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特集 図説 胃と腸用語集2012 疾患〔胃〕
急性胃粘膜病変(acute gastric mucosal lesion;AGML)
著者: 佐藤公1
所属機関: 1山梨大学第一内科
ページ範囲:P.753 - P.753
文献購入ページに移動 急性胃粘膜病変(acute gastric mucosal lesion ;AGML)という概念を初めて提唱したのはKatzら1)であり,1965年にacute erosive gastritis,acute gastric ulcer,hemorrhagic gastritisの3つの病態に分類し報告した.日本においては,1973年に川井ら2)が“急性に発症し,内視鏡あるいはX線で所見がみられる”病態の包括的な概念,すなわち一種の症候群として急性胃病変(acute gastric lesion,AGL)を提唱した.しばらくはこの両者が使われ,また,いずれの用語を用いるかの議論がなされた時代もあったが,“急性胃粘膜病変”という用語が,病変の存在する深さを表すものではなく“粘膜面に存在する病変”という意味で用いられる場合には,両者に違いはないことを川井らのグループも指摘している.並木ら3)は,急性胃粘膜病変の診断基準を“突発する上腹部痛,吐き気,嘔吐,時に吐血・下血の症状を伴って発症し,この際早期に内視鏡で観察すると,多くの場合,胃粘膜面に急性の異常所見,すなわち明らかな炎症性変化,出血,潰瘍性変化(びらん,潰瘍)が観察されるもの”と定義している.
これらの疾患概念が生まれた時代背景には,診断技術の目覚ましい進歩があったことが挙げられる.急性期に積極的に緊急内視鏡検査が行われるようになり,様々な内視鏡所見が確認されるようになった.得られた所見を病因論的にではなく,症候論的,あるいは治療論的立場からまとめられた臨床的概念といえる.
これらの疾患概念が生まれた時代背景には,診断技術の目覚ましい進歩があったことが挙げられる.急性期に積極的に緊急内視鏡検査が行われるようになり,様々な内視鏡所見が確認されるようになった.得られた所見を病因論的にではなく,症候論的,あるいは治療論的立場からまとめられた臨床的概念といえる.
参考文献
1)Katz D, Siegel H. Erosive gastritis and acute gastrointestinal mucosal lesion. GB Glass(ed). Progress in Gastroenterology, Grune & Satton, New York, p 67, 1968
2)川井啓市,赤坂裕三,木本邦彦,他.急性胃病変の臨床─胃出血の面から.胃と腸 8 : 17,1973
3)並木正義(編).第2回大雪シンポジウムAGMLに関する研究─その歩みと最近の話題.急性胃粘膜病変─その基礎と臨床の最新情報─,医学図書出版,pp 1-8,1994
4)佐藤公,藤野雅之,飯田竜一.内視鏡後急性胃病変はHelicobacter pyloriの初感染か.ENDOSC FORUM digest dis 9 : 7-11, 1993
5)Sugiyama T, Naka H, Yabana T, et al. Is Helicobacter pylori infection responsible for postendoscopic acute gastric mucosal lesion ? Eur J Gastroenterol & Hepatol 4(Suppl 1): S93-96, 1992
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