境界線をdemarcation lineと称する(Fig. 1)1).demarcation lineの有無を判定するには,背景粘膜と病変の間に微小血管構築像〔MV(microvascular)pattern〕または表面微細構造〔MS(microsurface)pattern〕の急峻な変化(abrupt change)を認める場合を,demarcation lineありと判定する.
demarcation lineは,VS classification systemによる癌・非癌の診断に有用な指標である2).それによると,demarcation lineの内側にirregular MV patternやirregular MS patternが存在する場合を癌と診断する(Fig. 2).demarcation lineは,臨床的には胃炎と胃癌の鑑別診断3)4)や早期胃癌の境界診断5)に有用な所見であり,発赤した病変については,demarcation lineが存在しない場合は,非癌と診断することができ,陰性的中率(negative predictive value)が高い指標である.
white zone
著者: 八木一芳
ページ範囲:P.699 - P.700
white zone1)2)とはNBI(narrow band imaging)拡大内視鏡観察で観察される粘膜模様を形成する白っぽい縁を指す(Fig. 1,矢印).血管を内包する粘膜模様の縁取りをするwhite zone(Fig. 1)と網目様血管の内側に輪状に観察されるwhite zone(Fig. 2)に大きく分かれるが,上皮の状態によってwhite zoneは多彩な像を示す.前者(Fig. 1)は血管を骨組みとした間質の周りに乳頭・顆粒様に上皮が配列した構造であり,後者(Fig. 2)は網目状に走行した血管を骨組みとした間質の中に円筒状の腺管が組み込まれた構造である.
NBI拡大観察で真上から観察した場合,腺窩辺縁上皮に入るNBI光は血管には当たらず,散乱により白縁,すなわちwhite zoneとして観察される(Fig. 3)2).しかし斜めからNBI拡大観察した場合は窩間部から腺窩上皮に抜けるNBI光が血管に当たらず,散乱によりwhite zoneとして観察される(Fig. 4)2).すなわちNBI光の方向によってwhite zoneを表す粘膜の解剖学的部位は異なる.
画像所見〔腸〕
網目像(fine network pattern;FNP)
著者: 斉藤裕輔
ページ範囲:P.701 - P.702
1965年,Williams1)はX線二重造影像上,大腸粘膜表面にみられる最も微細な模様を「innominate grooves」と命名し,ルーチン検査では約1/4に描出され,小範囲に認められるに過ぎない,と報告した.1971年,刈谷,西澤ら2)は「innominate grooves」から形成される大腸粘膜の微細な模様をFNP(fine network pattern)と名付け,大腸粘膜の微細所見の基本像と位置づけた.彼らの努力によりこのnetwork patternの描出率は約70%へと向上した.
FNPの1区域は20~100の腺開口(pit)から形成されている.また,FNPは上行,横行,下行結腸においては平均3×1mm,S状結腸では四辺形に近くなり,大きさは2×1mm程度であるとされている(Fig. 1).FNP描出率の向上により,微細・微小病変の描出・鑑別診断が可能となり,潰瘍性大腸炎,腸結核,Crohn病,虚血性腸炎など炎症性腸疾患における病変の推移や治療効果の判定が可能となり,本邦のX線診断学の発展に大きく寄与した.
白色絨毛(white villi)
著者: 青柳邦彦
ページ範囲:P.703 - P.703
内視鏡観察時,十二指腸あるいは小腸にびまん性あるいは皺襞主体の淡い白色調粘膜を示すものを白色絨毛(white villi,Fig. 1),撒布性に小さく明瞭な白点を示すもの撒布性白点(scattered white spots,Fig. 2)と呼んでいる1)2).いずれの白色調変化も,腸に吸収された食事性脂肪の転送障害を反映している2).白色絨毛では,吸収された脂肪の絨毛粘膜におけるリンパ管(中心乳糜管)への吸収転送障害が原因となっている.撒布性白点では,絨毛の中心乳糜管から中枢側への転送障害あるいは遅延が原因となり,中心乳糜管が拡張し白点を示す.腸の中心乳糜管には弁がないため,腸リンパ管拡張症では中枢側リンパ管の狭窄により末梢側リンパ流障害とリンパ管拡張が生じ,白色絨毛や撒布性白点を認める.
白色絨毛と撒布性白点は必ずしも病的所見ではなく,健常者でも観察されることがある(Fig. 3)3).食事性脂肪摂取量が多い場合や胃運動能が低下している場合には,脂肪の吸収・転送が遅延する結果みられる.また,脂肪摂取から内視鏡検査までの時間が短い場合にも観察される4).一方,腸リンパ管拡張症では食事内容や時間とは関係なく認められる所見である.
パイエル板(Peyer's patch)
著者: 斉藤裕輔 , 富永素矢
ページ範囲:P.704 - P.705
パイエル板は,小腸に存在する孤立リンパ小節の集合体で,JC Peyer(1677, 1681)により初めて記載された1).Peyer板はそのほとんどが回腸にみられ,回腸終末部に向かってその数や大きさを増し,腸間膜付着部の反対側に分布する.一般的にPeyer板は長さ4~5cm,幅1cmの小判型で,形状は雑多であり,肉眼的に認識が困難なものも多いとされるが,腸管の長軸に沿った網目像や顆粒物(リンパ小節)の集合する長楕円形のわずかな隆起として認められ,同部でKerckring皺襞は消失している.個数は年齢により異なるが,12歳頃に最多となり,その数は100を超える.一般には,1個のPeyer板は20~400個のリンパ小節から構成されており,組織学的には,粘膜固有層および粘膜下層に腫大したリンパ濾胞が集簇して認められる2).
X線検査では,Peyer板は腸間膜付着対側にKerckring皺襞の消失を伴った周囲の絨毛像とは異なる顆粒像や粗な網目像として描出され,側面像では腸管壁の辺縁不整所見として認められる(Fig. 1).内視鏡検査では,腸間膜付着対側に長軸方向に伸びる島状の顆粒状または平坦な蒼白調粘膜として認められる.色素撒布やNBI(narrow band imaging)を併用すると,周囲粘膜とは絨毛構造,密度が明らかに異なる顆粒の集簇した領域として,明瞭に観察される(Fig. 2).
緊満感(expanding appearance)
著者: 河野弘志 , 鶴田修
ページ範囲:P.706 - P.706
大腸癌の治療方針を決定するうえで重要な,SM高度浸潤癌を疑う通常内視鏡所見の指標として,「大腸癌治療ガイドライン医師用,2010年版」には“緊満感,びらん,潰瘍,ひだ集中,変形・硬化像”が記載されている1).本稿ではその中で,緊満感を呈する病変の病理学的所見,内視鏡診断におけるその所見の意義,実用性について述べる.
緊満感とは 緊満感とは通常内視鏡観察において病変全体またはその一部において,表面が平滑で光沢を有し,膨張性に発育している印象を受ける肉眼所見のことである.この所見はインジゴカルミン撒布を行うと,病変表面の模様が詳細に観察され(Fig. 1),光沢も感じなくなるため,通常観察で評価することが望ましい.また,腸管の伸展具合が不十分な状態では粘膜厚が厚くなり,癌がSM高度に浸潤していてもその存在が隠れてしまう可能性がある.そのため,緊満感は腸管を十分に伸展したうえで判定する必要がある.
non-lifting sign
著者: 田中信治
ページ範囲:P.707 - P.707
non-lifting signとは,Unoら1)によって提唱された用語であり,大腸腫瘍の粘膜下層に生理食塩水を局注しても病変周囲の粘膜は膨隆するにもかかわらず,病変自体は沈んだような状態を呈し挙上しないことを示すものである.その主たる原因は癌浸潤に伴う間質反応や病変直下の粘膜下層の線維化である.non-lifting sign陽性の病変は,内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection;EMR)が不能であることを意味しており,特に浸潤癌の場合は癌深部断端陽性となり確実に不完全摘除となり癌の壁内遺残を起こすため,EMRは禁忌である.
大腸の粘膜は薄く,その厚さは約500μm程度であり,大腸腫瘍,特に表面型腫瘍をしっかりと鉗子生検すると粘膜筋板が破壊され粘膜下層にnon-lifting sign陽性の原因となる線維化が生じる(Fig. 1).したがって,拡大観察によるpit pattern診断や画像強調観察(narrow band imaging;NBI/flexible spectral-imaging color enhancement;FICE)などでoptical biopsyを行い,完全摘除生検としての内視鏡治療の適応があるかどうかを判定することが推奨されている.なぜならば,不用意な鉗子生検のために,EMRで瞬時に摘除できる病変に対して,近年普及してきた内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)を導入しなくてはならなくなるからである.生検がどうしても必要な場合は,粘膜下層に影響が及ばないような工夫が必要であろう.
白斑(white spots)
著者: 山野泰穂
ページ範囲:P.708 - P.708
白斑は白点輪とも言われ,大腸腫瘍の周囲正常粘膜に認められる白色点状の所見である(Fig. 1, 2).その部分の病理所見としてはfoamy cellの集合とされ,SM癌の指標であると報告された経緯があった1)2).
しかしその後の検討で,SM癌以外にも認められるとの報告もあり,実臨床的には腺腫性病変においてもしばしば経験する所見である.工藤3)は大腸上皮性腫瘍4,363病変における白斑の出現に関する検討で,腺腫2.5%,早期癌13.2%,進行癌61.8%としており,癌の進行度により頻度が高くなるとしている.また井上ら4)も同様な報告をしており,腺腫であっても高異型度腺腫のほうが,出現頻度が高い傾向があることを指摘している.加えて,肉眼形態別では隆起型により高く,腫瘍径が大きいほどより高い傾向を示すとした.一方,工藤らはLST(laterally spreading tumor)では腺腫,早期癌とも同等の白斑の出現率であったと報告しているが,LSTではある程度腫瘍径が大きい病変も含まれており,LST顆粒型と非顆粒型でも異なることが示唆される.以上のように白斑の出現に関してある程度の傾向があることが示されているが,決して癌に特異的な所見ではないことも理解する必要がある.
陥凹局面
著者: 山野泰穂
ページ範囲:P.709 - P.709
1977年に狩谷ら1)が大腸における平坦・陥凹型早期癌“IIc”を発見して以来,当初は“幻の癌”とされたが徐々に症例報告が増え“実在する癌”として認識され,大腸IIc研究会を通じてその臨床病理学的検討が成されてきた.その結果,IIc病変の多くは高分化あるいは中分化腺癌であり,悪性度や転移率の高さ,adenoma carcinoma sequenceとは異なる癌の発育進展をとること(de novo)などの素性が明らかになった2).
その一方で,IIa様の病変で色素撒布によりその頂部に色素の溜まりを呈する,なだらかな凹部を伴う腺腫性病変(いわゆるIIa+dep)3)が見い出されるようになったことで,前述の真のIIcとの区別のために陥凹の定義が必要となった.
縦走潰瘍(longitudinal ulcer)
著者: 別府孝浩 , 松井敏幸
ページ範囲:P.710 - P.710
縦走潰瘍とは,腸管の長軸方向(縦)に沿った潰瘍を意味する.内視鏡的には,細くて長い白苔を有する潰瘍である.典型的な縦走潰瘍を呈する疾患として,Crohn病,虚血性大腸炎がよく知られるが,そのほかの腸炎でもみられる.
Crohn病の診断基準改訂案(渡辺班,2011年)では,縦走潰瘍とは『4~5cm以上の長さを有する腸管の長軸に沿った潰瘍』と定義している(Fig. 1)1).小腸病変は,典型的には縦走潰瘍を腸間膜の付着側に形成する.Crohn病の大腸病変は,幅の広い縦走潰瘍(Fig. 2)を形成し,治癒とともに片側性変形を呈する.
cobblestone appearance
著者: 平井郁仁
ページ範囲:P.711 - P.711
cobblestone appearanceは,敷石像,敷石様外観とも呼ばれ,Crohn病(Crohn's disease;CD)に特徴的な形態所見である.本邦におけるCDの診断基準では,縦走潰瘍とともに主要項目の1つとして挙げられている1).他の疾患が除外できればcobblestone appearanceの存在のみでCDと確定診断することが可能である.したがって,画像所見でCDのcobblestone appearanceか否かを読み取ることが鑑別診断のうえで非常に重要である.その成因は,網目状に縦横に走行する潰瘍によって囲まれた残存粘膜が,島状に膨隆したものが集合することによる.通常は活動性の縦走潰瘍部に認め,名称は西欧の石を敷きつめた歩道に由来する.局所の炎症が高度な時期にみられ,治療により,所見は軽快ないし消褪する.炎症性ポリープの密在との判別は難しい場合があり,通常はこの場合もcobblestone appearanceと呼ぶが,縦走潰瘍の並存がない点が異なる.小腸では典型的なcobblestone appearanceを呈する頻度は低いが,CDでしかみられない極めて特異性の高い所見と言える(Fig. 1).
大腸では小腸より頻度が高い所見で,上行結腸や下行結腸(Fig. 2)で典型像を認めることが多い.高度のcobblestone appearanceは,難治化の要因でもあり,治療に抵抗して,狭窄や瘻孔を来すことが多い.したがって,大腸に高度のもしくは広範囲にcobblestone appearanceを認める症例では,抗TNF-α抗体など有効な治療を早期に行う必要がある.
輪状潰瘍(annular ulcer,circular ulcer)
著者: 清水誠治
ページ範囲:P.712 - P.712
輪状潰瘍(annular ulcer,circular ulcer)は腸管短軸方向に走行する潰瘍で,典型的な場合には全周性の病変である.幅が広くなると帯状潰瘍(girdle ulcer)と呼ばれる.潰瘍または瘢痕によって対称性の狭窄を来した場合は輪状狭窄と表現される.小腸・大腸でみられることが多く,この所見がみられる疾患としては腸結核,NSAID(nonsteroidal anti-inflammatory drug)起因性腸炎,非特異性多発性小腸潰瘍症(慢性出血性小腸潰瘍症),急性出血性直腸潰瘍が代表的であるが,Crohn病,虚血性大腸炎,虚血性小腸炎,放射線性腸炎,アメーバ性大腸炎などでもみられることがある1).
腸結核は右側結腸,回盲部,回腸に好発する.連続性のある輪状潰瘍よりは不整形小潰瘍が非連続的に輪状配列する場合が多く(Fig. 1),連続した潰瘍を形成する場合は幅が広い帯状潰瘍であることが多い(Fig. 2).未治療の段階でも周囲に小型の炎症性ポリープや萎縮瘢痕帯が併存することが多い.NSAID起因性腸炎でも輪状潰瘍がみられることがあり,大腸においては半月ひだ上(Fig. 3),小腸では輪状ひだ上に浅い潰瘍が形成される(Fig. 4).非特異性多発性小腸潰瘍症は慢性出血による貧血と低蛋白血症を来す疾患で回腸に浅い輪走,ないし斜走する潰瘍が多発する.虚血性大腸炎では縦走性の病変が有名であるが,半月ひだ上に紅暈を伴うびらんがみられることがある(Fig. 5).急性出血性直腸潰瘍は長期臥床中の患者で突然に無痛性の大量出血を来す疾患であり,歯状線近傍の下部直腸に限局して輪状,帯状潰瘍や輪状配列する類円形ないし不整形潰瘍が特徴的である.
skip lesion
著者: 別府孝浩 , 松井敏幸
ページ範囲:P.713 - P.713
Crohn病の診断基準改訂案(渡辺班,2011年)1)によると,臨床所見における消化管腸病変の特徴に“非連続性または区域性病変(skip lesion)”がある.この概念は,潰瘍性大腸炎が連続性病変を特徴とし,両者を鑑別する際に重要な所見と考えられてきた.しかし実際には鑑別能がそれほど高くないことが判明し,今日ではCrohn病診断基準からは外れることになった.Crohn病においては,縦走潰瘍,敷石像,狭窄が正常粘膜を介し,非連続性に認められれば診断の参考所見となる.
通常,病変と病変が正常粘膜像(X線,内視鏡所見あるいは肉眼的に)を有する腸管を介して離れて存在する際にskip lesionと呼ばれる(Fig. 1).この用語で問題になるのは,X線像または内視鏡像で病変間に介在している正常粘膜と判断した部位からgranulomaが検出されたとき,切除標本で正常粘膜と思われる領域を詳細に検索した際にgranulomaの他に微小びらんや浅い瘢痕などが証明された場合である.これらの部位を正常粘膜としてよいか,skip lesionの概念に当てはまるかについては明確な答えはない.
萎縮瘢痕帯(scared area with discoloration)
著者: 松川正明
ページ範囲:P.714 - P.714
萎縮瘢痕帯という用語は,「胃と腸」誌12巻12号「大腸結核のX線診断」の論文に白壁ら1)により「潰瘍瘢痕を伴う萎縮帯」として初めて記載された.潰瘍瘢痕に伴う萎縮帯は一般的に使用するには長いので“萎縮瘢痕帯”という表現が慣用的に用いられ,現在は一般的に使用されている.
腸結核の診断は切除標本で組織学的に乾酪壊死を病変部またはリンパ節に認めることによる.乾酪壊死を有する病変の肉眼所見と非乾酪壊死のみを有する病変の肉眼所見が非潰瘍部で極めて類似していた.また,肉芽腫を認めない病変でも乾酪壊死を認めた病変とも肉眼所見が類似していた.白壁ら1)はこれらにより,乾酪壊死を認めなくても,萎縮瘢痕帯を認めた場合に腸結核が治癒した病変と診断が可能であると述べた.このような肉眼所見を有する病変は腸結核以外にないことも腸結核の診断を広げた大きな要因となった.
偽膜(pseudomembrane)
著者: 大川清孝 , 井上健
ページ範囲:P.715 - P.715
偽膜とは黄白色の扁平あるいは半球状の低い隆起であり,組織学的にはフィブリン,粘液,好中球,上皮残渣,壊死物質などから成る炎症性物質が粘膜表面に付着した隆起である.形態的に偽膜を形成した腸炎を偽膜性腸炎と総称する.そのほとんどがClostridium difficile(Cd)による腸炎であるが,他の病原微生物(ブドウ球菌,腸管出血性大腸菌,赤痢アメーバ,サイトメガロウイルス)による感染性腸炎や虚血性腸炎でも偽膜や偽膜様所見を呈することがある(Fig. 1)1).しかし,通常偽膜性腸炎と言えば偽膜を形成するCd腸炎を指す.
偽膜性腸炎は基礎疾患をもつ患者が広域抗菌薬を服用後に発症することが多い.菌交代現象によりCdが増殖して毒素を産生し,偽膜性腸炎を発症する.診断は嫌気培養でCdを検出,あるいは便中Cd毒素の検出による.大腸に主に認められるが,炎症性腸疾患の手術後では小腸に病変を認めることがある.
画像所見〔全消化管〕
側面変形(lateral deformity)
著者: 高木靖寛
ページ範囲:P.717 - P.717
側面変形とは,癌のX線二重造影側面像における消化管壁の内腔側への変形であり,深達度診断の客観的な指標とされ,治療方針の選択に重要な所見である.管腔が十分拡がった二重造影像で判定され,その成因は,癌細胞量とそれに伴うfibrosis,反応性のリンパ濾胞増生などによる病変部の硬さと周囲の非癌部の消化管短軸方向への伸展性の差で現れると考えられている.
側面変形の形態と癌の浸潤量,深さとは密接な相関があり,牛尾ら1)は消化管癌の側面像における一側変形の型を4つのパターンに分類している(Fig. 1).すなわち,無変形,角状変形,弧状変形,台形状変形であり,台形状変形は固有筋層またはそれ以深に浸潤した進行癌の所見である.弧状変形では癌巣が粘膜下層にmassiveに浸潤しているかまたは固有筋層に少量浸潤している所見,角状変形では粘膜下層への中等量の浸潤,無変形では癌巣は粘膜固有層にとどまっているか,粘膜下層に極少量浸潤したものと報告している.牛尾らの分類は主に大腸癌の深達度診断で検討されてきたが,食道癌,胃癌でもその有用性が報告されている.
血管性病変(vascular lesions)
著者: 大宮直木 , 後藤秀実
ページ範囲:P.718 - P.719
消化管の血管性病変(血管奇形・腫瘍)は,発生部位により (1) 動脈性,(2) 動静脈吻合または毛細血管性,(3) 静脈性に分けられる1).(1) にはDieulafoy病変や動脈瘤,(2) にはangiodysplasia/angi(o)ectasia,遺伝性出血性末梢血管拡張症〔hereditary hemorrhagic telangiectasia(Rendu-Osler-Weber病)〕,胃前庭部毛細血管拡張症〔GAVE(gastric antral vascular ectasia)〕,動静脈奇形〔AVM(arteriovenous malformation)〕,(3) には血管腫,青色ゴムまり様母斑症候群(blue rubber bleb nevus syndrome),phlebectasiaがある.
angiodysplasia/angi(o)ectasia(Moore分類2)type 1 AVM,Fig. 1) 粘膜固有層,粘膜下層の毛細血管(動静脈吻合)が拡張した数mmから1cm大の血管性病変である.用語については,国際疾病・傷害・死因統計分類ICD-10に採用されているangiodysplasiaが国際的に最も頻用されているが,世界消化器内視鏡学会のMST(minimal standard terminology)3.0にはangioectasiaの用語が採用されている.
アフタ,アフタ様潰瘍(aphtha,aphthoid ulcer)
著者: 中川義仁 , 平田一郎
ページ範囲:P.720 - P.721
アフタ(aphtha)とは「日本消化器内視鏡学会用語集第3版」1)によれば「黄ないし白色斑でしばしば紅暈を伴う炎症性変化,粘膜表層の欠損を肉眼的に確認困難な場合がある」と定義されている.この表現によれば,紅暈を伴わないものもアフタと呼ぶことが可能になる.また「胃と腸用語事典」2)によれば「円形ないし卵円形の白苔を有する潰瘍で,その周囲を紅暈が取り囲む病変を指すが,消化器科領域のみならず,皮膚科,耳鼻科,婦人科など,様々な領域で用いられている用語である」と定義されており,また,アフタ様潰瘍(aphthoid ulcer)は「アフタと同義語」とされている.この定義によれば,紅暈を伴わないものはアフタとは言えなくなる.さらに他の論文などで,潰瘍まではいかない紅暈を伴う小さなびらんをアフタ様びらんと表現していることもしばしば見受けられる2)~4).このようにアフタの定義はいまだ明確ではなく,その指し示しているものが各人で異なる曖昧な表現である.明確な定義のために意見集約が必要であると考える2)4)が,本項ではアフタ,アフタ様潰瘍,アフタ様びらんはほぼ同じ病変を指し示すものとし,単なるびらんと区別するために紅暈を伴う小さな潰瘍もしくはびらんを“アフタ様病変”と定義して解説する.
アフタ様病変はほとんどすべての腸炎の初期病変として,もしくは単純に病勢が弱い段階で出現しうる2)~5).大腸ではCrohn病(Fig. 1a),潰瘍性大腸炎(Fig. 1b),感染性腸炎(Fig. 1c),薬剤性腸炎(Fig. 1d),腸管Behçet(Fig. 1e)・単純性潰瘍などの炎症性腸疾患のみならず血管炎や悪性リンパ腫,成人T細胞白血病などでも観察され,原因が判然としない場合はアフタ様大腸炎と診断する場合もある.よってアフタ様病変の形態観察のみで診断を下すことは困難である.
疾患〔咽頭・食道〕
中・下咽頭癌(oro-hypopharyngeal carcinoma)
著者: 藤原純子 , 門馬久美子
ページ範囲:P.723 - P.723
「頭頸部癌取扱い規約」1)によれば,中咽頭は硬口蓋,軟口蓋の移行部から舌骨上縁(または喉頭蓋谷底部)の高さまでの範囲を指し,4つの亜部位(前壁,側壁,後壁,上壁)に分類される.下咽頭は,舌骨上縁から輪状軟骨下縁までの範囲を指し,3つの亜部位〔咽頭食道接合部(輪状後部),梨状陥凹,咽頭後壁〕に亜分類される.
咽頭領域の発癌には,ALDH2(aldehyde dehydrogenase-2)ヘテロ欠損型の非常に強い影響とADH1B(alcohol dehydrogenase-1B)ホモ低活性型,フラッシャー,赤血球MCV(mean corpuscular volume)の増大,高度の喫煙の影響が指摘されており2),食道癌に類似している.さらに,食道癌多発例や食道内ヨード不染多発例も,高危険群である3).
表在型食道癌(superficical esophageal cancer)
著者: 門馬久美子 , 吉田操
ページ範囲:P.724 - P.724
「食道癌取扱い規約」1)によれば,“表在型”とは,病型分類の0型を言い,癌腫の壁深達度が粘膜下層までの癌であり,リンパ節転移の有無は問わないとされている.表在型(0型)は,表在隆起型(0-I型),表面型(0-II型),表在陥凹型(0-III型)の3型に亜分類できる.さらに,0-I型は0-Ipと0-Is(Fig. 1)の2つ,0-II型は,表面隆起型(0-IIa,Fig. 2),表面平坦型(0-IIb,Fig. 3),表面陥凹型(0-IIc,Fig. 4)の3つの亜型から成る.粘膜癌の大半が0-II型を呈するのに対し,粘膜下層癌の多くは,0-I型と0-III型あるいは0-IIc型(主に混合型)を呈する.表在型食道癌は,全食道癌症例の約32%を占め,その約84%は0-II型であり,0-II型の中では,0-IIcが68%を占める2).
表在型食道癌の壁深達度と脈管侵襲・リンパ節転移頻度は,密接に相関しているため,治療法の選択は,主として壁深達度を参考に決定する.このため,治療前の正確な深達度診断3)が必要である.表在型食道癌に用いる深達度亜分類1)では,基本的に粘膜癌(M癌)と粘膜下層癌(SM癌)の2つに分けられる.さらに,M癌は,上皮内癌(T1a-EP),粘膜固有層癌(T1a-LPM),粘膜筋板癌(T1a-MM)の3つに分けられる.SM癌は,粘膜下層の上1/3までの浸潤(SM1),中1/3までの浸潤(SM2),下1/3までの浸潤(SM3)の3つに分類されている.リンパ節転移がほとんどないT1a-EP・LPM癌には,内視鏡治療〔EMR/ESD(endoscopic mucosal resection/endoscopic submucosal dissection)〕を含めた局所的治療が適応である.リンパ節の転移頻度が10%程度のT1a-MM・SM1癌には,標準的治療としては,リンパ節郭清を含めた外科治療を原則とするが,EMR/ESD治療後の病理所見を参考に何らかの追加治療を行う症例が増加している.リンパ節転移を高頻度に伴うSM 2~3癌には,リンパ節郭清を含めた食道癌根治手術が標準治療である.
特殊型食道癌(esophageal cancer,special type)
著者: 諸橋聡子 , 鬼島宏
ページ範囲:P.725 - P.726
特殊型食道癌とは,上皮性悪性腫瘍(carcinoma)のうちで重層扁平上皮癌1)2)以外の組織型を示すことが多い(狭義).非上皮性悪性腫瘍も含めて特殊型食道癌と提示すること(広義)もあるが,通常は非上皮性については,悪性リンパ腫などと個々に称す.特殊型食道癌(狭義)は,扁平上皮癌と関連の深い組織型が多く,類基底細胞癌・癌肉腫・腺扁平上皮癌・粘表皮癌が挙げられ,Barret carcinomaは別項で記載する.また,神経内分泌腫瘍も特殊型食道癌に含まれる.
Barrett食道(Barrett's esophagus)
著者: 山形拓 , 平澤大
ページ範囲:P.727 - P.727
食道胃接合部から連続性に食道へと伸びる円柱上皮をBarrett粘膜と呼び,Barrett粘膜の存在する食道をBarrett食道と呼ぶ1).欧米では生検による腸上皮化生の存在がBarrett食道診断の条件であるが,本邦では腸上皮化生の有無は問わない.Barrett粘膜が全周性に3cm以上あるものをLSBE(long segment Barrett's esophagus,Fig. 1),それ以外をSSBE(short segment Barrett's esophagus,Fig. 2)と定義され,欧米ではLSBEが,本邦ではSSBEが多くみられる.Barrett食道の内視鏡像は,光沢を失ったビロード状の発赤面を呈することが多い.
Barrett食道の診断には,食道胃接合部(esophagogastric junction;EGJ)を同定する必要がある.EGJは内視鏡的に食道下部の柵状血管の下端2),ないしは胃大彎の縦走襞の口側終末部と定義されている3).本邦では萎縮性胃炎の合併頻度が高く,胃粘膜襞が観察されないことがある.また,胃粘膜襞の口側端は空気量により容易に変化することから,柵状血管下端をもってEGJと診断する機会が多い.しかし,柵状血管も炎症などで不明瞭となる場合があり,両者を併用して診断することが大切である.
Barrett腺癌(Barrett's adenocarcinoma)
著者: 小山恒男
ページ範囲:P.728 - P.728
頻度 Barrett食道は食道腺癌の危険因子とされ,米国や欧州のデータでは1,000人年あたり5.3から7.0例とされてきた.しかし,その発生頻度は研究の規模が大きくなるにつれ,低くなる傾向があり,11,028名のBarrett食道患者を中央値5.2年経過観察したデンマークのコホート研究の結果では,Barrett腺癌の発生頻度は1,000人年あたり1.2例と従来より低い結果であった1).日本食道学会の全国登録データベースによる解析では日本の食道癌の3%がBarrett腺癌であり,その頻度は欧米に比較するとごくわずかだが,近年徐々に増加傾向にある2).
診断法 欧米では2cmごとに4方向から生検を採取するランダム生検によるサーベイランスが第一選択とされる.早期Barrett腺癌の内視鏡診断は困難であり,生検に頼らざるを得ないという論法である.しかし,ランダム生検では手間,費用,安全性で問題があり,本邦では受け入れられていない.本邦の内視鏡医は早期胃癌の診断に関する高度な知識と技術を有しているため,通常は内視鏡で診断し,ターゲット生検で確定診断する.
食道胃接合部腺癌(adenocarcinoma of esophagogastric junction)
著者: 下田忠和
ページ範囲:P.729 - P.730
定義(Fig. 1) 世界で議論が多くなされ,日本と欧米とでは異なった定義がされている.なお,食道胃接合部(esophagogastric junction;EGJ)の定義は「食道胃接合部の分類」の項を参照(855頁).
1)Siewert分類1) Type 1 : 腫瘍中心の位置がEGJから1cm以上離れた食道側の腺癌,Type 2 : 腫瘍の中心がEGJの食道側1cm,胃側2cm以内に癌の中心がある腺癌,Type 3 : 腫瘍の中心が胃側に2cm以上5cm以内の腺癌に分類されている.このうちType 2を狭義のEGJ腺癌と定義している.Type 1の多くはLSBE(long segment Barrett's esophagus)に発生した癌で,Type 3は胃体上部の癌(subcardiac cancer)に相当する.
食道悪性リンパ腫(esophageal malignant lymphoma)
著者: 宮林秀晴 , 小池祥一郎
ページ範囲:P.731 - P.731
消化管原発性リンパ腫のうち,食道原発リンパ腫は1%未満である1).医学中央雑誌による文献検索では,1999年から現在まで本邦で7例のみ(会議録を含めて13例)であった2)3).
