隆起型食道腫瘍の鑑別診断―X線を中心に
著者:
高木靖寛
,
小野陽一郎
,
高橋晴彦
,
石川智士
,
蒲池紫乃
,
深見理恵子
,
別府孝浩
,
長浜孝
,
久部高司
,
平井郁仁
,
松井敏幸
,
八尾建史
,
田邊寛
,
池田圭祐
,
原岡誠司
,
岩下明德
,
三上公治
,
山本聡
,
前川隆文
ページ範囲:P.279 - P.291
要旨 粘膜下腫瘍様もしくは特殊な組織型を呈する食道の表在型悪性腫瘍と良性疾患のX線所見について,提示可能な自験例の画像所見と報告例からみた特徴について概説した.悪性腫瘍:(1)典型的な組織像を呈する類基底細胞(扁平上皮)癌は,一見粘膜下腫瘍様であったが,立ち上がりは急峻で表面にゴツゴツした凹凸を伴っていた.(2)lymphoid stromaを伴う扁平上皮癌や内分泌細胞癌は,表面平滑な0-Is型であったが,表面に不整形の陥凹を伴っていた.(3)癌肉腫は,亜有茎性でポリープ状の粗大な楕円形隆起を呈した.良性腫瘍:(1)平滑筋腫は,表面陥凹を伴わない半球状の平滑な粘膜下腫瘍や大小の平滑な結節状隆起を呈したが,(2)10mm以上の顆粒細胞腫は表面に溝状,切れ込み状の陥凹を伴っていた.(3)海綿状血管腫は2コブ状で表面平滑な軟らかく丈の低い粘膜下腫瘍であった.(4)報告例も含めた膿原性肉芽腫は亜有茎性~有茎性のポリープ状隆起で棍棒状から分葉状を呈していた.(5)炎症性線維性ポリープは下部食道に発生した長い茎を有する上皮に覆われた大きなポリープであった.隆起型の食道病変はまれな疾患が多く,画像所見のみによる質的な鑑別は困難であるが,表面のわずかな凹凸や陥凹から癌の所見を見い出すことや,報告例の形態的特徴やパターンを十分記憶して念頭に置くことが,術前の質的診断の向上に寄与すると思われた.