icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸48巻10号

2013年09月発行

文献概要

今月の主題 小腸の悪性腫瘍 主題

消化管内分泌細胞腫瘍(カルチノイド腫瘍)―回腸多発性カルチノイド腫瘍2症例の病理学的検討

著者: 岩渕三哉1 多田美智子1 本間陽奈1 小菅優子1 田中雄也1 渡辺徹1

所属機関: 1新潟大学大学院保健学研究科検査技術科学分野

ページ範囲:P.1393 - P.1408

文献購入ページに移動
要旨 回腸多発性カルチノイド腫瘍2例を病理学的に検討した.〔症例1〕は20個(肉眼的カルチノイド腫瘍14個と組織学的カルチノイド腫瘍6個,最深達度SS,最大腫瘍径10.0mm),〔症例2〕は6個(肉眼的カルチノイド腫瘍5個と組織学的カルチノイド腫瘍1個,最深達度SS,最大腫瘍径18.0mm)の多発性カルチノイド腫瘍(2010年WHO分類:NET G1)であった.両例ともリンパ節に転移していた.肉眼的カルチノイド腫瘍は,粘膜下腫瘍様隆起,黄色調の腫瘍組織,頂部粘膜の黄色調微細顆粒状変化,粘膜模様の不明瞭化,びらん,潰瘍で指摘された.腫瘍胞巣は大結節状胞巣主体であった.リンパ節転移巣とその原発巣とみなされる大型(径10.0mm以上)・深達(固有筋層以深)カルチノイド腫瘍には,細胞異型の増加(核の大型化や大小不同・多形性・核密度の増加),核分裂像の出現,Ki-67指数の増加,リンパ管・静脈侵襲などの悪性度の増加を示唆する所見がみられた.腫瘍は銀親和性serotonin産生カルチノイド腫瘍であった.CDX2発現がみられたが,p53蛋白過剰発現,粘液形質マーカーはみられなかった.SSTR2A発現は〔症例1〕で陰性,〔症例2〕で陽性であった.p-mTOR発現は両例で陽性であった.本邦の論文報告の回腸多発性カルチノイド腫瘍11例を集計した.

参考文献

1)岩渕三哉,渡邊徹,渡辺英伸.消化管内分泌細胞腫瘍の病理.早期大腸癌 6 : 191-200, 2002
2)岩渕三哉,渡辺徹,坂下千明,他.消化管内分泌細胞腫瘍の概念・分類・病理診断.臨消内科 21 : 1361-1376, 2006
3)渡辺英伸.腸のカルチノイド腫瘍─診断の問題点とトピックス(日米の比較を含む).胃と腸 24 : 853-858, 1989
4)八尾恒良,八尾建史,真武弘明,他.小腸腫瘍─最近5年間(1995~1999)の本邦報告例の集計.胃と腸 36 : 871-881, 2001
5)平井郁仁,別府孝浩,松井敏幸 : 小腸腫瘍性疾患における診断の進歩─カプセル内視鏡とバルーン内視鏡による診断の現状を中心に.日消誌 110 : 1214-1224, 2013
6)宮崎竜彦,近藤万里,福井康二,他.回腸多発性カルチノイド(内分泌細胞癌)を含む三重癌の1剖検例.病理と臨 11 : 987-991, 1993
7)松崎賢司,清田昌英,石坂昌則,他.消化管カルチノイド4症例の検討─回腸多発カルチノイドの1例を中心として.道南医会誌 30 : 254-256, 1995
8)牧本伸一郎,新保雅也,仲本剛,他.腹腔内腫瘤として発見された回腸カルチノイドの1例.日消外会誌 33 : 1930-1934, 2000
9)高林直記,米山さとみ,中村光一,他.多発性回腸カルチノイド腫瘍の1例.日消外会誌 34 : 1547-1551, 2001
10)上田順彦,根塚秀昭,山本精一,他.腸間膜牽縮を伴った回腸カルチノイドの1例.日消外会誌 34 : 1765-1769, 2001
11)中村健一,金澤旭宣,尾崎信弘,他.腸間膜動脈の外膜肥厚を伴った小腸カルチノイドの1例.日消外会誌 37 : 702-705, 2004
12)北東大督,瀧順一郎,上野正義,他.回腸に多発したカルチノイドの1例.日消外会誌 38 : 102-107, 2005
13)椛島章,木下忠彦,岩下幸雄,他.多発小腸カルチノイド(12ヶ所)の1例.日臨外会誌 69 : 2297-2300, 2008
14)吉谷新一郎,黒田雅利,田中弓子,他.回腸原発カルチノイドの2例.消外 31 : 113-119, 2008
15)加納陽介,飯合恒夫,亀山仁史,他.多発小腸カルチノイドの1例.日臨外会誌 72 : 399-403, 2011
16)河内裕介,本田穣,岩永明人,他.小腸多発カルチノイドの2例.ENDOSC FORUM digest dis 27 : 152, 2011
17)Bosman FT, Carneiro F, Hruban RH, et al(eds).WHO Classification of Tumours of the Digestive System, 4th ed. IARC Press, Lyon, pp 10-417, 2010
18)岩渕三哉,渡辺英伸,野田裕,他.腸カルチノイドの病理.胃と腸 24 : 869-882, 1989
19)柴知史,森実千種,林秀幸,他 : 消化器神経内分泌腫瘍に対する全身化学療法.臨牀消化器内科 28:349-356, 2013
20)岩下明徳,原岡誠司,池田圭祐,他 : 直腸カルチノイド腫瘍の臨床病理学的検索─転移例と非転移例の比較を中心に.胃と腸 40:151-162, 2005
21)Hotta K, Shimoda T, Nakanishi Y, et al. Usefulness of Ki 67 for predicting the metastatic potential of rectal carcinoid. Pathol Int 56:591-596, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?