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文献詳細

雑誌文献

胃と腸47巻5号

2012年05月発行

文献概要

特集 図説 胃と腸用語集2012 画像所見〔腸〕

non-lifting sign

著者: 田中信治1

所属機関: 1広島大学内視鏡診療科

ページ範囲:P.707 - P.707

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 non-lifting signとは,Unoら1)によって提唱された用語であり,大腸腫瘍の粘膜下層に生理食塩水を局注しても病変周囲の粘膜は膨隆するにもかかわらず,病変自体は沈んだような状態を呈し挙上しないことを示すものである.その主たる原因は癌浸潤に伴う間質反応や病変直下の粘膜下層の線維化である.non-lifting sign陽性の病変は,内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection;EMR)が不能であることを意味しており,特に浸潤癌の場合は癌深部断端陽性となり確実に不完全摘除となり癌の壁内遺残を起こすため,EMRは禁忌である.

 大腸の粘膜は薄く,その厚さは約500μm程度であり,大腸腫瘍,特に表面型腫瘍をしっかりと鉗子生検すると粘膜筋板が破壊され粘膜下層にnon-lifting sign陽性の原因となる線維化が生じる(Fig. 1).したがって,拡大観察によるpit pattern診断や画像強調観察(narrow band imaging;NBI/flexible spectral-imaging color enhancement;FICE)などでoptical biopsyを行い,完全摘除生検としての内視鏡治療の適応があるかどうかを判定することが推奨されている.なぜならば,不用意な鉗子生検のために,EMRで瞬時に摘除できる病変に対して,近年普及してきた内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)を導入しなくてはならなくなるからである.生検がどうしても必要な場合は,粘膜下層に影響が及ばないような工夫が必要であろう.

参考文献

1)Uno Y, Munakata A. The non-lifting sign of invasive colon cancer. Gastrointest Endosc 40 : 485-489, 1994

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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