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文献詳細

雑誌文献

胃と腸47巻5号

2012年05月発行

文献概要

特集 図説 胃と腸用語集2012 疾患〔腸〕

急性出血性直腸潰瘍(acute hemorrhagic rectal ulcer)

著者: 趙栄済1 飯沼昌二1

所属機関: 1洛和会音羽病院消化器病センター

ページ範囲:P.780 - P.780

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 急性出血性直腸潰瘍は,河野ら1)により初めて報告され,広岡ら2)によって疾患概念が提唱された.その後,症例の蓄積と検討が重ねられ,臨床的特徴は以下の内容に要約される.(1) 重篤な基礎疾患を有する高齢者に多い.(2) 発症は突然で,無痛性大量の血便あるいは肛門出血で始まる.(3) 潰瘍は歯状線に接するかその近傍あるいは下部直腸に限局し,不整形,地図状,輪状あるいは全周性の場合もあり,多発性ないし単発性で,露出血管を伴うことがある(Fig. 1).(4) 経過は,一般に良好であるが,基礎疾患の重症度に依拠する傾向がある.

 発症の原因はストレス,血流障害などが挙げられ,さらにNSAID(nonsteroidal anti-inflammatory drug)坐剤使用例やサイトメガロウイルス感染例も報告されている3).本疾患は複数の誘因で発症する症候群とする見解もみられる4)

参考文献

1)河野裕利,勝見正治,浦伸三,他.脳疾患患者にみられた急性出血性直腸潰瘍の2症例.日本大腸肛門病会誌 33 : 222-227, 1980
2)広岡大司,湯浅肇,板倉恵子,他.急性出血性直腸潰瘍─臨床像を中心に.Gastroenterol Endosc 26 : 1344-1350, 1984
3)野木真将,宮阪英,関岡敏夫,他.サイトメガロウイルス感染が証明された急性出血性直腸潰瘍の2例.日本大腸肛門病会誌 64 : 29-34, 2011
4)藤巻英二,菅原光宏,井上義博,他.急性出血性直腸潰瘍31例の検討─内視鏡所見と臨床的特徴との関連を中心に.Gastroenterol Endosc 35 : 2421-2425, 1993
5)清水誠治.急性出血性直腸潰瘍と宿便性潰瘍.日本大腸肛門病会誌 54 : 955-959, 2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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