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今月の主題 隆起型食道癌の特徴と鑑別診断 序説
表在隆起型食道癌の特徴と鑑別診断
著者: 河野辰幸1
所属機関: 1東京医科歯科大学医学部附属病院食道・胃外科
ページ範囲:P.255 - P.256
文献購入ページに移動ヨード液の撒布による色素内視鏡が積極的に行われるようになり,1980年代には食道表在癌の発見が相次ぐようになった.しかし,それまでは食道癌を表在型の状況で発見するのは非常に難しく,診断できたとしてもほとんどが小型の隆起型病巣であり,粘膜下層への浸潤を示すものであった.表在性の隆起型食道癌は0-Iおよび0-IIa型の病巣を含むが,0-IIa型には,全体として0-IIc型の範疇に含まれる陥凹内隆起成分もそのように表現される場合があるなど,必ずしも0-I型と連続的にとらえるべきではない病巣が含まれる.したがって,食道表在癌における隆起型病巣の生物学的特性を考える場合,0-I型の臨床病理学的な検討とそれに対応する臨床所見の分析からアプローチするのが適当と考えられる1).
わが国における食道癌の組織型はほとんどが扁平上皮癌であるが,表在隆起型病変にはいわゆる特殊型の含まれる割合の高いことがよく知られている.組織型の異なる腫瘍はその性格に基づきそれぞれ異なる様式で増大していくが,発育進展の過程における組織変化や不均一性の程度もそれぞれにおいて異なる.その過程が腫瘍の表面および深部形態を決定し,医療者は内視鏡ないしX線造影によりその詳細を読み解くこととなる.特に様々な組織型の含まれる0-I型食道癌の臨床診断は,ほかのいずれの型とも異なる知的好奇心を診断医に抱かせるものである.
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