食道悪性リンパ腫のうち食道MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫に関しては当院での「胃と腸」の報告例2)を含めて以下の特徴がある.
食道良性腫瘍(benign esophageal tumors)
著者: 小澤俊文
ページ範囲:P.732 - P.732
食道に生ずる良性腫瘍には様々なものがあるが,大部分は平滑筋腫(Fig. 1a)で70~90%を占める.他には乳頭腫(Fig. 1b, c),顆粒細胞腫(Fig. 1d),脂肪腫,リンパ管腫,海綿状血管腫,pyogenic granuloma(lobular capillary hemangioma,Fig. 1e),線維腫,fibrovascular polypなどが挙げられる.乳頭腫以外は食道扁平上皮で覆われているため粘膜下腫瘍の形態を呈する.
ほとんどが無症状であり,多くは内視鏡検査あるいは食道X線造影検査の際に偶然発見される.fibrovascular polypなど4~5cmを超える巨大な腫瘤になると嚥下障害圧迫感を訴えたり,口腔内への腫瘤逸脱などを来すことがある.
GERD,NERD,逆流性食道炎(gastroesophageal reflux disease, non-erosive reflux disease, reflux esophagitis)
著者: 眞部紀明 , 春間賢
ページ範囲:P.733 - P.733
胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease;GERD)の概念は時代とともに変遷してきているが,今日の概念は,「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン」1)によると,“胃内容物の逆流により臨床症状や合併症を生じた病態の総称”と定義されている.
したがって,GERDには上部消化管内視鏡検査で下部食道を中心に粘膜傷害を認める逆流性食道炎と,逆流症状を有するものの粘膜傷害のみられない非びらん性胃食道逆流症(non-erosive reflux disease : NERD)が含まれることになる.
Mallory-Weiss症候群(Mallory-Weiss syndrome)
著者: 小澤俊文
ページ範囲:P.734 - P.734
発症前の嘔吐により噴門部近傍の消化管壁が粘膜下層までの深さで縦走に裂けることであり,吐血や下血を愁訴とする.1929年にGeorge MalloryとSoma Weissが“飲酒者に嘔吐を繰り返し大量吐血にて死亡した4例”として初めて報告した1).内視鏡検査の普及に伴い軽症例も含めて多数の報告例があり,裂傷の確認も容易となった.近年では“症候群”ではなく“裂創(tear,laceration)”と表記されることが多い.上部消化管出血例の2~6%を占め,90%が男性である.
病因 嘔吐により腹腔内圧や胃・食道内圧が急激に上昇した結果として胃噴門部周辺が過剰に伸展され,食道胃接合部付近の粘膜に裂創を生じて出血する.食道裂孔ヘルニアとの関連については明確なものはない.
食道炎症性疾患:Crohn病,Behçet病(esophageal inflammatory disease)
著者: 小野陽一郎 , 平井郁仁
ページ範囲:P.735 - P.735
食道炎症性疾患で最も頻度が高く,日常診療で遭遇することが多い疾患として逆流性食道炎が挙げられる.ほかには,低頻度で時に診断に難渋する疾患として自己免疫性疾患に伴う食道炎〔Crohn病(Crohn's disease;CD),Behçet病(Behçet's disease;BD)など〕,薬剤性や腐食性食道炎,感染性食道炎(カンジダ,ヘルペス,サイトメガロウイルスなど),アレルギー性食道炎(好酸球性食道炎)などが挙げられる.本稿では,CDやBDなど自己免疫性疾患に伴う食道炎を中心に概説する.
CDにおける食道病変の合併頻度は1.8~13%であり,上部消化管病変がCD進展のリスク因子とも言われている.内視鏡所見はアフタ~小びらんが多く,多発性で,びまん性あるいは縦列傾向の配列を示すことが多い.重症例では気管や気管支,肺への瘻孔形成,狭窄などを合併することもある1).また,大型びらんや潰瘍などの高度病変とCDの病勢との相関も示唆されている.食道病変の頻度は高くはないが,食道病変からの生検におけるgranulomaの検出率は30%程度である.したがって,診断的な意義は決して低くはない2).
食道炎症性疾患:ヘルペス,サイトメガロウイルス(esophageal inflammatory disease)
著者: 来間佐和子 , 藤原崇
ページ範囲:P.736 - P.736
ヘルペス食道炎は,三叉神経節に潜伏感染しているHSV(herpes simplex virus)が再活性化し唾液中に排出され,食道重層扁平上皮に感染することにより発症すると考えられている.まれな疾患であり,多くは免疫抑制状態で発症するが,健常人での報告例もある.内視鏡所見は,初期には小型で辺縁がやや隆起し中央に浅い潰瘍(Fig. 1a)を形成する,いわゆるvolcano ulcerとして観察され1),進行に伴い潰瘍は癒合する(Fig. 1b).これらの所見は,病初期に形成された小水疱が破裂し癒合した像と推測されるが,実際に水疱が観察できるのはまれである.病理所見では,感染細胞にCowdry A型核内封入体やすりガラス様変化を来した核内封入体が多数出現するなどの特徴がある.免疫染色によるHSV抗原の検出やPCR法によるウイルスDNAの検出なども有用である.
サイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)食道病変は,主にHIV(human immunodeficiency virus)感染者において発症し,非HIV感染者での発症は極めてまれである.CD4値が100cell/μl以下で好発する.CMV antigenemiaは陽性となることが多い2).症状は,嚥下痛,嚥下困難,心窩部痛などを主訴とすることが多い.病変は多発する傾向があり,大きさは数mm~数cmまで様々である.内視鏡的には,潰瘍底に白苔を伴わない打ち抜き潰瘍(Fig. 2a)が典型的とされるが,不整形や地図状のびらんや浅い潰瘍(Fig. 2b)を形成することも少なくない.病理組織学的には核内封入体を認め,CMVの免疫染色で陽性となるが,生検での陽性率は低いため潰瘍底より複数個の生検を行う.治療は,ガンシクロビル,ホスカルネットなどの抗CMV薬で行う.
腐食性食道炎(corrosive esophagitis)
著者: 島田英雄 , 幕内博康
ページ範囲:P.737 - P.737
腐食性食道炎は,酸やアルカリ農薬,重金属,などの組織傷害性の強い薬剤の飲用により発生する食道炎である.小児例での洗剤の誤飲や成人例では自殺目的の飲用が大半を占める.酸はトイレ用洗剤などに含まれる塩酸,硫酸などである.アルカリは漂白剤や配水管洗浄剤などに含まれる水酸化ナトリウム(苛性ソーダ),次亜塩素酸ナトリウムなどである.誤飲・飲用に当たっては,これら腐食性物質による粘膜,組織傷害のため強い疼痛を生じ,多量飲用には至らない.しかし,少量の飲用でも重篤な組織傷害を来す.
一般に酸性物質では,組織表面に凝固壊死が起きるため深部組織への浸透が少ない.一方,アルカリ物質では強い,吸湿性,鹸化作用のため組織作用が強く傷害が深部にまで及ぶとされている1).その病態は,薬剤の飲用により接触する広範囲な領域の粘膜傷害となり,口腔から咽頭喉頭,食道,胃に及び,多発かつ連続性の粘膜傷害を特徴とする.傷害の好発領域に関して,酸では中部,食道から下部食道,特に食道胃接合部の傷害が強いとされる(Fig. 1).アルカリでは口腔内,上部食道に傷害が目立ち,胃は比較的軽微とされる(Fig. 2).腐食性物質の飲用が疑われれば,X線検査,CT検査で食道穿孔の有無などを評価する.全身状態が安定していれば,内視鏡検査は可及的に早期に行い,粘膜傷害の領域と程度を把握しておくことは,その後の治療方針の決定に必要である.
好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis)
著者: 友松雄一郎 , 芳野純治
ページ範囲:P.738 - P.738
好酸球性食道炎は,食物や空気中の抗原により食道上皮への好酸球浸潤を主とするまれなアレルギー疾患である.病因は明らかでないが,飛沫抗原により刺激された食道上皮のヘルパーT細胞(Th2)が活性化され,IL-5やeotaxin-3により好酸球の増加が誘導され,慢性的な好酸球による炎症が起こることが病因と考えられている1).
本疾患は1978年Landresら2)により初めて報告され,本邦では2006年Furutaら3)が最初に報告した.患者は比較的若年の男性に多く,主訴には嚥下困難,食物のつかえ,胸やけなどがある.内視鏡所見として白斑,縦走溝,輪状溝,輪状狭窄,敷石様変化,浮腫,血管透見消失などが認められる(Fig. 1).白斑は好酸球が4個以上集簇したeosinophilic microabscessである.一方で,内視鏡検査で異常が発見されない例も存在する.
食道憩室(esophageal diverticulum)
著者: 小澤俊文
ページ範囲:P.739 - P.739
食道憩室とは,食道壁の一部が外側へ囊状に突出する状態である.頻度は0.5~1.3%と日常的に経験する1).組織学的分類(真性憩室,仮性憩室)や発生原因別分類(圧出性,牽引性),発生部位別分類などいくつかの分類がある.一般的には発生部位別の分類が広く用いられている.すなわち,(1) 咽頭食道憩室(Zenker憩室),(2) 中部食道憩室(Rokitansky憩室),(3) 横隔膜上憩室である.
(1) は咽頭と食道境界の筋層間隙から嚥下時の内圧上昇に伴い圧出性に生ずる“仮性憩室”である(Fig. 1).高齢男性に多く,主に左側に多くみられる.憩室入口部は細く囊状を呈する.その頻度は約10%とされる2).
食道web(esophageal web)
著者: 柴田知行 , 平田一郎
ページ範囲:P.740 - P.740
食道webは食道の狭窄であり,食道入口部付近に発生する膜様の構造物を指す.下咽頭の無症候性webも健常人の10%程度認められる.狭窄部は食道粘膜と粘膜下層から構成されており,境界は明瞭である.webは食道中部の発症はまれである.膜様狭窄の口側,肛門側ともに扁平上皮で覆われている.組織学的には炎症所見を伴うことは少ないとされる.嚥下困難を伴い食道下部に生じるリング状の狭窄はSchatzki ring(lower esophageal ring)1)と呼ばれている.lower esophageal ringの肛門側上皮は円柱上皮である.上部食道webによる嚥下障害と鉄欠乏性貧血を合併するものは,Plummer-Vinson症候群(別名Patterson-Kelly症候群)2)~5)と呼ばれている(Fig. 1a).
成因としては,先天性のものや,逆流性食道炎・そのほかの食道炎などの炎症によるもののほか,外傷などが考えられている.web保有者では食道癌の罹患率が高いとの報告もあり,注意を要する.比較的まれであるが類似の所見として鑑別すべき疾患として,平滑筋腫,神経腫,過誤腫,血管異常,悪性腫瘍などが挙げられる.webの存在は食道X線造影検査や上部内視鏡検査で容易に診断される.X線造影では食道内腔の膜様の突出にて認識される.膜様狭窄は必ずしも全周性ではなく,偏側性であったり複数の狭窄が連続することもある.食道webの治療は内視鏡的なwebに対するバルーン拡張やブジー,web切除が有効である.Plummer-Vinson症候群の場合は鉄剤の補給,栄養状態の総合的な改善などの治療により消失することも多いとされている(Fig. 1b).
食道アカラシア(esophageal achalasia)
著者: 井上晴洋 , 池田晴夫
ページ範囲:P.741 - P.741
食道アカラシアは食道運動機能不全の1つである.A-chalasiaはギリシア語に語源を有し,“弛緩することがない”の意味である.この病態の本質は,“嚥下時の下部食道昇圧帯(lower esophageal sphincter;LES)の弛緩不全”である.Auerbach神経叢の変性によると言われている.また食道運動機能不全として,1次蠕動波が消失して,同期性収縮がみられることが多い.大きく分けて,(1) classic achalasia(噴門の弛緩不全と食道体部の蠕動の消失と拡張),(2) vigorous achalasia(噴門の弛緩不全と食道体部の異常収縮),(3) そのほか,に分けて考えることができる.特にvigorous achalasiaでは,嚥下困難のみならず,強い胸痛を伴うことも多い.胸痛が強い場合は,長い筋層切開が望まれる.また診断においては,high resolution manometryの有用性が報告されており,Chicago分類として広く用いられている.Type Iがlow pressure contraction,Type IIがhigh pressure contraction,Type IIIがspasticである.
治療として,薬物療法,ボツリヌス毒素注入法,バルーン拡張法1),腹腔鏡下筋層切開術2)~4)などがあったが,近年,内視鏡的筋層切開術(per-oral endoscopic myotomy;POEM,Fig. 1)5)が開発され,minimal accessの根治術として注目を浴びている.POEMはこれまで202例(2012年3月14日現在,昭和大学横浜市北部病院)に施行されており,良好な治療成績である.POEMでは経口内視鏡で食道の内腔から筋層にアプローチするが,基本的にはHeller筋層切開を行っており,その長期成績はHeller筋層切開に準ずるものと考えられる.
疾患〔胃〕
隆起型胃腺腫(elevated adenoma of the stomach)
著者: 八木一芳
ページ範囲:P.743 - P.743
隆起型胃腺腫は幽門腺,または偽幽門腺化生を生じた胃底腺萎縮領域に生ずる白色調で,平坦または軽度隆起した良性上皮性病変である(Fig. 1).びらんや潰瘍を伴うことはなく,腫瘍径はせいぜい20mm未満である.組織学的には管状構造が主体であり(Fig. 2),腸型(主に小腸型)の細胞形質が大部分である.そして高円柱細胞から成る大きさの揃った管状腺管の密な増殖がみられ,核は細長く,基底膜側に配列しており,増殖細胞帯は腫瘍腺管の上層部に局在している.粘膜深層には非腫瘍性腺管(幽門腺)が残存し,二層構造を呈することがほとんどである.腺腫は低異型度の高分化型腺癌との鑑別が以前から問題になっている.病理医によりその診断基準が異なることもあるが,その鑑別が極めて困難な病変もある.絨毛状や乳頭状の構造を伴う病変は,細胞異型が軽度であっても構造異型の点から癌と診断するのが消化管を専門とする病理医の傾向のようである.
NBI(narrow band imaging)拡大内視鏡観察ではメッシュ様血管網が比較的規則的に配列し,その中に円形からスリット状の開口部を伴った腺管が配列し,開口部にはlight blue crestが散在的に観察されるのが腺腫の典型像である(Fig. 3).絨毛様構造や乳頭様構造が観察された場合は腺腫より癌を強く疑うか,むしろ炎症性の再生異型との鑑別を考えるべきである.
陥凹型胃腺腫(depressed adenoma of the stomach)
著者: 長浜孝
ページ範囲:P.744 - P.744
現在,胃生検組織診断分類でGroup 3と診断される病変は腺腫と称され1),その肉眼型のほとんどは隆起型である.そして,胃腺腫内の5~15%程度1)2)の頻度で,病理組織学的に隆起型胃腺腫と全く同様の異型を呈しながら,肉眼的に陥凹の形態を呈するものがあり,陥凹型胃腺腫と称されている.しかし,病理学者によっては,このような陥凹型病変自体,異型を伴う再生であるのか,あるいは0-IIc型の高分化腺癌そのものなのかなどが明確でなく,胃dysplasiaとして通常の胃腺腫とは独立した疾患単位とすべき立場もあり,いまだその病態は不明な点も多い.
陥凹型胃腺腫の癌化の頻度は5~68.4%1)~3)と,隆起型胃腺腫(2.5~6.9%1)~3))と比較してmalignant potentialが高いとする報告が多いが,両者間で癌化の危険性に差はないとする報告4)も認められる.
早期胃癌(early gastric cancer)
著者: 丸山保彦
ページ範囲:P.745 - P.745
早期胃癌は癌が粘膜下層までにとどまるものと定義され,肉眼型はほとんど表在型をとる.0-IIc型は最も多く,癌の組織型によって内視鏡所見も異なった特徴を示す(Table 1,Fig. 1, 2).隆起を示す0-I型,0-IIa型は分化型癌が多い.純粋な0-III型は少なく,通常0-IIc+III型などの複合型としてみられる.分化型癌は,萎縮・腸上皮化生の強い進行した胃炎に,未分化型胃癌は萎縮の軽度で炎症の強い胃粘膜を背景に発生する傾向がある.
0-IIb型早期胃癌(type 0-IIb early gastric cancer)
著者: 長浜孝
ページ範囲:P.746 - P.747
早期胃癌の肉眼型分類は1962年,日本内視鏡学会で田坂1)によって提唱され,現行の「胃癌取扱い規約第14版」〔日本胃癌学会(編),2010〕においても,これが改変引用され記載されている.そのなかで0-IIb型(表面平坦型)は,“正常粘膜にみられる凹凸を超えるほどの隆起・陥凹が認められないもの”と定義され,臨床所見,手術所見,病理所見の3者をそれぞれの時期に判定して,総合所見により記載するものとされている.しかし,平坦という肉眼判定には大きな幅があり,主観的要素が入りやすいため,0-IIbの使われ方は臨床重視の立場や病理重視の立場,総合的な立場など様々であった.1971年,第13回日本内視鏡学会総会のシンポジウム“IIbをめぐって”(司会 : 白壁彦夫,福地創太郎)において,便宜的な0-IIbの分類について以下の様に提唱された.諸家の記載では,ホルマリン固定標本,新鮮標本で割面を含めた肉眼所見より全く平坦な,厳密な意味での0-IIbを“典型IIb”とし2)~4),部分的に0-IIcまたは0-IIaの要素があるが全体としてはほとんど平坦なもの2),もしくは臨床的に平坦に近いと思われる極めて浅いIIcまたは弱い高まりの0-IIaを“類似IIb”3)4)と表現されている.また,IIbのみから構成されるものを“単独IIb”とし,他の肉眼型を呈する癌(0-IIc型,0-IIa型など)の辺縁に連続して存在するものを“随伴IIb”と分類した2)~4).そのほかの報告では“典型IIb”の同義語として“純粋IIb”と表現された報告も少なくない.また,“単独・典型IIb”や“随伴・類似IIb”といった言葉を重ねる表現も認められる.
従来,典型IIbは微小癌がほとんどで頻度も低く,早期胃癌の1%以下の頻度と考えられてきた.しかし,近年の報告によると微小癌を除いた早期胃癌の検討においても単独IIbは1.5%,随伴IIbは6.3%5)と,その増加が示唆されている.
スキルス胃癌(scirrhous gastric cancer)
著者: 長屋匡信
ページ範囲:P.748 - P.748
スキルスという語源は,ギリシア時代にHippocratesが硬い物という意味でスキロスという語を用いている.19世紀初めに癌腫を整理したLaennecはsquirrhe(硬癌)を癌腫の一型としている.また,Müllerはscirrhus(硬質)をcarcinoma simplex(単純癌)とcarcinoma fibrosum(線維性癌)と同じ型に含めている.この頃からスキルスは硬性癌を意味するようになっている1).
スキルス胃癌は線維増生を高度に伴い,肉眼的に硬さを感じさせるものであり,癌が深く浸潤する進行癌に多く,3型,4型を示すものが多い(Fig. 1).線維増生を伴いやすい組織型としては,低分化腺癌,印環細胞癌,中分化型管状腺癌がある.中村ら2)は,スキルスという言葉が肉眼的水準および組織学的水準での両方の意味を含むため混乱を与えるとし,癌の形態ではなく,質的なことを意味するものであると述べている.つまり,スキルス胃癌とは癌の肉眼形態や組織型を示すものではなく組織学的に高度の線維増生を示す胃癌の総称である.
胃MALT リンパ腫(gastric MALT lymphoma)
著者: 岩谷勇吾 , 赤松泰次
ページ範囲:P.749 - P.749
MALTリンパ腫(extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue)は1983年にIsaacsonら1)によって提唱された低悪性度B細胞性リンパ腫である.好発部位は消化管,眼・付属器,甲状腺,唾液腺,肺などであるが,最も発生が多いのは胃である.胃MALTリンパ腫の多くはHelicobacter pylori(H. pylori)感染による慢性胃炎を背景に発生し,除菌治療によって寛解に至る.胃MALTリンパ腫の発育は緩徐であり一般に致命的となることは少ないが,他臓器へ浸潤したり,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に形質転化した症例も存在する2).
原発性胃悪性リンパ腫の肉眼分類は佐野分類3)により,表層型,潰瘍型,隆起型,決壊型,巨大皺襞型の5型に分類されるが,胃MALTリンパ腫では表層型が最も多い.表層型をさらに,早期胃癌(0-IIc型)類似型,胃炎類似型,隆起型の3つに分類すると,前2者がその大半を占める4).早期胃癌類似型胃MALTリンパ腫(Fig. 1a)では早期胃癌に比べて病変範囲が不明瞭であることが多く,蚕食像や表面模様の無構造化が観察されない4).また,多発病変であることも特徴である.胃炎類似型(Fig. 1b)では内視鏡診断の正診率は低く,内視鏡所見や臨床経過が非典型的でない胃炎に関しては積極的にMALTリンパ腫を疑って生検を行う必要がある4).
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma;DLBCL)
著者: 中村昌太郎 , 松本主之
ページ範囲:P.750 - P.750
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma;DLBCL)は全悪性リンパ腫のなかで最も頻度の高い組織型である.胃原発悪性リンパ腫の30~40%を占め,MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫(40~50%)に次いで頻度が高い.組織学的には大型の異型B細胞のびまん性浸潤を呈する.HE標本のみでは未分化癌と誤診されることがあり,免疫染色でB細胞マーカー(CD20またはCD79a)陽性を確認する必要がある.同一病巣内にDLBCLとMALTリンパ腫が存在する場合,一致したクローンとは限らないため,high-grade MALTリンパ腫の名称は使用しない(WHO分類第4版,2008年).
胃DLBCLは内視鏡上,限局した腫瘤を形成することが多い.胃リンパ腫の肉眼分類の佐野分類(表層・潰瘍・隆起・決潰・巨大皺襞)と八尾分類(表層拡大・腫瘤形成・巨大皺襞)に従うと,大半は隆起・決潰型(Fig. 1, 2),または腫瘤形成型に相当する.病変の立ち上がりは健常粘膜に覆われSMT様であり,潰瘍辺縁に癌でみられる不整所見はなく,いわゆる耳介様の周堤を呈することが多い.比較的軟らかく伸展性良好であるが,リンパ球浸潤癌を含む充実型低分化腺癌や粘液癌などの粘膜下腫瘍様胃癌との鑑別は容易ではない.
hamartomatous inverted polyp
著者: 横澤秀一 , 赤松泰次
ページ範囲:P.751 - P.751
HIP(hamartomatous inverted polyp)は粘膜下に異所性に腺管の増生を認め,胃内腔に膨張性に発育してポリープ状の形態を示す病変である.hamartoma(過誤腫)とはその構成成分が存在する臓器や組織の成分として元来存在するもので,その組織成分の量的組み合わせの不均衡により,特定の成分が過剰形成されて腫瘍の形態をとるものと定義されている1).1966年にAllen2)が直腸において,異所性腺管が粘膜下へ逆行性,囊胞状に発育し,腸管内へ突出する形態をとる病変をHIPと報告し,胃でも同様の表現が用いられている.
HIPは胃体上部や穹窿部などの胃底腺領域に好発し,病変は粘膜下異所性胃腺の増生,貯留,囊胞化により,比較的大きな孤立性腫瘤を形成する.本症には様々な呼称があり,医学中央雑誌にて1995年以降で検索した範囲ではhamartomatous inverted polypのほかに過誤腫,胃粘膜下異所腺,submucosal heterotopia of gastric glands,submucosal heterotopic gastric glands,gastric gland heterotopia,gastric submucosal heterotopiaなどの名称で報告されている.
HIV関連性胃病変(HIV-associated gastric lesions)
著者: 藤原崇 , 門馬久美子
ページ範囲:P.752 - P.752
HIV(human immunodeficiency virus)感染者の消化管病変として問題となるのは,感染症と腫瘍性病変である.HIV関連性胃病変のうち,感染症としてはサイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)感染症が,腫瘍性病変としては悪性リンパ腫およびKaposi肉腫がCD4値の低下とともに発症する可能性が高くなる.ただし,HIV感染者におけるCMV感染症の消化管病変は,食道および大腸での発症頻度が高く,胃のみに粗大病変を形成することは少ない.また,HIV関連悪性リンパ腫は,DLBCL(diffuse large B-cell lymphoma),Burkitt's lymphomaの頻度が高い1)とされるが,その形態は,非HIV感染者の悪性リンパと比べ,差異はない.
Kaposi肉腫は,1872年にハンガリーの皮膚科医Motitz Kaposiによって最初に報告された,HHV-8(human herpesvirus-8)の感染によって生じる非上皮性悪性腫瘍である.HIV感染者における悪性腫瘍で最も多く,CD4値の低下とともに好発するが,CD4値が500cell/μlと比較的高値から発症することもある.Kaposi肉腫の発症は,HHV-8の生体内でのリザーバーであるB細胞から血管内皮細胞への感染によるとされており,発生部位としては皮膚が最も多いが,全消化管,肺,リンパ節などにも生じる.消化管Kaposi肉腫は無症状のことが多いが,時に消化管出血や狭窄の原因となる.
急性胃粘膜病変(acute gastric mucosal lesion;AGML)
著者: 佐藤公
ページ範囲:P.753 - P.753
急性胃粘膜病変(acute gastric mucosal lesion ;AGML)という概念を初めて提唱したのはKatzら1)であり,1965年にacute erosive gastritis,acute gastric ulcer,hemorrhagic gastritisの3つの病態に分類し報告した.日本においては,1973年に川井ら2)が“急性に発症し,内視鏡あるいはX線で所見がみられる”病態の包括的な概念,すなわち一種の症候群として急性胃病変(acute gastric lesion,AGL)を提唱した.しばらくはこの両者が使われ,また,いずれの用語を用いるかの議論がなされた時代もあったが,“急性胃粘膜病変”という用語が,病変の存在する深さを表すものではなく“粘膜面に存在する病変”という意味で用いられる場合には,両者に違いはないことを川井らのグループも指摘している.並木ら3)は,急性胃粘膜病変の診断基準を“突発する上腹部痛,吐き気,嘔吐,時に吐血・下血の症状を伴って発症し,この際早期に内視鏡で観察すると,多くの場合,胃粘膜面に急性の異常所見,すなわち明らかな炎症性変化,出血,潰瘍性変化(びらん,潰瘍)が観察されるもの”と定義している.
これらの疾患概念が生まれた時代背景には,診断技術の目覚ましい進歩があったことが挙げられる.急性期に積極的に緊急内視鏡検査が行われるようになり,様々な内視鏡所見が確認されるようになった.得られた所見を病因論的にではなく,症候論的,あるいは治療論的立場からまとめられた臨床的概念といえる.
NSAIDs起因性胃潰瘍(NSAIDs-induced gastric ulcer)
著者: 溝上裕士 , 岩本淳一
ページ範囲:P.754 - P.754
この用語について,正式な定義はない.一般的には,非ステロイド抗炎症薬(nonsteroidal antiinflammatory drug;NSAID)の投与が原因で発生した胃潰瘍とされている.NSAIDs起因性の胃腸傷害は1970年頃から欧米を中心に報告がなされ,1980年代からは本邦でも注目を集めるようになった.H. pylori感染率の低下と高齢化により,NSAIDs潰瘍がクローズアップされており,近年は抗血小板薬として用いられている,低用量アスピリン(low-dose aspirin;LDA)による潰瘍が増加している.
非アスピリンNSAIDとLDAによる傷害は,区別して論じられることが多い.非アスピリンNSAIDとLDAを総称し“NSAIDs”,非アスピリンNSAIDのみを“NSAID”と称することもある.
Crohn病胃十二指腸病変(gastroduodenal Crohn's disease)
著者: 長坂光夫 , 平田一郎
ページ範囲:P.755 - P.755
1937年,Gottliebら1)がCrohn病に伴う胃・十二指腸病変を報告して以来,Crohn病の胃・十二指腸病変が高頻度に存在することが明らかになった.1983年,八尾ら2)は胃で89.7%,十二指腸で86.2%と高率に胃・十二指腸病変が存在したと報告している.横田ら3)~5)は1994年にCrohn病患者の胃体部小彎の“竹の節状びらん”,“竹の節状外観”に着目しCrohn病に特徴的な病変と提唱した.
現在Crohn病の胃・十二指腸病変に特徴的な所見は胃病変である“竹の節状外観”と十二指腸病変の“notch様陥凹”である.いずれもインジゴカルミン色素撒布によりわずかに認識できる程度の軽度なもの(Fig. 1)から,通常内視鏡所見でも明らかに認識できる高度なもの(Fig. 2)まで様々である.“竹の節状外観”は,通常は噴門部~胃体上部の皺襞に対して垂直に認める3~10本程度の切れ込み様の所見である.切れ込みの存在する皺襞は1~数本と様々で,高度なものでは発赤を伴う結節状の所見を呈する(Fig. 3).また,十二指腸の“notch様陥凹”は十二指腸球部~下行脚のKerckring皺襞(輪状ひだ)に数本の“切れ込み”を呈する(Fig. 4).この場合は竹の節状外観に比して内視鏡の通常観察でも比較的容易に判別できることが多い.
collagenous gastritis
著者: 小林正明 , 佐藤祐一
ページ範囲:P.756 - P.756
collagenous gastritisは,粘膜固有層内の炎症細胞浸潤と粘膜上皮下の10μm以上に肥厚したcollagen bandの存在により組織学的に定義される(Fig. 1).臨床的には,無症状あるいは心窩部痛,貧血を有し,胃のみに病変が限局するグループと,慢性下痢を有し,collagenous colitisの合併を認めるグループに分けられる.前者は小児・若年成人に多く,後者は中高年に多いが,本邦報告例(7例)1)~3)は,いずれも20~43歳の比較的若年者で,炎症細胞浸潤による粘膜萎縮がまだらに起こるために取り残された顆粒状~島状粘膜変化が特徴的である(Fig. 2, 3).
GAVE,DAVE(gastric antral vascular ectasia,diffuse antral vascular ectasia)
著者: 田辺聡 , 小泉和三郎
ページ範囲:P.757 - P.757
胃前庭部毛細血管拡張症(gastric antral vascular ectasia;GAVE)は胃前庭部を中心に血管拡張を認める病態であり,消化管出血の原因の1つとして近年注目されている.GAVEは1953年Riderら1)によって著明な毛細血管拡張(veno-capillary ectasia)を伴う胃切除例として報告されたのが最初である.その後,1984年にJabbariら2)が前庭部に放射状に縦走する血管拡張をwatermelon stomachと報告して以来,広く認知されるようになった.また,前庭部にびまん性に毛細血管が拡張する病態をLeeら3)はびまん性胃前庭部毛細血管拡張症(diffuse antral vascular ectasia;DAVE)として提唱した.
GAVE,DAVEとも毛細血管からの出血が原因で起こる貧血を呈する消化管の出血性疾患である.両者の内視鏡所見は異なるが,病理学的には同様な所見を呈し同じ範疇の疾患と考えられ,GAVEとDAVEの両者を含めて広義のGAVEとして取り扱う場合が多い.GAVE・DAVE患者では慢性肝疾患,慢性腎不全などの合併が多く,貧血を主訴に発見される.
