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文献詳細

雑誌文献

胃と腸48巻10号

2013年09月発行

文献概要

今月の主題 小腸の悪性腫瘍 主題

小腸悪性腫瘍の病理学的特徴―悪性リンパ腫

著者: 平橋美奈子1 山元英崇1 小田義直1

所属機関: 1九州大学大学院医学研究院形態機能病理学

ページ範囲:P.1417 - P.1427

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要旨 小腸悪性リンパ腫は,全消化管悪性リンパ腫のうち20~30%を占め,小腸悪性腫瘍の中では癌およびGISTと並んで頻度の高い腫瘍の1つである.今回,筆者らは小腸悪性リンパ腫の外科的切除標本43例を用いて,肉眼形態と組織型の傾向について検討した.平均年齢63.2歳で男性30例,女性13例と男性に多かった.また,回腸末端発生の10例を含む回腸発生例が36例(84%)と,空腸発生7例(16%)に比べて有意に多かった.肉眼形態は,潰瘍型が35例(81%)と最も多かった.組織型別にみると,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)が24例(56%)と最も多く,うち22例が潰瘍型であった.43例中38例(88%)が壁全層あるいは隣接する他臓器へ浸潤しており,壁構造を破壊しながら増殖するリンパ腫細胞により,潰瘍あるいは隆起を形成すると考えられた.ほとんどの組織型で粘膜深層から増殖する粘膜内のリンパ腫細胞を認め,EATLのように粘膜固有層全層に増殖浸潤し,側方にびまん性に拡がる組織型もあった.このように小腸悪性リンパ腫は,組織型あるいはその組織学的悪性度によりさまざまな肉眼形態を示すと考えられた.

参考文献

1)中村昌太郎,松本主之,八尾隆史,他.非上皮性腫瘍─悪性リンパ腫,IPSID.八尾恒良,飯田三雄(編).小腸疾患の臨床.医学書院,pp 340-351,2004
2)Swerdlow SH, Campo E, Harris NL, et al(eds). WHO Classification of Tumors of Haematopoietic and Lymphoid tissues, 4th ed. IARC Press, Lyon, 2008
3)二村聡,大島孝一.消化管悪性リンパ腫の生検病理診断─鑑別診断とその注意点を中心に.胃と腸 44 : 875-888, 2009
4)Bosman FT, Carneiro F, Hruban RH, et al(eds). WHO Classification of Tumours of the Digestive system, 4th ed. IARC Press, Lyon, 2010
5)中村昌太郎,松本主之.小腸悪性リンパ腫の診断と治療.Mod Physician 32 : 878-881, 2012
6)二村聡,岩下明徳.消化管の病理 : 下部消化管─小腸・大腸の悪性リンパ腫.病理と臨 29 : 1114-1121, 2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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