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文献詳細

雑誌文献

胃と腸47巻5号

2012年05月発行

文献概要

特集 図説 胃と腸用語集2012 疾患〔咽頭・食道〕

腐食性食道炎(corrosive esophagitis)

著者: 島田英雄1 幕内博康2

所属機関: 1東海大学医学部付属大磯病院外科 2東海大学医学部外科

ページ範囲:P.737 - P.737

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 腐食性食道炎は,酸やアルカリ農薬,重金属,などの組織傷害性の強い薬剤の飲用により発生する食道炎である.小児例での洗剤の誤飲や成人例では自殺目的の飲用が大半を占める.酸はトイレ用洗剤などに含まれる塩酸,硫酸などである.アルカリは漂白剤や配水管洗浄剤などに含まれる水酸化ナトリウム(苛性ソーダ),次亜塩素酸ナトリウムなどである.誤飲・飲用に当たっては,これら腐食性物質による粘膜,組織傷害のため強い疼痛を生じ,多量飲用には至らない.しかし,少量の飲用でも重篤な組織傷害を来す.

 一般に酸性物質では,組織表面に凝固壊死が起きるため深部組織への浸透が少ない.一方,アルカリ物質では強い,吸湿性,鹸化作用のため組織作用が強く傷害が深部にまで及ぶとされている1).その病態は,薬剤の飲用により接触する広範囲な領域の粘膜傷害となり,口腔から咽頭喉頭,食道,胃に及び,多発かつ連続性の粘膜傷害を特徴とする.傷害の好発領域に関して,酸では中部,食道から下部食道,特に食道胃接合部の傷害が強いとされる(Fig. 1).アルカリでは口腔内,上部食道に傷害が目立ち,胃は比較的軽微とされる(Fig. 2).腐食性物質の飲用が疑われれば,X線検査,CT検査で食道穿孔の有無などを評価する.全身状態が安定していれば,内視鏡検査は可及的に早期に行い,粘膜傷害の領域と程度を把握しておくことは,その後の治療方針の決定に必要である.

参考文献

1)香川隆男,末岡伸夫,山門進,他.腐食性薬物による上部消化管病変の臨床的および基礎的検討.Prog Dig Endosc 28 : 97-101, 1986
2)Rosenow BC, Bernatz PE. Chemical Burns of the Esophagus. The Esophagus. Lea and Febiger, Philadelphia, p 141, 1974
3)星田徹,宮田剛,宮崎修吉,他.腐食性食道炎.日臨別冊消化管症候群(上): 117-180, 2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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