特殊型胃炎(granulomatous gastritis)
著者: 小林広幸 , 渕上忠彦
ページ範囲:P.758 - P.758
特殊型胃炎という明確な定義はないが,Crohn病に代表される肉芽腫を生じるような胃炎を指して用いられることが多い.胃に肉芽腫性病変を認めた場合,Crohn病を含めた胃梅毒,胃結核,サルコイドーシスなどのまれな疾患を考慮して鑑別診断を行うことが必要である.これらの疾患では胃に不整な潰瘍・びらんを主体とする粘膜病変を生じることが多い.
胃梅毒ではしばしば心窩部痛を伴い,病変は幽門前庭部に好発し,X線像では同部の全周性漏斗状狭窄,内視鏡では易出血性の浅い不整形の多発潰瘍やびらんを呈し,時に副病変として胃体部に梅毒性皮疹類似の粘膜病変を伴うなど,X線・内視鏡の特徴的所見から診断可能なことが多い(Fig. 1, 2).ただし,これらの病変は肉芽腫を伴わない早期(第2期)梅毒の胃病変であり,今日本邦では肉芽腫を形成するほど進行した梅毒(第3期)の胃病変に遭遇する機会はほとんどない.
疾患〔腸〕
腸管Behçet病,単純性潰瘍(intestinal Behçet's disease, simple ulcer)
著者: 高木靖寛
ページ範囲:P.759 - P.760
Behçet病(Behçet's disease;BD)は反復性ないし遷延性炎症性病変を特徴とする原因不明の全身性の疾患であり,口腔粘膜の有痛性再発性アフタ性潰瘍,皮膚症状,眼症状,外陰部潰瘍を主症状とする.副症状として関節炎,副睾丸炎,消化器症状,血管病変,中枢神経病変などがみられ,これらの有無によって診断基準から,完全型BD,不全型BD,BD疑いに大別される.国際的には口腔内潰瘍を必須とし,陰部潰瘍,眼症状,皮膚病変,針反応を判定項目とする診断基準1)が用いられる.BDでは回盲部を中心に腸管潰瘍が生じることがあり,診断基準の完全型,不全型を満たすものを腸管型BDと呼ぶ.症状として腹痛,下痢,血便が出現し,出血,穿孔のため緊急手術を要することもある.しばしば再燃し,再手術を要する症例も多い.
BDにおける消化管病変は食道から直腸のいずれの部位にも発生しうるが,回盲部(既手術例では回腸─結腸吻合部)が最たる好発部位で,画像的には,周堤を有する境界明瞭な類円形ないし不整形の大きな下掘れ潰瘍が特徴的で,これらは定型的病変とされる(Fig. 1).重症化すれば隣接する腸索や腹壁との癒着や瘻孔を形成することもある.病理学的肉眼像は境界鮮鋭な円形ないし卵円形で,下掘れ傾向があり,潰瘍口は広く,潰瘍縁は盛り上がり組織学的には非特異的炎症によるUL-IVの開放性潰瘍が主体である.潰瘍底は管腔側より壊死層,肉芽組織,漿膜側には線維症を認める2).回盲部以外の大腸,小腸にもしばしば同時性または異時性に大小の潰瘍を認める.これらは腸管膜付着対側に発生し,介在粘膜に炎症はなく,小さくても定型的病変に類似した打ち抜き様を呈することが特徴的である(Fig. 2)3).さらに最近では小腸内視鏡の進歩もあり,回腸のアフタ様潰瘍や区域性病変など多彩な病変も報告されている4).
大腸腺腫(colorectal adenoma)
著者: 田中信治
ページ範囲:P.761 - P.761
大腸の主たる上皮性腫瘍は腺腫と癌であるが,本稿では腺腫について欧米との認識の違いも含めて概説する.本邦では「大腸癌取扱い規約 第7版補訂版」1)に,腺腫は良性上皮性腫瘍の中に分類され,(1) 管状腺腫,(2) 管状絨毛腺腫,(3) 絨毛腺腫,(4) 鋸歯状腺腫の4つに分類されている.一方で,2010年に発刊されたWHO Classification of Tumours of the Digestive System2)の中には,腺腫および関連病変はTable 1のように分類記述されている.
周知のとおり,欧米では明らかに浸潤した病変を癌と診断するが,本邦の粘膜内癌を癌とは診断しないし,微小浸潤は偽浸潤(pseudoinvasion)と評価する傾向がある.若い先生方は,欧米でいうadenomaという用語が,基本的には本邦でいう粘膜内癌(carcinoma in situ)を含んでいることに留意いただきたい.大腸癌は大腸粘膜から発生し,欧米の考え方は全く科学的ではないが,社会的あるいは政治的背景の違いから歴史的に粘膜内癌を癌と診断しない.この矛盾を本邦が中心となって是正していく必要がある.
大腸鋸歯状病変(serrated polyp)
著者: 長谷川申 , 鶴田修
ページ範囲:P.762 - P.762
大腸鋸歯状病変はSP(serrated polyp)やserrated lesionと呼ばれ,腺管が鋸歯状の管腔構造を呈する病変である.現在のところ病理組織学的にHP(hyperplastic polyp),SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp),TSA(traditional serrated adenoma)と3つのカテゴリーに分類することが提唱されている1)(Table 1,Fig. 1).
従来,大腸の鋸歯状腺管構造を有するポリープは病理組織学的に過形成性ポリープと診断され,非腫瘍性病変であり癌化の危険性はない病変と考えられていた.しかし近年,HPやSSA/Pを介した新しい大腸癌の発癌経路である“serrated pathway”2)3)が提唱されるようになり,特にSSA/Pとされる病変は右側結腸に発生する遺伝子不安定性(microsatellite instability;MSI)陽性大腸癌の前駆病変とされ注目されている.しかしわが国におけるSSA/Pの診断基準はいまだコンセンサスが得られておらず,現在,大腸癌研究会プロジェクト研究において検証中である.またその内視鏡診断についても学会・研究会にて種々報告されている最中である.
炎症性筋腺管ポリープ(inflammatory myoglandular polyp)
著者: 中村眞一
ページ範囲:P.763 - P.763
Nakamuraら1)により報告された大腸の非腫瘍性有茎性ポリープである.高齢者の男性に多く発生する.主訴は血便あるいは便潜血で,発生部位はS状結腸を中心とした左半結腸で,30mmまでの大きさで単発性である.球状ポリープで,90%が長い茎を有する.ポリープ表面は平滑で白苔を伴ったびらんがみられる.内視鏡では傷んだイチゴ状のポリープとして観察される(Fig. 1).原因は不明であるが,微小な過形成性病変に慢性の刺激が加わり病変が形成されるものと思われる.
組織像は炎症性肉芽組織様の粘膜固有層内に囊胞状拡張を伴う過形成腺管と,粘膜筋板由来の平滑筋の放射状増生がみられる(Fig. 2).腺管の囊胞状拡張が著明な症例は過去には若年性ポリープと誤診されていたが,放射状の平滑筋の関与がある点で鑑別が可能である.粘膜脱症候群や憩室症に合併するポリープ,‘cap polyp'などと同様なポリープとの記載もあるが2),肉眼像や組織像からそれらとは全く独立した疾患である.悪性化はない.
CMSEP(colonic muco-submucosal elongated polyp)
著者: 大津健聖 , 松井敏幸
ページ範囲:P.764 - P.764
1992年に眞武らは組織学的に分類困難な長い茎を有した大腸ポリープの4例を報告した.1994年眞武ら1)はその特徴と病理組織学的所見を呈するこれらのポリープをCMSEP(colonic muco-submucosal elongated polyp)と呼称することを提唱し,今日一つの確立した概念として定着している.
X線,内視鏡的特徴としては,肉眼的に表面は正常粘膜で覆われる長い有茎性のポリープで,表面には脳回転様ひだや発赤を伴うことが多い(Fig. 1, 2).組織学的には異型や炎症のない正常粘膜に覆われ,粘膜下層は静脈とリンパ管の拡張を伴い,浮腫状の疎性結合織から成り,正常の筋層は認めないものとされている(Fig. 3).
cap polyposis
著者: 中村直
ページ範囲:P.765 - P.765
CP(cap polyposis)は1985年にWilliamsら1)によってinflammatory‘cap polyp'of the large intestineとして報告された炎症性腸疾患で,1993年にCampbellら2)が‘cap polyposis'として報告した疾患である.大腸のポリープ状隆起の頂部に白苔を載せているその内視鏡的特徴から命名された疾患である.本邦でも分類不能型大腸炎などとして症例報告3)されていたが,内視鏡所見,組織所見などから現在では同一の疾患と考えられている.2002年に「胃と腸」第37巻第5号「cap polyposisと粘膜脱症候群」でCPと粘膜脱症候群の特集が組まれており,CPの多症例での臨床,画像,病理の検討が行われているが,原因や治療については明らかに示されなかった.同年にHelicobacter pylori除菌療法後に改善したCP症例をOiyaら4)が報告して以来,H. pylori除菌療法が奏効した症例報告が相次いでいる.
病変は直腸を含んだ左側結腸に多く,内視鏡所見はポリープ状の隆起の頂部がびらんを呈し,粘液や壊死物質が付着している典型的な所見(Fig. 1)以外に,地図状の発赤粘膜を呈することもある(Fig. 2).地図状発赤粘膜から典型的なCP像に変化した症例5)もあることから,地図状発赤粘膜はCPの初期像と考えられる.介在粘膜は基本的に正常であるが,隆起周辺ではやや浮腫状で白斑を伴うこともある.隆起部の病理組織所見は,腺管長が蛇行・延長し,過形成の所見を呈し,隆起部以外の地図状発赤粘膜病変からの生検でも同様の所見が得られる.いわゆる‘cap'部からの生検では炎症性肉芽組織がみられる.
大腸低分化腺癌(poorly differentiated adenocarcinoma in colon and rectum)
著者: 吉川健二郎 , 山野泰穂
ページ範囲:P.766 - P.766
大腸の低分化腺癌は比較的まれな組織型で,その頻度に関しては多数の報告をまとめると全大腸癌の1.9~7.7%とされ1),「大腸癌取扱い規約」では充実型(por 1)と非充実型(por 2)に分類している2).その特徴として,局在は右側結腸に多い傾向があり,進行癌で見つかることが多く,早期癌の報告はまれである.また低分化腺癌では腫瘍径が小さいうちから粘膜下層以深に浸潤し,高率にリンパ管侵襲,静脈侵襲,リンパ節転移を来すと考えられている.
進行癌の肉眼型は,菅井ら3)の報告では2型が45.3%と最も多いが,高分化腺癌と比べて3型(21.4%),4型(9.5%)の頻度が高いとしている.
Lynch症候群,遺伝性非ポリポーシス大腸癌(Lynch syndrome,hereditary nonpolyposis colorectal cancer;HNPCC)
著者: 松本主之
ページ範囲:P.767 - P.767
大腸腺腫症を伴わない遺伝性大腸癌であり,家系内に大腸癌のみならず,全身諸臓器の悪性腫瘍が発生する疾患である.Lynchら1)の2家系の報告が最初の記載で,以降家系の集積と遺伝子解析が進み,ミスマッチ修復遺伝子(mismatch repair;MMR)の変異に起因する常染色体優性の遺伝性疾患であることが判明した.本症の原因MMRとして第3番染色体のMLH1,第2番染色体のMSH2とMSH6,および第7番染色体のPMS2がある.
本症の歴史は約50年にすぎないが,その間に疾患概念や名称に変遷がみられている.Lynchら1)の報告以降,家系内に大腸癌のみ集積するLynch症候群Iと大腸癌以外の悪性腫瘍も集積するLynch症候群IIに大別され,これらを区別しない場合は遺伝性非ポリポーシス大腸癌(hereditary nonpolyposis colorectal cancer;HNPCC)と呼ばれていた.1990年にはHNPCCとして確からしい家系を集積するための基準が提唱されたものの,1993年以降原因遺伝子が次々に同定されるに至り,同基準と遺伝子診断に乖離があることが判明した.そこで,1998年に改訂基準(アムステルダム基準II)が提唱された(Table 1)2).大腸以外の多彩な悪性腫瘍が本症の特徴のひとつであることから,現時点ではHNPCCを避け,Lynch症候群の名称を用いることが多い.
colitic cancer
著者: 岩男泰 , 松岡克善
ページ範囲:P.768 - P.768
炎症性腸疾患,特に潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)の長期経過例に癌・dysplasiaの発生頻度が高く,累積発癌率が10年で1.6%,20年で8.3%,30年で18.4%とメタアナリシスで報告されている1).これら炎症性腸疾患に合併する癌をcolitic cancerという.用語としてはcolitis-associated colorectal cancer(UCの場合はUC-associated colorectal cancerもしくはcolorectal cancer associated with UCなど)が適切と思われるが,慢性炎症に伴う発癌というニュアンスがよく伝わるため,特に本邦ではcolitic cancerの呼称が好んで用いられている.欧米においても論文タイトルには使用されることがある.
通常のadenoma-carcinoma sequenceと呼ばれる腺腫を介した発癌過程に対し,炎症によって遺伝子の変異・異常が蓄積し,dysplasiaと呼ばれる粘膜内腫瘍を介して大腸癌に至るinflammation-dysplasia-carcinoma sequenceという考え方が提唱されている2).若年発症し多発する傾向がある.
DALM(dysplasia-associated lesion or mass)
著者: 平田一郎
ページ範囲:P.769 - P.769
潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)の慢性炎症粘膜を母地として発生する腫瘍性の異型腺管群をdysplasiaと呼ぶ.dysplasiaは前癌病変と考えられており,大腸内視鏡サーベイランスにおいてUC関連性大腸癌(ulcerative colitis-associated cancer)の合併を検知するためのマーカーとしても重要である.
dysplasiaは隆起型,表面隆起型,平坦型,表面陥凹型など様々な肉眼形態を呈すると考えられる.Blackstoneら1)は,隆起型のdysplasiaに対しDALM(dysplasia-associated lesion or mass)という名称を提唱し,その肉眼形状をpolypoid mass, plaquelike lesion, sessile polypに分類している.また,Buttら2)は,dysplasiaをflat lesion(平坦病変),warty lesion(粗大顆粒状病変,Fig. 1),plaque-like lesion(扁平隆起様病変,Fig. 2),papillary lesion(乳頭状病変),polypoid lesion(ポリープ様病変,Fig. 3)に肉眼分類しているが,これらのうちflat lesionを除く後4者がDALMに相当するものと考えられる.
腸管MALTリンパ腫,DLBCL(mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma of intestine, diffuse large B-cell lymphoma)
著者: 二村聡
ページ範囲:P.770 - P.770
腸管に発生する粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue;MALT)リンパ腫とびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma;DLBCL)は,いずれも成熟B細胞性腫瘍に属し,世界保健機関(WHO)分類,第4版1)では以下のごとく定義されている.すなわち,MALTリンパ腫は形態的に多彩なB細胞(胚中心細胞類似細胞,単球様B細胞および少数の芽球様大型細胞)が,主に濾胞辺縁帯(marginal zone)から濾胞間領域にかけて増殖する腫瘍である(Fig. 1).他方,DLBCLは正常の組織球の核と同じか,それ以上の大きさの核,あるいは小型リンパ球の2倍以上の大きさの核を有する大型B細胞のびまん性増殖から成る腫瘍である(Fig. 2).なお,いずれの病型も現時点では特異的な免疫組織化学的マーカーは存在しない.
DLBCLは前述の細胞形態のほか,臨床像や細胞増殖能(Ki-67標識率)を勘案すれば比較的容易に診断される.他方,MALTリンパ腫の病理診断は容易でない.なぜなら,濾胞辺縁帯から濾胞間領域が拡大するリンパ増殖性病変はすべてMALTリンパ腫の鑑別対象となり,しかも反応性増殖巣と腫瘍性増殖巣の境界の見極めは極めて難しいからである2).反応性リンパ増殖性病変とMALTリンパ腫の鑑別に有用な免疫組織化学的マーカーは存在しないため,診断確定に至らないこともある.しかし,腸管MALTリンパ腫の臨床経過は緩慢であり,早急に侵襲的治療を開始する必要性は低く,実臨床ではマントル細胞リンパ腫と濾胞性リンパ腫を確実に鑑別・除外することが最優先される.また,大腸,特に直腸MALTリンパ腫に対する抗菌薬投与の有効性が証明された以上,今後は抗菌薬投与が非侵襲的な治療法として第一選択となりうると考えられる3).
側方発育型大腸腫瘍(laterally spreading tumor;LST)
著者: 工藤進英 , 須藤晃佑
ページ範囲:P.771 - P.772
側方発育型大腸腫瘍(laterally spreading tumor;LST)とは,肉眼的に側方への腫瘍進展を特徴とする10mm以上の病変である.発育進展さらには生物学的悪性度を加味した発育形態分類においては,LSTは平坦型に分類される.「大腸癌取扱い規約」で定義された肉眼形態分類ではないが,肉眼形態を容易に想起でき,さらには質的・量的診断また内視鏡治療や外科的治療の判断においても非常に有用であり広く定着している.
元来,大腸上皮性腫瘍には上方向発育を示す隆起型腫瘍や下方向(垂直方向)発育が特徴な陥凹型腫瘍とは違い,側方への腫瘍進展を主とする腫瘍群が指摘されており,様々な名称で表現されていたが,1992年「胃と腸」誌に特集され1)結節集簇様病変として呼称されるようになった.しかし,側方発育傾向を示す腫瘍群の中には,顆粒や結節を有さない病変が存在することが明らかになり,筆者ら2)はそのような病変を含めて大きさ10mm以上のものをLSTと定義した.さらに,LSTを顆粒型(granular type;LST-G,Fig. 1)と非顆粒型(non-granular type;LST-NG,Fig. 2)に大別し,前者は顆粒均一型〔homogeneous type;LST-G(Homo)〕と結節混在型〔nodular mixed type;LST-G(Mix)〕に,後者は平坦隆起型〔flat-elevated type;LST-NG(F)〕と偽陥凹型〔pseudo-depressed type;LST-NG(PD)〕に亜分類した3)4).それぞれの病変群は異なった臨床病理学的特徴を有し,特に治療法の選択上重要である.
特殊な直腸肛門部腫瘍
著者: 松田圭二 , 渡邉聡明
ページ範囲:P.773 - P.774
肛門部の悪性腫瘍は,「大腸癌取扱い規約」1)でTable 1のように分類されている.第59回大腸癌研究会において施行されたアンケート集計報告(1,540例)によれば,肛門管悪性腫瘍の組織別発生頻度は,腺癌・粘液癌の直腸型が802例(52.1%),次いで肛門腺由来が227例(14.7%),扁平上皮癌226例(14.7%),痔瘻合併癌106例(6.9%),悪性黒色腫60例(3.9%),類基底細胞癌24例(1.6%)と続く.文献の集計では,アンケートに比べると悪性黒色腫や類基底細胞癌の割合が高かった2).
本稿では特殊な直腸肛門部腫瘍として,扁平上皮癌,悪性黒色腫,類基底細胞癌について述べる.
瘻孔癌(fistula cancer)
著者: 池内浩基 , 内野基
ページ範囲:P.775 - P.775
瘻孔癌については明確な定義が存在するわけではない.極めてまれな病態であるため,痔瘻癌の定義に準じて,(1) 瘻孔の両側臓器に癌がないこと,(2) 癌が瘻孔形成以前に存在していたという可能性を否定できるほど十分に長い瘻孔歴があること,の2つの条件が一般的に用いられている.Skir1)はゆっくりと発育する癌が瘻孔形成以前に存在したことを否定できるだけの期間,具体的には瘻孔形成より約10年以上経過していれば癌は続発性であり,慢性炎症により引き起こされたと考えてよいとしている.
1990年以降本邦の報告例を,痔瘻癌を除いて医中誌で検索した.21例の報告例があり,最も多い要因は慢性化膿性骨髄炎に起因する瘻孔からの発癌で8例,続いてCrohn病(CD)の内瘻または外瘻に起因する報告が6例あった.最近の欧米の報告では,17年間にCD症例6,058例のうち4例に瘻孔癌の合併があり,CD以外の病態からの瘻孔癌の発生はなかったと報告されている2).本邦においてもCDの長期経過例は増加しており,瘻孔癌合併症例の報告は今後増加することが予想される.CDに合併した瘻孔癌の2症例を以下に示した.
虚血性大腸炎(ischemic colitis)
著者: 大川清孝 , 宮野正人
ページ範囲:P.776 - P.776
虚血性大腸炎は,大腸栄養血管の可逆性閉塞に基づく一過性の大腸粘膜虚血によって生じる疾患である.病態は不明であるが,心原性や微小血管の攣縮,細動脈硬化などの血管側因子と腸管内圧亢進および腸蠕動異常などの腸管側因子が絡み合い,腸粘膜あるいは腸管壁の血流低下を引き起こして虚血状態を作ると推定されている.飯田らの診断基準をTable 1に示す1).突然強い腹痛が起こり,続いて下痢が起こり徐々に血性下痢となってくるという特徴的な臨床症状にて本症を疑い,緊急内視鏡にて診断するのが一般的な診断の流れである.
下行結腸,S状結腸に好発し区域性病変を示し,中心部が最も強い所見を呈する.典型的な急性期の内視鏡像は縦走する白苔と周囲の発赤である(Fig. 1)2).白苔は盛り上がり,偽膜様であるが,多くはびらんであり短期間に軽快することがほとんどである.組織では粘膜上皮の変性,脱落,壊死がみられ,腺管の立ち枯れ像は虚血性大腸炎の特徴的な像である.発赤は白い線で区画され,うろこ模様と呼ばれるが,本症に特徴的な所見である.組織では間質の浮腫と粘膜内出血であり腺管の変化はみられない.暗赤色の粘膜が認められる場合は(Fig. 2),組織学的には出血壊死であり,虚血の程度は重篤で狭窄型や壊死型の可能性があり,慎重な対応が必要である.慢性期では狭窄型の場合は管状狭窄や縦走潰瘍瘢痕を呈する.
潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)
著者: 大川清孝 , 上田渉
ページ範囲:P.777 - P.777
潰瘍性大腸炎は“主として粘膜を侵し,しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症である”と定義されている.潰瘍性大腸炎の診断で特異的なものはなく,臨床症状,画像診断(主に内視鏡),生検組織学的検査などを総合して診断する.また,感染性腸炎や他の炎症性疾患を除外しなければならない.厚生労働省難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(渡辺班)の診断基準をTable 1に示す1).
内視鏡による重症度分類の軽度は血管透見消失,粘膜細顆粒状,発赤,小黄色点などである.中等度は粘膜粗糙,びらん,小潰瘍,易出血性(接触出血),粘血膿性分泌物付着など(Fig. 1),強度は広範な潰瘍,著明な自然出血などである(Fig. 2).これらの内視鏡所見が,直腸からびまん性,連続性に拡がることが潰瘍性大腸炎の特徴である.一方,非連続性病変もしばしば認められることも認知されている.
回腸囊炎(pouchitis)
著者: 藤井久男 , 小山文一
ページ範囲:P.778 - P.778
貯留囊として回腸囊を作製し,大腸(亜)全摘術を受けた患者の回腸囊に発生する非特異性の炎症性疾患である.ほとんどが潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)患者に発生するので,UCの病態に関連した病態と考えられている.当初,UCに対する大腸全摘・永久回腸人工肛門造設術時に貯留囊として作製されたKock回腸囊にみられる非特異性炎症(mucosal enteritis)として報告された1).回腸囊肛門(管)吻合術後では,1981年Nichollsらが生検で表層性潰瘍,陰窩膿瘍を伴う急性炎症と粘膜固有層に慢性炎症性細胞浸潤がみられ,糞便中の好気性菌増加所見と関連があると報告している.1986年にMoskowitzら2)が術後における回腸囊の組織学的な経時的変化について報告し,そのときに用いられた炎症の組織学的scoreは,現在広く用いられているPDAI(Pouchitis Disease Activity Index)3)に踏襲されている.
内視鏡所見は,UCに類似したびまん性の発赤,顆粒状粘膜,膿性粘液付着,びらんがみられる(Fig. 1)ほか,アフタや小潰瘍,不整形潰瘍が多発する例(Fig. 2)がある4).重症例では広範な地図状潰瘍がみられ,回腸囊口側の回腸にまで炎症が波及する(pre-pouch ileitis)こともある.
直腸粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome of the rectum;MPS)
著者: 斉藤裕輔
ページ範囲:P.779 - P.779
直腸の粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome of the rectum;MPS)は1983年にdu Boulayら1)により提唱され,それまでの孤立性直腸潰瘍(solitary ulcer syndrome of the rectum;SUS),や深在囊胞性大腸炎(localized colitis cystica profunda;CCP)を総称した概念である.問診上排便習慣の異常〔排便時間が長い(15分以上)や排便時のいきみ(strainer)〕を聞き出すことが重要である.排便習慣の異常は様々な肛門機能異常,排便機能異常に起因しており,本症の基礎的異常として排便時に粘膜脱が存在することがdefecographyを用いた排便機能検査によって明らかとなっている.
肉眼分類として (1) 平坦型,(2) 隆起型,(3) 潰瘍型(Fig. 1),深在囊胞性大腸炎型,が一般的である2).隆起型は直腸下部~肛門管に近い部位に発生し,腫瘍性ポリープとの鑑別が重要である.潰瘍型は隆起型に比べて,より口側の直腸で中Houston弁の前壁側に好発する.主体の病変は潰瘍であるが,その辺縁には周堤様の隆起や粘膜下腫瘍様の所見を伴うことが多く,進行癌や悪性の粘膜下腫瘍との鑑別が重要である.生検組織では粘膜脱による慢性刺激の結果として生じたと考えられる線維筋症(fibromuscular obliteration)が特徴的所見として認められる.
急性出血性直腸潰瘍(acute hemorrhagic rectal ulcer)
著者: 趙栄済 , 飯沼昌二
ページ範囲:P.780 - P.780
急性出血性直腸潰瘍は,河野ら1)により初めて報告され,広岡ら2)によって疾患概念が提唱された.その後,症例の蓄積と検討が重ねられ,臨床的特徴は以下の内容に要約される.(1) 重篤な基礎疾患を有する高齢者に多い.(2) 発症は突然で,無痛性大量の血便あるいは肛門出血で始まる.(3) 潰瘍は歯状線に接するかその近傍あるいは下部直腸に限局し,不整形,地図状,輪状あるいは全周性の場合もあり,多発性ないし単発性で,露出血管を伴うことがある(Fig. 1).(4) 経過は,一般に良好であるが,基礎疾患の重症度に依拠する傾向がある.
発症の原因はストレス,血流障害などが挙げられ,さらにNSAID(nonsteroidal anti-inflammatory drug)坐剤使用例やサイトメガロウイルス感染例も報告されている3).本疾患は複数の誘因で発症する症候群とする見解もみられる4).
宿便性潰瘍(stercoral ulcer)
著者: 清水誠治
ページ範囲:P.781 - P.781
宿便性潰瘍は,高度の便秘で腸管内に停滞した糞便塊が粘膜を圧迫し,血流障害を来すことにより発生する褥瘡潰瘍である1).本症の最初の報告例は1984年にBerry2)によってなされた宿便性S状結腸穿孔である.急性出血性直腸潰瘍症(acute hemorrhagic rectal ulcer;AHRU)と同様,心不全,慢性腎不全,脳血管障害,整形外科手術後,癌末期など,重篤な基礎疾患により長期臥床中の高齢者に好発する.海外では精神疾患患者,麻薬常用者,鎮静剤・抗うつ剤などの薬剤服用者,大腸癌による腸管狭窄,Hirschsprung病,全身性硬化症などにおける発症も報告されている.Selyeら3)は動物実験によって,粘膜血流の低下が宿便性潰瘍発生の危険因子であり,糞便塊という攻撃因子と血流を主体とした防御因子の均衡破綻により生じることを示唆している.病理組織学的には非特異的潰瘍であり,上皮脱落のみの軽度の変化から壁を貫通する潰瘍まで程度は様々である.
好発部位は直腸,S状結腸であり,骨盤腔内に存在するため腸壁の伸展が制限され,また硬便が形成されやすいためとされている.しかし盲腸や回腸終末部の病変も報告されており,便塊が形成されればどこにでも発生しうる.腸管穿孔の発生部位はS状結腸が約半数を占める.
腸管子宮内膜症(enteric endometriosis)
著者: 佐野村誠 , 平田一郎
ページ範囲:P.782 - P.782
腸管子宮内膜症の病型について,泉ら1)は腫瘤形成主体のendometrioma型と狭窄主体のdiffuse endometriosis型に分類し,endometrioma型は粘膜下腫瘤の結節内の子宮内膜腺が性周期に同期して出血し,diffuse endometriosis型は子宮内膜腺が壁内出血を繰り返したために線維化が進み腸管の伸展性がなくなり狭窄を来した状態としている.
X線所見では,粘膜下層・固有筋層の線維化を反映し,粘膜下腫瘍様隆起の周囲から腸管の長軸方向に垂直に走行するひだ(transverse ridging)2)の収束像が特徴的な所見である(Fig. 1a).また,充盈像でみられる長い片側性の陰影欠損像(long filling defect)や鋸歯状の辺縁を伴う病変もあり,全周性に近い変化である場合は蛇の抜け殻様狭窄(Fig. 2)と形容される形態を示す.子宮内膜組織が粘膜内にまで達したときは,粘膜面の変化として網目状構造やcobblestone様の顆粒状隆起の所見がみられる.
Crohn病(Crohn's disease;CD)
著者: 長坂光夫 , 平田一郎
ページ範囲:P.783 - P.783
Crohn病は1932年Crohnら1)によって原因不明の回腸末端炎として報告された.本邦において近年この疾患は増加の一途を辿り,厚生労働省の難治性特定疾患に指定されている.その報告書2)の中で疾患概念として「本疾患は原因不明であるが,免疫異常などの関与が考えられる肉芽腫性炎症性疾患である.主として若年者に発症し,小腸・大腸を中心に浮腫や潰瘍を認め,腸管狭窄や瘻孔など特徴的な病態が生じる.原著1)では回腸末端炎と記載されているが,現在では口腔から肛門までの消化管のあらゆる部位におこりうることが判明している.消化管以外にも種々の合併症を伴うため,全身性疾患としての対応が必要である.臨床像は病変の部位や範囲によるが,下痢や腹痛などの消化管症状と発熱や体重減少・栄養障害などの全身症状を認め,貧血,関節炎,虹彩炎,皮膚病変などの合併症に由来する症状も呈する.病状・病変は再発・再燃を繰り返しながら進行し,治療に抵抗して社会生活が損なわれることも少なくない」と記されている.Crohn病の診断は診断基準〔クローン病診断基準(案 : 2010年2月9日改訂),Table 1〕2)に則り画像所見や病理組織所見によって判定される.
