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特集 図説 胃と腸用語集2012 画像所見〔食道〕
食道狭窄(esophageal stenosis)
著者: 高木靖寛1
所属機関: 1福岡大学筑紫病院消化器内科
ページ範囲:P.671 - P.671
文献購入ページに移動 食道狭窄の原因には,先天性奇形のほかに器質的な悪性疾患によるものと良性疾患によるものがある.頻度の高いものは,癌をはじめとする悪性腫瘍によるもので,造影検査では全周もしくは一部が境界明瞭な狭窄で,不整な潰瘍や狭窄部の辺縁不整を認める.狭窄の両端には周堤を伴うこともあり,潰瘍限局型(2型)や潰瘍浸潤型(3型)の進行癌の所見である(Fig. 1).良性疾患に伴う狭窄の多くは,造影検査で狭窄中心へ緩やかに移行する境界不明瞭な先細り様変化で,滑らかな粘膜面を呈し,辺縁の不整に乏しい.逆流性食道炎に伴うものでは,肛側に裂孔ヘルニアを伴い,狭窄部にはまれに瘢痕による小囊形成がみられる.Barrett食道では中・下部食道に狭窄を形成し,肛側には裂孔ヘルニアとともに特徴的とされる溝状,地割れ状の軽微な陰影斑(reticular pattern)が認められる1).まれに高位狭窄もみられる.非対称性に偏位した狭窄では悪性腫瘍の存在に注意を要する.そのほか,酸やアルカリなどの腐食性化学物質の嚥下による腐食性食道炎では高率に狭窄形成がみられ,重度のカンジダ食道炎などの感染症(Fig. 2),放射線治療後の晩期障害,長期の胃管挿入,まれなものでは食道粘膜剝離,皮膚疾患の水疱性食道病変(pemphigus,pemphigoid)などの報告がある2).幅の狭い輪状の狭窄には食道webとSchatzki輪がある.前者は上部~下部食道の扁平上皮領域にみられる膜様狭窄3)で,後者はヘルニアを伴う下部食道の扁平上皮と円柱上皮の接合部に認められ,ほぼ対称的な切れ込み状の狭小化を呈する(Fig. 3)4)
参考文献
1)Levine MS, Rubesin SE, Laufer I(eds). Double Contrast Gastrointestinal Radiology, 3rd ed. W.B. Saunders, Philadelphia, pp 90-125, 2000
2)Inal M, Soyupak S, Akgül E, et al. Fluoroscopically guided endoluminal balloon dilatation of esophageal stricture due to epidermolysis bullosa dystrophica. Dysphagia 17 : 242-245, 2002
3)吉田操.食道web.八尾恒良(監),牛尾恭輔,池田靖洋,下田忠和,他(編).胃と腸用語辞典.医学書院,p180,2002
4)細井董三.Schatzki(シャツキー)輪.八尾恒良(監),牛尾恭輔,池田靖洋,下田忠和,他(編).胃と腸用語辞典.医学書院,p68,2002
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