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文献詳細

雑誌文献

胃と腸47巻9号

2012年08月発行

文献概要

今月の主題 食道癌の発育進展─初期浸潤の病態と診断 主題

食道粘膜癌の初期浸潤像の診断―通常内視鏡の立場から

著者: 有馬美和子1 有馬秀明2 山田透子1 都宮美華1 菊地功3

所属機関: 1埼玉県立がんセンター消化器内科 2有馬外科胃腸科 3埼玉県立がんセンター消化器外科

ページ範囲:P.1349 - P.1358

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要旨 食道T1a-LPM癌36病巣を対象として,初期浸潤の内視鏡像を検討した.LPM浸潤の程度を基底層周辺のわずかな浸潤(micro-invasion),LPM中層まで浸潤するもの(downward growth),LPM深部まで浸潤するもの(deep invasion)として評価した.micro-invasionは通常内視鏡ではとらえられず,拡大観察でも浸潤部を同定できないことが多かったが,35%の病変で500μm以下のAVA(AVA-small)の集簇が観察された.downward growthは拡大観察でAVA-smallを形成する頻度が増加したが,通常観察で白色微細顆粒や褪色調肥厚として認識できたのは20%にとどまった.deep invasionは通常観察で褪色調の顆粒状隆起,肥厚面や粗糙な領域として認識できた.拡大観察ではnon-looped irregular vessels〔食道学会分類Type B2〕で構成される3mm以下のAVA(AVA-middle)やType B2血管が観察された.腫瘍塊が大きくなって浸潤が進むとType B2血管で囲まれたAVAの大きさが増すが,micro-invasionのレベルでもdroplet infiltrationを示す病変では,Type B2血管で形成される微細なAVAを形成することが明らかとなった.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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