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文献詳細

雑誌文献

胃と腸47巻5号

2012年05月発行

文献概要

特集 図説 胃と腸用語集2012 疾患〔腸〕

腸管MALTリンパ腫,DLBCL(mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma of intestine, diffuse large B-cell lymphoma)

著者: 二村聡1

所属機関: 1福岡大学医学部病理学

ページ範囲:P.770 - P.770

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 腸管に発生する粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue;MALT)リンパ腫とびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma;DLBCL)は,いずれも成熟B細胞性腫瘍に属し,世界保健機関(WHO)分類,第4版1)では以下のごとく定義されている.すなわち,MALTリンパ腫は形態的に多彩なB細胞(胚中心細胞類似細胞,単球様B細胞および少数の芽球様大型細胞)が,主に濾胞辺縁帯(marginal zone)から濾胞間領域にかけて増殖する腫瘍である(Fig. 1).他方,DLBCLは正常の組織球の核と同じか,それ以上の大きさの核,あるいは小型リンパ球の2倍以上の大きさの核を有する大型B細胞のびまん性増殖から成る腫瘍である(Fig. 2).なお,いずれの病型も現時点では特異的な免疫組織化学的マーカーは存在しない.

 DLBCLは前述の細胞形態のほか,臨床像や細胞増殖能(Ki-67標識率)を勘案すれば比較的容易に診断される.他方,MALTリンパ腫の病理診断は容易でない.なぜなら,濾胞辺縁帯から濾胞間領域が拡大するリンパ増殖性病変はすべてMALTリンパ腫の鑑別対象となり,しかも反応性増殖巣と腫瘍性増殖巣の境界の見極めは極めて難しいからである2).反応性リンパ増殖性病変とMALTリンパ腫の鑑別に有用な免疫組織化学的マーカーは存在しないため,診断確定に至らないこともある.しかし,腸管MALTリンパ腫の臨床経過は緩慢であり,早急に侵襲的治療を開始する必要性は低く,実臨床ではマントル細胞リンパ腫と濾胞性リンパ腫を確実に鑑別・除外することが最優先される.また,大腸,特に直腸MALTリンパ腫に対する抗菌薬投与の有効性が証明された以上,今後は抗菌薬投与が非侵襲的な治療法として第一選択となりうると考えられる3)

参考文献

1)Swerdlow SH, Campo E, Harris NL, et al. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. 4th ed., IARC, Lyon, 2008
2)岩下明徳.大腸悪性リンパ腫の包括的理解のために.早期大腸癌 8 : 349-351, 2004
3)久部高司,菊池陽介,和田陽子,他.大腸MALTリンパ腫に対する抗生剤投与療法─自験例5例と文献報告例のまとめ.胃と腸 41 : 345-355, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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