Crohn病の画像所見の特徴はその自然史の中で初期の病変であるアフタ様潰瘍・病変3)4)や不整形潰瘍が進展して縦列傾向を示し,それらが癒合して典型像である縦走潰瘍,敷石様外観へと進展すると考えられており5)6),再燃・寛解を繰り返してやがて狭窄,瘻孔,膿瘍などの合併症を惹起して外科的治療が必要となる症例も多い7)~11).Crohn病の治療は寛解導入治療に成功してもその後の継続した積極的維持治療の介入がなければほとんどの症例で再燃・寛解を繰り返して悪化する12)という点で,類似する炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎とは病態が大きく異なると考えられている.
indeterminate colitis
著者: 松井敏幸
ページ範囲:P.784 - P.785
indeterminate colitisとは,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)とCrohn病(Crohn's disease;CD)の鑑別困難例である.CDとUC両疾患は,特異的な診断項目がなく,主に形態学的所見(びまん性罹患vs. skip lesion,縦走潰瘍,敷石像,広範なアフタ,小腸病変,肛門病変,上部消化管病変,狭窄,膿瘍など)や組織学的所見(粘膜主体の炎症,transmural inflammation,不釣合い炎症,patchy inflammation,非乾酪性類上皮細胞肉芽腫,など)によって診断される.しかも,両者の鑑別点は従来からあいまいな点が存在することが知られていた.
indeterminate colitisは,当初は手術例の切除標本の組織学的検索によっても鑑別できない場合を指した1).その多くは,激しい潰瘍の存在によりUCあるいはCD特徴的な所見が得られないものが多かった.現在では,その概念が徐々に変化し,切除例のみならず,内視鏡所見や生検組織所見などの臨床的項目で鑑別できない場合も含まれるようになった2).すなわち,後にCDと確定するものでも当初はびまん性大腸炎を呈することがある(Fig. 1, 2).逆に,限局性大腸炎であってもUCの病態を呈することがある(直腸罹患を欠く例の存在,区域性大腸炎,右側大腸炎の存在).内視鏡診断のみでは確定できないことがある点,治療選択に際し臨床医が留意すべきである.さらに生検組織診断を加えても正診できないこともある(CDにおける生検での肉芽腫検出率は30~40%程度).小児のIBD(inflammatory bowel disease)ではIBDが発症早期であるため特徴的な像が乏しく確定診断ができないことが多いとされている.しかし,慎重に経過追跡することにより多くは確定診断に至るとも考えられている.わが国のCDの診断基準にも「indeterminate colitisはCrohn病と潰瘍性大腸炎の両疾患の臨床的,病理学的特徴を合わせもつ,鑑別困難例」と付記されている3).
虚血性小腸炎(ischemic enteritis)
著者: 森山智彦 , 松本主之
ページ範囲:P.786 - P.786
虚血性小腸炎は,小腸の血流障害に起因する小腸病変である.虚血性大腸炎よりも発生頻度が低いのは,小腸の側副血行路が豊富であるためと考えられている1).発症には血管側因子と腸管側因子が複雑に絡み合っており,前者として腸間膜動静脈の微小な塞栓や動脈炎,血圧低下による血流不足,薬剤などが,後者として腸管内圧上昇などが挙げられる2).
腹痛,嘔吐で発症することが多く下血や血便はまれである.ただし,症状は罹患範囲や虚血の程度,側副血行路とも関連する1)3).発症直後には腸管浮腫による拇指圧痕像と皺襞肥大を認める.一方,治癒期の病態は虚血性大腸炎と同様に一過性型と狭窄型に大別されるが,小腸では狭窄型が圧倒的に多く通過障害を来す.狭窄型の病理学的特徴としては求心性の狭窄,境界明瞭な全周性区域性潰瘍,腸管の壁肥厚などが挙げられ4),X線・内視鏡検査では,全周性潰瘍による管状狭窄,口側腸管の拡張,凹凸不整な顆粒状粘膜などがみられる(Fig. 1, 2).
NSAID起因性腸病変(NSAID-induced intestinal lesions)
著者: 蔵原晃一 , 松本主之
ページ範囲:P.787 - P.787
非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drug;NSAID)起因性腸病変は,NSAIDによって正常な小腸ないし大腸に惹起される粘膜病変と定義され,その存在部位から同小腸病変と大腸病変に分類される1)2).
NSAID起因性腸病変の肉眼像や病理組織像は非特異的な所見にとどまるため,診断には,他の薬剤性腸炎と同様に,(1) 腸病変(潰瘍,腸炎)の確認,(2) NSAIDの使用歴の確認,(3) 他疾患の除外(病理組織学的,細菌学的除外診断を含む),(4) NSAIDの使用中止による病変の治癒軽快の確認,をすべて満たす必要がある1)~3).
非特異性多発性小腸潰瘍症(chronic nonspecific multiple ulcers of the small intestine)
著者: 松本主之
ページ範囲:P.788 - P.788
非特異性多発性小腸潰瘍症は,持続的な潜出血による貧血と低蛋白血症を来し,粘膜下層までにとどまる治癒傾向のない潰瘍が回腸に多発する難治性疾患である1)2).原因は不明であるが,常染色体劣性遺伝形式の家系が存在し,遺伝的素因の関与が考えられる3).女性に好発し,若年時から原因不明の鉄欠乏性貧血として経過観察され,青・壮年期に本症と診断される.高度の鉄欠乏性貧血と低蛋白血症を認め,便潜血は持続的に陽性を示す.炎症所見は陰性,あるいは軽度上昇にとどまる.
病変は終末回腸以外の回腸に発生し,横走傾向を示すテープ状,あるいは細長い三角形の形態を呈する.また,腸間膜付着部とは無関係に潰瘍は枝分かれする.X線検査では,非対称性で規則性のない硬化所見,小腸皺襞の消失などが浅い潰瘍の間接所見として描出される.二重造影ではわずかな透亮像を伴う線状,ないし帯状のバリウム斑として描出される(Fig. 1).小腸内視鏡検査では,下部回腸に浅く境界明瞭な輪走・斜走潰瘍(Fig. 2)が観察され,一部では偽憩室を形成しながら狭窄に至る.難治性・再発性の経過をたどり,炎症性腸疾患の薬物療法は無効である.中心静脈栄養療法は潰瘍を治癒に至らしめる唯一の治療法であるが,経口摂取再開後に再発する例が多い.
microscopic colitis
著者: 平田一郎
ページ範囲:P.789 - P.790
1976年にLindström1)は,慢性下痢と腹痛を呈し,注腸や直腸鏡で大腸粘膜に肉眼的異常を認めず,直腸粘膜生検にて被蓋上皮基底膜直下に特徴的な厚い膠原線維束を認めた患者に対してCC(collagenous colitis)という疾患概念を最初に提唱した.一方,1980年にReadら2)は原因不明の慢性下痢を主徴とし,注腸やS状結腸鏡で大腸粘膜に異常を認めず,直腸粘膜生検で軽度の炎症性細胞浸潤がみられるものに対しMC(microscopic colitis)という疾患名を提唱した.1989年にLazenbyら3)は,ReadらのMCは上皮間リンパ球の著明な増加が特徴で上皮下の膠原線維束肥厚を認めないことから,MCの呼称をLC(lymphocytic colitis)に変更することを提唱し,LCとCCは非常に類似した病態を呈するが鑑別可能な類縁疾患であると考えた.その後,ReadらのMCという用語はLCとCCを包括する総称として用いられるようになった.
欧米におけるMCは,罹患率は約10.0(人口10万人対),平均発症年齢は60歳代後半,男女比は約1 : 3である4).本邦におけるMCの報告数は極めて少なく,CCは2011年までに182例の報告しかないが,その平均発症年齢や男女比は欧米とほぼ同じである5).また,本邦ではLCに関する報告はほとんど認められない.
特発性腸間膜静脈硬化症(idiopathic mesenteric phlebosclerosis)
著者: 岩下明德 , 池田圭祐
ページ範囲:P.791 - P.791
特発性腸間膜静脈硬化症(idiopathic mesenteric phlebosclerosis;IMP)は最近わが国で初めて報告され,その疾患概念が確立された比較的まれな原因不明の腸疾患である.本疾患は腸管膜静脈硬化症に起因した還流障害による慢性虚血性大腸病変とされる1)2).
筆者らが経験した本疾患17例3)と文献的に収集しえた本疾患50症例,計67症例の患者の年齢は平均61(28~86)歳で男女比は30 : 37である.発症は緩徐で,症状は腹痛,下痢,便秘,腹部膨満などが主であり,下血・血便は少ない.罹患部位は回腸末端部から直腸に及ぶが,病変の程度は右半結腸,特に盲腸・上行結腸でより強い.本疾患の臨床画像的特徴としては,腹部単純X線検査では右側腹部に線状石灰化像を認め,腹部CTでは大腸壁の肥厚,および腸管壁ないし腸間膜に一致した石灰化像がみられる.注腸X線検査では壁硬化や不整,管腔狭小,拇指圧痕像や粘膜の浮腫状変化などの所見を呈し,大腸内視鏡検査では粘膜に暗青~赤色あるいは褐色などの色調変化がみられ,浮腫や狭窄,びらん・潰瘍,血管透見像の消失などを伴う(Fig. 1).
大腸憩室疾患(diverticular disease of the colon)
著者: 清水誠治
ページ範囲:P.792 - P.792
大腸憩室疾患とは大腸憩室に合併する疾患の総称で,代表的なものは憩室出血と憩室炎であるが,他にも様々な病態がある.
憩室出血 高齢者での血便で重要な位置を占め,多くは無痛性である.憩室内のvasa rectaの機械的損傷によると考えられており,必ずしも憩室炎を伴わない.
GVHD関連腸炎(GVHD associated enteritis)
著者: 船越和博
ページ範囲:P.793 - P.793
移植後100日以内に発症する急性GVHD(graft-versus-host disease)は皮疹・黄疸・下痢を特徴とする症候群で,宿主と移植片の免疫学的相違によるドナーリンパ球が引き起こす多臓器組織障害である1).GVHD関連腸炎は急性GVHDにおける大腸を中心とした下部消化管病変を指し,下痢,嘔気,腹痛を伴い,内視鏡像は粘膜の血管透見低下,発赤,浮腫,びらん,潰瘍,出血や“orange peel”所見など多彩で,終末回腸,深部結腸に好発する(Fig. 1)1)~3).病理組織学的にはリンパ球浸潤を伴う上皮細胞の様々な程度のアポトーシスが特徴である(Fig. 2)1).鑑別疾患としてCMV(cytomegalovirus)などのウイルス,細菌や真菌などの感染性腸炎,移植関連微小循環障害による腸管TMA(thrombotic microangiopathy),移植前処置による粘膜炎である前処置関連毒性(regimen related toxicity;RRT)1)~3)などがあり,移植後21日以内の生検標本は前治療の影響が残るので注意が必要である1).
Clostridium difficile関連性腸炎(Clostridium difficile infection;CDI)
著者: 藤田浩史 , 平田一郎
ページ範囲:P.794 - P.794
Clostridium difficile(C. difficile)は芽胞形成性の偏性嫌気性グラム陽性球菌である.1935年に新生児の糞便から初めて分離され,1978年に動物実験からクリンダマイシン投与後の偽膜性腸炎がC. difficileによることが初めて証明された1).2010年に作成されたSHEA/IDSAのガイドラインではCDADからCDI(Clostridium difficile infection)へと名称が変更された2).CDIの定義は (1) 24時間以内に3回以上の軟便~下痢があること,(2) 毒素産生性のC. difficileの便検査からの証明やtoxinの検出,大腸内視鏡もしくは病理組織所見による偽膜性腸炎の証明がされることである.
CDIの発症危険因子は65歳以上の高齢者,易感染性患者,重度の基礎疾患,長期入院,胃酸の長期間抑制されている患者などが挙げられている.便培養は診断に時間がかかるため糞便中のtoxinを直接計測する酵素免疫測定法(enzyme immuno assay;EIA法)が使用されることが多い.C. difficileの主な腸管病原性は産生される毒素にある.toxin Aは好中球遊走因子を有する強力な腸管毒素(enterotoxin)であり,腸液の分泌や腸管血管,粘膜の透過性を亢進させ,腸液の増加と蛋白の漏出による下痢を来す.toxin Bは細胞傷害性毒素(cytotoxin)であり,toxin Aの存在下で細胞透過性が亢進していると,toxin Bがより細胞内に入り込みやすくなり細胞傷害性を発揮する.toxin Aは,細胞培養系の腸管上皮細胞のtight junctionを破壊する作用があり,腸管粘膜を傷害する病原性があると考えられる.toxin Bはtoxin Aの10倍細胞毒性が強いと言われるが,toxin B単独では細胞膜の破壊もtight junctionの破壊も起こらないため,toxin Bの病原性はtoxin Aとの相互作用にあると考えられていた.しかし2000年にtoxin A-/toxin B+菌株によるout breakが起こり,両方が測定できる検査キットが開発された.日本国内におけるtoxin A-/B+株は9~40%あると報告されている.
食中毒(food poisoning)
著者: 大川清孝 , 青木哲哉
ページ範囲:P.795 - P.795
食中毒は,食品などに含まれた病原微生物,化学物質,自然毒などを摂取することによって発症する疾患である.食中毒という用語は行政用語であり,一般的に同一の食品によって複数の患者が集団発生した場合を指す.食中毒が疑われた時点で保健所に届出を行うが,結果的に病原体が検出された場合に食中毒として集計される1).原因となる病原微生物は本邦では細菌とウイルスが多く寄生虫は少ない.夏には細菌性が,冬にはウイルス性が多い.食中毒の患者数はノロウイルスが最も多く,死者は腸管出血性大腸菌とサルモネラが多い.
細菌性食中毒ではカンピロバクター腸炎やサルモネラ腸炎が潰瘍性大腸炎に,エルシニア腸炎がCrohn病に類似した画像所見を呈することがあり,その鑑別が重要である2).
志賀毒素産生性大腸菌感染症(Shiga toxin-producing Escherichia coli infection)
著者: 滋野俊
ページ範囲:P.796 - P.796
下痢原性大腸菌は病原機序の違いにより,腸管病原性大腸菌,腸管侵入性大腸菌,腸管毒素原性大腸菌,志賀毒素産生性大腸菌(Shiga toxin-producing Escherichia coli;STEC)および腸管凝集性大腸菌に分けられる.このうち志賀毒素産生性大腸菌は,志賀毒素を産生する下痢原性大腸菌と定義される.1982年に米国で発生したハンバーガーによる集団食中毒において大腸菌O157が原因菌と断定され,激しい血便と腹痛を呈することから当初は腸管出血性大腸菌と名付けられた1).まもなくこの菌がベロ毒素を産生することが判明し,ベロ毒素産生性大腸菌とも呼ばれるようになった1).その後,ベロ毒素は志賀毒素と同じ生物活性を示すことから,毒素名を志賀毒素,菌名をSTECと呼称を統一することが提案された1)が,本邦では腸管出血性大腸菌,ベロ毒素産生性大腸菌の名称もいまだ臨床上用いられている.本邦で検出されるSTECのO抗原血清群はO157が最も多く,次いでO111,O26の順である.O157出血性大腸炎の典型例では1~8日の潜伏期の後,腹部疝痛・下痢で発症し,下痢は1~2日で血性下痢に変わる2).通常出血性大腸炎は5~7日で治まるが,本症の数%に溶血性尿毒症症候群を合併することには臨床上注意を要する.O157出血性大腸炎の典型的内視鏡像は,右側結腸で著しい炎症所見を呈し,左側結腸に向かうに従い炎症所見は漸減する(Fig. 1)2).また,縦走潰瘍を呈する例もある2).CTでは,右側結腸の著明な壁肥厚像が特徴的である(Fig. 2)3).
腸管スピロヘータ症(intestinal spirochetosis)
著者: 岩下明德 , 田邉寛
ページ範囲:P.797 - P.797
ヒト腸管スピロヘータ症(human intestinal spirochetosis;HIS)は,螺旋状を呈するグラム陰性嫌気性菌のBrachyspira属を原因菌とする大腸感染症である.梅毒(syphilis)と混同されることがあるが,梅毒の原因菌であるTreponema pallidumとは全く異なる弱毒性の菌である.1967年にHarlandとLee1)が初めて命名し,本邦では1998年にNakamuraら2)が最初の報告をして以来,近年増加している.ヒトへの感染はB. aalborgiとB. pilosicoliの報告例があり,B. pilosicoliはヒトだけでなく様々な動物に広く感染がみられ,人畜共通感染症として注目されているが,B. aalborgiはヒトと高等霊長類のみに感染が認められている.本邦での感染は,多くがB. aalborgiである.感染経路は主に糞便を介した経口感染と推測されており,感染形態は家族内あるいは部族内に広範囲に感染をみる発展途上国の感染様式と,AIDSなどの免疫不全患者に発生する欧米の日和見感染様式の大きく2種類とされているが,本邦の感染形態はいずれにも属していないと思われる.
スピロヘータ(spirochetes)は病理組織学的に大腸上皮表面に好塩基性で毛羽立ち状に付着した特徴ある菌塊として観察され(Fig. 1),そのままでは病原性を発揮しない.最近の多数例の集積・検討結果3)4)から,その多くは大腸腺腫や過形成性ポリープなどに偶然存在が確認され,臨床的,また病理組織学的に明らかな症状や炎症所見を呈さない例,つまり保菌者であろうと考えられている.換言すると腸管スピロヘータ症を臨床的,内視鏡的に診断することはほとんど不可能に近く,病理組織学的にも見落とされる場合が多いので,その診断には注意深い丹念な検鏡が必要である.臨床的,病理組織学的に腸炎の所見がみられ,その原因がスピロヘータ以外特定できない症例も少数例あり,それらは本菌が病原性を発揮している本当の意味での感染症が疑われる.しかし,基本的にスピロヘータの感染のみで強い炎症像を呈することはほとんどないため,その際は他疾患の合併,特にアメーバ性腸炎などの合併を考慮し再評価する必要がある.
サイトメガロウイルス感染性腸炎(cytomegalovirus enterocolitis)
著者: 青柳邦彦 , 冨岡禎隆
ページ範囲:P.798 - P.798
サイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)の感染には,初感染,再活性化,再感染の3つの様式がある.本邦では不顕性感染が多く,成人の80~90%が既に抗体陽性と言われている.したがって,実際には初感染例や再感染例より再活性化例が多い.悪性疾患,ステロイド・免疫抑制剤投与,後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome;AIDS)など免疫能の低下した患者では,不顕性感染しているCMVが再活性化して発症する日和見感染症として認められる.免疫能が低下した患者に発症する腸炎では,まず疑うべきもののひとつである.また,近年,潰瘍性大腸炎の重症化,難治化要因としても注目されている.
その病態は,腸病変に伴い,下痢,腹痛など非特異的な腹部症状を呈する.肝炎,網膜炎,間質性肺炎,亜急性脳炎などの合併症を有することがある.内視鏡所見は,地図状あるいは打ち抜き様潰瘍が特徴的であるが,発赤,縦走潰瘍,アフタ様びらんなどもみられる(Fig. 1, 2).血管内皮細胞への感染により血管内皮の膨化,虚血,そして潰瘍に至ると考えられている.本症を疑った場合,内視鏡下生検で病変部(特に潰瘍底)から組織を採取し,病理学的に核内封入体や巨細胞を確認できれば診断される.さらに,モノクローナル抗体による免疫染色,抗原血症,血清抗体を併用すると感染診断率が向上する.なお,血液中でのみ抗原や抗体が確認されたCMV感染と,局所感染が確認されたCMV腸炎との判別を常に念頭に置く必要がある.
アメーバ性大腸炎(amebic colitis)
著者: 大川清孝 , 大庭宏子
ページ範囲:P.799 - P.799
赤痢アメーバ感染症の原因は原虫のEntamoeba histolyticaであり,腸アメーバ症と腸外アメーバ症に分類できる.前者は赤痢様の激しい症状を示すアメーバ赤痢とアメーバ性大腸炎に分類できるが,現在ではこの分類にあまり意味がなく,両者を含めてアメーバ性大腸炎と呼ぶことが多い.囊子が経口摂取されることにより感染し,下部小腸で栄養型となり,大腸,特に盲腸で成熟し分裂,増殖する.その後粘膜に侵入し,壊死に陥らせ下掘れ潰瘍を形成する.
本邦での感染原因は発展途上国への旅行より性行為によるものが圧倒的に多い.男性同性間感染が多いが,最近では風俗店を介した異性間感染が増加している.多くは慢性に経過し,下痢,粘血便,腹部膨満感,腹痛などで寛解と再燃を繰り返す.劇症型とは,急速に大腸の広範な全層性壊死が進行し,腸管穿孔や多臓器不全を併発した死亡率の高い病態を言う.
クラミジア直腸炎(Chlamydia trachomatis proctitis)
著者: 村野実之
ページ範囲:P.800 - P.800
クラミジア直腸炎は,性行為感染症(sexually transmitted disease;STD)の原因として最も頻度の高いChlamydia trachomatis(C. trachomatis)が直腸粘膜に感染して起こる直腸炎である.
C. trachomatisはLGV(lymphogranuloma venereum),trachoma,mouseの3つの血清型に分類される.血清型LGVは性病性(鼠径)リンパ節肉芽腫(lymphogranuloma venereum;LGV)の原因菌として知られ,LGV以外の血清型(non LGV;trachoma,mouse)は直腸炎以外に結膜炎を引き起こすが,性器クラミジア感染症の原因となり,男性では尿道炎,前立腺炎,副睾丸炎,女性では子宮頸管炎,卵管炎,骨盤腔炎,さらに肝周囲炎(Fitz Hugh Curtis syndrome)などが引き起こされる.1970年代以後,欧米の男性同性愛者を中心にnon LGVによる本疾患が報告されるようになり,本邦でも近年non LGVによる直腸炎の報告が散見されるようになった.現在,LGVの発生はほとんどみられず,STDとして蔓延しているのはnon LGV,特にtracomaであり,それにより引き起こされるクラミジア直腸炎が多数報告されている.
尖圭コンジローマ(condyloma acuminatum)
著者: 入口陽介 , 大野康寛
ページ範囲:P.801 - P.801
尖圭コンジローマは,HPV(human papilloma virus)の直接感染によって男女の外性器に好発する良性疾患(ウイルス性疣贅)である.主として,性交渉やその関連行為により感染し,感染後,肉眼で観察される大きさになるまで3週間から8か月程度を要する.若年者に多く,男性では陰茎,女性では外陰部が好発部位であるが,時に尿道や肛門に発生し,特に同性愛者では肛門周囲の病変が増加していることが指摘されている.しかし肛門性交歴がない場合にも,肛門尖圭コンジローマが発症したとする症例報告があり,サウナや公衆浴場などからの感染が推測されている.
肛門尖圭コンジローマの肉眼形態は,透明感のある白色調の数mm大から1cmを超える疣状の隆起が多発し,さらに集簇・融合して,乳頭状,時には鶏冠状の隆起を呈し,肛門管移行帯を中心に正常粘膜を介して不連続に直腸粘膜に拡がることがあると報告されている(Fig. 1a).
疾患〔全消化管〕
neuroendocrine neoplasms
著者: 下田忠和
ページ範囲:P.803 - P.804
概念と分類 消化器腫瘍の新WHO分類(第4版,2010年)では神経内分泌に分化した腫瘍をneuroendcrine neoplasmsと総称し,それに含まれる腫瘍を以下のように分類した(Table 1,1980年と2000年の消化器内分泌細胞性腫瘍の分類を対応させている)1).低悪性度と高悪性度腫瘍に大きく分けられ,従来と比べて分類の概念が明瞭となった.以前,前者は消化管では低悪性度腫瘍はcarcinoid tumor,膵ではislet cell tumorと呼ばれていたが,2000年のWHO分類(第3版)ではwell differentiated endocrine tumor and well differentiated neuroendocrine carcinomaとされた.この分類は言葉と概念に混乱を来したため,今回はこれらをまとめてNET(neuroendocrine tumor)とし,さらに転移の危険性がないか極めて低いものをNET grade 1(旧分類のwell differentiated endocrine tumor),転移を来す可能性のあるものをNET grade 2(旧分類のwell differentiated endocrine carcinoma)とした.高悪性度腫瘍は旧分類でpoorly differentiated endocrine carcinomaとされていたが,NEC(neuroendocrine carcinoma)とMANEC(mixed adenoendocrine carcinoma)に分けた.したがって,NETとNECは生物学的には全く別な腫瘍としての理解が可能となった(Table 1).
神経内分泌腫瘍と内分泌細胞性腫瘍 前述したように,WHOをはじめ世界ではneuroendocrine tumor and carcinoma(神経内分泌腫瘍と神経内分泌癌)と記載されている.これに対し,日本の消化管癌の取扱い規約2)3)では低悪性度腫瘍はcarcinoid,高悪性度腫瘍は内分泌細胞癌(endocrine cell carcinoma;ECC)と記載されている.この中で後者は消化管では多くの場合,粘膜にみられる腺癌あるいは食道では,扁平上皮癌4)が深部浸潤したときに腫瘍細胞が内分泌細胞へ分化した癌となるため,また接頭語として“神経-neuro”がつかないのは,消化管では内分泌細胞は正常腺管の増殖細胞から分化する細胞で,基本的に本腫瘍が神経外胚葉ではなく内胚葉性起源の腫瘍のためである.
大腸腺腫症(adenomatous polyposis)
著者: 前畠裕司 , 松本主之
ページ範囲:P.805 - P.805
大腸腺腫症は1975年Bussey1)が大腸に100個以上の腺腫を有し,常染色体優性遺伝を示す疾患をFPC(familial polyposis coli)としたのが始まりである.その後,FPCに骨腫や軟部腫瘍を合併するものをGardner症候群と称していたが,1990年代に第5染色体長腕上のAPC遺伝子が両疾患の原因遺伝子と判明し,ともに家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis;FAP)として取り扱われるようになった.近年,DNA酸化修復遺伝子であるMUTYH遺伝子のホモ変異に起因する大腸腺腫症の存在も判明し,MUTYH関連大腸腺腫症(MUTYH-associated polyposis;MAP)と称されている2).現在のところ,大腸腺腫症とはFAPとMAPを包括する病態であり,大腸全域に腺腫が多発し,放置すれば高率に癌化する遺伝性疾患と定義される3).
本症では,大腸全域に無茎性ないし亜有茎性の隆起性病変が多発するのが特徴で(Fig. 1, 2),結節集簇様病変や微小な平坦・陥凹型病変も認められる.組織像の大半は腺管腺腫であるが,加齢とともに大腸癌のリスクが増大するため,予防的大腸切除術を行うことが推奨されている.その際は,全大腸切除・回腸囊肛門(管)吻合術が第一選択となる.大腸切除術の待機期間に非ステロイド性抗炎症薬によるchemopreventionも試みられている.
Peutz-Jeghers症候群(Peutz-Jeghers syndrome)
著者: 大宮直木 , 後藤秀実
ページ範囲:P.806 - P.806
Peutz-Jeghers症候群は,(1) 食道を除く全消化管の過誤腫性ポリポーシスと (2) 口唇,口腔,指趾の色素沈着を特徴とする常染色体優性遺伝性疾患である.家族歴は約半数で認められるが,残り半数は孤発例である.(1) の消化管ポリポーシスは食道を除く全消化管に散在性に発生するが,ポリープの発生する頻度は小腸が最も高く,数も多い.大きさは様々で,大きくなるに従い分葉状,有茎性となる(Fig. 1, 2).ポリープの組織像は過誤腫であり,上皮の過形成と粘膜筋板のポリープ内への樹枝状増生を特徴とする.(2) の色素斑は1~5mmほどの大きさで口唇,口腔粘膜に最も多く認められ,指趾,顔面,手掌,足底,陰部,まれに腸管内にも認められる.加齢とともに退縮,消失することが多い.
合併症は前期合併症(ポリープによる腸重積・出血・腹痛)と後期合併症(悪性腫瘍の発生)に分けられる.ポリープは上述のごとく有茎性であるため,腸重積や,潰瘍出血,腹痛発作を引き起こす.また,重積した腸管や拡張した口側の腸管などを触れることがある.(1) の好発年齢は若年であり,1/3は10歳前,50~60%は20歳前に発症すると言われる.(2) の悪性腫瘍の合併は30歳以降が多く,上述の消化管(大腸,小腸,食道・胃)はもとより,消化管外(乳腺,膵臓,卵巣・子宮,精巣,肺)にも発生するため,消化管のみならず,腹部超音波検査,胸腹部造影CT,マンモグラフィ,婦人科検診などの経年的なスクリーニングを忘れてはならない.
Cronkhite-Canada症候群(Cronkhite-Canada syndrome;CCS)
著者: 藤田浩史 , 平田一郎
ページ範囲:P.807 - P.807
Cronkhite-Canada症候群(Cronkhite-Canada syndorome;CCS)は1955年CronkhiteとCanadaにより初めて報告された,脱毛症,爪異栄養症,過度の皮膚色素沈着,下痢,体重減少を伴うまれな非遺伝性の消化管ポリポーシスである.発生率は100万人に1人と言われており,ヨーロッパ系もしくはアジア系の50~60歳代で発症し,性差は男性 : 女性は3 : 2とやや男性に多い1).
CCS発症要因として精神的ストレス,ビタミン欠乏,鎮痛剤などの薬剤,甲状腺機能低下症などの報告がある1).近年全身性エリテマトーデスや関節リウマチ患者での報告や,抗核抗体陽性症例,粘膜組織中のIgG4免疫染色陽性症例の報告が相次ぎ,自己免疫疾患の関連が示唆されている2).CCS自体は良性だが,消化器癌を15%に合併する.
若年性ポリポーシス(juvenile polyposis)
著者: 菅智明 , 赤松泰次
ページ範囲:P.808 - P.808
若年性ポリポーシスは1964年にMcCollら1)が,大腸に若年性ポリープが多発する疾患として最初に報告した.その後,胃・小腸・大腸に病変が存在する胃腸管若年性ポリポーシスや,胃病変のみを認める胃限局性若年性ポリポーシスも報告されている2).孤発性,あるいは常染色体優性遺伝を示す家族性の症例が報告されており,原因遺伝子としては,SMAD4やPTEN遺伝子などが知られている.
ポリープは発赤調で軟らかく,粘液が付着していることが多い.数mm~数cm大のものが数個~100個程度存在し,無茎性から有茎性まで形態は様々である(Fig. 1, 2).生検では過形成ポリープと診断されることが多いため,診断的に内視鏡的粘膜切除術を行うことが有用である.周辺介在粘膜がほぼ正常に保たれていることも確認できれば,Cronkhite-Canada症候群との鑑別にも有用である3).
Cowden病(Cowden's disease)
著者: 廣瀬靖光 , 魚住淳
ページ範囲:P.809 - P.809
Cowden病は1963年にLloydら1)によって初めて報告され,その患者名が名前の由来である.PTEN遺伝子の変異が原因と報告されている.常染色体優性遺伝とされるが2),本邦では孤発性の報告が多い.
特徴的所見として,(1) 顔面の外毛根鞘腫,乳頭腫性丘疹などの皮膚病変,(2) 消化管ポリポーシス,(3) 多臓器の多彩な腫瘍性病変が挙げられる.消化管ポリープは組織学的には過形成性または過誤腫性のポリポーシスであり,食道に高頻度に認められるびまん性ポリポーシスが他の消化管ポリポーシスとの鑑別点の1つとなる(Fig. 1).
