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文献詳細

雑誌文献

胃と腸47巻5号

2012年05月発行

文献概要

特集 図説 胃と腸用語集2012 疾患〔胃〕

HIV関連性胃病変(HIV-associated gastric lesions)

著者: 藤原崇1 門馬久美子2

所属機関: 1がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科 2がん・感染症センター都立駒込病院内視鏡科

ページ範囲:P.752 - P.752

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 HIV(human immunodeficiency virus)感染者の消化管病変として問題となるのは,感染症と腫瘍性病変である.HIV関連性胃病変のうち,感染症としてはサイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)感染症が,腫瘍性病変としては悪性リンパ腫およびKaposi肉腫がCD4値の低下とともに発症する可能性が高くなる.ただし,HIV感染者におけるCMV感染症の消化管病変は,食道および大腸での発症頻度が高く,胃のみに粗大病変を形成することは少ない.また,HIV関連悪性リンパ腫は,DLBCL(diffuse large B-cell lymphoma),Burkitt's lymphomaの頻度が高い1)とされるが,その形態は,非HIV感染者の悪性リンパと比べ,差異はない.

 Kaposi肉腫は,1872年にハンガリーの皮膚科医Motitz Kaposiによって最初に報告された,HHV-8(human herpesvirus-8)の感染によって生じる非上皮性悪性腫瘍である.HIV感染者における悪性腫瘍で最も多く,CD4値の低下とともに好発するが,CD4値が500cell/μlと比較的高値から発症することもある.Kaposi肉腫の発症は,HHV-8の生体内でのリザーバーであるB細胞から血管内皮細胞への感染によるとされており,発生部位としては皮膚が最も多いが,全消化管,肺,リンパ節などにも生じる.消化管Kaposi肉腫は無症状のことが多いが,時に消化管出血や狭窄の原因となる.

参考文献

1)味澤篤,永井宏和,小田原隆,他.エイズ関連非ホジキンリンパ腫(ARNHL)治療の手引き.日エイズ会誌 11 : 108-123, 2009
2)藤原崇,門馬久美子,藤原純子,他.HIV感染症患者の上部消化管病変.胃と腸 46 : 240-253, 2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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