消化管原発濾胞性リンパ腫(primary intestinal follicular lymphoma)
著者: 岩谷勇吾
ページ範囲:P.810 - P.810
濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma;FL)は低悪性度B細胞性リンパ腫であり,従来そのほとんどはリンパ節性であると考えられていた.しかし,近年,検診などで十二指腸下行部の白色顆粒状病変として偶然発見される消化管原発FLの報告が増加してきており,2008年に出版されたWHO分類第4版1)においてもFLの1亜型としてprimary intestinal follicular lymphomaの項目が新たに設けられた.また,カプセル内視鏡やバルーン内視鏡の開発により,多くの症例で病変が空腸・回腸に併発することが明らかになった2).本邦の多施設による検討3)では,発生に性差はなく,無症状で偶然発見される症例が8割近くを占めている.
内視鏡所見の典型像は十二指腸下行部の白色顆粒状隆起の集簇所見である(Fig. 1a).空腸病変も十二指腸病変と同様に白色顆粒状隆起を呈することが多いが,輪状潰瘍や狭窄を呈する症例,腫瘤状隆起を形成する症例も存在する.一方,回腸病変では終末部に周囲健常粘膜と同色調の多発性隆起病変(Fig. 1b)として存在し,リンパ濾胞過形成と肉眼的には鑑別が困難であることが多く4),生検診断が必須である.FDG-PET(18F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography)では集積を認めないことが多い.
マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma;MCL)
著者: 中村昌太郎 , 松本主之
ページ範囲:P.811 - P.811
マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma;MCL)はcyclin D1遺伝子転座に特徴づけられる小型~中型の腫瘍細胞から成る予後不良の中/高悪性度(aggressive)B細胞リンパ腫である(Fig. 1~3).リンパ節,脾臓,消化管に好発するが,消化管原発リンパ腫の中では1~4%と比較的まれである.消化管のあらゆる部位に発生するが,なかでも十二指腸・小腸に好発し,大小のSMT(submucosal tumor)様隆起が多発するポリポーシスの形態(multiple lymphomatous polyposis;MLP)を呈することが多い.濾胞性リンパ腫やMALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫などの低悪性度リンパ腫もMLP型を呈するが,MCLの隆起は大小不均一で,しばしば大型の腫瘤を形成する.これらの組織型の鑑別はHE標本のみでは困難で,免疫染色が必須である.MCLの確定診断には,免疫染色でcyclin D1蛋白の核内発現を確認する必要がある.
GIST(gastrointestinal stromal tumor)
著者: 柴田知行 , 平田一郎
ページ範囲:P.812 - P.812
消化管間葉系腫瘍(gastrointestinal mesenchymal tumor;GIMT)の大部分を占める非上皮性腫瘍が消化管間質性腫瘍(gastrointestinal stromal tumor;GIST)である(Fig. 1).GISTは胃に最も多く発生し,次いで小腸,大腸となり食道での発生はまれである.胃GISTのほうが小腸GISTより一般的に予後はよいと考えられている.
過去,Stout1)の報告以来,GIMTは大部分が筋層由来の腫瘍と考えられ,良性の平滑筋腫と悪性の平滑筋肉腫,核周囲に空胞や淡明領域をもつ上皮様腫瘍の平滑筋芽腫に分類されていた.しかしMazurら2)が電子顕微鏡や免疫染色で詳細に検討し,これらの腫瘍は平滑筋細胞の形質を持つものが少なく,Schwann細胞への分化を示す腫瘍も存在することを示した.
Dieulafoy潰瘍(Dieulafoy's ulcer)
著者: 小澤俊文
ページ範囲:P.813 - P.813
Dieulafoy潰瘍は,1898年にフランスのDieulafoyが初めて論文報告した潰瘍で,硬貨大の浅い潰瘍から大量の吐血を来し失血死するとした.臨床的には明確な定義はない1)が,潰瘍の既往のない人が心窩部痛や吐き気,食欲不振などの前駆症状なしに突然,大量の吐・下血で発症することが多い.内視鏡的には数壁集中や浮腫性周堤を伴わないごく小さな潰瘍の中心部に太い露出血管が観察される.
血管破綻の原因として,粘膜下層の細血管の走行異常,拡張,微小動脈瘤,動静脈奇形などの諸説があるが,病理学的には胃の浅い小型の潰瘍で,粘膜下層に存在する太く蛇行する“走行異常”する血管が潰瘍底に存在することで破綻し大量出血すると考える研究者が多い.UL-IIまでの浅い潰瘍で,破綻動脈の最大径は350~2,000μmであるが1,000μm以上の報告が多い2).胃体部に発生することが多いが,直腸などでも報告されている3).発生頻度は0.3~6.8%で,男女比は3~6 : 1と男性に多いとされる.
好酸球性胃腸炎(eosinophilic gastroenteritis)
著者: 清水誠治
ページ範囲:P.814 - P.815
消化管に好酸球浸潤を来す疾患は“eosinophilic gastrointestinal disorder”と総称されており,その内原発性で,消化管のみに病変がみられるものが好酸球性胃腸炎である.病変部位によって好酸球性食道炎,好酸球性胃炎,好酸球性小腸炎,好酸球性大腸炎とも呼ばれる.好発部位は胃,小腸とされているが,従来まれと言われていた食道や大腸病変の報告も最近増加している.気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患が約半数に合併する.
診断基準としてはTallyら1)のものが一般的であり,(1) 消化管症状の存在,(2) 消化管の1か所以上に生検で好酸球浸潤が証明されるか,または末梢血好酸球増多と特徴的なX線所見がみられる,(3) 寄生虫など好酸球増多を示す他疾患を除外できる,の3項目を満たすことで診断されるが,病変部位によって臨床像が異なっており,均質な疾患群とは考えにくい.生検診断においては強拡大視野で20個以上の好酸球が存在することが一応の基準であるが,部位により浸潤程度に差があるため多数点での生検が必要である.
アミロイドーシス(amyloidosis)
著者: 浅野光一 , 松本主之
ページ範囲:P.816 - P.817
アミロイドーシスとは,不溶性のアミロイド蛋白が全身または局所組織に沈着し,臓器障害を来す疾患である.臨床像はアミロイド蛋白の種類や沈着部位により異なる.消化管で頻度が高いのは,免疫グロブリンを前駆体としたAL型アミロイドと感染や炎症で惹起される急性期蛋白のSAA(serum amyloid A protein)を前駆体としたAA型であり,後者は続発性アミロイドーシスと呼ばれる.一方,前者は基礎疾患のない原発性アミロイドーシスと多発性骨髄腫に多い.そのほか,慢性腎不全関連のA2M型,およびトランスサイレチン由来のATTR型が沈着することもある1).
消化管の好発部位は十二指腸と小腸である.AL型アミロイド蛋白は血管壁を中心とした粘膜下層と固有筋層への塊状の沈着が特徴であり,X線・内視鏡検査では粘膜下腫瘤様隆起と皺襞肥厚像として観察される(Fig. 1).固有筋層への沈着が高度になると消化管運動機能障害を来し,慢性偽性腸閉塞を呈する.
膠原病の消化管病変(gastrointestinal involvement of collagen diseases)
著者: 梅野淳嗣 , 松本主之
ページ範囲:P.818 - P.818
狭義の膠原病の消化管病変とは,膠原病自体に起因する消化管病変のことである.消化管病変を呈する代表的な膠原病として,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE),強皮症〔全身性硬化症(scleroderma/systemic sclerosis;SSc)〕,結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa;PN),関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)が挙げられる.
SLEの消化管病変は,血管炎に起因するループス腸炎,蛋白漏出性腸症に大別される.ループス腸炎は,小腸の急性浮腫性病変(虚血性腸炎型)と大腸に好発する多発潰瘍型に細分される1).虚血性腸炎型は漿膜側の血管炎による虚血と腹膜炎が主たる病態であり,小腸の皺襞腫大,管腔の狭小化および拇指圧痕像が広範囲にわたってみられる(Fig. 1a).
血管炎症候群
著者: 中川義仁 , 平田一郎
ページ範囲:P.819 - P.820
血管炎とは全身の様々な血管壁に炎症を来す病変で,血管炎を主病変とする原発性血管炎と,他疾患に血管炎を伴う二次性血管炎がある1).このうち,原発性血管炎による症候群を血管炎症候群と呼ぶ1).Chapel Hill Consensus Confererence(CHCC)で,障害を受ける血管の太さと抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody;ANCA)の有無で10疾患〔大型血管炎として側頭動脈炎,高安動脈炎,中型血管炎として結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa;PN),川崎病,細小血管炎としてWegener肉芽症,Churg-Strauss症候群,顕微鏡的多発動脈炎,Schönlein-Henoch紫斑病,本態性クリオグロブリン症,白血球破砕性血管炎〕が分類された1).このうち,PN・顕微鏡的多発動脈炎,Churg-Strauss症候群,Schönlein-Henoch紫斑病が高頻度に消化管病変を伴う2)3).
これらの疾患に共通する消化管病変の特徴は血管炎に起因する多発性のびらんや潰瘍で,時に穿孔を来す症例もみられる2)3).診断には患者の病歴や症状・臨床データとともに生検所見が極めて重要である2)3).
病理
SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)
著者: 八尾隆史
ページ範囲:P.821 - P.821
従来,異型のない鋸歯状ポリープは過形成性ポリープ(hyperplastic polyp;HP)と呼ばれ,癌化の危険はほとんどない病変とされていた.1990年にはLongacreら1)により,鋸歯状構造を有する鋸歯状腺腫(serrated adenoma)という概念が提唱された.また,1996年にはTorlakovicらが癌を合併するHPの亜型を見い出し,2003年にマイクロサテライト不安定性を示す大腸癌の前駆病変としてSSA(sessile serrated adenoma)という名称を提案し2),新しい発癌経路serrated neoplastic pathwayが想定された.この病変は不規則な細胞異型と不整な構造を有する鋸歯状病変であるが,腫瘍性であることが不明確なため,atypical hyperplastic polypやsessile serrated polyp,sessile polyp with abnormal proliferationなどの名称でも報告されてきた.
このような変遷を経て,最新のWHO分類ではadenomaとpolypの両者を併記するSSA/P(SSA/polyp)という用語が用いられ,鋸歯状病変はHPとSSA/P,TSA(traditional serrated adenoma)に分類された3).
PG,NPG(polypoid growth,non polypoid growth)
著者: 池上雅博
ページ範囲:P.822 - P.822
早期大腸癌には,Ip,Isp,Isなどに代表される隆起型の病変と,IIa,IIc,IIa+IIcなどに代表される表面型の腫瘍とが存在する.この両者の相違(発生・発育・進展など)を明らかにするために,腺腫および癌の粘膜内での増殖様式に注目し分類したのが,PG(polypoid growth)とNPG(non polypoid growth)分類である.すなわちFig. 1に示すように,割面形態上PGは腺腫・癌が粘膜内で増生し,辺縁正常粘膜部よりそれに接する腫瘍部粘膜の厚さが明らかに厚いものとした.NPGはFig. 2に示すように,周囲正常あるいは過形成性粘膜と腫瘍部粘膜との間の移行がスムーズで,腫瘍部粘膜の厚さが辺縁正常あるいは過形成性粘膜の厚さと比べてほぼ同等かむしろ薄いものとした.
以上のように定義し,早期大腸癌についてPG・NPG別に大きさ,SM浸潤度,脈管侵襲の有無について検索すると以下の結果が得られた1).
類上皮細胞肉芽腫(epithelioid cell granuloma)
著者: 江頭由太郎
ページ範囲:P.823 - P.823
肉芽腫とは,結節状の肉芽組織で,マクロファージ系の細胞の浸潤を伴うものである.類上皮細胞は扁平な上皮細胞様の形態のマクロファージ由来の細胞で,淡好酸性の細胞質と明瞭な核小体が特徴である.類上皮細胞の浸潤のみられる肉芽腫を類上皮細胞肉芽腫と呼ぶが,肉芽組織の構造を伴わない単なる類上皮細胞の集簇巣も類上皮細胞肉芽腫として扱われる.類上皮細胞肉芽腫には類上皮細胞が融合して形成されたと考えられている多核巨細胞もしばしば認められる.類上皮細胞肉芽腫は比較的限定された疾患にしか認められず,疾患ごとに特徴のある組織像を呈することが多いので,組織学的に類上皮細胞肉芽腫を同定し,その組織像を解析することが疾患の診断につながる.
消化管疾患で,類上皮細胞肉芽腫が認められる可能性のある疾患をTable 1に挙げる.
特殊型胃癌(special types of gastric carcinoma)
著者: 八尾隆史
ページ範囲:P.824 - P.824
従来から胃癌のうち高頻度に出現する腺癌を一般型とし,そのほかを特殊型としてきた.それらは単に頻度が低いというだけでなく,組織発生や悪性度など特異なものが多い.
「胃癌取扱い規約第14版」1)に掲載されている特殊型胃癌には,カルチノイド腫瘍,内分泌細胞癌,リンパ球浸潤癌,肝様腺癌,腺扁平上皮癌,扁平上皮癌,未分化癌およびその他の癌(絨毛癌,癌肉腫,浸潤性微小乳頭癌,胎児消化管上皮類似癌,卵黄囊腫瘍類似癌)が含まれている.WHO分類2)では,浸潤性微小乳頭癌の記載がないが,それら以外のさらにまれな特殊型胃癌が列挙されている.また,カルチノイド腫瘍と内分泌細胞癌は内分泌腫瘍として別項立てになっている(Table 1).
DR(desmoplastic reaction)
著者: 木村隆輔 , 藤盛孝博
ページ範囲:P.825 - P.825
DR(desmoplastic reaction)とは癌細胞が浸潤する際にみられる,間質で線維芽細胞などが増生する状態を指し1),大腸癌では粘膜下層に癌が浸潤するとみられるといわれている2).大腸癌研究会では“DRに関する研究プロジェクト”を発足し,DR判定基準案として以下の4点を挙げている.(1) 癌として妥当な組織が存在する,(2) 浸潤性がある場合にはそれをもって陽性としない,(3) 炎症細胞浸潤はDRと判定しない,少なくとも領域性をもった膠原線維の増生と線維芽細胞が観察できるときに陽性と判定する,(4) 特染は用いないでHE染色で判定する.種々の増殖因子やdesmin(陰性)α-SMA(陽性)などは参考資料とするが,それにとらわれない.そのうえで,pSM2(浸潤距離1,000μm以上)を診断する簡便な手段の1つとして,生検標本におけるDRを評価することの有用性について前向き多施設間検討を行った.その結果,DR陽性のpSM2に対する感度68.5%,特異度92.6%という結果となった.つまり,生検標本にDRを認めた場合pSM2と言えるという結果が得られた.ただし,DRの診断精度を高めるには,病変の深達度を最も表していると思われる部位から生検が行われること,DRの診断基準を病理医間で標準化すること,などが課題である.
try(ちょっと内視鏡治療をやって調べてみる)and slip(ちょっとした診断間違い)で追加手術になることを防ぐには,内視鏡治療ができないと診断したとき,生検を施行しDRを確認するが,その後の治療選択の正しさを術前に確認できる簡便な手段である.ただし,有茎性病変には有用ではないことが多いことも知っておく必要がある.
GIMT(gastrointestinal mesenchymal tumor)
著者: 廣田誠一
ページ範囲:P.826 - P.826
消化管間葉系腫瘍(gastrointestinal mesenchymal tumor)に対しGIMTという略語が日本で使用されることがあるが,主要論文や欧米でのGIST(gastrointestinal stromal tumor)の関連会議においては消化管間葉系腫瘍に対しこの略語が使われることはあまりない.日本で聞き慣れているからと言って,欧米ではこの略語は説明なしでは理解されないと心得るべきである.ちなみに,GISTは欧米でも略語として極めて一般的に使用されており,その発音は英語を母国語とする欧米人のほとんどが“ジスト”であり,英語を母国語としない欧米人・日本人などの一部で“ギスト”と発音されている.
消化管には粘膜下腫瘍(submucosal tumor;SMT)という用語があり,消化管間葉系腫瘍がその大部分を占めるが,SMTには一般にcarcinoid・異所性膵など,消化管間葉系腫瘍には含まれないものを含んでいる.このSMTという言葉も欧米ではあまり一般的ではないように思われる.
adenoma-carcinoma sequence
著者: 味岡洋一
ページ範囲:P.827 - P.827
大腸の良性腫瘍である“腺腫”の中に起きる発癌機転を,ACS(adenoma-carcinoma sequence)という.1970年代にMorson1),Mutoら2)により体系化された.ACSの直接的証拠としては,腺腫内癌(腺腫の一部に癌巣が認められること)の存在がある(Fig. 1).絨毛・絨毛管状腺腫,異型度の高い腺腫,大きい腺腫ほど癌化率が高いとされる.
ACSは,当初は2cm以上のポリープ型腺腫に起きると考えられておりpolyp-cancer sequenceとも表現されてきたが,後に1cm前後の小さな腺腫や平坦な腺腫(flat adenoma)でもACSが存在することが示されるようになった.筆者らのデータでは,腺腫の癌化率は5mm以下で1.8%,5~10mmで9.1%,10~20mmで32.9%,20mm以上では67.8%である.
de novo癌
著者: 味岡洋一
ページ範囲:P.828 - P.828
de novo癌とは,腺腫などの先行病変を介さず,“臓器固有の正常組織から直接発生する癌”と定義される.大腸de novo癌の存在は,1960年代前後から欧米でも指摘されてきた1)2)が,1980年代以降,日本の研究者ら3)4)によって大腸癌のde novo発癌説が体系付けられた.中村は癌と腺腫の病理組織診断の数値化を試み,それにより大腸癌の病理組織像を再検討した結果,2cm以下の66%,5mm以下では97%が腺腫非併存癌であり,大腸癌の70~80%は腺腫を先行病変としないde novo癌であろうとしている.
しかし,厳密には,病理形態学的にde novo癌の診断をすることはできない.顕微鏡的にとらえられる癌は,既に形態学的に認識可能な大きさまで生長したものであり,発癌当初からの経過を観察することは不可能である.したがって,病変全体が純粋に癌のみで構成されていても,その発生初期に腺腫などの先行病変が存在し,癌の生長に伴ってそれらが駆逐された可能性を否定することはできないからである.腺腫を併存する癌は腺腫の癌化例と考えることができるが,“腺腫非併存癌”はde novo癌であるための必要条件にすぎず,de novo癌と同義ではない(Fig. 1).
異形成,上皮内腫瘍(dysplasia, intraepithelial neoplasia)
著者: 大倉康男
ページ範囲:P.829 - P.829
異形成(dysplasia) “dysplasia”のdys-はabnormal,difficultを,plasiaはto formを意味し,形成異常を示す言葉である.異型性atypiaが非定型的であることを表すのに対して,異形成は非定型的な発育(atypical development)を表す.しかし,病理組織学的には異型を示す上皮を表す用語として使われている.もともとは骨組織などの臓器の形成異常で用いられていたが,上皮では1950年頃から子宮頸部において用いられている.その後,消化管の上皮にも用いられるようになっている.
これまでのWHOの腫瘍分類では,食道と胃でepithelial abnormalities(precancerous)としてdysplasiaが示されている.欧米では上皮下組織への浸潤像をもって癌と診断する立場であり,上皮内癌との異同が明確ではない.日本においては,胃では良悪性境界病変や陥凹型腺腫を表す用語として用いられていたが,それらが良性上皮性腫瘍であることが明らかにされて腺腫(adenoma)という用語に統一されたことから,現在は用いられていない.「胃癌取扱い規約」ならびに「大腸癌取扱い規約」に異形成の記載はない.一方,食道では,「食道癌取扱い規約第8版」1)に異形成の定義が示されている.すなわち,「細胞異型および構造異型を示す上皮内病変であり,上皮内癌と診断するには異型度が十分でない病変」とされている.その中には,炎症性異型,質的診断が難しい異型,癌を疑う異型などが含まれ,研究者の用い方が異なっていた.
偽浸潤(pseudoinvasion)
著者: 岩下明德 , 太田敦子
ページ範囲:P.830 - P.830
偽浸潤とは,大腸上皮性腫瘍の病理組織学的診断において,腺腫組織が粘膜固有層(付随間質)を伴って粘膜下層に逸脱している現象のことをいう(Fig. 1).粘膜下層への腺管の出現は,炎症性腸疾患,粘膜脱症候群,過形成性ポリープ,Peutz-Jeghersポリープなどでも時にみられるが,これらの場合の腺管は腫瘍性異型のない上皮から成り,むしろ異所性(heterotopia)とも言うべき現象で,大腸腺腫における偽浸潤とは区別される.
この偽浸潤は“pseudocarcinomatous invasion”として発表され,ほかに“epithelial misplacement”,“pseudocarcinoma”,“pseudoinvasion”などとも呼ばれる.S状結腸に好発し1~2cmの有茎性腺腫に多くみられるとされ,また,mechanical forceによって粘膜筋板の間隙から腺腫組織が粘膜下層へ逸脱することがこの現象の本態であると考えられている1).
腫瘍の形質発現(phenotypic expression of gastrointestinal neoplasia)
著者: 松原亜季子 , 九嶋亮治
ページ範囲:P.831 - P.831
腫瘍は発生母地の形態を模倣し,胃と腸の上皮性腫瘍はそれぞれ胃型,腸型の形質を発現するのが基本である.しかし,慢性炎症を背景として,胃に腸上皮化生,腸に胃上皮化生(幽門腺化生)が生じるように,消化管腫瘍は胃型,腸型あるいはそれらの混合型の形質を発現する(Fig. 1, 2).
胃癌の場合,印環細胞癌を代表とする未分化型癌が胃型,分化型癌は腸型と考えられてきたが,分化型癌でも胃型形質を発現する症例が少なくないこと,胃型形質の癌はその進展に従って腸型形質を発現するようになることが示されてきた.胃腺腫では,褪色調で丈の低い平坦隆起を示す一般的な病変が腸型(特に小腸型)形質を示すことがわかり,胃型(幽門腺型)腺腫の存在も明らかにされた.
粘膜下浸潤と垂直浸潤距離の計測
著者: 味岡洋一
ページ範囲:P.832 - P.832
内視鏡的に切除された消化管SM癌では,その粘膜下浸潤の程度が垂直浸潤距離により分類され,内視鏡的切除による根治判定およびリンパ節郭清を伴う追加外科切除の適応判定のための病理組織学的因子のひとつとして用いられている.
食道,胃,大腸それぞれで,分類のための基準値とその意義付けは異なる1)~3).食道扁平上皮癌1)では垂直浸潤距離200μm未満をSM1,以上をSM2に,胃癌2)では500μm未満をSM1,以上をSM2に分類している.大腸癌3)ではSM1,2の標記はなく,1,000μm未満か以上かに分類している.食道扁平上皮癌ではSM1であっても内視鏡的治療で根治は期待できず,SM2以深では進行癌に準じた治療が必要とされる.胃癌では,3cm以下の分化型SM1癌は内視鏡的治療による適応拡大治癒とされている.大腸癌では,乳頭腺癌・管状腺癌で脈管侵襲陰性,簇出G1の場合は,SM垂直浸潤距離1,000μm未満で内視鏡的治療による根治が期待される.
簇出(tumor budding/sprouting)
著者: 上野秀樹 , 長谷和生
ページ範囲:P.833 - P.833
簇出(budding)は大腸癌において,癌細胞が個々に,あるいは小胞巣を形成しつつ散在性に間質内に浸潤する組織所見であり(Fig. 1),固形癌の浸潤の重要なprocessの1つである,de-differentiationとdissociationの形態学的表現と位置づけることも可能である.分化型腺癌の腫瘍表層や中心部間質に出現することはまれであり,基本的に浸潤先進部に出現する.
簇出は1980年代以降,治療方針決定のための指標として,まず本邦の臨床家により注目された病理組織所見である1)2).近年になり本邦のみならず欧米でもその意義が認識されるに至ったが,その過程には名称に起因する概念上の混乱が存在した.
手つなぎ型腺管癌(gastric cancer of “hand-shaking”type)
著者: 海崎泰治
ページ範囲:P.834 - P.834
“手つなぎ型腺管癌”とは,胃癌の組織像において,細胞異型が弱く,腫瘍腺管同士があたかも手をつなぐように不規則に分岐・融合しながら,粘膜の中間層を中心に広く進展する癌のことを示す(Fig. 1).この組織像は低異型度分化型胃癌に属し,組織学的に癌と診断することが難しく,特に生検組織のような限られた標本の観察では診断に至らない可能性があり,注意が必要な病変である.
このような組織像は,半世紀近く前からすでに太田,中村らによって,“XYH状腺管”として注意すべき構造異型の表現形として報告されていた.加藤1)はこの所見を“手つなぎ型腺管癌”と称したが,さらにはこの特異的な構造異型を“WHYX lesion”とも述べている.他の呼称としては,2002年の伴ら2)による“irregularly fused(anastomosing)glands”,2003年の滝澤3)による“横這型胃癌”があるが,上記のものと同義で特徴的な組織像を種々の表現で示したものと考えられる.
胃の低異型度癌と超高分化腺癌〔low grade/extremely(very)well differentiated adenocarcinoma of stomach〕
著者: 九嶋亮治
ページ範囲:P.835 - P.835
「胃癌取扱い規約」1)では腺管形成の状態によって高分化型,中分化型と低分化型に腺癌を分類するが,細胞形質の分化傾向と核異型度は考慮されない.超高分化腺癌は固有胃上皮や腸上皮化生に酷似し,異型の乏しい上皮細胞から成る腺管形成性悪性腫瘍と定義される.一方,高分化腺癌を悪性度という観点から核異型に着目して,低異型度癌と高異型度癌に分ける試みもなされてきた2).細胞分化のよさと核異型の乏しさに着目すると超高分化腺癌と診断されるものでも,規約に従えば中分化腺癌が主体と診断される症例もあり得る.言葉のうえでは矛盾しているようにみえるが観点が少し異なる.超高分化腺癌と低異型度癌には微妙な意味合いの違いがあるものの,日常的には類義語として“低異型度分化型胃癌”と一括し,“組織学的診断,特に生検診断が難しい分化型癌”と考えればよい3).
低異型度分化型胃癌は次のように類型化できるだろう.(1) 固有胃腺やその反応性変化との鑑別が困難な胃癌 : 胃型腺癌(腺窩上皮型,幽門腺型,胃底腺型,Fig. 1),(2) 腸上皮化生との鑑別が困難な胃癌 : 腸型低異型度癌(Fig. 2)と (3) 腺腫のスペクトラムに含まれるような病変.また,いわゆる“手つなぎ・横這い型”構築を示す胃癌も幼若な腸上皮化生との鑑別がしばしば困難で,内視鏡的にも範囲診断が難しい.
大腸の低異型度癌と超高分化腺癌〔low grade/extremely(very)well differentiated adenocarcinoma of large intestine〕
著者: 味岡洋一
ページ範囲:P.836 - P.836
病理総論的に腫瘍は,その発生母地である正常組織との組織学的類似性(組織学的分化,differentiation)の度合いから,高分化・中分化・低分化・未分化に分類される(分化度が高いほど,正常組織に類似する).一方,組織学的類似性とは逆に,正常組織からの組織学的乖離の度合いを表す用語として異型度(atypia)があり,乖離の程度が低いものは低異型度,高いものは高異型度と呼ばれる.分化度,異型度ともに腫瘍の細胞像(細胞分化度,細胞異型度),組織構築像(構造分化度,構造異型度)の両者に用いられうるが,胃・大腸の上皮性腫瘍は主に構造分化度から,高分化腫瘍(腺腫,乳頭腺癌,管状腺癌 : 高分化),中分化腫瘍(管状腺癌 : 中分化),低分化腫瘍(管状腺癌 : 低分化)に分類されている.
高分化腫瘍は,主にその細胞異型度から良悪性の鑑別がなされるが,細胞異型度が低く癌とは診断できないものでも,粘膜下層以深に浸潤を来しているものがある(粘液癌,粘液産生が豊富な乳頭腺癌,痔瘻癌など).こうした癌が一般的には,超高分化腺癌と呼ばれる.超高分化腺癌は“浸潤”または“転移”という腫瘍の生物学的態度をもとに下される診断用語であり,その組織診断基準が確立されているわけではない.他方,低異型度癌は超高分化腺癌の同義語として用いられる場合もあるが,超高分化腺癌とは異なり,渡辺ら1)により組織診断基準が提示されている.
胃底腺型腺癌(adenocarcinoma of fundic gland type)
著者: 八尾隆史
ページ範囲:P.837 - P.837
胃底腺は主細胞と壁細胞から構成されるが,2010年にUeyamaとYaoら1)が胃底腺(主細胞優位)への分化を示す腺癌を胃癌の新しい組織型として胃底腺型腺癌を提唱した.
胃底腺型腺癌は,高齢者の胃上部に好発し,多くは胃炎・萎縮・腸上皮化生のない正常胃底腺粘膜から発生するため,Helicobacter pyloriとは無関係と考えられている2).
LEL(lymphoepithelial lesion)
著者: 二村聡
ページ範囲:P.838 - P.838
LEL(lymphoepithelial lesion)は,リンパ上皮病変(またはリンパ上皮病巣)と邦訳され,現在,“腫瘍性B細胞の上皮組織内浸潤巣”と病理組織学的に定義されている(Fig. 1).したがって,LELはB細胞性リンパ腫に特化した術語であり,T細胞性リンパ腫やnatural killer細胞性リンパ腫の上皮組織内浸潤巣には用いない.
歴史的には,本術語は唾液腺疾患であるMikulicz病の組織学的所見としてGodwin(病理医,1952年)によって記述されたbenign LELに由来する1).そして,1980年以降,粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue;MALT)リンパ腫の概念を提唱したIsaacson(病理医)らによって,benignを落としたLELが支配的に用いられるようになり現在に至る2)~4).
内分泌細胞微小胞巣(endocrine cell micronest)
著者: 西倉健
ページ範囲:P.839 - P.840
概念 胃の内分泌細胞微小胞巣(endocrine cell micronest;ECM)は,粘膜内の内分泌細胞が腺管外に集合体を形成したもので,大きさは50μm程度(48.5±14.1μm,自験例ECM 3,057例の平均)で,卵円形から円形ないし索状形態を呈し,萎縮胃底腺領域の粘膜深部に観察されやすい(Fig. 1).自己免疫性胃炎(いわゆるA型胃炎)や高ガストリン血症に伴って高頻度に観察される.通常,消化管クロム親和性細胞様細胞(enterochromaffin-like cells;ECL細胞)と呼ばれる内分泌細胞群から構成される.
内分泌細胞微小胞巣の組織発生 ECMの組織発生については以下のように考えられている.すなわち,(1) 胃底腺萎縮などによる胃酸分泌低下,(2) 低胃酸に対するフィードバックによるガストリン値上昇,(3) ガストリンの内分泌細胞に対するトロフィック作用の持続,(4) 腺管内の内分泌細胞過形成および集簇,(5) 内分泌細胞の腺管外への芽出および腺管自体の萎縮,(6) 腺管外にECMの完成,の経路が想定されている(Fig. 2)1)2).
サイトケラチン(cytokeratin;CK)
著者: 諸橋聡子 , 鬼島宏
ページ範囲:P.841 - P.842
サイトケラチン(cytokeratin;CK)は,上皮細胞の細胞骨格を形成する中間フィラメントの1つで,その種類は約20種類に及ぶ1).中間フィラメントの分子構造は組織特異的であり,病理診断の免疫組織化学検査で頻用されている.vimentinは間葉由来の細胞とある種の神経外胚葉由来の細胞,desminは筋細胞,GFAPはニューログリア細胞の中間フィラメントである.
サイトケラチンは,等電点によって酸性ケラチン(Type Iケラチン)と塩基性ケラチン(Type IIケラチン)に分けられ,両者はそれぞれ2本ずつのケラチン線維が4量体を形成した形で発現する.分子量による分類では,低分子ケラチン(40~64kD : CK7,8,17~20)と高分子ケラチン(48~67kD : CK1~6,9~16)に分けられる2)~4)(Table 1).皮膚の角化型扁平上皮で発現するCKの分子量が最も大きく,角膜や粘膜の非角化型扁平上皮が続き,腺上皮や重層扁平上皮の基底細胞は低分子ケラチンが主体を成す.
Ki-67
著者: 菅井有
ページ範囲:P.843 - P.843
Ki-67はもともと白血病患者の血液中の自己抗体として発見された抗体の名称である1).この抗原が認識するいわゆるKi-67抗原(gene : 10q26.2;MKI 67(mki67))は細胞増殖周期のG1期からS期,M期までの細胞の核内に発現していることから,細胞増殖関連抗原として知られるようになった(G1期の一部には発現していないとされる).現在よく知られているMIB-1はKi-67抗体のクローン名の1つで,熱処理を加えることによってホルマリン固定標本でも反応する抗体のことを指す.Ki-67イコールMIB-1ではないことに注意が必要である.
現在病理領域では,Ki-67は細胞増殖と細胞周期の代表的マーカーとして用いられている2).一般にKi-67の発現の評価は,1,000個の細胞をカウントし,その中の陽性細胞を除することによって算出する(ki-67index,Ki-67陽性細胞率)が,この値は実際にはgrowth fractionに相当することになる.厳密な意味での増殖能の判定には,S-phase fractionを算出することが必要であるが,その算出にはflow cytometryによるのが最も正確である.組織標本上でS-phase fractionを調べるためには,免疫染色でpRbとcyclin Aの陽性細胞率を算出するのが合理的である.特に前者は,細胞がS期を通過するためのキー蛋白であり,理論上も優れている3).簡便性と再現性の点では,Ki-67にやや劣ることが欠点であるが,Ki-67の発現は,S期の細胞を同定していることにはならないことに注意が必要である.しかし,Ki-67陽性細胞率はS-phase fractionに相関することが知られており3),現在ではKi-67陽性細胞率はその組織の増殖能の指標として使用されている.
p53
著者: 和田了
ページ範囲:P.844 - P.844
ヒトp53遺伝子は第17番染色体短腕上に存在し,分子量53,000,393個のアミノ酸から成る蛋白質であり,(1) 損傷したDNAを修復する蛋白質を活性化する,(2) DNA修復が困難な細胞のアポトーシスを誘導する,(3) 細胞周期の制御に関与するなど,生命維持に極めて重要な機能を有する遺伝子である.
遺伝子産物であるp53は,1979年,SV40(simian virus 40 : 肉腫ウイルスの1つ)によってtransform(形質転換)された細胞に発現する大型T抗原と結合する蛋白質として同定された.SV40でトランスフォームした細胞には正常細胞の100倍以上のp53量が見い出され,p53のさらなる変異はトランスフォーム能を強くすることなどから,当初,p53は癌遺伝子と想定されていた.
K-ras
著者: 上田博文 , 内山和久
ページ範囲:P.845 - P.845
K-ras遺伝子(Kirstenラット肉腫ウイルス : Kirsten系ラットから分離された形質転換ウイルスのゲノムから付けられた)はヒト肺癌において活性化されている癌遺伝子として認識された.他のよく似た産物をコードする癌遺伝子にはH-ras(Harvey),N-ras(neuroblastoma)がある.ras遺伝子に変異が生じると,ras蛋白質の役割としての細胞増殖,接着,細胞骨格の維持,生存や分化などの正常な制御が無効となり,活性化された状態になる.K-ras遺伝子変異の多くは,コドン12,13,61のアミノ酸置換の点突然変異である.コドン12の異常ではグリシンをコードするGGTからアスパラギン酸をコードするGATに変化していることが多い.
遺伝子変異が癌で高頻度に認められることがわかると,それを検出することでそれぞれの癌の診断に応用しようという試みが多くなされている.K-ras遺伝子の単塩基変異を検出する方法には,制限酵素断片長多型法(restriction fragment length polymorphism;RFLP),サザンブロット法,オリゴヌクレオチド・ライゲーション法,アレル特異的PCR(polymerase chain reaction)法やダイレクトシークエンス法などがある(Fig. 1).さらに次世代シークエンサーを活用した検出も開発されている.次世代シークエンサーとしてはultra-deep pylosequencingやHRM(high resolution melting analysis)などがある.従来の方法に比べてコストも安く,しかも大量の配列検索が可能とされている.大腸癌における分子標的治療の対象を絞り込む目的で,迅速かつ高感度のras遺伝子の変異検索の手技が求められているのが現状である.rasもしくはraf遺伝子変異大腸癌では,EGFR(epidermal growth facter receptor)を分子標的にした治療に抵抗性であることから,米国の転移性大腸癌のガイドラインでは,EGFRを分子標的にした治療を行うにはrasとraf遺伝子の変異検索が必要であるとされている1).HRMは近年開発されたPCR解析であり,目的の領域をPCRで増幅した後でそのPCR産物の溶解曲線の解離の違いから野生型と変異型とを分ける手法である.一方,pylosequencingはルシフェラーゼ発光を利用した手法で正常組織に含まれる少量の癌細胞における変異の検出に適しているとされている.1975年から,組み替えDNAでの遺伝子研究,さらにはヒトゲノム時代を経由して,2010年以降,生命現象の包括的理解のためのゲノム時代が,手法の簡素化とともに始まったと言える.ras遺伝子と大腸癌の解析も発癌機序を目的にした解析から分子標的遺伝子治療(バイオマーカによる個別化治療)へと変遷している.いずれにしても,重要なことはそれぞれの検出方法を用いたときの偽陰性への精度管理である.腺管分離法(microdissection)などによる腫瘍だけを対象にしている場合と生検や手術標本の組織を一部採取する(macrodissection)などのように腫瘍と間質が同時にサンプルに含まれている場合とでは,結果が異なることがあるので,注意が必要である.
MSI(microsatellite instability)
著者: 菅井有
ページ範囲:P.846 - P.846
MSI(microsatellite instability)はマイクロサテライト領域に起きる遺伝子異常である1).マイクロサテライトは,1~5塩基程度の塩基配列を1ユニットとする単純な繰り返し配列のことを指す1)2).その繰り返しは,1塩基の繰り返し〔例えば(A)n〕や,2塩基の繰り返し〔(CA)n〕のことが多い.マイクロサテライトは,ゲノム上に50,000~100,000個程度散在性にみられるが,遺伝的には極めて不安定で,変異の好発領域としても知られている(hypermutational region)1)2).遺伝子内の存在部位としては,多くはnon-coding領域であるが,coding領域のこともある1)2).
MSIを引き起こす代表的疾患は遺伝性非腺腫性大腸癌〔HNPCC(hereditary nonpolyposis colorectal cancer),Lynch症候群〕である.Lynch症候群の原因遺伝子は,ミスマッチ修復遺伝子であることからMSIの原因遺伝子はミスマッチ修復遺伝子である.hMSH2とhMLH1の変異がHNPCC全体の約90%とされ,hMSH6とhPMS2の変異がみられる例はまれである1)2).MSIの実際例を示す(Fig. 1).
分類・定義
ABC(D)分類〔ABC(D)classification〕
著者: 井上和彦 , 春間賢
ページ範囲:P.847 - P.847
胃癌の多くはH. pylori(Helicobacter pylori)既感染者から発生し,また,H. pylori感染に伴い生じる胃粘膜萎縮は胃癌,特に分化型胃癌の発生母地と考えられている.胃粘膜萎縮を簡便な血液検査で拾い上げるペプシノゲン(pepsinogen;PG)法と,血清H. pylori抗体価の組み合わせにより胃癌リスク診断,言い換えれば,胃の“健康度”評価を行うのがABC(D)分類である.
H. pylori抗体(-)PG法(-)をA群,H. pylori抗体(+)PG法(-)をB群,PG法(+)をC群とするが,概ねA群はH. pylori未感染の人,B群はH. pylori感染に伴う胃粘膜炎症はあるが萎縮は軽い人,C群はH. pylori感染に伴う萎縮の進行した人と判断できる1).なお,PG法(+)のうちH. pylori抗体(+)をC群,H. pylori抗体(-)をD群と分類することもある.この場合,D群は萎縮の高度進展に伴いH. pyloriが棲めなくなった状態と推察される.
食道癌の肉眼型分類(macroscopic classification of the esophageal cancer)
著者: 石黒信吾
ページ範囲:P.848 - P.848
食道癌の肉眼型は,現在,「食道癌取扱い規約第10版補訂版」1)に記載された規約が用いられている.規約による肉眼型は以下のとおりである.
肉眼型分類の原則 癌腫の壁深達度が肉眼的に粘膜下層までと推定される病変を“表在型”とし,固有筋層以深に及んでいると推定される病変を“進行型”とする.“表在型”は0型とし,0-I,0-II,0-IIIに亜分類する.“進行型”は1,2,3,4型のいずれかに分類する.0~4型ないしその組み合わせで表現できない病変を5型とする.
胃癌の肉眼型分類(macroscopic classification of the gastric cancer)
著者: 八尾恒良
ページ範囲:P.849 - P.849
日本胃癌学会の「胃癌取扱い規約」では,胃癌の肉眼型を0型から5型に分けている(Fig. 1)1).すなわち,早期癌によくみられる肉眼型は早期胃癌の肉眼型分類に準じて0型(表在癌)とし,進行癌によくみられる形態はBorrmann分類が改変された1~5型に分類される.しかし,この分類はあくまでも胃癌の切除標本の肉眼型分類であって,病理学的検索にて判明する深達度には関係なく,深達度が判明する以前の臨床分類では“推定”とし,判明した後は深達度を併記すると記載されている.
実際には,病理診断が判明する以前に早期癌と推測される場合には,0-I(隆起型),0-IIc(表面陥凹型),あるいは単にIIa,IIc,などと称され,進行癌が念頭に置かれる場合には1~5型,またはIIc進行形などと表現されることが多い.
大腸癌の肉眼型分類(classification of gross appearance for colorectal carcinoma)
著者: 田中信治
ページ範囲:P.850 - P.850
大腸癌の肉眼型分類は,「大腸癌取扱い規約」1)において定義されており,その基本分類はTable 1のとおりである.この中で,1~5型は胃癌の肉眼型分類2)とほぼ同じであり,1~4型は進行癌の肉眼型を意味する.
0型は早期癌の分類(Fig. 1)であるが,早期胃癌2)とは少し異なる.隆起型0-I型は,0-Ip,0-Isp,0-Isに細分類され,表面型0-II型は早期胃癌と同様に0-IIa,0-IIb,0-IIcに細分類されるが,大腸にはIII型早期癌は存在しないので省かれている.また,早期大腸癌の形態を形成する要素として,腺腫成分や過形成成分を含むことも多いが,肉眼型を決定する際には組織発生や癌/非癌,腫瘍/非腫瘍の違いを考慮せず,病変全体の見た目で評価する.なお,0型は小さい病変が多いので,肉眼型は送気により腸壁の十分伸展された内視鏡所見で判定する.凹凸の評価のためにはインジゴカルミン撒布が望ましい.
プラハ分類(Prague C & M classification)
著者: 眞部紀明 , 春間賢
ページ範囲:P.851 - P.851
2003年にBarrett食道の内視鏡診断の標準化を目指して,IWGCO(International Working Group for the Classification of Oesophagitis)により,プラハ分類が提唱された1).プラハ分類では,内視鏡で観察できるBarrett食道を“endoscopic Barrett's esophagus”と定義し,組織学的なBarrett食道と区別している.
Barrett食道の表記に客観性をもたせるためにプラハ分類では,食道胃接合部(esophagogastic junction;EGJ)を胃のひだの最口側と定義している.本邦では,以前より食道胃接合部の基準として柵状血管下端が用いられているが,逆流性食道炎を合併した場合には柵状血管の観察が困難であるなどの理由により,プラハ分類ではこの基準は用いられていない.また,Barrett食道の長さの記載に際して,上記で定義された食道胃接合部を基準線とし,それより連続して伸びる円柱上皮の円周性の部分を“C”(circumferential extent)とし,次に舌状に伸びる部分の最大長を“M”(maximum extent)とし,この2項目を用いて記載するように決められている(Fig. 1).なお,Barrett食道の長さの測定は内視鏡のシャフトに刻まれたスケールをバイトブロック上で行うことが推奨されている.Fig. 2の症例では,“C”は1cm,“M”は5cmでありC1.0/M5.0と記載することになる.
木村・竹本分類(Kimura-Takemoto classification)
著者: 鎌田智有 , 井上和彦
ページ範囲:P.852 - P.852
Kimura,Takemotoにより1966年,本邦における内視鏡的萎縮境界の概念が報告された1).これは,内視鏡的萎縮所見と生検標本による病理組織学的萎縮所見とを確認した萎縮性胃炎の拡がりの分類である.
この木村・竹本分類では,萎縮性胃炎の進展を胃粘膜の平面的な拡がりで評価し,内視鏡的萎縮境界が胃体部小彎側で噴門を越えないclosed type(C-1~C-3)と,それを越え大彎側に進展するopen type(O-1~O-3)に分類される(Fig. 1).すなわち,C-1は萎縮粘膜が前庭部にとどまるもの,C-2は胃角部から胃体下部に至るもの,C-3は胃体上部までにとどまるもの,O-1は萎縮粘膜が噴門周囲までにとどまり,大彎のひだはほぼ保たれているもの,O-3は全体的に大彎のひだが消失し,萎縮が全体にあると考えられるもの,O-2はO-1とO-3との間と考えられている.このように内視鏡的萎縮境界を診断することにより,臨床的に萎縮性胃炎の拡がりを評価することが可能である(Fig. 2).
ロサンゼルス分類(Los Angeles classification)
著者: 眞部紀明 , 春間賢
ページ範囲:P.853 - P.853
逆流性食道炎の内視鏡的重症度分類は,これまでに様々な分類法が提唱されてきたが,1996年に国際的に通用する標準的分類としてロサンゼルス分類が提唱された1).同分類は3年後に一部の修正が加えられ2),その後の検討により同分類は24時間pHモニタリングでの食道内逆流の程度とも強く相関することが確かめられており,今日世界的に最も広く普及している内視鏡的重症度分類と考えられる(Fig. 1).
ロサンゼルス分類には,従来までの分類と比較して大きく異なる箇所が2点ある.1点目は,食道のびらんと潰瘍を区別せず,両者を粘膜傷害(mucosal break)という1つの概念に包括し,その重症度を縦・横方向の拡がりの程度によって4段階に分類したことである.2点目は,従来までの分類ではBarrett食道や狭窄は最も重症な所見と位置づけられていたが,ロサンゼルス分類ではこれらの所見は重症型ではなく合併症として取り扱うものと規定されている点である(Table 1).
シドニー分類(Sydney system)
著者: 鎌田智有 , 塩谷昭子
ページ範囲:P.854 - P.854
シドニー分類は,1990年にオーストラリアのシドニーで開催された第9回世界消化器病学会で提唱された胃炎の国際的表記法1)である.これまでの胃炎分類を基盤として,さらにHelicobacter pylori(HP)感染を主体とした胃炎診断であり,histological division(組織学的部門)とendoscopic division(内視鏡部門)の2部門から構成されている(Fig. 1)2).
組織学部門 組織学部門では,etiology(成因),topography(局在),morphology(形態)の3項目に分類され,病因としては,HP,自己免疫性,薬剤性,特発性,感染性などが挙げられている.局在として,幽門部胃炎,体部胃炎,汎胃炎に分類され,形態学的には,炎症(単核球浸潤),活動性(好中球浸潤),萎縮,腸上皮化生,HPの5項目を診断し,さらにこれらの程度をnone(なし),mild(軽度),moderate(中等度),severe(高度)の4段階で評価する.さらに1996年,組織学的所見についてはThe undated Sydney System3)として改訂されている.主な改訂点は,胃内の5点生検(前庭部小彎,前庭部大彎,胃角部小彎,胃体部小彎,胃体部大彎)を行い,先の5項目について定量化することにある.
食道胃接合部の分類
著者: 小山恒男
ページ範囲:P.855 - P.855
食道胃接合部(esophagogastric junction;EGJ)は食道と胃の境界であり,「胃癌取り扱い規約」1)では以下のように定義されている.
・内視鏡検査における食道下部の柵状血管の下端.
・上部消化管造影検査におけるHis角を胃壁に沿って延長した線.
・内視鏡および上部消化管造影検査における胃大彎の縦走襞の口側終末部.
・切除標本の肉眼的観察では周径の変わる部位.
胃隆起性病変の山田分類(Yamada's classification for gastric polypoid lesion)
著者: 鼻岡昇 , 飯石浩康
ページ範囲:P.856 - P.856
山田分類は,胃の内腔に突出した病変を肉眼的に4つの形態に分類したもので,1965年に山田らが初めて報告した.腫瘍,非腫瘍および上皮性,非上皮性などの病態の区別なく,形態を純粋に4つに分類したものである(Fig. 1).山田分類を内視鏡像に当てはめるとFig. 2~5のとおりになる.I型は隆起の起始部はなだらかで,周囲と明瞭に境界されない(Fig. 2).II型の起始部は周囲と境界されるが,くびれがない(Fig. 3).III型は起始部にくびれを有するが茎がない(Fig. 4).IV型は茎があるのが特徴である(Fig. 5).当初は胃の隆起性病変に対して用いられていたが,腸の隆起性病変に対しても用いられるようになっている.
パリ分類(the Paris endoscopic classification of superficial neoplastic lesions in the digestive tract)
著者: 平田一郎
ページ範囲:P.857 - P.858
2002年11月に内視鏡医,外科医,病理医の国際的グループがパリ(Paris)に集まり,食道,胃,大腸の表在型腫瘍(superficial neoplastic lesion)に対する日本の肉眼形態分類の有用性と臨床的意義を検討するワークショップが行われた1).その際,多くの合意事項のもとに消化管の表在型腫瘍に対するパリ分類が成立した.以下にパリ分類の概要を紹介しその評価や問題点について述べる.
パリ分類の概要 (1) 肉眼形態分類は内視鏡診断時の肉眼所見のみで行い,診断前の予備知識に左右されたり病理所見によって変えるべきではない.
Lugano国際会議分類(Lugano International Conference classification)
著者: 長屋匡信
ページ範囲:P.859 - P.859
Luganoは,スイスの地名である.1990年より3年ごとに行われる悪性リンパ腫に関する国際会議であるICML(International Conference on Malignant Lymphoma)が,スイスの腫瘍内科医であるDr. Cavalliにより,Luganoで開催されており,1993年のICMLにおいて消化管原発の非Hodgkinリンパ腫の病期分類が統一されたことからLugano国際会議分類と呼ばれるようになった.
悪性リンパ腫のstagingにはAnn Arbor分類1)が用いられていたが,元来節性のHodgkinリンパ腫を対象に作成されたため,腹腔内リンパ節転移や深達度が考慮されていないなど,消化管悪性リンパ腫のstagingに用いるためには,いくつか不都合な点があった.そこで,現在では,Stage IIを所属リンパ節にとどまるII1と腹腔内遠隔リンパ節(para-aorta or para-cavalなど)に拡がるII2に分けたMusshoffら2)の分類をもとに,隣接臓器浸潤陽性例をIIEとし,Stage IIIをなくして横隔膜上のリンパ節転移はIVに入れることにしたLugano国際会議分類(Table 1)3)が最も汎用されている.
大腸腫瘍のNBI分類(NBI classification for colorectal neoplasia)
著者: 田中信治
ページ範囲:P.860 - P.860
NBI(narrow band imaging)は腫瘍表面のvascular patternの評価に有用であるが,NBIの構造強調機能を活用して胃と同様に大腸でもsurface patternを評価することの重要性がクローズアップされている1).大腸腫瘍に対するNBI分類は,各施設から複数提唱されており,また,分類ではないものの,いくつかの評価方法も検討されている.いまだ本邦で統一された分類が存在しないため,これを簡単に解説することは難しいが,その概略と相互関係について解説する1).
佐野分類は純粋に微小血管構築を評価したものである.腺管腔を取り巻く茶色の網目状血管をCP(capillary pattern)とし,それらの視認性と口径不同,蛇行,途絶所見によりI/II/IIIA/IIIBに分類している.広島分類は,surface patternと微小血管構築を総合的に評価したものでA~Cに分類し,CをC1~C3に細分類している.昭和分類は佐野分類や広島分類のようなCategory分類ではなく,NBI所見を列記した形式をとっている.慈恵分類は,微小血管構築にsurface patternを加味した分類である.そのほかの評価法として,久留米大学,福岡大学筑紫病院,がん研有明病院などからも上記分類とsurface patternの組み合わせなどの評価法が検討され報告されている1).
大腸SM癌内視鏡治療根治基準(curative condition after endoscopic resection for submucosal colorectal carcinoma)
著者: 田中信治
ページ範囲:P.861 - P.861
転移を来した大腸粘膜内癌症例の報告はないが,SM癌は10数%にリンパ節転移を認めるため,内視鏡的に完全摘除するだけでは根治と判定できない.「大腸癌治療ガイドライン2010年版」1)では,新しいリンパ節転移危険因子である簇出(budding)を導入し,大腸SM癌内視鏡的摘除後の追加治療方針をTable 1のように推奨している(Fig. 1).
切除垂直断端が陽性の場合は,腸壁内に癌が遺残している可能性があり,外科的追加手術を行うべきである.また,すべての条件が陰性であれば,経過観察でよい.
VS classification
著者: 八尾建史
ページ範囲:P.862 - P.862
狭帯域光観察(narrow-band imaging;NBI)を拡大内視鏡観察に併用すると顕微鏡レベルの様々な解剖学的構造が視覚化できる.拡大内視鏡により視覚化される解剖学的構造を,微小血管構築像〔microvascular pattern;V(本特集号vascular patternを参照)〕と表面微細構造〔microsurface pattern;S(本特集号surface patternを参照)〕に分けて解析し,一定の診断規準に照らし合わせて診断する診断体系をVS(vessel plus surface)classification systemと称する1)2).
癌・非癌を鑑別するためのVS classification systemは,VとSそれぞれについて,regular(整)/irregular(不整)/absent(視認できない)と分類する(Fig. 1).そして,これらの所見を統合し,下記の診断規準に基づいて,癌・非癌の診断をする.
pit pattern 診断
著者: 山野泰穂
ページ範囲:P.863 - P.864
pit patternとは大腸表面にある上皮腺管開口部(pit)の集まりをひとつのパターンとして認識したものであるが,実際には腺管開口部ばかりではないこともある.したがって正しくは“表面微細構造”と表現するのがよいのであろうが,これらもすべて含めて“pit pattern”という言葉で総称している.
pit pattern診断の礎は小坂1)による切除後の固定標本に対する実体顕微鏡観察に始まり,病変により表面構造パターンが異なることが示された2)3).これらの知見をもとに生体内での拡大観察の試みがなされ,1993年にzoom式拡大内視鏡CF-200Z(オリンパス社製)の出現により生体内でも観察することが可能となった.
Lewis score
著者: 遠藤宏樹 , 中島淳
ページ範囲:P.865 - P.865
Lewis scoreはカプセル内視鏡スコア(capsule endoscopy score)とも表記され,カプセル内視鏡の所見をもとに小腸粘膜の炎症性変化を定量化する指標として2008年にGralnekら1)によって報告された.所見は絨毛浮腫,潰瘍,狭窄の3項目を評価する(Fig. 1).小腸をカプセルの通過時間で3等分し,それぞれの領域で病変の拡がりや程度によって点数化する(Table 1).
ここでの“絨毛浮腫”は,絨毛の幅が絨毛の高さと同等もしくはより大きい状態と定義されており,また“潰瘍”は周囲に発赤を伴った白色もしくは黄色の基底をもつ粘膜欠損と定義されている.“狭窄”に関しては,領域ごとではなく小腸全体で評価され,狭窄の存在のほか,潰瘍を伴っているか,カプセルが狭窄を通過できたかをもとにスコア化される.これらの所見をもとに最終スコアを算出し,正常(<135),軽症(≧135,<790),中等症/重症(≧790)の3つのカテゴリーに分類される.詳細な計算方法は原著1)をご参照いただきたいが,現在はGiven Imaging社のカプセル内視鏡ソフトウェアRAPID® 5Access以降のバージョンに本スコアを簡便に計算できるツールが搭載されている.
Lanza score
著者: 三宅一昌 , 坂本長逸
ページ範囲:P.866 - P.866
Lanza score(Table 1)は,1971年,米国ベイラー大学のLanzaら1)により,非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs;NSAIDs)による内視鏡的粘膜傷害の程度を等級化するために作成された.しかしながら,submucosal bleeding,area,edemaなどの定義がわかりにくく,1990年,本邦における臨床の現状に合わせるために,小林絢三および水島裕2)が共同して,modified Lanza score(Table 2)を作成した.
同scoreでは,用語がわかりやすく,概ね円滑に分類でき,現在,NSAIDsによる粘膜傷害を評価するために広く使用されている.Fig. 1に,典型的な胃びらん(Fig. 1a),出血(Fig. 1b)および胃潰瘍(Fig. 1c)の内視鏡像を提示した.長期NSAIDs服用者では,びらん・出血のような粘膜病変は案外少ないが,NSAIDs短期服用者またはアスピリン服用者における粘膜傷害の評価に有用性が高いと思われる.
原因不明消化管出血(obscure gastrointestinal bleeding;OGIB)
著者: 藤森俊二 , 坂本長逸
ページ範囲:P.867 - P.867
本邦における原因不明消化管出血の定義 消化管出血患者の10~20%程度は初回の出血源検索で出血源が同定できない.これらの患者の約半数は出血を繰り返すとされ,入院の反復や多量の輸血を必要とする1).これら出血源が特定できない消化管出血を原因不明消化管出血(obscure gastrointestinal bleeding;OGIB)と称している.原因不明の消化管出血といっても,どのような検査をどれくらい施行して原因が不明なのかで意味が大きく異なってくる.
そこで本邦では2010年に,上部消化管および下部消化管内視鏡検査で出血源が不明な消化管出血をOGIBと定義した(第5回カプセル内視鏡の臨床応用に関する研究会2010・日本カプセル内視鏡研究会用語委員会).ここでは,上部消化管とは十二指腸Vater乳頭部より口側を指し,また下部消化管とは大腸である.米国消化器病学会では2007年に上下部消化管内視鏡検査,小腸X線検査(小腸造影の他にCTなどによるバーチャル小腸検査を含む)を行っても出血源が不明な消化管出血をOGIBと定義しており,本邦の定義と異なっている2).したがって,文献を読む場合には注意が必要で,常にOGIBをどのように定義しているのかを確認する必要がある.
小腸血管性病変の内視鏡所見分類(endoscopic classification of vascular lesions of the small intestine)
著者: 矢野智則
ページ範囲:P.868 - P.868
小腸血管性病変の内視鏡所見は様々だが,これまで整理がされていなかった.また,血管性病変に関する用語についても,多数の用語が曖昧な定義のまま使われ,異なる用語が同様の病変に用いられる場合や,同じ用語が全く異なる病変に用いられる場合があり,混乱がみられる.
しかし,消化管の血管性病変は,病態が全く異なる静脈瘤や血管腫を除けば,病理組織学的に (1) 静脈・毛細血管の特徴をもつ病変(angioectasia),(2) 動脈の特徴をもつ病変(Dieulafoy's lesion),(3) 動脈と静脈の特徴をもつ病変(arteriovenous malformation)の3種類に分類できる.血管性病変の内視鏡所見から病態を判断し,適切な治療方法を選択するためには,動脈成分の有無,つまり拍動性の有無が重要なのである.この点に着目して,小腸血管性病変の内視鏡所見を以下の6種類に分類した1)のが,矢野・山本分類である(Table 1).
Forrest分類(Forrest's classification)
著者: 小澤俊文
ページ範囲:P.869 - P.869
Forrest分類とは,1974年にJohn Forrestが発表した潰瘍の出血状態による分類である.現在ではHeldweinら1)が1989年に改変したものが広く用いられている(Table 1).
Ia,Ib,IIaは内視鏡的止血術の適応であり,それ以外は薬物療法を行う.内視鏡的止血にはクリップ止血,エピネフリン添加高張食塩水(hypertonic saline-epinephrine;HSE)や純エタノールによる局注止血,高周波凝固止血(argon plasma coagulation;APC)などがある.
Vienna 分類(Vienna classification)
著者: 下田忠和
ページ範囲:P.870 - P.870
消化管上皮には種々の異型を伴うが,その異型を良性の反応性あるいは再生性変化と腫瘍性の異型に分けることができる.腫瘍性異型を示す病変の中で,非浸潤性腫瘍を欧米では異形成(dysplasia)としている1).日本では,粘膜内腫瘍を構造異型や細胞異型の違いから腺腫と癌に分けて診断している.この日欧米間の違いを明らかにするため,欧米と日本の消化管病理医各4名で,消化管の生検と切除標本による診断が個別に行われた.その結果,欧米の病理医は,非浸潤性の上皮内腫瘍は転移を来す可能性がない病変でlow or high grade adenoma/dysplasiaとし,日本は浸潤の有無にかかわらず,腺腫あるいは癌と診断することが明らかになった2)~4).さらに欧米は生検でadenoma/dysplasia,切除標本では癌と診断し,同じ症例で病理診断に乖離が生じる場合があることも判明した.これは欧米では粘膜内に限局した細胞異型,構造異型の強い腫瘍であっても浸潤のないものは癌としないためである.一方,日本は生検と切除標本の診断は一致していた.癌の診断基準は浸潤ではなく,構造異型ないしは細胞異型の程度を根拠とするためである.
そこで,日欧米間での診断を統一するため世界から31名の消化管病理医が集まり,消化管粘膜内腫瘍診断のコンセンサスミーティングが1998年にウィーンで開催された.そこで欧米のhigh grade dysplasiaは浸潤の可能性を示す病変で,日本の非浸潤性粘膜内癌と同じもので、臨床的に内視鏡切除を含めた治療を必要とする病変であることが合意された.その結果,Table 1に示す用語と分類が合意された5).
胃生検Group 分類(group classification of gastric biospy)
著者: 江頭由太郎
ページ範囲:P.871 - P.871
胃生検Group分類は,「胃癌取扱い規約」によって定められた生検組織診断の客観的かつ簡便な分類法である.「胃癌取扱い規約第8版」(1971年)に初めて掲載され,1985年の第11版においてマイナーチェンジがなされ,最新の第14版1)において大幅に改訂された.この新Group分類においては,内容の変更だけでなく,表記法も旧Group分類のローマ数字から算用数字に変更され,大腸生検と統一された.新Group分類の概要を以下に示す.
Group分類は上皮性病変に対して行われるもので,非上皮性病変に対しては適用されない.生検診断に当たっては,組織学的診断名を記載したうえで,Group分類を付記する.
治療
Helicobacter pylori除菌(Helicobacter pylori eradication)
著者: 塩谷昭子 , 鎌田智有
ページ範囲:P.873 - P.873
除菌の適応疾患 保険診療でHelicobacter pylori(H. pylori)の検査や除菌治療ができるのは,現在,(1) 胃潰瘍・十二指腸潰瘍,(2) 胃MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫,(3) 特発性血小板減少性紫斑病,(4) 早期胃癌に対する内視鏡治療後に限定されている.
除菌判定 除菌治療後のH. pylori感染の診断に当たっては,尿素呼気試験およびモノクローナル抗体を用いた便中H. pylori抗原測定が有用である.プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor;PPI)やウレアーゼ阻害作用を有する防御因子増強薬は,投与されている場合,偽陰性となる可能性があり,少なくとも検査前2週間は中止する.
腫瘍の分子標的薬(molecular targeted therapy of the tumor)
著者: 落合淳志
ページ範囲:P.874 - P.874
従来の抗癌剤は,多くの癌細胞の特性である高い増殖性や細胞分裂を阻害する薬剤として開発されてきた.一方,分子標的薬とは,癌細胞や癌組織における特徴的分子および増殖・進展にかかわる分子機構を標的として開発された薬剤といえる.従来は,治療効果が高く,副作用は低いと考えられていたが,症例により様々であることが明らかになった.
現在までに消化器腫瘍にかかわらず様々な“癌”において分子標的薬が実臨床に用いられている1).Table 1に現在認可されている消化管悪性腫瘍における分子標的薬と,分子標的薬対象症例の選択法を示す.消化管悪性腫瘍に関する分子標的薬としては,GIST(gastrointestinal stromal tumor)が,チロシンキナーゼ受容体であるc-kit遺伝子変異により発生することが明らかになり,このc-kitに対する阻害薬であるグリベックが分子標的薬として使用されてきた.現在では,大腸癌に対してはEGFR(epidermal growth factor receptor)2)や腫瘍血管新生阻害薬〔抗VEGF(vascular endothelial growth factor)抗体〕などが用いられており,胃癌で高発現するc-erbB2(HER2)に対する治療抗体が使われており,分子標的薬は消化器悪性腫瘍の必須の治療薬となってきている.
内視鏡的止血法(endoscopic hemostasis)
著者: 萩原朋子 , 小野裕之
ページ範囲:P.875 - P.875
内視鏡的止血法には,(1) 機械的止血法,(2) 局注法,(3) 熱凝固法,(4) 薬剤撒布法があり,Table 1に詳細を示す.そのうち代表的な止血法について,「消化器内視鏡ガイドライン」1),「消化性潰瘍診療ガイドライン」2)に基づき,各々の特徴を述べる.かつては,純エタノールや高張ナトリウム・エピネフリン(hypertonic saline-epinephrine;HSE)局注による止血が主流であったが,現在は止血鉗子による凝固止血とクリップによる止血が多くを占めるようになっている.
クリップ止血法 止血クリップを用いて出血点,露出血管を直接把持・結紮して止血する機械的止血法である.出血点が確認できる場合に用いられる.組織傷害性が少なく,安全で確実な方法だが,潰瘍の観察が接線方向となる場合や線維化が進行した潰瘍の止血には有効でない.
内視鏡的咽喉頭手術(endoscopic laryngopharyngeal surgery;ELPS)
著者: 川久保博文 , 大森泰
ページ範囲:P.876 - P.876
ELPS(endoscopic laryngopharyngeal surgery)は咽喉頭領域における鏡視下手術である.咽喉頭表在癌は消化器内視鏡医が食道癌の重複癌検索の過程で発見してきたため,食道粘膜癌に対するEMR(endoscopic mucosal resection),ESD(endoscopic submucosal dissection)が応用され,機能温存を目的とした低侵襲治療が可能となった.
2004年,佐藤ら1)が彎曲型喉頭鏡にて喉頭展開を行って,経口的に鉗子を挿入し,内視鏡補助下に上皮下層剝離を施行するELPSを開発した.
内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection;EMR)
著者: 田沼徳真 , 野村昌史
ページ範囲:P.877 - P.877
内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection;EMR)は,主に平坦な表在型腫瘍に対して用いられ,病変部をスネアで絞扼した後に高周波電流で切除する方法である.ポリペクトミーと違い平坦な病変を絞扼するため,様々な方法が考案されている.
1983年に平尾ら1)が開発したERHSE(endoscopic resection with local injection of hypersaline-epinephrine)法は,病変下に高張Naエピネフリン液を局注して周囲を高周波ナイフで切開し,把持鉗子で持ち上げながらスネアで絞扼するという画期的な方法で,現在の内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)の原型となった.
内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)
著者: 川田登 , 小野裕之
ページ範囲:P.878 - P.878
1980年代初頭に内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection;EMR)が開発され,早期胃癌に対する内視鏡治療が一般的に行われるようになった.しかし,EMRは切除可能な病変サイズが小さいため分割切除が多く,遺残再発率が高いという問題点があった.内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)はそれらを克服するために開発された,粘膜および粘膜下層を切開・剝離し,一括で切除する方法である(Fig. 1).
ESDは,1983年に平尾ら1)によって報告されたERHSE(endoscopic resection with local injection of hypertonic saline-epinephrine solution)法を原型としている.ERHSEは局注後に高周波針状ナイフを用い病変周囲を全周切開し,スネアを用いて切除する方法であり,正確な切除範囲を決定できる方法であった.しかし手技の難易度が高く,またスネアのサイズ以上の病変は切除できないことや,当時はデバイスや高周波装置が未熟で出血や穿孔のリスクが高いなどの理由により,広く普及しなかった.
早期胃癌のESD適応病変,適応拡大病変,適応外病変(the indication of ESD for early gastric cancer)
著者: 萩原朋子 , 小野裕之
ページ範囲:P.879 - P.879
早期胃癌に対する内視鏡的切除の絶対適応としては,「胃癌治療ガイドライン」1)では,“リンパ節転移の可能性がほとんどなく,腫瘍が一括切除できる大きさと部位にあること”を原則とし,具体的には“2cm以下の肉眼的粘膜癌(cT1a),組織型が分化型.肉眼型は問わないが,UL(-)に限る”としている(Fig. 1).従来法のEMR(endoscopic mucosal resection)ではスネアを用いるため,一括切除できる大きさには限界が存在した.ESD(endoscopic submucosal dissection)の開発により,2cm以上の病変やULを有する病変も,技術的には一括切除が可能となり,適応拡大が検討されつつある.
Gotodaら2),Hirasawaら3)による,外科的切除をされた早期胃癌症例におけるリンパ節転移の検討により,転移のリスクを判断することが可能となった.このデータに基づき,ガイドライン上,適応拡大病変は,(1) 2cmを超えるUL(-)の分化型cT1a,(2) 3cm以下のUL(+)の分化型cT1a,(3) 2cm以下のUL(-)の未分化型cT1aと規定されているが,現時点では長期予後に関するエビデンスに乏しいため,JCOG0607などの結果が出るまでは臨床研究として行うことが望ましいと明記されている(Fig. 2).
胃癌の病変範囲診断
著者: 小山恒男
ページ範囲:P.880 - P.880
胃癌はHelicobacter pylori菌感染に基づく慢性胃炎を背景として発生することが多く,このような胃粘膜は厚い粘液で覆われている.したがって,より正確な情報を得るためにはよい前処置が必要である.検査前にプロナーゼと重曹を内服させ,胃粘膜に付着した粘液を分解しておくこと,さらに内視鏡挿入時にはガスコン水を用いて粘液を丹念に洗い落とすことが重要である.
範囲診断のために,通常内視鏡で観察すべきポイントは色調変化(発赤,褪色,黄色など)および段差(隆起,陥凹),表面性状(不整の程度,アレア模様の差)である.分化型癌は原則として全層置換するため,癌腺管が粘膜表層に露出する.したがって,通常は色調差や段差で病変境界を認識することができる.一方,低分化型癌は腺頸部を側方進展するため,その病変範囲診断は難しい.
断端(margin)
著者: 上杉憲幸 , 菅井有
ページ範囲:P.881 - P.881
断端とは切除術が施行された際の切除端のことであり,断端の評価は切除の根治度評価のみならず,内視鏡切除の追加切除の適応決定のために重要である.
切除断端の記載は手術切除標本と内視鏡的切除標本について,取扱い規約でそれぞれ記載の方法が定められているが1)~3),本稿では近年需要が高まっている内視鏡切除標本の断端について記述する.
ESDデバイス(ESD device)
著者: 川田登 , 小野裕之
ページ範囲:P.882 - P.882
内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)に用いる高周波ナイフを総称してESDデバイスという.1990年代後半にITナイフ(insulation-tipped diathermic knife)が開発されてから現在に至るまで,安全で容易な一括切除を目的とした多くのESDデバイスが開発されている.術者はそれぞれの特性を熟知し,デバイスを選択することが重要である.主なデバイスの特性について解説する.
ITナイフ(KD-610L,オリンパス社) ITナイフは細川が考案し,小野ら1)により臨床応用された最初のESDデバイスである.針状ナイフの先端に絶縁体であるセラミック小球を装着したナイフであり先端の絶縁チップにより穿孔の危険性を減少させた.その後チップの底面に3本の短ブレードを装着したITナイフ2(Fig. 1)が開発され,横方向の切開や線維化部分の切開能が向上した.長所は他のデバイスに比べて術時間が短いことであり,短所はやや習熟に時間を要することである.
先端透明フード
著者: 山野泰穂
ページ範囲:P.883 - P.883
先端透明フードは内視鏡の先端に装着する補助デバイスであり,主たる目的は至適距離および視野確保である.歴史的に内視鏡の先端にフードを装着することは古くから行われ,標準装備であった時代もあったとされている1).以前は黒色ゴム様の素材であったが,近年では透明あるいは半透明な硬質プラスチックや塩化ビニル素材が用いられることが多く,形状も円筒形から斜型や先端爪型まである(Fig. 1~3).
先端透明フードの具体的な効果としては,前述の至適距離および視野確保による効果に不随するもので,挿入性の向上2)~4),観察死角の軽減1),病変指摘率の向上5),攣縮した腸管での処置・観察のアシストが期待でき,拡大内視鏡を用いた際のフォーカス合わせや,NBI(narrow band imaging)での簡易的浸水観察にも使用できる.また憩室出血の際の出血点の検索,治療6)にも役立ち,2012年4月から保険収載された大腸ESD(endoscopic submucosal dissection)の際にも粘膜下層の視野展開ばかりではなく,安全性の担保にも役立っている7).
内視鏡的バルーン拡張術(endoscopic balloon dilation;EBD)
著者: 平井郁仁
ページ範囲:P.884 - P.884
内視鏡的バルーン拡張術(endoscopic balloon dilation;EBD)は消化管狭窄の解除法として広く普及している内視鏡治療である.消化管狭窄の原因は,悪性疾患,炎症性疾患,術後癒着,内視鏡治療後など多岐にわたる.EBDは,低侵襲性で比較的簡便かつ安全な治療法であり,原因にかかわらず適応となることが多い.良性疾患に対するEBDは (1) 狭窄に基づく経口摂取障害,(2) 術後狭窄に伴う縫合不全合併例,(3) 下部消化管閉塞によるイレウスないし亜イレウス,(4) 炎症性腸疾患の治療後進行した瘢痕による高度狭窄などが適応となる.しかし,5cmを超えるような長い狭窄や高度の屈曲,活動性の炎症や潰瘍性病変を合併する狭窄は適応外である1).
上部消化管では,食道,胃の進行癌,アカラシア,良性潰瘍による幽門狭窄,内視鏡的粘膜下層剝離術後の瘢痕狭窄およびCrohn病の幽門,十二指腸狭窄などに対して行われることが多い.下部消化管においては大腸癌,術後吻合部狭窄,Crohn病,虚血性大腸炎(狭窄型),NSAID(nonsteroidal anti-inflammatory drug)起因性腸炎,腸結核などが対象となる.拡張用のバルーンにはOTW(over-the-wire)バルーンとTTS(through-the-scope)バルーンがあるが,手技が簡便であり,最近では大径のものもあるためTTSバルーンが汎用されている.EBDは,狭窄部観察→ガストログラフィン®での造影→バルーン挿入→バルーン拡張→狭窄部観察(scope通過の有無確認)の手順で行う.主な合併症としては,出血と穿孔がある.出血は保存的にコントロール可能なことが多いが,穿孔時にはほとんどが外科的治療を要する.
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45巻5号(2010年4月発行)
特集 早期大腸癌2010
45巻4号(2010年4月発行)
今月の主題 スキルス胃癌と鑑別を要する疾患
45巻3号(2010年3月発行)
今月の主題 出血性小腸疾患─内視鏡診断・治療の最前線
45巻2号(2010年2月発行)
今月の主題 中・下咽頭表在癌の診断と治療
45巻1号(2010年1月発行)
今月の主題 早期胃癌のIIb進展範囲診断
44巻13号(2009年12月発行)
今月の主題 collagenous colitisの現況と新知見
44巻12号(2009年11月発行)
今月の主題 消化管癌の化学・放射線療法の効果判定と問題点
44巻11号(2009年10月発行)
今月の主題 食道小扁平上皮癌の診断
44巻10号(2009年9月発行)
今月の主題 潰瘍性大腸炎の初期病変とその進展・経過
44巻9号(2009年8月発行)
今月の主題 背景粘膜からみた胃癌ハイリスクグループ
44巻8号(2009年7月発行)
今月の主題 大腸SM癌内視鏡治療の根治基準をめぐって─病理診断の問題点と予後
44巻7号(2009年6月発行)
今月の主題 食道胃接合部腺癌の診断
44巻6号(2009年5月発行)
今月の主題 小腸疾患─小病変の診断と治療の進歩
44巻5号(2009年4月発行)
今月の主題 癌や炎症と鑑別が困難な消化管悪性リンパ腫
44巻4号(2009年4月発行)
特集 早期胃癌2009
44巻3号(2009年3月発行)
今月の主題 食道扁平上皮癌に対するESDの適応と実際
44巻2号(2009年2月発行)
今月の主題 特発性腸間膜静脈硬化症(idiopathic mesenteric phlebosclerosis)―概念と臨床的取り扱い
44巻1号(2009年1月発行)
今月の主題 未分化型胃粘膜内癌のESD―適応拡大の可能性
43巻13号(2008年12月発行)
今月の主題 大腸癌の発生・発育進展
43巻12号(2008年11月発行)
今月の主題 早期胃癌発育の新たな分析─内視鏡経過例の遡及的検討から
43巻11号(2008年10月発行)
今月の主題 感染性腸炎─最近の動向と知見
43巻10号(2008年9月発行)
今月の主題 早期食道癌の診断─最近の進歩
43巻9号(2008年8月発行)
今月の主題 colitic cancer/dysplasiaの早期診断─病理組織診断の問題点も含めて
43巻8号(2008年7月発行)
今月の主題 胃癌に対する内視鏡スクリーニングの現状と将来
43巻7号(2008年6月発行)
今月の主題 消化管follicular lymphoma―診断と治療戦略
43巻6号(2008年5月発行)
今月の主題 大腸の新しい画像診断
43巻5号(2008年4月発行)
今月の主題 linitis plastica型胃癌―病態と診断・治療の最前線
43巻4号(2008年4月発行)
特集 小腸疾患2008
43巻3号(2008年3月発行)
今月の主題 まれな食道良性腫瘍および腫瘍様病変
43巻2号(2008年2月発行)
今月の主題 消化管GIST―診断・治療の新展開
43巻1号(2008年1月発行)
今月の主題 早期胃癌ESD―適応拡大を求めて
42巻13号(2007年12月発行)
今月の主題 新しい治療による炎症性腸疾患(IBD)の経過―粘膜治癒を中心に
42巻12号(2007年11月発行)
今月の主題 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)起因性消化管病変
42巻11号(2007年10月発行)
今月の主題 ESD時代における未分化型混在早期胃癌の取り扱い
42巻10号(2007年9月発行)
今月の主題 大腸腫瘍内視鏡切除後のサーベイランスに向けて
42巻9号(2007年8月発行)
今月の主題 食道表在癌内視鏡切除後の長期成績
42巻8号(2007年7月発行)
今月の主題 胃MALTリンパ腫―除菌無効例の特徴と治療戦略
42巻7号(2007年6月発行)
今月の主題 大腸ESDの現況と将来展望
42巻6号(2007年5月発行)
今月の主題 Helicobacter pyloriと胃癌
42巻5号(2007年4月発行)
特集 消化管の拡大内視鏡観察2007
42巻4号(2007年4月発行)
今月の主題 炎症性腸疾患(IBD)の上部消化管病変
42巻3号(2007年3月発行)
今月の主題 大腸鋸歯状病変の発育進展と診断・取り扱い
42巻2号(2007年2月発行)
今月の主題 食道扁平上皮dysplasia―診断と取り扱いをめぐって
42巻1号(2007年1月発行)
今月の主題 胃分化型SM1癌の診断―垂直浸潤500μm
41巻13号(2006年12月発行)
今月の主題 大腸腫瘍に対する拡大内視鏡診断の最先端
41巻12号(2006年11月発行)
今月の主題 小腸疾患診療の新たな展開
41巻11号(2006年10月発行)
今月の主題 早期胃癌に対するESDと腹腔鏡下手術の接点
41巻10号(2006年9月発行)
・sm癌の最新の診断と治療戦略
41巻9号(2006年8月発行)
今月の主題 通常内視鏡による大腸sm癌の深達度診断 垂直侵潤距離1,000μm術前診断の現状
41巻8号(2006年7月発行)
今月の主題 転移陽性胃粘膜内癌の特徴と取り扱い
41巻7号(2006年6月発行)
今月の主題 Helicobacter pyloriに起因しないとされる良性胃粘膜病変
41巻6号(2006年5月発行)
今月の主題 非定型的炎症性腸疾患―診断と経過
41巻5号(2006年4月発行)
今月の主題 陥凹性小胃癌の診断―基本から最先端まで
41巻4号(2006年4月発行)
特集 消化管内視鏡治療2006
41巻3号(2006年3月発行)
今月の主題 腸管悪性リンパ腫―最近の知見
41巻2号(2006年2月発行)
今月の主題 食道表在癌の内視鏡診断―最近の進歩
41巻1号(2006年1月発行)
今月の主題 早期胃癌に対するESDの適応の現状と今後の展望
40巻13号(2005年12月発行)
今月の主題 いわゆる側方発育型大腸腫瘍の治療法を問う
40巻12号(2005年11月発行)
今月の主題 胃癌EMR後の異時性多発を考える
40巻11号(2005年10月発行)
今月の主題 小腸内視鏡検査法の進歩
40巻10号(2005年9月発行)
今月の主題 難治性潰瘍性大腸炎―診断と治療の新知見
40巻9号(2005年8月発行)
今月の主題 表在性の中・下咽頭癌
40巻8号(2005年7月発行)
今月の主題 免疫異常と消化管病変
40巻7号(2005年6月発行)
今月の主題 胃癌化学療法の進歩と課題
40巻6号(2005年5月発行)
今月の主題 Crohn病の初期病変―診断と長期経過
40巻4号(2005年4月発行)
特集 消化管の出血性疾患2005
40巻5号(2005年4月発行)
今月の主題 切開・剥離法(ESD)時代の胃癌術前診断
40巻3号(2005年3月発行)
今月の主題 特殊組織型の食道癌
40巻2号(2005年2月発行)
今月の主題 大腸カルチノイド腫瘍 転移例と非転移例の比較を中心に
40巻1号(2005年1月発行)
今月の主題 胃癌の時代的変遷と将来展望
39巻13号(2004年12月発行)
今月の主題 大腸sm癌の内視鏡治療後の長期経過
39巻12号(2004年11月発行)
今月の主題 消化管の画像診断―21世紀の展開
39巻11号(2004年10月発行)
今月の主題 胃生検診断の意義 Group分類を考える
39巻10号(2004年9月発行)
今月の主題 大腸sm癌の深達度診断―垂直浸潤1,000μm
39巻9号(2004年8月発行)
今月の主題 Barrett食道癌―表在癌の境界・深達度診断
39巻8号(2004年7月発行)
今月の主題 家族性大腸腺腫症―最近の話題
39巻7号(2004年6月発行)
今月の主題 胃癌術後の残胃癌
39巻6号(2004年5月発行)
今月の主題 深達度診断を迷わせる食道表在癌―その原因と画像の特徴
39巻5号(2004年4月発行)
今月の主題 大腸腫瘍に対する拡大内視鏡観察―V型pit pattern診断の問題点
39巻4号(2004年4月発行)
特集 消化管の粘膜下腫瘍 2004
39巻3号(2004年3月発行)
今月の主題 胃MALTリンパ腫―除菌治療後の経過と予後
39巻2号(2004年2月発行)
今月の主題 Crohn病経過例における新しい治療の位置づけ
39巻1号(2004年1月発行)
今月の主題 最新の早期胃癌EMR―切開・剥離法
38巻13号(2003年12月発行)
今月の主題 消化管への転移性腫瘍
38巻12号(2003年11月発行)
今月の主題 上部消化管拡大観察の意義
38巻11号(2003年10月発行)
今月の主題 粘膜下腫瘍様の形態を示した消化管癌
38巻10号(2003年9月発行)
今月の主題 胃腺腫の診断と治療方針
38巻9号(2003年8月発行)
今月の主題 直腸肛門部病変の鑑別診断
38巻8号(2003年7月発行)
今月の主題 経過観察からみた大腸癌の発育・進展sm癌を中心に
38巻7号(2003年6月発行)
今月の主題 消化管の炎症性疾患診断におけるX線検査の有用性
38巻6号(2003年5月発行)
今月の主題 消化管腫瘍診断におけるX線検査の有用性
38巻5号(2003年4月発行)
今月の主題 胃型早期胃癌の病理学的特徴と臨床像―分化型癌を中心に
38巻4号(2003年4月発行)
特集 全身性疾患と消化管病変
38巻3号(2003年3月発行)
今月の主題 食道癌と他臓器重複癌―EMR時代を迎えて
38巻2号(2003年2月発行)
今月の主題 腸型Behçet病と単純性潰瘍の長期経過
38巻1号(2003年1月発行)
今月の主題 胃癌―診断と治療の最先端
37巻13号(2002年12月発行)
今月の主題 胃癌と鑑別を要する炎症性疾患
37巻12号(2002年11月発行)
今月の主題 Ⅰp・Ⅰsp型大腸sm癌
37巻11号(2002年10月発行)
今月の主題 消化管のvirtual endoscopy
37巻10号(2002年9月発行)
今月の主題 食道sm癌の再評価―食道温存治療の可能性を求めて
37巻9号(2002年8月発行)
今月の主題 胃粘膜内癌EMRの適応拡大と限界
37巻8号(2002年7月発行)
今月の主題 炎症性腸疾患と腫瘍(2)潰瘍性大腸炎以外
37巻7号(2002年6月発行)
今月の主題 炎症性腸疾患と腫瘍(1)潰瘍性大腸炎
37巻6号(2002年5月発行)
今月の主題 十二指腸の非腫瘍性びまん性病変
37巻5号(2002年4月発行)
今月の主題 cap polyposisと粘膜脱症候群
37巻4号(2002年3月発行)
今月の主題 Helicobacter pylori除菌に伴う問題点
37巻3号(2002年2月発行)
特集 消化管感染症2002
37巻2号(2002年2月発行)
今月の主題 4型大腸癌とその鑑別診断
37巻1号(2002年1月発行)
今月の主題 食道m3・sm1癌の診断と遠隔成績
36巻13号(2001年12月発行)
今月の主題 早期胃癌診療の実態と問題点
36巻12号(2001年11月発行)
今月の主題 十二指腸の小病変
36巻11号(2001年10月発行)
今月の主題 sm massive以深に浸潤した10mm以下の大腸癌
36巻10号(2001年9月発行)
今月の主題 縮小治療のための胃癌の粘膜内浸潤範囲診断
36巻9号(2001年8月発行)
今月の主題 GIST(gastrointestinal stromal tumor)―概念と臨床的取り扱い
36巻8号(2001年7月発行)
今月の主題 多発食道癌
36巻7号(2001年6月発行)
今月の主題 小腸腫瘍―分類と画像所見
36巻6号(2001年5月発行)
今月の主題 早期大腸癌の深達度診断にEUSと拡大内視鏡は必要か
36巻5号(2001年4月発行)
今月の主題 早期の食道胃接合部癌
36巻4号(2001年3月発行)
今月の主題 潰瘍性大腸炎診断基準の問題点
36巻3号(2001年2月発行)
特集 消化管癌の深達度診断
36巻2号(2001年2月発行)
今月の主題 Crohn病診断基準の問題点
36巻1号(2001年1月発行)
今月の主題 表層型胃悪性リンパ腫の鑑別診断―治療法選択のために
35巻13号(2000年12月発行)
今月の主題 21世紀への消化管画像診断学―歩みと展望
35巻12号(2000年11月発行)
今月の主題 早期大腸癌肉眼分類―統一をめざして
35巻11号(2000年10月発行)
今月の主題 胃カルチノイド―新しい考え方
35巻10号(2000年9月発行)
今月の主題 食道アカラシア
35巻9号(2000年8月発行)
今月の主題 薬剤性腸炎―最近の話題
35巻8号(2000年7月発行)
今月の主題 多発大腸癌
35巻7号(2000年6月発行)
今月の主題 胃の“pre-linitis plastica”型癌
35巻6号(2000年5月発行)
今月の主題 腸管の血管性病変―限局性腫瘍状病変を中心に
35巻5号(2000年4月発行)
今月の主題 Helicobacter pylori除菌後の消化性潰瘍の経過―3年以上の症例を中心に
35巻4号(2000年3月発行)
今月の主題 食道癌の発育進展―初期病巣から粘膜下層癌へ
35巻3号(2000年2月発行)
特集 消化管ポリポーシス2000
35巻2号(2000年2月発行)
今月の主題 炎症性腸疾患における生検の役割
35巻1号(2000年1月発行)
今月の主題 早期胃癌診断の基本所見とピットフォール
34巻13号(1999年12月発行)
今月の主題 大腸腫瘍の内視鏡診断は病理診断にどこまで近づくか
34巻12号(1999年11月発行)
今月の主題 胃癌診断における生検の現状と問題点
34巻11号(1999年10月発行)
今月の主題 胃MALTリンパ腫―Helicobacter pylori除菌後の経過
34巻10号(1999年9月発行)
今月の主題 Crohn病の長期経過―10年以上の症例を中心に
34巻9号(1999年8月発行)
今月の主題 早期胃癌のEUS診断
34巻8号(1999年7月発行)
今月の主題 逆流性食道炎―分類・診断・治療
34巻7号(1999年6月発行)
今月の主題 AIDSとATLの消化管病変
34巻6号(1999年5月発行)
今月の主題 大腸sm癌の内視鏡的切除をめぐって
34巻5号(1999年4月発行)
今月の主題 大腸腫瘍内視鏡的切除後の局所再発―腺腫・m癌を中心に
34巻4号(1999年3月発行)
今月の主題 胃型の分化型胃癌―病理診断とその特徴
34巻3号(1999年2月発行)
特集 消化管の画像診断―US,CT,MRIの役割
34巻2号(1999年2月発行)
今月の主題 Barrett上皮と食道腺癌
34巻1号(1999年1月発行)
今月の主題 Ⅱ型早期大腸癌肉眼分類の問題点
33巻13号(1998年12月発行)
今月の主題 胃癌EMR後の遺残再発―診断と治療
33巻12号(1998年11月発行)
今月の主題 胃癌EMRの完全切除の判定基準を求めて
33巻11号(1998年10月発行)
今月の主題 早期大腸癌の組織診断―諸問題は解決されたか
33巻10号(1998年9月発行)
今月の主題 腸管子宮内膜症
33巻9号(1998年8月発行)
今月の主題 潰瘍性大腸炎―最近の話題
33巻8号(1998年7月発行)
今月の主題 胃炎―Sydney SystemとHelicobacter pylori
33巻7号(1998年6月発行)
食道癌
33巻6号(1998年5月発行)
今月の主題 鋸歯状腺腫(serrated adenoma)とその周辺
33巻5号(1998年4月発行)
今月の主題 大腸疾患の診断に注腸X線検査は必要か
33巻4号(1998年3月発行)
今月の主題 胃癌の診断にX線検査は不要か
33巻3号(1998年2月発行)
特集 消化管悪性リンパ腫1998
33巻2号(1998年2月発行)
今月の主題 消化管病変の三次元画像診断―現状と展望
33巻1号(1998年1月発行)
今月の主題 「胃と腸」33年間の歩みからみた早期癌
32巻13号(1997年12月発行)
との鑑別を中心に
32巻12号(1997年11月発行)
今月の主題 腺領域からみた胃病変
32巻11号(1997年10月発行)
今月の主題 Is型大腸sm癌を考える
32巻10号(1997年9月発行)
今月の主題 早期食道癌―X線診断の進歩
32巻9号(1997年8月発行)
今月の主題 胃噴門部領域の病変 (2)癌以外の病変
32巻8号(1997年7月発行)
今月の主題 胃噴門部領域の病変 (1)癌
32巻7号(1997年6月発行)
今月の主題 感染性腸炎(腸結核を除く)
32巻6号(1997年5月発行)
今月の主題 早期胃癌から進行癌への進展
32巻5号(1997年4月発行)
今月の主題 粘膜下腫瘍様の食道表在癌
32巻4号(1997年3月発行)
今月の主題 大腸腺腫症―最近の知見
32巻3号(1997年2月発行)
特集 炎症性腸疾患1997
32巻2号(1997年2月発行)
今月の主題 十二指腸乳頭部癌―縮小手術をめざして
32巻1号(1997年1月発行)
今月の主題 胃sm癌の細分類―治療法選択の指標として
31巻13号(1996年12月発行)
今月の主題 大腸腫瘍の自然史
31巻12号(1996年11月発行)
今月の主題 未分化型小胃癌はなぜ少ないか
31巻11号(1996年10月発行)
今月の主題 微細表面構造からみた大腸腫瘍の診断
31巻10号(1996年9月発行)
今月の主題 内視鏡的食道粘膜切除後の経過
31巻9号(1996年8月発行)
今月の主題 早期胃癌の内視鏡的粘膜切除―適応拡大をめぐる問題点
31巻8号(1996年7月発行)
今月の主題 Helicobacter Pyloriと胃リンパ腫
31巻7号(1996年6月発行)
今月の主題 遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)
31巻6号(1996年5月発行)
今月の主題 食道dysplasia―経過観察例の検討
31巻5号(1996年4月発行)
今月の主題 表層拡大型早期胃癌
31巻4号(1996年3月発行)
今月の主題 新しいCrohn病診断基準(案)
31巻3号(1996年2月発行)
特集 図説 形態用語の使い方・使われ方
31巻2号(1996年2月発行)
今月の主題 いわゆる表層拡大型大腸腫瘍とは
31巻1号(1996年1月発行)
今月の主題 胃MALTリンパ腫
30巻13号(1995年12月発行)
今月の主題 小腸画像診断の新しい展開
30巻12号(1995年11月発行)
今月の主題 大腸腺腫の診断と取り扱い
30巻11号(1995年10月発行)
今月の主題 食道表在癌の発育進展―症例から学ぶ
30巻10号(1995年9月発行)
今月の主題 微小胃癌
30巻9号(1995年8月発行)
今月の主題 胃の平滑筋腫と平滑筋肉腫―新しい視点を求めて
30巻8号(1995年7月発行)
今月の主題 表層拡大型食道表在癌
30巻7号(1995年6月発行)
今月の主題 大腸の悪性リンパ腫
30巻6号(1995年5月発行)
今月の主題 粘膜下腫瘍の形態を示した胃癌
30巻5号(1995年4月発行)
今月の主題 colitic cancer―微細診断をめざして
30巻4号(1995年3月発行)
今月の主題 腸結核
30巻3号(1995年2月発行)
特集 早期食道癌1995
30巻2号(1995年2月発行)
今月の主題 表面型大腸癌の発育と経過
30巻1号(1995年1月発行)
今月の主題 胃癌の診断と治療―最近の動向
29巻13号(1994年12月発行)
今月の主題 上部消化管病変の特徴からみた全身性疾患
29巻12号(1994年11月発行)
今月の主題 大腸sm癌の細分類とその臨床
29巻11号(1994年10月発行)
今月の主題 大腸sm癌の細分類とその意義
29巻10号(1994年9月発行)
今月の主題 胃底腺領域の分化型癌
29巻9号(1994年8月発行)
今月の主題 食道のヨード不染帯
29巻8号(1994年7月発行)
今月の主題 胆管癌の画像と病理
29巻7号(1994年6月発行)
今月の主題 多発胃癌
29巻6号(1994年5月発行)
今月の主題 アフタ様病変のみのCrohn病
29巻5号(1994年4月発行)
今月の主題 大腸Crohn病―非定型例の診断を中心に
29巻4号(1994年3月発行)
今月の主題 食道粘膜癌―新しい病型分類とその診断
29巻3号(1994年2月発行)
特集 早期大腸癌1994
29巻2号(1994年2月発行)
今月の主題 胃良・悪性境界病変の生検診断と治療方針
29巻1号(1994年1月発行)
今月の主題 表面型大腸腫瘍―肉眼分類を考える
28巻13号(1993年12月発行)
今月の主題 早期胃癌の内視鏡的根治切除―適応拡大の可能性と限界を探る
28巻12号(1993年11月発行)
今月の主題 消化管ポリポーシス―最近の知見
28巻11号(1993年10月発行)
今月の主題 大腸癌の深達度診断
28巻10号(1993年9月発行)
今月の主題 胃悪性リンパ腫―診断の変遷
28巻9号(1993年8月発行)
今月の主題 虚血性腸病変の新しい捉え方
28巻8号(1993年7月発行)
今月の主題 大腸癌存在診断の実態―m癌を除く
28巻7号(1993年6月発行)
今月の主題 十二指腸腫瘍
28巻6号(1993年5月発行)
今月の主題 大腸腫瘍切除後の経過追跡
28巻5号(1993年4月発行)
今月の主題 腸管アフタ様病変
28巻4号(1993年3月発行)
今月の主題 難治性胃潰瘍(2)臨床経過と難治化の要因
28巻3号(1993年2月発行)
特集 早期胃癌1993
28巻2号(1993年2月発行)
今月の主題 内視鏡的食道粘膜切除術
28巻1号(1993年1月発行)
今月の主題 胃癌は変わったか―その時代的変遷
27巻12号(1992年12月発行)
今月の主題 難治性胃潰瘍(1)治癒予測を中心に
27巻11号(1992年11月発行)
今月の主題 大腸pm癌
27巻10号(1992年10月発行)
今月の主題 胃癌の深達度診断mとsmの鑑別―内視鏡的治療のために
27巻9号(1992年9月発行)
今月の主題 逆流性食道炎を見直す
27巻8号(1992年8月発行)
今月の主題 表面型大腸腫瘍の臨床診断の諸問題
27巻7号(1992年7月発行)
今月の主題 出血を来した小腸病変の画像診断
27巻6号(1992年6月発行)
今月の主題 早期大腸癌の病理診断の諸問題―小病変の診断を中心に
27巻5号(1992年5月発行)
今月の主題 linitis plastica型胃癌診断の現状
27巻4号(1992年4月発行)
今月の主題 大腸のいわゆる結節集簇様病変
27巻3号(1992年3月発行)
今月の主題 腸型Behçet病・simple ulcerの経過
27巻2号(1992年2月発行)
今月の主題 食道表在癌の深達度を読む
27巻1号(1992年1月発行)
今月の主題 胃癌の自然史を追う―経過追跡症例から
26巻12号(1991年12月発行)
今月の主題 集検発見胃癌の特徴
26巻11号(1991年11月発行)
今月の主題 膠原病と腸病変
26巻10号(1991年10月発行)
今月の主題 胃癌の組織型分類とその臨床的意義
26巻9号(1991年9月発行)
今月の主題 Ⅲ型早期胃癌の診断に迫る―潰瘍の良・悪性の鑑別
26巻8号(1991年8月発行)
今月の主題 大腸sm癌の治療
26巻7号(1991年7月発行)
今月の主題 大腸sm癌の診断
26巻6号(1991年6月発行)
今月の主題 Crohn病の長期経過
26巻5号(1991年5月発行)
今月の主題 潰瘍性大腸炎の長期経過
26巻4号(1991年4月発行)
今月の主題 早期胃癌の内視鏡的切除(2)―内視鏡的根治切除の評価
26巻3号(1991年3月発行)
今月の主題 早期胃癌の内視鏡的切除(1)―根治を目的として
26巻2号(1991年2月発行)
今月の主題 食道“dysplasia”の存在を問う
26巻1号(1991年1月発行)
今月の主題 早期胃癌―診断の基本と方法
25巻12号(1990年12月発行)
今月の主題 早期胃癌類似進行癌の診断
25巻11号(1990年11月発行)
今月の主題 直腸のいわゆる粘膜脱症候群
25巻10号(1990年10月発行)
今月の主題 中垂腫瘤
25巻9号(1990年9月発行)
今月の主題 早期食道癌を問う
25巻8号(1990年8月発行)
今月の主題 臨床経過からみた胃生検の問題点
25巻7号(1990年7月発行)
今月の主題 小さな表面型(Ⅱ型)大腸上皮性腫瘍
25巻6号(1990年6月発行)
今月の主題 炎症性腸疾患の鑑別診断(2)―大腸病変を中心に
25巻5号(1990年5月発行)
今月の主題 炎症性腸疾患の鑑別診断(1)―小腸・回盲部病変を中心に
25巻4号(1990年4月発行)
今月の主題 Barrett食道
25巻3号(1990年3月発行)
今月の主題 胃癌の切除範囲をどう決めるのか
25巻2号(1990年2月発行)
今月の主題 膵囊胞性疾患―動態診断の基礎と臨床
25巻1号(1990年1月発行)
今月の主題 上部消化管X線検査の現状の反省と将来―検査モデルを求めて
24巻12号(1989年12月発行)
今月の主題 小さな未分化型胃癌―分化型と比較して
24巻11号(1989年11月発行)
今月の主題 いわゆる“十二指腸炎”の諸問題
24巻10号(1989年10月発行)
今月の主題 分類困難な腸の炎症性疾患
24巻9号(1989年9月発行)
今月の主題 胃粘膜下腫瘍の診断―現況と進歩
24巻8号(1989年8月発行)
今月の主題 腸のカルチノイド
24巻7号(1989年7月発行)
今月の主題 胆道疾患の非手術的治療の進歩
24巻6号(1989年6月発行)
今月の主題 急性胃粘膜病変(AGML)
24巻5号(1989年5月発行)
今月の主題 腸管の悪性リンパ腫(2)
24巻4号(1989年4月発行)
今月の主題 胃・十二指腸出血の非手術的治療
24巻3号(1989年3月発行)
今月の主題 大腸腺腫と癌(2)
24巻2号(1989年2月発行)
今月の主題 大腸腺腫と癌(1)
24巻1号(1989年1月発行)
今月の主題 噴門部陥凹型早期胃癌の診断
23巻12号(1988年12月発行)
今月の主題 腸管の悪性リンパ腫(1)
23巻11号(1988年11月発行)
今月の主題 食道癌の発育進展―逆追跡症例を中心に
23巻10号(1988年10月発行)
今月の主題 十二指腸乳頭部癌
23巻9号(1988年9月発行)
今月の主題 大腸内視鏡検査法―手技を中心として
23巻8号(1988年8月発行)
今月の主題 小さな膵癌―小病変の鑑別診断をめぐって
23巻7号(1988年7月発行)
今月の主題 微小胃癌診断―10年の進歩
23巻6号(1988年6月発行)
今月の主題 びまん浸潤型大腸癌と転移性大腸癌
23巻5号(1988年5月発行)
今月の主題 胃・十二指腸潰瘍と超音波内視鏡
23巻4号(1988年4月発行)
今月の主題 内視鏡的胃粘膜切除の臨床―ジャンボ・バイオプシーをめぐって
23巻3号(1988年3月発行)
今月の主題 消化管形態診断の将来はどうあるべきか
23巻2号(1988年2月発行)
今月の主題 消化管のアミロイドーシス(2)
23巻1号(1988年1月発行)
今月の主題 X線・内視鏡所見と切除標本・病理所見との対比(胃)
22巻12号(1987年12月発行)
今月の主題 早期食道癌の問題点
22巻11号(1987年11月発行)
今月の主題 消化管のアミロイドーシス(1)
22巻10号(1987年10月発行)
今月の主題 胃のDieulafoy潰瘍
22巻9号(1987年9月発行)
今月の主題 胃底腺領域の癌―Ⅱcを中心として
22巻8号(1987年8月発行)
今月の主題 陥凹型早期大腸癌
22巻7号(1987年7月発行)
今月の主題 腸結核と癌
22巻6号(1987年6月発行)
今月の主題 胃の腺腫とは―現状と問題点
22巻5号(1987年5月発行)
今月の主題 胆囊癌の診断―発育進展を中心に
22巻4号(1987年4月発行)
今月の主題 小さな大腸癌―早期診断のために
22巻3号(1987年3月発行)
今月の主題 直腸・肛門部病変の新しい診かた
22巻2号(1987年2月発行)
今月の主題 陥凹型早期胃癌の深達度診断
22巻1号(1987年1月発行)
今月の主題 電子スコープの現況
21巻12号(1986年12月発行)
今月の主題 大腸のvillous tumor
21巻11号(1986年11月発行)
今月の主題 消化性潰瘍のトピックス(2)―胃粘膜防御機構を中心に
21巻10号(1986年10月発行)
受容体拮抗薬のもたらした諸問題
21巻9号(1986年9月発行)
今月の主題 潰瘍性大腸炎と大腸癌
21巻8号(1986年8月発行)
今月の主題 胃癌肉眼分類の問題点―進行癌を中心として
21巻7号(1986年7月発行)
今月の主題 膵の囊胞性疾患―その診断の進歩
21巻6号(1986年6月発行)
今月の主題 大腸生検の問題点―炎症性疾患の経過を中心に
21巻5号(1986年5月発行)
今月の主題 早期胆嚢癌―その診断の進歩
21巻4号(1986年4月発行)
今月の主題 Ⅱb型早期胃癌の診断
21巻3号(1986年3月発行)
今月の主題 大腸早期癌診断におけるX線と内視鏡との比較
21巻2号(1986年2月発行)
今月の主題 消化管の“比較診断学”を求めて(2)
21巻1号(1986年1月発行)
今月の主題 消化管の“比較診断学”を求めて(1)
20巻12号(1985年12月発行)
今月の主題 食道癌の早期診断
20巻11号(1985年11月発行)
今月の主題 内視鏡的乳頭括約筋切開術の長期成績
20巻10号(1985年10月発行)
今月の主題 大腸ポリペクトミー後の経過
20巻9号(1985年9月発行)
今月の主題 胃癌診断におけるルーチン検査の確かさ―部位別・大きさ別の検討
20巻8号(1985年8月発行)
今月の主題 大腸癌の発育・進展
20巻7号(1985年7月発行)
今月の主題 小腸診断学の進歩―実際から最先端まで
20巻6号(1985年6月発行)
今月の主題 慢性胃炎をどう考えるか
20巻5号(1985年5月発行)
今月の主題 食道静脈瘤の硬化療法
20巻4号(1985年4月発行)
今月の主題 膵・胆道の形成異常
20巻3号(1985年3月発行)
今月の主題 大腸診断学の歩みと展望
20巻2号(1985年2月発行)
今月の主題 胃診断学20年の歩みと展望―良性疾患を中心として
20巻1号(1985年1月発行)
今月の主題 胃診断学20年の歩みと展望―早期胃癌を中心として
19巻12号(1984年12月発行)
今月の主題 消化管癌の診断におけるUS・CTの役割
19巻11号(1984年11月発行)
今月の主題 膵癌の治療成績
19巻10号(1984年10月発行)
今月の主題 胃生検の問題点
19巻9号(1984年9月発行)
今月の主題 胃潰瘍の治癒判定
19巻8号(1984年8月発行)
今月の主題 胃癌の内視鏡的治療
19巻7号(1984年7月発行)
今月の主題 早期胃癌の再発死亡例をめぐって
19巻6号(1984年6月発行)
今月の主題 大腸腺腫症の経過と予後
19巻5号(1984年5月発行)
受容体拮抗薬の位置づけ
19巻4号(1984年4月発行)
今月の主題 肝内結石症―最近の知見をめぐって
19巻3号(1984年3月発行)
今月の主題 Crohn病の経過
19巻2号(1984年2月発行)
今月の主題 Panendoscopyの評価(2)
19巻1号(1984年1月発行)
今月の主題 Panendoscopyの評価(1)
18巻12号(1983年12月発行)
今月の主題 Crohn病の診断
18巻11号(1983年11月発行)
今月の主題 逆流性食道炎
18巻10号(1983年10月発行)
今月の主題 胆囊病変をめぐる最近の知見
18巻9号(1983年9月発行)
今月の主題 早期胃癌診断の問題点(2)―診断の現状
18巻8号(1983年8月発行)
今月の主題 大腸sm癌
18巻7号(1983年7月発行)
今月の主題 潰瘍性大腸炎―治療と経過を中心に
18巻6号(1983年6月発行)
今月の主題 早期胃癌診断の問題点(1)―良性病変と鑑別困難な早期癌
18巻5号(1983年5月発行)
今月の主題 消化管の悪性病変と皮膚病変
18巻4号(1983年4月発行)
今月の主題 急性腸炎(2)―主として感染性腸炎
18巻3号(1983年3月発行)
今月の主題 症例・研究特集
18巻2号(1983年2月発行)
今月の主題 急性腸炎(1)―主として抗生物質起因性大腸炎
18巻1号(1983年1月発行)
今月の主題 臨床の場における上部消化管スクリーニング法―X線と内視鏡
17巻12号(1982年12月発行)
今月の主題 残胃の癌
17巻11号(1982年11月発行)
今月の主題 ERCP―10年を経て―(2)技術の進歩と展開
17巻10号(1982年10月発行)
今月の主題 ERCP―10年を経て―(1)診断能と限界―特に総合画像診断における位置づけ
17巻9号(1982年9月発行)
今月の主題 症例・研究特集
17巻8号(1982年8月発行)
今月の主題 小腸X線検査法の進歩
17巻7号(1982年7月発行)
今月の主題 胃・十二指腸潰瘍の病態生理
17巻6号(1982年6月発行)
今月の主題 胆道系疾患の臨床(3)―早期胆道癌の診断を目指して
17巻5号(1982年5月発行)
今月の主題 sm胃癌の問題点(3)―臨床と病理
17巻4号(1982年4月発行)
今月の主題 胃の隆起性病変(polypoid lesion)―その形態と経過
17巻3号(1982年3月発行)
今月の主題 症例・研究特集
17巻2号(1982年2月発行)
今月の主題 sm胃癌の問題点(2)―陥凹型症例
17巻1号(1982年1月発行)
今月の主題 sm胃癌の問題点(1)―隆起型症例
16巻12号(1981年12月発行)
今月の主題 胃のⅡb病変
16巻11号(1981年11月発行)
今月の主題 胆道系疾患の臨床(2)―胆管異常を中心として
16巻10号(1981年10月発行)
今月の主題 小腸腫瘍(2)
16巻9号(1981年9月発行)
今月の主題 小腸腫瘍(1)
16巻8号(1981年8月発行)
今月の主題 症例・研究特集
16巻7号(1981年7月発行)
今月の主題 実験胃癌とヒト胃癌
16巻6号(1981年6月発行)
今月の主題 胆道系疾患の臨床(1)―総胆管結石症を中心として
16巻5号(1981年5月発行)
今月の主題 胃リンパ腫(4)―治療と経過
16巻4号(1981年4月発行)
今月の主題 胃リンパ腫(3)―鑑別
16巻3号(1981年3月発行)
今月の主題 虚血性腸炎の臨床と病理
16巻2号(1981年2月発行)
今月の主題 胃リンパ腫(2)―良性リンパ腫
16巻1号(1981年1月発行)
今月の主題 早期胃癌は変貌したか
15巻12号(1980年12月発行)
今月の主題 逆追跡された胃のlinitis plastica―早期発見のために(2)
15巻11号(1980年11月発行)
今月の主題 逆追跡された胃のlinitis plastica―早期発見のために(1)
15巻10号(1980年10月発行)
今月の主題 症例・研究特集
15巻9号(1980年9月発行)
今月の主題 胃リンパ腫(1)―悪性リンパ腫
15巻8号(1980年8月発行)
今月の主題 大腸憩室
15巻7号(1980年7月発行)
今月の主題 消化管出血と非手術的止血
15巻6号(1980年6月発行)
今月の主題 小膵癌診断への挑戦
15巻5号(1980年5月発行)
今月の主題 胃のGiant Rugae
15巻4号(1980年4月発行)
今月の主題 大腸の早期癌―胃早期癌と比較して
15巻3号(1980年3月発行)
今月の主題 症例特集
15巻2号(1980年2月発行)
今月の主題 腺境界と胃病変
15巻1号(1980年1月発行)
今月の主題 胃病変の時代的変貌
14巻12号(1979年12月発行)
今月の主題 胃癌の化学療法
14巻11号(1979年11月発行)
今月の主題 急性胃病変と慢性胃潰瘍の関連をめぐって
14巻10号(1979年10月発行)
今月の主題 消化管の健診を考える
14巻9号(1979年9月発行)
今月の主題 症例・研究特集
14巻8号(1979年8月発行)
今月の主題 微小胃癌
14巻7号(1979年7月発行)
今月の主題 回盲弁近傍潰瘍(2)―Intestinal Behcetを中心に
14巻6号(1979年6月発行)
今月の主題 回盲弁近傍潰瘍(1)―いわゆる“Simple Ulcer”を中心に
14巻5号(1979年5月発行)
今月の主題 消化管と血管病変
14巻4号(1979年4月発行)
今月の主題 症例・研究特集
14巻3号(1979年3月発行)
今月の主題 X線と内視鏡との協力
14巻2号(1979年2月発行)
今月の主題 早期胃癌診断の反省(2)
14巻1号(1979年1月発行)
今月の主題 早期胃癌診断の反省(1)
13巻12号(1978年12月発行)
今月の主題 クローン病(3)―疑診例を中心に
13巻11号(1978年11月発行)
今月の主題 食道・胃 境界領域癌の問題点
13巻10号(1978年10月発行)
今月の主題 胃・十二指腸 併存潰瘍
13巻9号(1978年9月発行)
今月の主題 腸結核(3)―疑診例を中心に
13巻8号(1978年8月発行)
今月の主題 症例・研究特集
13巻7号(1978年7月発行)
今月の主題 慢性膵炎
13巻6号(1978年6月発行)
今月の主題 胃・十二指腸潰瘍の治療の検討
13巻5号(1978年5月発行)
今月の主題 消化管粘膜拡大観察と病態生理
13巻4号(1978年4月発行)
今月の主題 クローン病(2)
13巻3号(1978年3月発行)
今月の主題 クローン病(1)
13巻2号(1978年2月発行)
今月の主題 急性胃潰瘍とその周辺
13巻1号(1978年1月発行)
今月の主題 胃癌の発育経過
12巻12号(1977年12月発行)
今月の主題 腸結核(2)―大腸を主として
12巻11号(1977年11月発行)
今月の主題 腸結核(1)―小腸を主として
12巻10号(1977年10月発行)
今月の主題 症例・研究特集
12巻9号(1977年9月発行)
今月の主題 胃癌の浸潤範囲・深達度の判定(2)
12巻8号(1977年8月発行)
今月の主題 胃癌の浸潤範囲・深達度の判定(1)
12巻7号(1977年7月発行)
今月の主題 残胃病変
12巻6号(1977年6月発行)
今月の主題 胆道癌の診断と治療
12巻5号(1977年5月発行)
今月の主題 高齢者の胃病変の特徴
12巻4号(1977年4月発行)
今月の主題 症例・研究特集
12巻3号(1977年3月発行)
今月の主題 直腸肛門部病変
12巻2号(1977年2月発行)
今月の主題 S状結腸癌
12巻1号(1977年1月発行)
今月の主題 胃癌―5年以後の再発
11巻12号(1976年12月発行)
今月の主題 放射線診断の最近の進歩
11巻11号(1976年11月発行)
今月の主題 Endoscopic Surgery
11巻10号(1976年10月発行)
今月の主題 胃スキルスの病理
11巻9号(1976年9月発行)
今月の主題 症例・研究特集
11巻8号(1976年8月発行)
今月の主題 潰瘍性大腸炎―最近の趨勢
11巻7号(1976年7月発行)
今月の主題 pm胃癌
11巻6号(1976年6月発行)
今月の主題 食道・噴門境界部の病変
11巻5号(1976年5月発行)
今月の主題 胃潰瘍癌の考え方
11巻4号(1976年4月発行)
今月の主題 研究・症例特集
11巻3号(1976年3月発行)
今月の主題 早期食道癌
11巻2号(1976年2月発行)
今月の主題 小腸疾患の現況
11巻1号(1976年1月発行)
今月の主題 早期胃癌肉眼分類の再検討
10巻12号(1975年12月発行)
今月の主題 全身性疾患と消化管
10巻11号(1975年11月発行)
今月の主題 胃の良・悪性境界領域病変
10巻10号(1975年10月発行)
今月の主題 症例・研究特集
10巻9号(1975年9月発行)
今月の主題 消化管疾患の新しい診断法
10巻8号(1975年8月発行)
今月の主題 クローン病とその周辺
10巻7号(1975年7月発行)
今月の主題 消化管の非上皮性腫瘍
10巻6号(1975年6月発行)
今月の主題 消化管憩室
10巻5号(1975年5月発行)
今月の主題 消化管カルチノイド
10巻4号(1975年4月発行)
今月の主題 症例・研究特集
10巻3号(1975年3月発行)
今月の主題 胃ポリープの癌化をめぐって
10巻2号(1975年2月発行)
今月の主題 胃粘膜―(2)潰瘍,ポリープの背景として
10巻1号(1975年1月発行)
今月の主題 胃粘膜―(1)早期胃癌の背景として
9巻12号(1974年12月発行)
今月の主題 膵疾患の展望(2)―膵炎を中心に
9巻11号(1974年11月発行)
今月の主題 膵疾患の展望(1)―膵炎を中心に
9巻10号(1974年10月発行)
今月の主題 症例・研究特集
9巻9号(1974年9月発行)
今月の主題 消化管の特殊なポリポージス
9巻8号(1974年8月発行)
今月の主題 胃潰瘍の最近の問題点
9巻7号(1974年7月発行)
今月の主題 盲腸・上行結腸の診断
9巻6号(1974年6月発行)
今月の主題 胃を除く上腹部腫瘤の診断
9巻5号(1974年5月発行)
今月の主題 症例・研究特集
9巻4号(1974年4月発行)
今月の主題 意外な進展を示す胃癌
9巻3号(1974年3月発行)
今月の主題 内視鏡的ポリペクトミー
9巻2号(1974年2月発行)
今月の主題 食道・腸の生検
9巻1号(1974年1月発行)
今月の主題 胃の生検
8巻12号(1973年12月発行)
今月の主題 十二指腸疾患の最新の診断
8巻11号(1973年11月発行)
今月の主題 症例・研究特集
8巻10号(1973年10月発行)
今月の主題 表層拡大型胃癌
8巻9号(1973年9月発行)
今月の主題 胃潰瘍の良・悪性の鑑別診断
8巻8号(1973年8月発行)
今月の主題 早期胃癌と線状潰瘍の合併
8巻7号(1973年7月発行)
今月の主題 消化管出血の緊急診断
8巻6号(1973年6月発行)
今月の主題 大腸疾患 最新の話題
8巻5号(1973年5月発行)
今月の主題 胃癌の経過
8巻4号(1973年4月発行)
今月の主題 症例・研究特集
8巻3号(1973年3月発行)
今月の主題 内視鏡的膵・胆管造影
8巻2号(1973年2月発行)
今月の主題 消化管の悪性リンパ腫
8巻1号(1973年1月発行)
今月の主題 急性胃病変の臨床
7巻12号(1972年12月発行)
今月の主題 腸の潰瘍性病変
7巻11号(1972年11月発行)
今月の主題 十二指腸乳頭部病変
7巻10号(1972年10月発行)
今月の主題 食道炎と食道静脈瘤
7巻9号(1972年9月発行)
今月の主題 胃集検で発見された胃潰瘍
7巻8号(1972年8月発行)
今月の主題 症例・研究特集
7巻7号(1972年7月発行)
今月の主題 若年者の消化管癌
7巻6号(1972年6月発行)
今月の主題 胃癌浸潤程度の診断
7巻5号(1972年5月発行)
今月の主題 悪性サイクル
7巻4号(1972年4月発行)
今月の主題 早期胃癌肉眼分類起草10年
7巻3号(1972年3月発行)
今月の主題 早期胃癌臨床診断の実態(診断成績の推移と問題点)
7巻2号(1972年2月発行)
今月の主題 Ⅲ型早期胃癌
7巻1号(1972年1月発行)
今月の主題 Ⅱb型早期胃癌
6巻13号(1971年12月発行)
今月の主題 Ⅱa+Ⅱc型早期胃癌
6巻12号(1971年11月発行)
今月の主題 症例・研究特集
6巻11号(1971年10月発行)
今月の主題 胃前壁病変の診断
6巻10号(1971年9月発行)
今月の主題 便秘と下痢
6巻9号(1971年8月発行)
今月の主題 幽門部(pyloric portion)の病変
6巻8号(1971年7月発行)
今月の主題 幽門部(pyloric portion)の診断
6巻7号(1971年6月発行)
今月の主題 腸上皮化生
6巻5号(1971年5月発行)
今月の主題 症例特集号
6巻6号(1971年5月発行)
特集 胃集団検診
6巻4号(1971年4月発行)
今月の主題 消化管穿孔
6巻3号(1971年3月発行)
今月の主題 早期胃癌と紛らわしい病変
6巻2号(1971年2月発行)
今月の主題 陥凹性早期胃癌
6巻1号(1971年1月発行)
今月の主題 隆起性早期胃癌
5巻13号(1970年12月発行)
今月の主題 胃潰瘍の再発・再燃
5巻12号(1970年11月発行)
今月の主題 症例・研究 特集
5巻11号(1970年10月発行)
今月の主題 大腸の早期癌―胃を除く消化器の早期癌(2)
5巻10号(1970年9月発行)
今月の主題 胃を除く消化器の早期癌(1)
5巻9号(1970年8月発行)
今月の主題 高位の胃病変
5巻8号(1970年7月発行)
今月の主題 診断された微小胃癌
5巻7号(1970年6月発行)
特集 胃生検特集
5巻6号(1970年6月発行)
今月の主題 症例・研究 特集
5巻5号(1970年5月発行)
今月の主題 早期胃癌再発例の検討
5巻4号(1970年4月発行)
今月の主題 胆のう胆道疾患診断法の最近の進歩
5巻3号(1970年3月発行)
今月の主題 胃肉腫
5巻2号(1970年2月発行)
今月の主題 線状潰瘍
5巻1号(1970年1月発行)
今月の主題 胃癌の経過
4巻12号(1969年12月発行)
今月の主題 潰瘍性大腸炎
4巻11号(1969年11月発行)
今月の主題 十二指腸の精密診断
4巻10号(1969年10月発行)
今月の主題 早期癌とその周辺
4巻9号(1969年9月発行)
今月の主題 胃癌の5年生存率
4巻8号(1969年8月発行)
今月の主題 X線・内視鏡で良性様所見を呈した生検陽性例
4巻7号(1969年7月発行)
今月の主題 胃の変位と変形(2)
4巻6号(1969年6月発行)
今月の主題 胃の変位と変形(1)
4巻5号(1969年5月発行)
今月の主題 稀な胃病変
4巻4号(1969年4月発行)
今月の主題 小腸の検査法
4巻3号(1969年3月発行)
今月の主題 胃癌深達度の診断と経過観察
4巻2号(1969年2月発行)
今月の主題 上部消化管の出血
4巻1号(1969年1月発行)
今月の主題 大彎側の病変
3巻13号(1968年12月発行)
今月の主題 陥凹性早期胃癌の経過
3巻12号(1968年11月発行)
今月の主題 多発胃癌
3巻11号(1968年10月発行)
今月の主題 食道
3巻10号(1968年9月発行)
今月の主題 直視下診断法
3巻9号(1968年8月発行)
今月の主題 消化管の医原性疾患
3巻8号(1968年7月発行)
今月の主題 進行癌の問題点
3巻7号(1968年6月発行)
今月の主題 胃癌の発生
3巻6号(1968年6月発行)
今月の主題 前癌病変としての胃潰瘍とポリープの意義
3巻5号(1968年5月発行)
今月の主題 胃の巨大皺襞
3巻4号(1968年4月発行)
今月の主題 胃の食物輸送機能
3巻3号(1968年3月発行)
今月の主題 大腸・直腸
3巻2号(1968年2月発行)
今月の主題 胃集団検診と早期胃癌
3巻1号(1968年1月発行)
今月の主題 早期胃癌研究の焦点
2巻12号(1967年12月発行)
今月の主題 小腸
2巻11号(1967年11月発行)
今月の主題 慢性胃炎2
2巻10号(1967年10月発行)
今月の主題 慢性胃炎1
2巻9号(1967年9月発行)
今月の主題 胃の多発性潰瘍
2巻8号(1967年8月発行)
今月の主題 難治性胃潰瘍
2巻7号(1967年7月発行)
今月の主題 胃切除後の問題
2巻6号(1967年6月発行)
今月の主題 胃のびらん
2巻5号(1967年5月発行)
今月の主題 早期胃癌の鑑別診断
2巻4号(1967年4月発行)
今月の主題 胃微細病変の診断
2巻3号(1967年3月発行)
今月の主題 胃液分泌の基礎と臨床
2巻2号(1967年2月発行)
今月の主題 十二指腸潰瘍〔2〕
2巻1号(1967年1月発行)
今月の主題 十二指腸潰瘍〔1〕